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深章
深六章 森を知り尽くす者の武器
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一日目。
先ずは現場検証だ。アイクが居ない分私がしっかり考えて、色々な事を覚えておかないと。闘技場の通路……場所は聞いてあるから問題無し。
「入っても良いかな?」
「ここは今調査中だ。人間如きを通す訳が無いだろう」
「族長さんから許可貰ってるんだ。ほら、集落のどこにでも行ける通行証」
兵士さんは顔をしかめながら、私を闘技場の奥へ通してくれた。いや~便利な物渡してくれたな~あの族長さん。まぁ当の兵士さんは「クソガキが……」とか言ってるけど。ま、気にしない方が良い事もあるよね。
聞いた話だとあの戦士さんは、首を何か鋭利な物で刎ねられていたらしい。相当強いのは良いけど、そんな事ができるような凶器を持っていれば間違い無く目立つ。それが無いという事は、魔術か何か。そして、この集落で魔術……詰まり魔道具を扱える人間は限られる。
一応魔力が現場に残っているかだけ見ておこう。時間は無駄にできないけど、今後の方針を決めるにも大事だ。多少のタイムロスにはなるけど、仕方が無い。
「ここだ。血痕は落としてあるが、飛び散っていた場所は分かるようにしてある」
「ありがとう」
一日経ってはいるけど、集中すれば力の痕跡は見える筈。ちょっと時間掛かるかな。ま、そこは許容範囲内に収めよう。うん。
だけど私は、直ぐに違和感を覚えた。私は戦士さんが横たわっていたとされる場所を見ながら、顔をしかめた。
「……血の飛び方、おかしくない?」
「よく気付いたな」
「そりゃあね」
倒れている方向と血液が飛んでいた方向が、明らかにおかしい。首が転がった場所に血液はある。間違い無く、刎ね飛ばされてここに落ちた。だけど、そこ以外の痕跡を見ると、首が飛んだ方向は、真逆でないとおかしい。後ろに首を飛ばしたとすると、手前に刃を引いているような感じだ。明らかにおかしい。
やはり魔術……という訳でもなさそうだ。確かに魔力に似た何かは感じるけど、魔力ではない。どちらかと言えば、あの青い炎のような……
「……うぐぇ」
吐き気が込み上げる。目の前で失った、自分の物ではない家族の顔と、最後を見る事すら許されなかった自分の家族の顔を思い出す。そして、それを失った瞬間も。
「……どうした。ここで吐いたら刺すぞ」
煩いなぁ。でもまぁ、お陰で少しだけ吐き気が収まった。あ~気分が悪い。
「……何でもない。集落を全体的に調べても良いよね?」
「あぁ。流石に個人の家々は許可を取れよ?」
「そこはさすがに許可取るよ」
嫌な事を思い出した。だけどまぁ、収穫はあったかな。少なくとも、魔術や魔法に似た力が使われている。エルフの魔術体系が魔力の性質を歪めた可能性だってある。一旦、厄災や女神の可能性は考えないでおこう。うん。
さ~て。次は現地の人に聞いてみようかな。先ずは死体の第一発見者に当たるかな。住所は……若干遠いな~。どうしよ。
「移動に魔術使っても良い?」
「それ位は良いだろう。ただ、攻撃系の魔術は使うなよ」
「分かってるよ」
これは普通にありがたい。じゃ、多少勝手にやるか。
「高速飛行」
この魔術なら、数秒で着く。だけどちょっと、体に負荷が掛かるんだよな。ま、大丈夫でしょ。
よし着いた。髪の毛オールバックになっちゃったけど。これ位なら普通に戻せるかな。よし。直った。
「ごめんください。えっと……リエラ?さんですか?人間のライラです」
「帰れ!人間なんぞに話す事は無い!」
門前払いって奴か。そう言われても、こっちはやる事あるんだよな。ちょっと脅す……は無いよね。真摯にお願いしとこうかな。
