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027 カネコとリッチなリッチー。
しおりを挟むチャララチャララ、チャラララ~ラララ、ラ~ララン♪
チャララチャララ、チャラララ~ラララ、ラ~ララン♪
某歌劇団にて何度も舞台化をされている、あのバラな名作マンガ。
一方で、いろいろ物議をかもしたのがアニメ版であった。
片や原作ファンたちが大絶賛し、片やオリジナル要素をぶっ込んだせいで、クセが強くなりすぎてファンたちをおおいに困惑させたものであったが……
うろ覚えなアニメ版のオープニングソングを鼻歌で口ずさみながら、ワガハイはエントランスの大階段を優雅にくるりくるり、華麗に降りていく。
こんな機会、めったにない。
ひとり歌劇団ごっこを堪能したワガハイは、ご機嫌にてエントランスへと。
隣接してはいるものの塔屋は独立しており、一階からでないと行けないようになっていた。
音楽ホールにある階段からしか塔屋の上へは行けない。もしかしたら隠し通路があるのかもしれないけど、めんどうだから探さない。
外から見たところでは、塔屋は五階建てになっており、母家よりもふたつばかり背が高い。
なんとかは高いところが好きというけれど。
ワガハイからすれば、わざわざ不便なところで暮らす意味がわからない。
だって、ここエレベーターとかないんだもの。
実質、団地暮らしをしているようなものである。用事があるごとに上と下を行ったり来たりとか、不便だろうに。
でも、そのわりには絵の中のちょび髭は太っていた。
ということは、たいへんだったのは使用人たちということになる。
どうやら彼は凄いけどめんどくさい男でもあったようだ。
○
塔屋の最上階にて――
前言を撤回する。
ここの元の家主はけっして「めんどうくさい男」なんぞではない。
より正しくは「超めんどうくさい男」だ。
なぜなら……
『グワハハハハ、ワシは死霊王リッチー。またぞろ愚か者がやってきおったか。
ムダムダムダムダ~、誰であろうともこのワシを祓うことなんぞできるものか。キサマもすぐに死霊の仲間入りにしてやろうぞ。そして永劫にワシの手下としてこき使われるのだ!』
肖像画の人物がこっちを威嚇している。
ただし、ふよふよ宙に浮かんでは足がない情けない姿にて。
いわゆる幽霊というやつだ。
つまり彼は元リッチ(金持ち)でリッチ(死霊)なリッチーさんというわけだ。
ややこしいな。あとやかましい。
だからワガハイは「えいっ、闇のクリーン」
あれ、死霊に対して闇属性の魔法?
そこはピカッとサンサン、光の出番じゃないの?
と、疑問におもわれるかもしれないが、それは誤りである。
なぜなら光属性に善性や聖性なんぞは、ミジンコほども含まれていないから。
いかにもそれっぽいけど、じつはまったく効能はない。
光魔法に払えるのは細菌とかウイルスで、解呪やら浄霊は祈りに属するから聖職者の領分になるのだ。
あとは火である。火はすべてを浄化する。ただし、すべてを焼き尽くしてあとには何も残らないけど。
では、どうしてここで闇のクリーンなのかといえば、黒のベトベトさんには好き嫌いがないからである。
なんでもかんでもヌルっと呑み込んでは、べろべろモグモグしちゃう。
おかげさまで、どんなに頑固な染みや汚れもスルッと落ちちゃう。
リッチなリッチーさんは、たちまち黒のベトベトさんに呑み込まれた。
『アンギャアァァァァァァァ~~! アーッ、そこはダメーっ!』
聞くにたえない死霊の嬌声。
ワガハイは耳をペタリと塞ぎつつ、さらに魔力を注入する。
そうしたら黒のベトベトさんはずんずん大きくなっていき、たちまち塔屋の最上階からあふれ、さらには屋敷全体へと広がっていく。
ほどなくして豪邸は黒いヌメヌメに包まれた。
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