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105 怪盗カネコ、お宝はもらった!
しおりを挟むボス部屋内では激しい戦闘が続いている。
それを横目に、ワガハイは壁際に身を寄せそろりそろり。
鳥男のメンチキはこちらに気づいていない。
してやったりにてワガハイはにゃしっしっ、ほくそ笑み部屋の奥を目指す。
でも、半分ほど進んだところで――
ズバンッ!
いきなり鼻先に戦斧が突き立ったもので、ワガハイはビクゥ。動揺するあまり、あやうくカネコインビジブルが解けそうになる。
戦斧はメンチキが投げつけたものだ。
てっきりバレたのかとおもいきや、ちがった。
たまたま流れ弾がこちらに飛んできただけのこと。
その証拠に戦斧はすぐに消えてしまい、メンチキの手の中へと戻っていく。
ワガハイはドキドキしながら、潜入を再開した。
〇
ボス部屋の奥に到達した。
通路の入り口がある。ダンジョンコアはこの先だ。
照明はなくて薄暗い廊下。扉や柵に警護の姿もナシ。
いささか不用心にて、一見するとふつうの通路だけれども……
「カネコアイ、発動」
みっつの目を総動員する。
カネコアイはジト目になればかなり遠方まで見通せる。遠近両用にて暗闇でもバッチリ。その他にもいろいろ見えちゃう優れもの。
ワガハイは通路内部を探る。
そうしたら炙り出されたのは、内部に張り巡らされている幾筋もの光線。
裸眼では認識できない特殊な光学センサーだ。
うかつに触れたら警報が鳴るのか、はたまた何らかのトラップが発動するのか。
ざっと見渡したところでは、アムールトラほどもあるワガハイが通り抜けるのはムズカシそう。
「ほうほう、だが甘いにゃん。この程度ではワガハイを止められないのにゃあ」
ワガハイは臆することなく、スタスタ進む。
じきに一番手前の光線が接触……しない。
体表に当たる寸前に光線が消えた。
かとおもったら、ワガハイの体をすり抜けるかのようにして、反対側からあらわれる。
もちろん本当に通り抜けたわけじゃない。
からくりのタネは、アイテムボックスである。
自身の表面にアイテムボックスの取り出し口を広く展開しては、センサーライトを呑み込み、ワガハイの身をまたいだところに放出しては、疑似的に射線を繋げることで光学センサーを無効化していたのだ。
というわけで、サクサク進んでいたのだけれども――
「おっと、何やら足下が怪しいのにゃあ」
踏み出しかけた右前足をそっと戻す。
ワガハイの髭がビビビと反応しており、『これは踏んじゃダメ』と直感が告げている。
どうやら踏むと作動するトラップのようだ。矢が向かってくるか、はたまた槍が飛び出すか、落とし穴にて底には刃がびっしりなんてパターンもあるだろう。
わざわざ試す必要はないので、ワガハイは怪しい地点を迂回して先を目指す。
ついに通路を抜けた。
進んだ先の部屋にて目的の品を発見する。
「うにゃ! お、大きい……」
生肉のようなピンク色をしたダンジョンコア。
天井と床からのびた蔓により支えられている。
形状はカカオの実のようで、ちょっと歪だ。
以前にワガハイが古代遺跡で手に入れたアリ型魔獣の女王ヴァシーリサフォルミガの魔晶石よりも、ずっともっと大きい。車のハイエースワゴンほどもあろうか。
コアは艶めかしい輝きを放ちながら、明滅していた。
そのリズムは心臓の鼓動のよう。
触れようとワガハイは前足をのばすも――パシッ。
近づいたところで静電気みたいな抵抗を受けた。
気安く触るなということらしいが、もちろんおとなしく引き下がるわけもなく。
ワガハイは問答無用でアイテムボックスにダンジョンコアを回収した。
とたんにダンジョン全体がビリビリと震え始めた。
ズシリ……
回収直後のことだ。感じないはずの重みを感じ、ワガハイは「にゃ!」と驚く。
事実、質量は相当なのだろうが、それだけが原因ではない。
これはコアが保有する力ゆえだ。
濃縮された力が、なかからワガハイの魔力に干渉してアイテムボックスに影響を及ぼしている。
「にゃるほどねえ……これはけっこうキツイのにゃあ。並のアイテムボックス持ちだと、モタずに途中でへばるかも」
とんだジャジャ馬、抑え込むのにガリガリ魔力を削られる。
これもまた無傷で丸ごとコアを持ち帰る難易度をあげている要因なのだろう。
過去に成功例が二件のみというのもうなづける。
「……とはいえ、これにてミッションクリアだにゃん。長居は無用、とっととおさらばするにゃあ~」
ワガハイはすぐさまきびすを返し、コアのあった部屋をあとにする。
でも、気が急くあまりうっかりトラップを踏んでしまって「あっ」
カッコンと床の一部がへこんだとおもったら、とたんにゴゴゴと下がってきたのは通路の天井!
侵入者をぺちゃんこにするトラップ発動。
「にゃあぁぁぁーっ!」
ワガハイは泣きべそをかきながら懸命に足を動かし、出口へとまっしぐら。
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