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097 カネコ、童話物語その二。
しおりを挟むちゅんちゅん、楽しいスズメのお宿。
飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、お帰りはあちらという段になって。
お土産用の葛籠(つづら)がふたつ。
大きいのと小さいの。
「どうぞ、お好きな方をお持ち帰りください」
と言われたもので、慎み深いお爺さんは「じゃあ、小さい方を貰おうか。大きいのは背負うと腰にくるんでね」
小さな葛籠を受け取るときに、先方から「恥ずかしいので、家に着くまでは開けないでね」と言われて、お爺さんは首をかしげつつも「わかった」と返事をして、律儀にもその約束を守った。
で、家に持ち帰ってから小さな葛籠を開けてみたら、なかには目もくらまんばかりの金銀財宝がつまっていたもので、たまげたのなんのって。
それを目にした強欲なお婆さん。
「あんたバカなの? どうして大きい方を貰ってこなかったんだい! このすっとこどっこい!」
お婆さんは、小さい葛籠でコレならば大きい方ならもっと宝物が入っていたはずと考えたのだ。
で、どうにもガマンできなくなって「私もちょいとスズメのお宿に行ってくるよ」と出かけてしまった。
スズメのお宿に押しかけたお婆さんは、散々に無銭飲食をしたあげくに「そろそろ帰る。とっとと土産を寄越しな!」と言った。
そして提示された大小の葛籠のうち、当然のように大きい方をひったくる。
『家につくまで開けてはいけない』
というナゾの約束には「はいはい」と適当に返事をしておき、お婆さんは「じゃあな、気が向いたらまた来てやる」と言い残しルンタッタ、スキップにて帰っていった。
こうして帰路についたお婆さん。
だが、大きな葛籠はとっても重かった。
峠にさしかかったところで――
すっかり汗だくとなり「ぜぇぜぇ」息も乱れ、膝もがくがく。ついには腰も悲鳴をあげてしまい、「きっつー、こんなことなら台車を用意しておくんだった」とへたり込んでは、ちょっと休憩。
休んでいると、どうにも気になったのが葛籠の中身である。
これだけ苦労したのだ。労力に見合うだけの品でないと、割に合わない。
そこで「ちょっとのぞくだけ。なぁに、どうせバレやしないよ」と約束を破ってしまった。
すると、なかから飛び出してきたのは、世にも恐ろしい魑魅魍魎たち。
お婆さんを取り囲んだ魑魅魍魎らはあからさまにガッカリした様子にて言った。
「ちっ、なんだよババアかよ」
「まずそうだなぁ」
「骨と皮ばかりじゃねえか」
「喰ったら腹をこわしそう」
「食中毒はあかんて」
「どうせ喰うなら若い娘がよかった」
「……チェンジで!」
これに対してお婆さんが懐から取り出したのは、折りたたみ式の草刈り鎌である。護身用にとふだんから持ち歩いている物。
お婆さんはシャキンと鎌の刃を出しながら「ちきしょうっ! こうなったら一匹でも多く道連れにしてやらぁ!」と吠えた。
かくして夜の峠で始まった戦い。
バケモノどもを相手にしての孤軍奮闘。
怒号が飛び交い、血風が舞う。
諸肌脱ぎも勇ましく、垂れたおっぱいをプラプラさせながら、お婆さんは懸命に鎌を振るい続けた。
だがしかし、しょせんは多勢に無勢である。
じょじょに追い込まれていき、ついには……
おしまい。
日本昔話でお馴染みの『舌切りスズメ』のあらすじだ。
一部オリジナルアレンジを加えてあるけど、だいたいは合ってるはず。
無慈悲な行いをしたり、欲張るものではないという教訓物語。
ダンジョン七層にて見つけた隠し通路、進んだ奥にあったのは宝物庫らしき場所。
そこには大から小と、サイズの異なる五つの宝箱が置いてあった。
ワガハイから報告を受けた勇者一行は、我先に隠し部屋へと向かう。
そして「私、これにする」「だったら俺はこっちだ」と、さっそく宝箱の取り合いを始めたもので、あきれた!
彼らの浅ましい姿を目の当たりにして、ワガハイがふと思い出したのが先の昔話である。
「にゃあ~、宝箱を見つけたのワガハイなのに……。あと、いまさらだけど『舌切りスズメ』ってタイトル、えぐいのにゃあ」
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