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074 カネコ、陰謀を知る。
しおりを挟む――う~ん、ちょっと何を言っているのかよくわかんにゃい。
ピンバッジをつけている男たち。
手段はともかく彼らが推し活……もとい布教活動にとても熱心なのはわかった。
だからってワガハイをターゲットにする意味が分からん。
頭にハテナマークがポコポコ浮かぶ。
「あっ、もしかしてあちこちで『インチキ女神』とか『クソ教団』とか『守銭奴の性職者』とか言ってるのを耳にして、怒ってるのかにゃあ?」
目の敵にされる理由、パッと思いつくのはせいぜいこれぐらい。
でもこんなのはみんな言ってる。いまさらであろう。
すると男たちはこめかみにビキリと青筋を浮かべながら「そうじゃない」「我らの野望の邪魔となるからだ」と語気を強めた。
女神フロディア普及委員会の野望。
それは城塞都市トライミングにて、女神の素晴らしさを伝え広めること。
現在はびこっているスミテルア教なる邪教を駆逐し成りかわる。そしてこの地を足がかりにして、ゆくゆくはエスカリオ国全体に浸透させて、すべてを女神色に染めあげる。それが彼らの夢……
だがそんな彼らの野望を阻む邪魔な存在がふたついた。
ひとつは『ツバッキーくん』だ。ツバメっぽいトリをモチーフにした、某球団マスコットのアレにちょっと似ている商業ギルドの公式キャラクター。
そしていまひとつは都市の公認マスコットキャラクターの座を虎視眈々と狙う、ワガハイこと寄宿生物カネコである。
「よもや我らと同じような計画を考え、実行に移す者があらわれようとは……誤算であった」
「ふん、目のつけ所だけはホメてやろう。だが身のほど知らずにもほどがある」
え~と、つまるところ男たちの主張を要約すると……
城塞都市トライミングのナンバーワンアイドルの座は女神フロディアのもの。
その覇道を邪魔する者には『死』あるのみ。
とどのつまり、これはトライミングでの愛されキャラの地位を賭けた戦いだということ!
「フッ、なるほど。そういうことだったにゃんね。それで最大にして最強のライバルになるであろう、このワガハイを真っ先に狙ったと。
……敵ながらなんという的確な分析、その慧眼っぷりにはおそれいったにゃん」
いや~、まいったまいった。
さすがはワガハイである。
まだ自称・地下アイドルの域は抜けていないが、隠しきれない才能と滲み出る魅力、カリスマ性に、はやくも目をつける者があらわれたか。
よかろう、そういうことならば相手になってやろうではないか。
自分とてゆくゆくはトライミングを背負って立つビッグな男。
ワガハイは誰の挑戦でも受ける!
なのに男たちときたら「「ちがうちがう」」とそろって首を横に振った。
「俺たち、最初はツバッキーくんをどうにかしようとしたんだ」
「だがむこうには商業ギルドが、バックにガッツリついていやがるからな」
「ったくどうなっているんだよ、トライミングの商業ギルド。ぜってー、堅気じゃねえだろう」
「ギルド長もヤバいが、副ギルド長はたぶんもっとヤバい。なんでアイツらが壁を自由に出入りできて、おれたちがダメなんだ? 意味が分からん」
「ギルドの警備は厳重だし、警備員たちはどいつもこいつも異様にゴツイし。暗殺ギルドの間違いじゃないのか」
「おかしいといえば『ツバッキーくん』もだ。なかのヒト、只者じゃねえ」
「そうそう。イベント中の隙を突いて死角から着ぐるみを狙撃したのに、こっちを見ることなく、子どもたちの相手をしながら軽くハエでも払うみたいに、ペシっと毒矢を叩き落としやがった。ありえねえ」
「ほんの一瞬だけど、向けられた殺気の鋭いこと。ちょっとチビっちまったぜ」
「だから標的を変えることにしたんだ」
「あぁ、ひとりでプラプラしている妙ちきりんなシシガシラもどきなら、俺たちでもなんかイケそうかなって……」
こいつら、とんでもねえヤツらである。
自分たちのしたことを棚にあげては言いたい放題であった。さすがはクソ女神の狂信者だけのことはある。
でもってワガハイは、ムカッ!
とりあえずこいつらに遠慮はいらない。カネコパンチでボコることに決めた。
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