寄宿生物カネコ!

月芝

文字の大きさ
上 下
116 / 254

116 カネコ、愛車をバラす。

しおりを挟む
 
 メテオリト大森林、古代遺跡、ダンジョンなどで爆走しまくり。
 ずいぶんと無茶をさせたせいで、ワガハイの愛車であるカネコモービルはすっかりボロボロになってしまった。
 にしても……くんくん、。
 何やら臭うな。
 ワガハイの汗などの獣臭だけではなくて、これはおそらく死臭の類であろう。
 そりゃあ、アレだけポンポン轢き殺しまくっていたら、臭いや怨嗟が車体に染みついてもおかしくはないけれど。
 う~ん、このまま放置したら、別の何かが発生しそうである。

 だからメンテナンスがてら、改造を施しパワーアップすることにした。
 するとその話をワガハイから聞いた馴染みの受付のおっさんが、「だったらうちの倉庫を作業場代わりにつかったらいい」と勧めてくれた。
 冒険者ギルドは倉庫をいくつか所有しており、うちのひとつがたまたま空いているそうな。

「あとで掃除をしてくれるんなら、タダで貸してやる」

 と言われて、ワガハイは厚意に甘えることにした。
 どこで作業をしようか頭を悩ましていたので、おっさんからの申し出は渡りに船であったのだ。
 じつはゴーレム錬成技術ってば、欲しい人にとっては喉から手が出るほどに欲しい技術だったりする。だからあんまりおおっぴらには使えない。

 かつてサレーオという孤高の天才がいた。
 彼が極めたゴーレム錬成技術は、社会のありとあらゆる分野に影響を及ぼし、パッとしない中流国家を一躍大国へと押し上げる。
 が、愚王はそんなサレーオをダマして利用するばかり。
 挙句の果てには恩を仇で返すようなマネまでしくさった。
 さすがに温厚なサレーオもこれにはぶち切れ、「やってられるか!」と出奔する。
 で、天才を失った国はまたたく間に没落し滅亡してしまった。
 その後、サレーオは煩わしい俗世を厭うて、メテオリト大森林の第六層に引きこもり、ひっそり生涯を終えた。
 ゆえに、彼の確立したゴーレム錬成技術の数々は、そのまま失伝するかにおもわれたのだが……

 たまさか、サレーオが隠居していた家をワガハイが発見し、そこで『魔術大全』を手に入れたことにより、彼の偉大な功績を継承することになったという次第。
 もっとも、あんまりにも偉大過ぎて、ワガハイのオツムではさっぱり理解できず。
 再現できたのは、ほんのちょびっとだけれども。

  〇

 テニスコート三面分ほどもある倉庫内にて――

 アイテムボックスより取り出したカネコモービルを、カチャカチャいじっては解体する。

「うんにゃ~、やっぱりドライブシャフトが折れてるのにゃあ、サスペンションもバカになってるし、リムブレーキも壊れてる」

 ばかりか、ボディは傷だらけでボコボコ。
 車体の土台となるシャーシ部分にも歪みと亀裂がある。
 振り幅を抑えるための重しであるマスダンパーは、片方がどこかに失せているし、残っているのも欠けてたり、細かいヒビが入っている。
 ハンドル操作を担うステアリング回りもおかしくなっている。
 おまけにタイヤは四つともツンツルテンだ。

「……これはもう造り直した方がはやいかもしれないにゃんねえ」

 ぶつくさボヤキながら、動力となるゴーレム駆動部分を車体より取りはずす。
 パカッとフタを開けて、ワガハイは「あちゃあ~」
 本機に採用しているゴーレム駆動の構造は単純明快にて。
 内蔵されているベルトをシャカシャカ動かすと、連動した車輪が回って突き進むベルトコンベア式。ルームランナーとか、ハムスターの回し車を想像するとわかりやすいだろう。
 でもって肝心のベルトの上でシャカシャカ走るのが、専用のミニゴーレムたちである。
 ベルトコンベアはすっかりのびきっており、ローラーがちょっと焦げ臭い。摩擦で焼けたか。
 ミニゴーレムたちもカピカピでボロボロだ。

「まだ生きてるかにゃあ?」

 声をかければ、ぐったりしていたミニゴーレムたちは弱々しく手をあげたものの、すぐにバタリとしてピクリともせず。
 どうやら酷使し過ぎて、体のみならず内臓されている魔晶石が限界を迎えつつあるようだ。

「こちらも造り替えにゃんねえ。とりあえず新しい魔晶石に、古い石からデータを移行して……」

 さいわいなことにダンジョンアタックのときにチョロまかしておいた、大量の魔晶石と魔獣の素材があるので、錬成に必要な材料にはこと欠かない。

「よし、せっかくだからパワーアップした二号機を造るのにゃあ」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

処理中です...