「昨日殺された人の遺体の第一発見者ですよね?当時の状況をお聞かせ願えますか?」
「族長から許可を貰ったのか?」
「はい。この件を一人で調べて、犯人を見つけて殺せたら、自由になれるそうです」
暫くの沈黙。多分中で何か準備してるんだろうな。私を殺す準備じゃないと良いんだけど。
「良いぞ。入れ」
「はい」
ドアの裏に隠れていた場合に備えて、ちょっと身体強化掛けておこうかな。よし。私はドアノブに手を掛け、家の中に入る。
「そう警戒せずとも、こちらから攻撃は仕掛けんし、飲み物や食べ物にも毒は盛らん。先ず座ると良い」
「失礼しました。では、お話を聞かせていただけますか?」
「あぁ。当時の状況だったか。あの時の俺は、闘技場に来てた人間に軽食と酒を届ける為に、闘技場の中の厨房と客席を行き来していたんだ」
「稼ぎは金貨十八枚分……これだけあれば一か月分は持つな」
いや~あの人間のお陰で皆興奮してる。お陰で財布の紐が緩みに緩んでる。飛ぶように売れるってのはこの事だ。まだもう少しでまた試合が始まるだろうし、さっさとしなければ。今度は少なめに……
「おっとと。今……」
何かあったような気がする。気になるし、少し見てからでも遅くは……
「っ!?」
あれは……サフラか!?何故首が……いやそれは俺の仕事じゃない!早く人を呼ばなければ!
「……そんで、兵士を呼んで……後はお前も知っての通りだ」
嘘……は吐いてないかな。この人が見たのは殺された後の出来事。時系列も矛盾は無い。
「その前後で誰か見ましたか?」
「誰も」
だよなぁ。ちょっとだけ魔法を使うかな。いや、ここでそのリスクは避けたい。この人から聞き出せるのはここまで。じゃ、帰るか。
「ありがとうございました。ではお暇させてもらいますね」
「そうか。サフラを殺した犯人、見つかると良いな」
「優しいんですね」
「お前らのお陰で、向こう一か月は食うに困らんからな」
現金な人だよ全く。さて。次は誰の家に向かおうか。
先ずは現場検証だ。アイクが居ない分私がしっかり考えて、色々な事を覚えておかないと。闘技場の通路……場所は聞いてあるから問題無し。
「入っても良いかな?」
「ここは今調査中だ。人間如きを通す訳が無いだろう」
「族長さんから許可貰ってるんだ。ほら、集落のどこにでも行ける通行証」
兵士さんは顔をしかめながら、私を闘技場の奥へ通してくれた。いや~便利な物渡してくれたな~あの族長さん。まぁ当の兵士さんは「クソガキが……」とか言ってるけど。ま、気にしない方が良い事もあるよね。
聞いた話だとあの戦士さんは、首を何か鋭利な物で刎ねられていたらしい。相当強いのは良いけど、そんな事ができるような凶器を持っていれば間違い無く目立つ。それが無いという事は、魔術か何か。そして、この集落で魔術……詰まり魔道具を扱える人間は限られる。
一応魔力が現場に残っているかだけ見ておこう。時間は無駄にできないけど、今後の方針を決めるにも大事だ。多少のタイムロスにはなるけど、仕方が無い。
「ここだ。血痕は落としてあるが、飛び散っていた場所は分かるようにしてある」
「ありがとう」
一日経ってはいるけど、集中すれば力の痕跡は見える筈。ちょっと時間掛かるかな。ま、そこは許容範囲内に収めよう。うん。
だけど私は、直ぐに違和感を覚えた。私は戦士さんが横たわっていたとされる場所を見ながら、顔をしかめた。
「……血の飛び方、おかしくない?」
「よく気付いたな」
「そりゃあね」
倒れている方向と血液が飛んでいた方向が、明らかにおかしい。首が転がった場所に血液はある。間違い無く、刎ね飛ばされてここに落ちた。だけど、そこ以外の痕跡を見ると、首が飛んだ方向は、真逆でないとおかしい。後ろに首を飛ばしたとすると、手前に刃を引いているような感じだ。明らかにおかしい。
