10 / 280
010 カネコ、ど~ん。
しおりを挟む街道を北へ進むこと、しばし。
前方に見えてきたのは、道を塞ぐようにして横転している幌馬車だ。車輪の片側がはずれている、うっかり窪みにでも落ちて壊れたか。
少し離れたところに繋がれている馬っぽいのがいる。足の数が多い。どうやらアレがこちらの世界では標準的な馬らしい。立派な体躯をしており、ばんえい競馬のばん馬ほどもある。ちなみにばん馬はサラブレットの約2倍の大きさ。
倒れた馬車の周囲にたむろしているのは、乗っていた人たちだろう。
いかにも旅先のトラブルにて困ったという風にて。
だからワガハイは……
「邪魔にゃあ、アクセル全開でど~ん」
ボーリングのピンのごとく、道を塞いでいた障害物をまとめて撥ねて、ストライクを決めてやった。
あぁ、誤解なきよう。
いかにワガハイとて、もしも『本当に困っている人たち』ならば、有料で救いの手を差し伸べるのもやぶさかではない。
けれどもカネコの目と耳は欺けない。
鑑定は情報が薄くいまいち使えないけれど、カネコアイはジト目になればかなり遠方まで見通せるのだ。遠近両用にて暗闇でもバッチリ。
じつは事前にカネコアイで存在を確認した際に、念のためにカネコイヤーで連中の会話を盗み聞きしていたのである。
するとその内容がとにかく酷かった。
こいつらの正体は強盗だ。
人の親切心につけ込んでは襲いかかる下衆ども。しかもわざわざ国境を越えての出稼ぎ組ときたもんだ。隣国で散々に悪さをして、追手が差し向けられたらひょいと国境をまたぐことで逃げるズルい奴ら。外道働きにてやりたい放題。
よって情状酌量の余地ナシ。
というわけで、ど~ん!
ワガハイは問答無用で撥ねて、撥ねて、撥ねまくる。
運よくカネコモービルをかわした者も、すれ違いざまに魔法で石礫を撃ち込みゴツンと仕留める。
だれも逃がさない。
〇
静かになった事故現場にて――
そのまま放置してもよかったのだけれども、せっかくなので白眼をむいている連中の身ぐるみをはぐことにする。
馬車はダミーだった。荷台にあったのも空箱ばかり。
強盗どもが隠し持っていた武器に値打ち物はなく、鋳つぶして再利用するしかなさそう。
かき集めたコインは、銅貨と銀貨ばかりで金貨はほんの数枚のみ。
価値がありそうなものといえば、繋がれている馬たちぐらい。
「森から出たとたんにコレとか、とんだ世紀末な世界にゃん。先が思いやられるにゃあ。にしても、どいつもこいつもシケシケにゃんねえ」
もっとも貧乏だからこそ強盗なんぞに身をやつしているのだろうけど。
微々たる成果物をアイテムボックスに放り込む。
気絶している連中は縛って、数珠繋ぎにして馬に引かせることにした。
魔法で浮かせ運んでもよかったのだけれども、そこまでサービスをしてやる義理はない。
「というわけで、気を取り直して行くにゃあ~」
カネコモービルを発車させると、馬たちは指示せずともちゃんと付いてくる。
飼い主はアレだったけど、馬たちはとってもおりこうさん。
この分ではきっといい買い手がつくだろう。
ワガハイ、ほくほく顔にて「にゃっしっしっ」
43
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜
月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。
蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。
呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。
泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。
ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。
おっさん若返り異世界ファンタジーです。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
俺は彼女に養われたい
のあはむら
恋愛
働かずに楽して生きる――それが主人公・桐崎霧の昔からの夢。幼い頃から貧しい家庭で育った霧は、「将来はお金持ちの女性と結婚してヒモになる」という不純極まりない目標を胸に抱いていた。だが、その夢を実現するためには、まず金持ちの女性と出会わなければならない。
そこで霧が目をつけたのは、大金持ちしか通えない超名門校「桜華院学園」。家庭の経済状況では到底通えないはずだったが、死に物狂いで勉強を重ね、特待生として入学を勝ち取った。
ところが、いざ入学してみるとそこはセレブだらけの異世界。性格のクセが強く一筋縄ではいかない相手ばかりだ。おまけに霧を敵視する女子も出現し、霧の前途は波乱だらけ!
「ヒモになるのも楽じゃない……!」
果たして桐崎はお金持ち女子と付き合い、夢のヒモライフを手に入れられるのか?
※他のサイトでも掲載しています。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる