【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ー

タツマゲドン

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0-1 : Escape

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 暗い夜、低木とまばらな草原が所々に散在する乾燥地帯。空では星々が輝き、澄んだ空気である事を証明している。

 その一角、草丈一メートル程もある草地、

『始めようか』

 若く穏やかな通信機越しの声が告げた。風の音とそれによってこすれ合う葉の音がかき消す。

「支援ありがとうございます」
「いつもサンキューな、ハン。もう茂みで座り込むのも退屈だぜ」

 前者は恐らく二十代にも達していない、緊張した高い少女の声。後者は二十代後半と思われる、落ち着き飄々とした男性の声。

『ただし妨害は三十分しか持たないから気を付けてくれ』
「はい、分かってます」
「土産はあまり期待しないでくれよ。最悪カルフォルニアの砂でも持って帰る。帰ったら一杯やろうや」
『リョウ、安く言わないでくれよ。運に逃げられるよ』

 ひそめられているものの少女の張り切った声と、思慮の欠片も無い男性からの軽口。通信機越しの声は苦みを帯びた返事をする。

「じゃあ二杯」
『いや、数的な問題じゃなくて……』
「リョウさん、任務前だから集中しましょうよ」

 懲りずに冗談を吐く青年だが、遂に呆れた二人から叩かれる始末だった。

「ほら、お前のせいでかわいいアンジュちゃんにも怒られたじゃねえか」
『関係ないだろ! 君は何で何時も空気を読まないんだ?』
「というか“ちゃん”付け止めて下さいよ!」
「楽しけりゃ良いんだよ。分かった、集中すれば良いんだろ?」

 それでも懲りず、しつこくジョークを繰り返しても打開策にはならず、重なる二人に叩かれる始末。今は集中する事にしよう、とようやく気を引き締め、左手首の腕時計に右手をやる。

 隣の少女も、腕時計にある一秒毎に更新される数字を真面目に見ている。数字はもうじき日付が変わる事を教えていた。楕円形の月もほぼ南を示している。

『三十分経ったら攻撃するからそれまで脱出しておいてくれ』
「また明日。ビールかウイスキーでも用意しといてくれ。あとブリトーもだ。ソースはテリヤキ風が良いな」
「リョウさん!」

 更なる軽口が飛ぶ。隣の少女のやや抑えられた叱りと同時に、耳に当てた通信機から息が漏れる音がした。

『では改めて始めようか。三、二、一、マーク!』
「マークです!」
「おう!」

 二人は通信の掛け声と同時に、腕時計のタイマーを残り三十分に設定する。通信を切り、二つの影は草をかき分けながら、目前一キロメートル先にある闇で見えない筈の建物へ向かって、走り出した。




















 何故走っている?

 見えるのは果てしなく続く白い廊下。後ろから足音も追ってくるが、見たくない。

 ようやく辿り着いた曲がり角、“奴”に遭遇した。

 黒い上下の防弾・防刃スーツに包まれ、顔は同色のバイザーヘルメットが覆う。背中にはアサルトライフル――思考の暇もなく、黒い手がこちらを捕えようと伸びてくる。

 その腕へ左ジャブ、出鼻を挫く。今度は右ストレート。向こうが腕でブロックし、伸び切った腕を掴み引っ張る。

 ならば、左手で横へいなし、ガードを外した側頭部へ右フック。相手は真横の壁に激突。

 不意に背後から、何者かが自分を羽交い絞めにした。他の足音も聞こえる。

 咄嗟に相手のつま先を踏み付け──くぐもった呻き声。拘束する力が抜け、もう片足を軸に相手を足元の源へ振り回す。

 オレンジの火花――黒い姿が痙攣する。担いだ人体を投げ捨て、別の黒服と当たって倒れた。

 改めて見ると倒れた二人以外にもう一人、手に持った棒状の物体が差し出される――大電流を流すスタンバトンだ。

 その手首を左手で掴み止め、左フックも正面から右手で受け取り、相手からの膝蹴りを右肘でガード。そして掴んだままの相手の左手首を折り曲げた。ヘルメットの奥から苦痛を訴える狼狽。

