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116 カネコ、愛車をバラす。
しおりを挟むメテオリト大森林、古代遺跡、ダンジョンなどで爆走しまくり。
ずいぶんと無茶をさせたせいで、ワガハイの愛車であるカネコモービルはすっかりボロボロになってしまった。
にしても……くんくん、。
何やら臭うな。
ワガハイの汗などの獣臭だけではなくて、これはおそらく死臭の類であろう。
そりゃあ、アレだけポンポン轢き殺しまくっていたら、臭いや怨嗟が車体に染みついてもおかしくはないけれど。
う~ん、このまま放置したら、別の何かが発生しそうである。
だからメンテナンスがてら、改造を施しパワーアップすることにした。
するとその話をワガハイから聞いた馴染みの受付のおっさんが、「だったらうちの倉庫を作業場代わりにつかったらいい」と勧めてくれた。
冒険者ギルドは倉庫をいくつか所有しており、うちのひとつがたまたま空いているそうな。
「あとで掃除をしてくれるんなら、タダで貸してやる」
と言われて、ワガハイは厚意に甘えることにした。
どこで作業をしようか頭を悩ましていたので、おっさんからの申し出は渡りに船であったのだ。
じつはゴーレム錬成技術ってば、欲しい人にとっては喉から手が出るほどに欲しい技術だったりする。だからあんまりおおっぴらには使えない。
かつてサレーオという孤高の天才がいた。
彼が極めたゴーレム錬成技術は、社会のありとあらゆる分野に影響を及ぼし、パッとしない中流国家を一躍大国へと押し上げる。
が、愚王はそんなサレーオをダマして利用するばかり。
挙句の果てには恩を仇で返すようなマネまでしくさった。
さすがに温厚なサレーオもこれにはぶち切れ、「やってられるか!」と出奔する。
で、天才を失った国はまたたく間に没落し滅亡してしまった。
その後、サレーオは煩わしい俗世を厭うて、メテオリト大森林の第六層に引きこもり、ひっそり生涯を終えた。
ゆえに、彼の確立したゴーレム錬成技術の数々は、そのまま失伝するかにおもわれたのだが……
たまさか、サレーオが隠居していた家をワガハイが発見し、そこで『魔術大全』を手に入れたことにより、彼の偉大な功績を継承することになったという次第。
もっとも、あんまりにも偉大過ぎて、ワガハイのオツムではさっぱり理解できず。
再現できたのは、ほんのちょびっとだけれども。
〇
テニスコート三面分ほどもある倉庫内にて――
アイテムボックスより取り出したカネコモービルを、カチャカチャいじっては解体する。
「うんにゃ~、やっぱりドライブシャフトが折れてるのにゃあ、サスペンションもバカになってるし、リムブレーキも壊れてる」
ばかりか、ボディは傷だらけでボコボコ。
車体の土台となるシャーシ部分にも歪みと亀裂がある。
振り幅を抑えるための重しであるマスダンパーは、片方がどこかに失せているし、残っているのも欠けてたり、細かいヒビが入っている。
ハンドル操作を担うステアリング回りもおかしくなっている。
おまけにタイヤは四つともツンツルテンだ。
「……これはもう造り直した方がはやいかもしれないにゃんねえ」
ぶつくさボヤキながら、動力となるゴーレム駆動部分を車体より取りはずす。
パカッとフタを開けて、ワガハイは「あちゃあ~」
本機に採用しているゴーレム駆動の構造は単純明快にて。
内蔵されているベルトをシャカシャカ動かすと、連動した車輪が回って突き進むベルトコンベア式。ルームランナーとか、ハムスターの回し車を想像するとわかりやすいだろう。
でもって肝心のベルトの上でシャカシャカ走るのが、専用のミニゴーレムたちである。
ベルトコンベアはすっかりのびきっており、ローラーがちょっと焦げ臭い。摩擦で焼けたか。
ミニゴーレムたちもカピカピでボロボロだ。
「まだ生きてるかにゃあ?」
声をかければ、ぐったりしていたミニゴーレムたちは弱々しく手をあげたものの、すぐにバタリとしてピクリともせず。
どうやら酷使し過ぎて、体のみならず内臓されている魔晶石が限界を迎えつつあるようだ。
「こちらも造り替えにゃんねえ。とりあえず新しい魔晶石に、古い石からデータを移行して……」
さいわいなことにダンジョンアタックのときにチョロまかしておいた、大量の魔晶石と魔獣の素材があるので、錬成に必要な材料にはこと欠かない。
「よし、せっかくだからパワーアップした二号機を造るのにゃあ」
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