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009 カネコ、ヒヤリハット。
しおりを挟む未開の地、メテオリト大森林の第六層にあったサレーオの隠れ家。
そこを飛び出し、ずんずん突き進む。
五層目に入ったとたんに「ヒャッハーッ!」と手荒い歓迎を受けるも、ワガハイとカネコモービルの敵ではない。
バンバン撥ね飛ばしてやった。
ごりごりすり潰しまくり、ミンチ肉にして返り討ちにする。
数が多かったり、相手の図体が大きい時にはカネコスラッシュやカネコビームで薙ぎ払う。
ちなみにカネコスラッシュとは、ジャキンとのばした爪にて、前足をシュバッとやったら、真空の刃がびゅんと飛んで、対象をスパッとする技である。
魔法でも似たようなことはデキるけど、こっちの方が簡単だし爪研ぎにもなるから、ワガハイはカネコスラッシュを使っている。
と、まぁ、向かうところ敵なしのカネコモービル。
だが血濡れて、肉片と死臭をまとわせるほどに、新たな敵を誘き寄せることとなり、その道行きは阿鼻叫喚の地獄道となった。
しかもせっかくの卸したての新車が汚れて傷だらけ。
ワガハイ、テンションだだ下がりである。
けれどもそれも第四層目は中盤に来るまでの話。
この大森林は奥へと向かうほどに危険度が飛躍的増す。
でもワガハイは内から外へと向かっているので、進むほどに難易度が下がることになるのだ。
前人未踏とされる第六層目でも、のほほんと生きていたワガハイにとって、森の浅い階層なんぞはぬるま湯のようなもの。
退屈すぎて、あくびが「うんにゃあ~」
そして戦いは次なるステージへと。
かつてない脅威、夢魔とのガマン比べ。
押し寄せる眠気との戦いは過酷を極めた。
こくりこくりと舟を漕いでは、ハッとすることもしばしば。
うっかり進路がそれたり、岩場に頭から突っ込みそうになったり、狩りをしている冒険者らしきグループを獲物ごと轢き殺しそうになったり……
ヒヤリハットな場面を幾度も経験する。
う~ん、ドッキドキ。これは心臓に悪い。
――居眠り運転はダメ、絶対!
そのことをあらためて胸に刻みつつ、陰鬱とした森の中をひた走ること三日目。
ようやく森の出口が見えてきた。
〇
森を抜けると、そこは草原であった。
いやより正しくは、草原と森との境に一本の道がある。
舗装はされていない。むき出しの道だ。人や物が行き交っているうちに、自然と踏み固められたものであろう。
地面には轍(わだち)の跡がある。
なるほど、こちらの世界にも荷車のような移動手段があるようだ。
道は大森林の外縁部を沿うようにして、北と南にのびている。
おそらくここは街道なのだろう。
「はてさて、どっちに向かったものにゃら」
誰か通りがからないかな~と、しばし待つも誰も来ず。
しょうがないのでワガハイは運を天に任せることにした。
拾った木の枝を放り投げて、先っぽが向いた方へと向かうことにする。
コトンと落ちた枝が指したのは、北。
ワガハイは素直にこれに従う。
カネコモービルを北へと走らせる。ひねくれて反対方向に行ってやろうかと、ちょっとおもったけどやめておいた。
結果としてこの選択が正解であったとワガハイが知るのは、もう少しあとになってからのこと……
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