 足音。振り向くと、三本の棒先が自分を突き刺そうと……

 遅い。

 見る。スローモーションの如く三本の腕の動きがゆっくりと判る――払い蹴りを一閃。それぞれのバトンが弾かれ、床や壁を叩く。動揺も聞こえた。

 掴んでいる敵の右腕を両手で持ち、振り回して空中に弧を描きながら後方一人へ叩き込んだ。

 残る二人が自分を挟み撃ち。右方のパンチを右手ではたき、左方の前蹴りを左手でキャッチ。

 更に右から連続拳の襲来。片手で何とか捌くが、次第に左方へ追いやられる。勝利を確信したストレートが顔面へ。

 瞬時に左手を掴んでいる左方の足を引き寄せ、頭を下げる。鈍い音──拳が左方の頬にめり込んでいた。

 逃さず、踏み出した右方の膝を左足で蹴り折る。更につま先を後ろへ、左方の顔面へ右足がヒット――吹き飛ばし、相手は仰向けのまま動かない。

 関節の痛みにひざまずいている右方の顎へ、膝の一撃。後頭部から後ろの壁に叩き付けられた相手は、だらしなく落ち込み動く気配を見せない。

 シュパッ──火薬音。同時に肩へ鋭い痛覚。

 針状の物体が血管に刺さっていた。本能的に危険を察知して引き抜く。針先からは液体が数滴垂れていた。恐らく捕獲用の麻酔弾か。

 振り向くと、銃を構えた大量の人影。黒く塗られた無機質な表面は、一切の表情と人の気配を感じさせず、人型兵士ロボットであると一目で分かった。

 慌てて廊下の曲がり角を盾に弾丸を防ぎ、直進。今度は正面に三体のロボットが待ち構えていた。次の分岐路はその丁度後ろ。

 少ない方がずっと良い。加速――向こうが銃を構える。

 見える――火薬の発砲光。

 体をスライド。銃弾は体ギリギリを掠め、後方の壁に突き刺さった。

 今度は横に広くばら撒かれた銃弾。斜め前方へ跳び込み、地面を転がる。低姿勢の自分を狙った銃弾に対して、表面積を小さくしたスライディング。

 銃弾が鋭角で床に刺さるのが横目に見える。遂に中央のロボットの足元へ滑り込み、脛を蹴った。起き上がりながら次は左方へローキック。

 二つの金属の人体が倒れる。立ったところへ右方から銃口が……

 揺らぎ。

 胸を刺そうとする銃弾――横から指で取り、無造作に捨てた。

 何故そんな事が出来た? しかし状況を打破する方が先だ。

 突進し、駆け込みの勢いを乗せたブローが腹部へ衝突——潰れる手応えと共に堅い物体の破砕音。金属製のボディは割れ、機関部が剥き出しになった。

 今度は足を引っ張られる感触。咄嗟に反対側の足を下す──引っ張られる力が消えた。足元に目をやればロボットの首からスパークが散り、動かぬ金属の人形と化していた。

 ふと、正面のロボットが殴り掛かってくる。頭を傾けながら右ブロー。

 金属の手が顔の横を通り過ぎる。同時に、右拳には脆い感触――装甲を貫通した部分が火花を散らし、がっくり倒れる。

 最後の一体が後ろから銃口を向け、トリガーを引いていた。

 体を後ろへ逸らす――鋭い感覚が胸の上を掠めた。倒れる勢いで回転し、壁に足を着け、折り曲げた膝を勢い良く伸ばす。

 反作用で突進し、ナックルで金属の顔面を抉る。着地した時にはロボットは停止していた。

 再び走り出そうとした、その時、

「お前は逃げられない」

 こちらへ向けた声だとすぐに分かった。何故なら、声の主は正面で堂々と立っているのだ。

 こちらよりも頭一個分大きい男性が一人、その引き締まっているが大柄な身体は、行く手を遮るのに十分過ぎた。横にある筈の通路の隙間さえ感じない。

