寄宿生物カネコ!

月芝

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100 カネコとシェイプシフター。

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 勇者を四散させたシェイプシフター。
 左の拳をもギュィ~ンと回転させ、ハードコークスクリュウ・ブローの二刀流となった。両腕をブイブイいわせては猛威を振るう。

 うかつに攻められない。巻き込まれたら勇者の二の舞となる。
 だから魔法使い、賢者、女騎士、ギルド長らは回避につとめ、いったん距離をとりつつ様子見となり、戦いは硬直状態へと陥った。
 さなかのことである。

「あ~、めんどうくさい」

 聖女がボヤキながら勇者を復活させている。
 どうせ役に立たないのだから、いっそのこと戦闘が終わるまで放っておけばいい。
 ワガハイなんぞはそうおもうのだが、聖女いわく「あんまり時間をおくと、あちこち傷むんですよ」とのこと。
 腐っても勇者なのが、本当に腐る。
 バカがいっそうバカになる。
 それはさすがに看過できない。

 ワガハイは作業中の聖女を守りつつ「だったらムリせずに撤退すればいいのにゃあ」と進言してみた。
 だって、わざわざ向こうのホームで戦わなくても。さっさと隠し通路に逃げ込んでしまえば、シェイプシフターは追ってこれないんだもの。

「むにゃむにゃ」呪文を唱えていた聖女、いったん中断して「……それもそうですね。よくよく考えてみれば、私たちの目的はダンジョンコアの回収ですし」とうなづいた。
 そうと決まればさっさと勇者を復活させて、とんずらしようとしたのだけれども。
 まるでこちらの考えを見越したかのように、シェイプシフターが先手を打ってきた。
 ヤツは両腕を前へと突き出すポーズにて。

 ドドンッ!

 ふたつの爆音がしたとおもったら、発射されたのはシェイプシフターの肘から先の部分である。
 よもやのロケットパンチ!
 合体変形だけに留まらず、まさか拳まで飛ばしてくるだなんて。
 ヤツはどれだけワガハイの少年心をくすぐれば気が済むというのか。
 でも、こんな場所でそんなモノを放ったりしたら……

 ゴンッ、ガンッ、ドゴッ、バキン、ドスン、バタン。

 ほら、言わんこっちゃない。
 壁や床に天井と柱、あちらこちらへぶつかりまくりにて、自損事故を連発しまくり。
 所狭しと大暴れする当たり屋。まるでビリヤードの玉のようにガンガンぶつかるもので、ワガハイたちは「ワーキャー」逃げ惑うことになった。
 そして困ったことに、ロケットパンチのサイズが隠し通路にジャストフィット。
 もしも逃げん込んだところで追撃を受けたら逃げ場がない。成す術なく一同そろってゴリゴリとミキサーの刑に処されてしまうだろう。
 それこそがシェイプシフターの狙いだったのである。

 逃亡時のリスクがいっきに高まった。ほぼ逃亡を禁じられたようなものだ。
 こうなったら戦うしかない。
 ワガハイたちが覚悟を決めたところで……

「私が行こう。皆は援護を頼む」

 切り込み隊長を買って出たのは女騎士だ。
 ビュンビュン飛び回っている腕はやっかいだが、それさえ掻い潜って懐に入ってしまえば、こっちのもの。
 しかし相手は頑丈な宝箱の魔獣である、並の斬撃では通用しない。
 なのに仲間の女たちが反対しないところをみるに、何やら秘策があるということか。

 そうしたらここで「そうか。だったらうちのを連れて行くといい」とギルド長。
 え~と、女騎士がカネコに騎乗するってことらしい。
 けど、あれ? ワガハイの意思は? 何も聞いてないんですけど……
 ワガハイが抗議の目を向けたら、ギロリとにらみ返されて黙らされた。う~ん、うちのギルド長の目力が強すぎる、あと目つきも悪い。

 ちなみにこの話し合いの間、ずっと蚊帳の外であったモブ顔勇者さま。
 いつもならば我先にとしゃしゃり出てくるのに、ずいぶんとおとなしい。
 不審におもって見てみたら、勇者さまはぼんやりヨダレを垂らしており、声をかけても反応がなく、目の焦点も合っていない。
 呆けている勇者さまの頭をバンバン叩いている聖女も首をかしげている。

「あら、おかしいわね。いつもならコレで直るのに」

 そんな……昭和のブラウン管テレビじゃあるまいし。
 まぁ、それはともかくとして。
 寄宿生物カネコにまたがる女騎士という、異色の組み合わせが誕生したところで、いざ尋常に勝負!


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