寄宿生物カネコ!

月芝

文字の大きさ
上 下
105 / 280

105 怪盗カネコ、お宝はもらった!

しおりを挟む
 
 ボス部屋内では激しい戦闘が続いている。
 それを横目に、ワガハイは壁際に身を寄せそろりそろり。
 鳥男のメンチキはこちらに気づいていない。
 してやったりにてワガハイはにゃしっしっ、ほくそ笑み部屋の奥を目指す。
 でも、半分ほど進んだところで――

 ズバンッ!

 いきなり鼻先に戦斧が突き立ったもので、ワガハイはビクゥ。動揺するあまり、あやうくカネコインビジブルが解けそうになる。
 戦斧はメンチキが投げつけたものだ。
 てっきりバレたのかとおもいきや、ちがった。
 たまたま流れ弾がこちらに飛んできただけのこと。
 その証拠に戦斧はすぐに消えてしまい、メンチキの手の中へと戻っていく。
 ワガハイはドキドキしながら、潜入を再開した。

  〇

 ボス部屋の奥に到達した。
 通路の入り口がある。ダンジョンコアはこの先だ。
 照明はなくて薄暗い廊下。扉や柵に警護の姿もナシ。
 いささか不用心にて、一見するとふつうの通路だけれども……

「カネコアイ、発動」

 みっつの目を総動員する。
 カネコアイはジト目になればかなり遠方まで見通せる。遠近両用にて暗闇でもバッチリ。その他にもいろいろ見えちゃう優れもの。
 ワガハイは通路内部を探る。
 そうしたら炙り出されたのは、内部に張り巡らされている幾筋もの光線。
 裸眼では認識できない特殊な光学センサーだ。
 うかつに触れたら警報が鳴るのか、はたまた何らかのトラップが発動するのか。
 ざっと見渡したところでは、アムールトラほどもあるワガハイが通り抜けるのはムズカシそう。

「ほうほう、だが甘いにゃん。この程度ではワガハイを止められないのにゃあ」

 ワガハイは臆することなく、スタスタ進む。
 じきに一番手前の光線が接触……しない。
 体表に当たる寸前に光線が消えた。
 かとおもったら、ワガハイの体をすり抜けるかのようにして、反対側からあらわれる。
 もちろん本当に通り抜けたわけじゃない。
 からくりのタネは、アイテムボックスである。
 自身の表面にアイテムボックスの取り出し口を広く展開しては、センサーライトを呑み込み、ワガハイの身をまたいだところに放出しては、疑似的に射線を繋げることで光学センサーを無効化していたのだ。
 というわけで、サクサク進んでいたのだけれども――

「おっと、何やら足下が怪しいのにゃあ」

 踏み出しかけた右前足をそっと戻す。
 ワガハイの髭がビビビと反応しており、『これは踏んじゃダメ』と直感が告げている。
 どうやら踏むと作動するトラップのようだ。矢が向かってくるか、はたまた槍が飛び出すか、落とし穴にて底には刃がびっしりなんてパターンもあるだろう。
 わざわざ試す必要はないので、ワガハイは怪しい地点を迂回して先を目指す。

 ついに通路を抜けた。
 進んだ先の部屋にて目的の品を発見する。

「うにゃ! お、大きい……」

 生肉のようなピンク色をしたダンジョンコア。
 天井と床からのびた蔓により支えられている。
 形状はカカオの実のようで、ちょっと歪だ。
 以前にワガハイが古代遺跡で手に入れたアリ型魔獣の女王ヴァシーリサフォルミガの魔晶石よりも、ずっともっと大きい。車のハイエースワゴンほどもあろうか。
 コアは艶めかしい輝きを放ちながら、明滅していた。
 そのリズムは心臓の鼓動のよう。

 触れようとワガハイは前足をのばすも――パシッ。
 近づいたところで静電気みたいな抵抗を受けた。
 気安く触るなということらしいが、もちろんおとなしく引き下がるわけもなく。
 ワガハイは問答無用でアイテムボックスにダンジョンコアを回収した。
 とたんにダンジョン全体がビリビリと震え始めた。

 ズシリ……

 回収直後のことだ。感じないはずの重みを感じ、ワガハイは「にゃ!」と驚く。
 事実、質量は相当なのだろうが、それだけが原因ではない。
 これはコアが保有する力ゆえだ。
 濃縮された力が、なかからワガハイの魔力に干渉してアイテムボックスに影響を及ぼしている。

「にゃるほどねえ……これはけっこうキツイのにゃあ。並のアイテムボックス持ちだと、モタずに途中でへばるかも」

 とんだジャジャ馬、抑え込むのにガリガリ魔力を削られる。
 これもまた無傷で丸ごとコアを持ち帰る難易度をあげている要因なのだろう。
 過去に成功例が二件のみというのもうなづける。

「……とはいえ、これにてミッションクリアだにゃん。長居は無用、とっととおさらばするにゃあ~」

 ワガハイはすぐさまきびすを返し、コアのあった部屋をあとにする。
 でも、気が急くあまりうっかりトラップを踏んでしまって「あっ」
 カッコンと床の一部がへこんだとおもったら、とたんにゴゴゴと下がってきたのは通路の天井!
 侵入者をぺちゃんこにするトラップ発動。

「にゃあぁぁぁーっ!」

 ワガハイは泣きべそをかきながら懸命に足を動かし、出口へとまっしぐら。


しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...