 距離五メートル――認識した時には姿が消え、目の前に。

 相手の右手がぼやけた。直感的に腕を腹へ――肘に衝撃。だが威力のあまり吹き飛ばされ、背中から不時着。

 倒れたまま後ろを見れば、他の兵士やロボット達が退路を塞いでいる。掛かって来ないのを見るとあの男に一任しているらしい。

 余程あの男が強いのか……しかし他に手段は無い。

 手を着いた反動で起き上がり、次なる攻撃に備えようと身構えた。既に男の姿は、正面一メートルの距離に。

 男の両腕から繰り出される連続撃を手で抑えつつ、反撃の前蹴り。呆気なく掴まれ、相手から手刀――腰に強い衝撃。

 激痛で動けない。持ち上げられ、真横の白い壁に叩き付けられた。背中に柔らかみの無い感触――更に前からパンチの嵐が迫る。

 腕を左右に揺らし防御を試みるが、圧倒的な速さで拳がガードをすり抜け、痛みの度に背中が壁に段々めり込んでいく。

 逃げたい。

 奮い立ち、殴ろうとする拳を両手で受け取る。伸びた腕の先にある肩に、手刀を当てた。男が二歩後退。

 隙を逃さず、向こうへとストレート――停止した。

 男の腕は、こちらの腕を呆気なく掴み止めていた。外そうとも離れない。拒否を受け入れてくれない。

「お前と俺とでは根本が違う」

 掴む奴の掌が光り、輝きが自分の身体へ流れ込む──揺らぎ。その拍子に力が抜け、膝が地面に着いた。

「アンダーソン、やはり見込み違いか……」

 何か呟いているが、次第に音量が小さくなり、聞こえるのは耳鳴りだけ。

 力が入らず、地面にうつ伏せになった。瞼も重くなり、揺れる視界が黒く塞がれる。

 残る皮膚に張り付く床の感触も、やがて消えた。



 本能――逃げろ。

 何も解らない。誰も教えない。

 足を動かして白い床を蹴ろうとしても動かない。

 捕まりたくない。何故追うんだ。逃げたいのに。

 何故教えてくれないんだ。知りたいのに。

 何故何も分からないんだ。

 繰り返し――教えてくれ!




















 少年を捕えた、茶髪の三十代前半と思われる男。気絶した少年の胸倉を片手で掴み、持ち上げる。

 近くの兵士の足下に、ドサッ、と気絶した少年を落とすが、起き上がらない。

 数人が駆け寄り、一人が注射器を持っていた。針先が白い肌に突き刺さり、ピストンを中の透明な液体と共に押し下げる――少年の呼吸が弱まった。

 騒ぎに駆けつけたロボット達は何事も無く退散し、兵士や研究者、人だけが集まっていた。

 その中の一人、歩み寄って来たのは赤毛の中年の男性。

 男は彼の姿を認めると近付き、話し始める。大柄な茶髪の男性より頭一つ分は小さかった。

「中佐、捕えました。念のため起きないよう薬を打たせておきましたよ」
「ご苦労だったアレクソン君。しかし、覚醒したのか?」
「いえ、まだその途中段階に当たる所でしょう。それ程強くもありませんでしたし。お蔭で被害は少なく済みましたが……ところで、制御は効いてなかったのですか?」
「いや、『チップ』は埋め込み済みだ。まだ調整は必要だろうが」
「それにしても、何故精神があんなに不安定状態を起こし、逃走という行動を取ったのか……」
「うむ、記憶は無い筈だというのに不思議な事だ」

 アレクソンと呼ばれた男性は興味無く踵を返す。一方、中佐と呼ばれた人物の額に、一滴の冷汗が流れていた事には、誰も気づかなかった。
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