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決別したぜ

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 思いもしなかったパーティー追放宣言に、俺と酒場にいた連中は。

「あはははっ、聞いたかお前ら。俺様、無職になっちまったよ」

「ギャハハ、俺たちと一緒じゃねーか」

「貧乏人のお前らと一緒にすんじゃねえ!俺様はなぁ、金のある無職なんだよ」

 手を叩きながら爆笑していた。
 俺様たちの反応が気に入らないのか、デイルが俺様の胸ぐらを掴んで、椅子から立ち上がらせた。

「俺たちはこれから未踏破ダンジョンを完全攻略してランナーの歴史に名を残すんだよ。平凡支援魔術師はお呼びじゃねえんだ!」

 立ち上がらせられた上、今は足が浮いてしまってる。
 初めて会った時は身長170センチの俺様より低かったくせに、今では2メートル近い巨漢だ。

「デイル、でっかくなったなぁ…………身長とプライドが」

「貴様ぁ!なんだと!」

 血管がブチ切れるのではないかと思うくらい顔を真っ赤にさせたデイルを、リオンが肩を叩いて制止させた。
 デイルは舌打ちしながらも俺様を放り投げる。

 俺様は気付かれないように受け身を取る。フッ、我ながら完璧な受け身だ。
 とりあえず痛がっておくか。

「痛っえな。年寄りはもっと丁重に扱え」

「まだ二十代のくせに何が年寄りだ。アービィ、済まないな。私たちは上を目指さなければならない。だからお前との冒険はここまでだ」

 垂れた前髪をかき上げながらそう言うリオンの甘いマスクにやられて女給の一人が気絶した。モンスターのメスにも効けばダンジョン攻略も楽だったのにな。

「あんたの代わりはもう見つかってんのよ。バフ効果二倍の凄腕支援魔術師がね!」

 ハイドディーラーのゾークの後ろから超級魔術師のディーゼがバカにしたような目をしながら言ってきた。悪口は前に出てきて言えよ。

 しかし二倍か。そこまでのバフをかけられる支援魔術師は世界に片手で数えるほどしか居ない。超優秀な人材だ。よく引っ張ってこれたな。

 ちなみに俺様は1.3倍。その代わり、投擲術等々でモンスターを攻撃して仲間の死角を補っている。

 何ならリオン以外がひよっ子だった時、基礎は俺様が教えたから大抵の基本技術は持っている。世間一般で言う器用貧乏だ。

「そうか。そりゃ良かったなー。最後に豆知識を一つ。貴様って実は敬語としても使えるんだぜ。ハーハッハッハ」

 幻影魔術で人体ではありえない煽り顔をした俺様を見て、リオンは肩をすくめ、デイルはつばを吐き、ゾークは侮蔑の目で俺様を眺め、ディーゼは首を親指で掻き切る仕草をして酒場を後にした。
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