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追放されたぜ

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「そこで俺様は言ってやったのさ。デイル!敵はお前の尻に噛み付いてるってな」

「ギャハハ!アービィそれは傑作だ。お前は最高だな!」

 俺様の話を聞いて酒場の飲んだくれ共は足をばたつかせながら下品に笑った。
 俺様はアービィ。世界未踏破五大ダンジョンの一つ、大海のダンジョンの最進パーティーに所属している支援魔術師だ。

 パーティーには他に魔法剣士、大盾剣士、ハイドディーラー、超級魔術師、聖道魔術師が居て、前者三人が男、後者二人が女だ。

 リーダーの魔法剣士と俺様はダンジョン攻略者、略してランナーの養成学校の同期で、16から23歳までの7年間パーティーを組んでいる長い付き合いで、大抵の悩みなら俺様に相談してくるくらい心を許している。

 俺様が奴らと同じパーティーにいる理由、それは面白いからだ。
 今まで新参とバカにしてきた先輩たちの成果を一夜にして上回ったり、死と隣り合わせのギリギリを味わったり、こうして稼いだ金で昼から酒場に飲んだくれ共に奢ったり。

 俺様は俺様が面白いと思ったことに全力をかけることを人生のモットーとして生きている。
 今、面白そうだと思ってることは未踏破ダンジョンを踏破して世界中の奴らにドヤることだ。

「アービィ!」

 バン!と酒場の扉が乱暴に開かれ、大盾剣士のデイルがドスドスとやかましい足音を立てて入ってきた。
 他のパーティーメンバーもそれに続いて入ってくる。

「おう!俺様の防御力上昇魔法のお陰でモンスターにケツを噛まれても気づかなかったデイル君じゃねえか」

「ギャハハハハハ!」

 俺様がにこやかに片手を上げて挨拶すると、酒場が爆笑の渦に包まれた。
 当人のデイルは顔を真っ赤にさせて手を握りしめてプルプルと震わせている。

「この!」

「待てデイル。アービィ、話があるんだ」

「何だよリオン。畏まりやがって、俺とお前の仲じゃねえか。さっさと言えよ。気になる女でもできたか?それとも可愛いペットを飼いたいのか?」

「お前には今日限りで私達のパーティーから抜けてもらおうと思っている」
 単刀直入にリオンは俺にそう告げた。
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