【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ー

タツマゲドン

文字の大きさ
上 下
26 / 72
Genesis 2

21st Century

しおりを挟む
 西暦二〇〇〇年。

「貴方達に集まってもらったのは他でもない。人類は、地球は今、様々な危機に直面している。しかし、人類は気付いていない。自分達が自らを滅ぼしている事を。だから、我々の様な存在が人類に先立つ必要があるのだ。基礎理論から先端技術まで、分野・国籍を問わずあらゆる専門家を集めたのはその為だ。人類を救うには人類より優れた存在が必要なのだ。今ここに、「世界救済組織」を設立する」

 世界中の研究者や企業や政治家を厚め、「世界救済組織」は、当事者達以外からは一切秘密裏にされ、国際社会の裏で暗躍し始めた。





 西暦二〇二六年、世界でも有数の某科学技術開発企業が宇宙船を飛ばし、見事有人火星探査計画に成功した。

 到着から地球帰還まで起こった出来事はその企業の上層部によって一般に秘匿された。

 唯一分かった情報は、乗組員の内二名が火星で死亡、内三名が地球帰還までに死亡、内三名が帰還後二年後に死亡、計八名の乗組員全員が死亡したとの事。つまり、火星で起こった出来事を知る当事者は一切居なくなった。

 また、計画に携わった企業は、それから僅か五年で世界中でも圧倒的な経済力を有するにまで至った。火星から持ち帰った成果によるものだと思われているが、真相は不明。





 西暦二〇四五年。

「教授、始めましょう」
「うむ、観測開始だ」

 目の前にあるのは、巨大なパイプらしき円筒形のものが横たわっている。その直径は三十メートルにも達するだろう。良く見れば、円を描く様にして僅かにカーブがあるのが分かる。

「量子加速器稼働開始」

 観測者の告げ――ゴウン、と低音と振動が辺り一帯に。研究者達は驚きもせず、暫く変化を待っている。

「何か変化はないか?」
「今の所は加速中の素粒子によるエネルギー反応だけですね。まだこれからでしょう」
「ああ、ちと気が短かったかもしれんな」

 何十分と時間が経ったが、研究者達は依然として持ち場に着いたまま変化が起こるのを待っていた。

 途端に、巨大な量子加速器の放つ音が一際高い音階を奏でた。

「……来ました! 例の反応です!」
「おおっ!」

 研究者達が一斉にモニターを見る。

「やはり同じです。素粒子が存在するのは観測されている筈なのに、質量・弱い相互作用・電磁気・強い相互作用、どの力も検出されません」
「ではこれに信号パターンエネルギーを与えろ」

 操作盤の前に座る研究者が指示通りにコンピューターを操作する。

 今度は待つ必要がなかった。

 高音から低音に、量子加速器が唸った。

「素粒子の存在が消失! 代わりに熱エネルギーが検出されました!」
「よし、今回はこれで終了だ。皆良くやったぞ。今日は私の奢りだ」

 轟音は止み、研究者達はそれぞれの持ち場から離れた。

「あとは検証を重ねて結果を確かめるだけですね」
「そうだな……それ自体は存在するのに何も“無い”。だが、さっきの様に少なくとも熱エネルギーには変化する事は確かめられた。もしこれが他のエネルギーにも変化するのならば、きっと人類に繁栄をもたらしてくれるに違いない」





 西暦二〇五〇年。

「「エネリオン」が検出されました」
「では測定しろ」

 画面を見る科学者やオペレーター達。彼らが見ているのは、地表から数十万キロメートルも離れた地中から送られてくる映像だ。

 すると、画面の端に表示されたグラフの一本の数値が極端に大きく振れた。

「間違いありません、火星で発見された物質と同じ構造をしています」
「やはり地球にも存在したのか」
「しかし非常に微量です。これを集めて精練するにはどれ程手間とエネルギーが必要になる事でしょうか……」
「これが将来人類にとって膨大な利益を生み出してくれるとは思いもしないだろう」





 西暦二〇五八年。

「テストを行います」

 研究者たちが観察するのは、周囲をコンクリートと強化ガラスで囲んだ部屋の中に居る、一人の男。

 その人物は正面にあった一辺二メートルのコンクリート塊へ歩み寄る。次の瞬間、コンクリート塊は破壊音がすると同時に、その半分の体積が粉々に砕けた。

 対照的に、コンクリートより遥かに軟らかいタンパク質で出来ている筈の拳には異常が見られなかった。

 次は高速ライフルの様な尖った発砲音――同時に人物の身体が大きく横へスライド。

 男に傷は無かった。代わりに男の後方にある壁に銃弾がめり込んでいた。

 今度は人物の前に筒状の装置が現れ――先端が赤く光り、レーザーが発射された。発射口の直線上に居た人物に命中。

 しかし、人体どころかあらゆる物質を切断する筈の光の束は、男の体に穴を開けるどころか火傷痕さえ作れなかった。

「攻撃、速度、防御、エネルギー量、知覚処理、全て予想以上です」

 もはや“彼ら”に喜びなどなかった。“目的”の為、結果を出す、それだけ。





 西暦二〇六〇年、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン島。

 突如にして謎の大爆発が起き、当時ニューヨーク市の人口千五百万人に対し、八百万人が死亡した。

 何者の仕業かは不明。核反応による放射線や、対消滅によるニュートリノも検出されず、質量のエネルギー転換によるものだと結論付けられたが、結局どのようにして現象が生じたのかすら分からないまま、事件は闇のままだった。





 西暦二〇六七年。

「以上の結果から、「トランセンド・マン」の能力行使におけるエネルギー源は「エネリオン」と判明。また「ユニバーシウム」の構成物質や「エネリオン」を含む全ての素粒子やダークエネルギー、ダークマターは「インフォーミオン」によって構成されていると考えます」





 西暦二〇七〇年某日、フランス国ノルマンディー地方にて米仏連合軍が謎の勢力によって壊滅され、最終的に戦域核が使用され勢力は壊滅されたものと思われた。

 またアジア・中東での発展途上国同士での小規模な戦争が行われていた事も重なり、この事件によって間接的ではあるが世界中に波乱が呼び起こされ、後の「第三次世界大戦」が勃発した。





 西暦二一〇〇年。

「必要な条件は揃った。国家に代わって我々が人類を管理する時が来た。我々が所謂神という存在、いや、我々こそが人間や神を超える存在なのだ。人類を絶対に破滅させてはならない。必ずその時が来るまで。ここに「地球管理組織」を設立する」

 「第三次世界大戦」で滅びた全ての諸国家に代わって「地球管理組織」が人類の統制を行いはじめた。また翌年から西暦を廃止し、「地球暦」を開始した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本の運命を変えた天才少年 -戦勝国日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1940年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、美貌と天才的な頭脳で軍部を魅了し、外交・戦略・経済・思想、あらゆる分野で革命を起こしていく。 真珠湾攻撃を再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出すレイ。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、第二次世界大戦を勝利に導き、世界一の国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

【なろう450万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて450万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...