寄宿生物カネコ！

007 カネコ、ゴーレム造りにハマる。

　
　ちゃんちゃら、ちゃららら、ちゃんちゃんちゃん♪
　レッツ！　お手軽ゴーレムの錬成法♪

　まずは専用の魔法陣を描きます。これがないと始まりません。
　ただし精確に描きましょう。線が歪んだり、途切れたり、誤植があると魔法陣がちゃんと起動しません。
　というか、たまに爆発しますので注意しましょう。

　次に依り代と魔晶石を用意します。
　依り代は粘土でこねこねするもよし、木工細工をするもよし、買ってきた人形で横着するもよし。
　魔晶石は魔獣から採取したモノの方が内包されている魔力の質が高いので、ゴーレムの性能も高くなりよく馴染みます。
　べつに鉱山産のモノでも構いませんが、こちらを用いる場合は可能な限り純度の高い品を選びましょう。

　準備するのは、たったこの三つだけ。
　魔法陣の中央に魔晶石と依り代を並べて、あとは「むむむ」と自分の魔力を注入すること三分弱……

　チーン！

　はい、ゴーレムの出来上がり！

　　〇

　冗談みたいは方法だが、これが本当だからワガハイもびっくりである。
　どうにか『魔術大全』を読み進め、基本の生活魔法をひと通りマスターしたものの、そこから先がどうにもこうにも。

「ワガハイにもデキそうなの、他に何かにゃいかにゃあ～」

　ペラペラ適当にページをめくっていたら、いくつか発見したうちのひとつがゴーレム錬成であった。
　作り方は先に述べた通り、とてもシンプルである。
　サレーオの手によって、錬成に必要な魔法陣はすでに完成されており、作成手順に従うだけでいい。

　ただし、問題がまったくないわけではない。
　優れた魔法陣なれど、発動させるのには相当の魔力が必要となる。また錬成中はつねに安定した質と量を供給し続けなければならない。
　潤沢な魔力保有量が必須。ならば複数人で協力すれば解決するのかといえば、これもちとムズカシイ。
　安定した質と量を維持する。それすなわち他人とぴったり息を合わせて、同調するということ。一瞬ならばともかく、ずっと続けるのは並大抵のことではない。きっとシンクロナイスドスイミング以上の連携が求められるだろう。

　依り代にしても、それなりの素材を用意しなければ、ガッカリな仕上がりになる。性能を左右する魔晶石もまたしかり。
　とどのつまり、手順こそは簡単だが条件を整えるだけでも、じつはけっこうハードルが高かったりするのがゴーレム錬成。

　けれども心配ご無用。
　なぜならワガハイはカネコだから。
　カネコは無駄にハイスペック。ゆえに魔力うんぬんの条件はあっさりクリアした。
　魔晶石についても、転生してからずっと貯め込んでいたのがたんとある。その魔晶石たちはすべてメテオリト大森林の第六層に生息する魔獣どもから採取されたもの、質は申し分なし。
　そして肝心の依り代だが、これも問題なし。
　じつはワガハイ、こうみえて元の世界で人間をやっていた時の趣味が、オリジナルのフィギュア造りだったりする。よって造形技術には、そこそこ自信あり。
　依り代造りに必要な素材は、サレーオがしこたま保管していたので、それを流用すればいい。

　というわけで、さっそくゴーレム錬成をやってみたのだけれども……

　　〇

「う～ん、ちがうにゃ！　これじゃないにゃん」

　記念すべき初号機。
　慣れぬ作業ということもあって、お試し感覚で挑む。
　結果、出来たのは二メートルほどもある、どこからどうみてもゴーレムというゴーレム。
　自律可動する姿にちょっと感動するも、動きの鈍重さにワガハイは肩を落とす。

　気を取り直して臨んだ二号機。
　よくよく考えてみたら「べつに二足歩行にこだわらなくてもよくね？」と思い立ち、多脚式にしてみた。
　すると動きは目に見えて速くなった。節々した足でシャカシャカ動く。
　けど、なんか気持ち悪い。
　見ているとワガハイ、首のうしろの毛がゾワゾワしてくる。

　三号機はロマンを求めて、リアルロボット系のデザインにする。
　まんま等身大プラモデルだ。
　ただし、当然ながら空も飛べなければ、ビームライフルを撃つことも出来ない。
　なまじ造形がカッコいいだけに、ポーズを決める姿が痛々しいかも。

　四号機はついに脚を失くした。
　誰かが言っていたのを思い出したのだ。「あんなものは飾りですよ」と。
　代わりにキャタピラで移動できるようにする。
　うん。なかなかの速度で走れる。
　しかしコーナーが苦手にて、よく転ぶ。
　どうやら上半身のせいで、重心が狂ってバランスを崩すらしい。

　どうやら上半身も飾りだったらしい。
　だから五号機からは上半身をもとっぱらって、代わりに砲台をのせたら、じつに小回りの利く車体になった。
　でも、これはたぶん戦車……げふんげふん。いいや、自律可動しているのだから戦車型のゴーレムのはず。
　というか、いまさらながらにゴーレムとはなんぞや？

　六号機、初心に返って人型にする。
　でも今度は女型だ。
　造形師の本領発揮にて、かつてないほどの心血を注ぎ込み、メイドゴーレムを作成する。
　そのかいあって満足のいく姿となるも、おっとざんねん。
　出来たのはポンコツメイドであった。
　ヤメて、お願いだからじっとしていて、木の家が壊れちゃう！

　とまぁ、ずっとこんな調子にてゴーレム錬成はひと筋縄ではいかない。
　でも、だからこそ燃える。
　ワガハイは木の家にこもり、ゴーレム錬成に没頭した。