やはり魔術……という訳でもなさそうだ。確かに魔力に似た何かは感じるけど、魔力ではない。どちらかと言えば、あの青い炎のような……
「……うぐぇ」
吐き気が込み上げる。目の前で失った、自分の物ではない家族の顔と、最後を見る事すら許されなかった自分の家族の顔を思い出す。そして、それを失った瞬間も。
「……どうした。ここで吐いたら刺すぞ」
煩いなぁ。でもまぁ、お陰で少しだけ吐き気が収まった。あ~気分が悪い。
「……何でもない。集落を全体的に調べても良いよね?」
「あぁ。流石に個人の家々は許可を取れよ?」
「そこはさすがに許可取るよ」
嫌な事を思い出した。だけどまぁ、収穫はあったかな。少なくとも、魔術や魔法に似た力が使われている。エルフの魔術体系が魔力の性質を歪めた可能性だってある。一旦、厄災や女神の可能性は考えないでおこう。うん。
さ~て。次は現地の人に聞いてみようかな。先ずは死体の第一発見者に当たるかな。住所は……若干遠いな~。どうしよ。
「移動に魔術使っても良い?」
「それ位は良いだろう。ただ、攻撃系の魔術は使うなよ」
「分かってるよ」
これは普通にありがたい。じゃ、多少勝手にやるか。
「高速飛行」
この魔術なら、数秒で着く。だけどちょっと、体に負荷が掛かるんだよな。ま、大丈夫でしょ。
よし着いた。髪の毛オールバックになっちゃったけど。これ位なら普通に戻せるかな。よし。直った。
「ごめんください。えっと……リエラ?さんですか?人間のライラです」
「帰れ!人間なんぞに話す事は無い!」
門前払いって奴か。そう言われても、こっちはやる事あるんだよな。ちょっと脅す……は無いよね。真摯にお願いしとこうかな。
「昨日殺された人の遺体の第一発見者ですよね?当時の状況をお聞かせ願えますか?」
「族長から許可を貰ったのか?」
「はい。この件を一人で調べて、犯人を見つけて殺せたら、自由になれるそうです」
暫くの沈黙。多分中で何か準備してるんだろうな。私を殺す準備じゃないと良いんだけど。
「良いぞ。入れ」
「はい」
ドアの裏に隠れていた場合に備えて、ちょっと身体強化掛けておこうかな。よし。私はドアノブに手を掛け、家の中に入る。
「そう警戒せずとも、こちらから攻撃は仕掛けんし、飲み物や食べ物にも毒は盛らん。先ず座ると良い」
「失礼しました。では、お話を聞かせていただけますか?」
「あぁ。当時の状況だったか。あの時の俺は、闘技場に来てた人間に軽食と酒を届ける為に、闘技場の中の厨房と客席を行き来していたんだ」
「稼ぎは金貨十八枚分……これだけあれば一か月分は持つな」
いや~あの人間のお陰で皆興奮してる。お陰で財布の紐が緩みに緩んでる。飛ぶように売れるってのはこの事だ。まだもう少しでまた試合が始まるだろうし、さっさとしなければ。今度は少なめに……
「おっとと。今……」
何かあったような気がする。気になるし、少し見てからでも遅くは……
「っ!?」
あれは……サフラか!?何故首が……いやそれは俺の仕事じゃない!早く人を呼ばなければ!
「……そんで、兵士を呼んで……後はお前も知っての通りだ」
嘘……は吐いてないかな。この人が見たのは殺された後の出来事。時系列も矛盾は無い。
「その前後で誰か見ましたか?」
「誰も」
だよなぁ。ちょっとだけ魔法を使うかな。いや、ここでそのリスクは避けたい。この人から聞き出せるのはここまで。じゃ、帰るか。
「ありがとうございました。ではお暇させてもらいますね」
「そうか。サフラを殺した犯人、見つかると良いな」
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