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真章
真二十六章 テロ
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日も沈み、降臨祭もそろそろ終わりかという所で、事は起きてしまった。
広場を離れて、屋台を回っていた時、広場の方で、何か大きな光と共に、爆音が響いた。
「何ですの!?」
「魔力……犯罪者組織のテロかもね」
テロか。今日は人が大勢集まる上、外に出る人間が多い。人を大勢殺すのが目的なら、今日はこの上無く適した日だ。
「こういう時は、一旦学校に戻ろう。あそこには先生方が居るし、あそこに行けば、守ってもらえるだろう」
「この場に居る皆は?」
「何度も爆発が起きてないという事は、何か要求があるという事だ。直ぐに殺される事は無い」
成程。こういう時も、アレンさんは頭が回るな。凄い人だ。今は兎に角、学校に戻る必要があるという事らしい。
私達は学校に向かって進みだした。路地裏を選ぶ事で、少し遠回りになるが、確実に進む事にした。私達は今、魔銃を持って来ていない。攻撃魔術を使う事が許されない私達は、現時点で戦う事はできない。学校にある魔銃を取って来れれば話は別だが、学校に着いたら、自分で戦うよりも先生方に任せた方が良い。私達はこういう時、何もできないのだ。
「マリア、錬金術で武器作れたりしない?」
「無理ですわね。少なくとも、道具が無いと厳しいですわ」
私達はなんとか、学校の手前まで来る事に成功した。しかし学校の敷地の周りには、大量の見張りが居る。この状況を見るに、学校も占領されているんだろう。しかし、私達も魔銃が無い事にはどうしようも無い。どうしようかな。
「どうするんですか?この状況だと、私達も何もできないですよ?」
「ワタクシ達には武器もありませんわ。どうにかしませんと」
「兎に角、今はあの小屋に行く事に専念しよう。あそこは幸い、学校から少し離れている。運が良ければ、見張りが居ないかも」
私達は更に歩き、研究会でいつもい使っている小屋を目指した。そこには誰も居ないらしく、見張りの姿は無かった。私達は中に入り、それぞれ魔銃を手に取る。
「これからどうするんですの?」
「多分奴等は、生徒の中の誰か、恐らく高位の貴族や王家の子供を人質にしているんだと思う」
「そう。僕らが魔銃を使っても、それをどうこうできるとは思えない。何か策を練る必要がある」
しかし、人質が一人とは限らない。それにバラバラに人質が配置されていた場合、そこか一つ、または三つを叩いた所で、他の所の人質が殺される。そうなっては意味が無い。そんな状況で良い案が思い付く筈も無く、私達は小屋から動けずにいた。
そうしていると、小屋の扉が突如開かれた。身構えた私達だったが、そこに居たのは、見慣れた顔だった。
「はあ……ここは安全なのですか?」
「ああ。多分ね……って、ライラさん!?」
そこに居たのは、王子様一行とアリスさんだった。
「なんで武装してここに居るんですか?答えてください」
おーおー賢者のお孫さん、そうピリピリする物じゃないぞ。まあ良いか。私達は彼等に今までの経緯を説明して、話し合う事にした。
「で?そっちは何で?」
「お前らと同じだ。学校に見張りが居たからこっちに来た」
ここに居るのは七人。この人数でも、やれる事の幅は大して変わらないだろう。さてどうした物か。
「何でも良い。策は無いのですか?王子殿下」
「そう言われても……年上のそっちが無いんじゃ、私の知識では……」
役に立たないな。まあ期待はしていない。
「こうしていても埒が空きません。私が偵察して来ます」
「ライラ!?」
「それは無謀じゃないか?いくら特待生の中でも随一の実力がある君でも……」
オイオイ。私よりも強い子が一人居ただろうよ。まあ体育には出て来ないけど。
「この中で一番ステルス性能が高いのは私です。適任でしょ」
「いや、それでは君が一人で危険に……」
私の手を掴んで来た王子サマの目を、私は軽く睨んでやる。なんだコイツは。この状況で、リスクが全く無い手段なんてある訳が無いだろう。狩りの時もそうだ。どこから何が出て来るか分からない状況で、村の人達はリスクを背負って行動していた。それと同じという事が分からないのか?
私は傲慢で独善的な王子サマに、少し本音を言ってみる事にした。
「この中で、私の命の価値が一番軽いんですよ」
「命は平等だ。平民も、貴族も、王家も」
「平等はこの世界にはありませんよ。生まれた瞬間、その人間が目指せる幸せの一番上が決まる。家柄、財力、容姿……この世で平等な事は何一つ無い。この学校で、私が学んだ事の一つです。価値は自分で決める物です。私は様々な要因から、この中で一番、死んでも大した影響が無い私の価値が低いと判断しました。だから行くんですよ」
私が王子サマから目を離すと、王子サマも手を離した。私はそのまま、小屋の扉を開ける。
「ライラ!」
不意に、後ろからマリアが話し掛けて来た。私はマリアの方に振り向き、目を合わせる。
「必ず、無事で居てね」
「賭けるのは勇者で、捨てるのは愚者だ。私はまだ、マリアと生きる日々を手放す気は無いよ」
私はそう言って、小屋の外に出て、扉を閉めた。
さあ、久し振りに自由に魔術と魔法を使える。ちょっとだけ、羽を伸ばしてやろうかな。私は飛行魔術と透明化の魔術を使った上で、自身の体から漏れる魔力を押さえ付けた。私は夜の空を飛び、学校で一番広い、大聖堂へ向かう事にした。
広場を離れて、屋台を回っていた時、広場の方で、何か大きな光と共に、爆音が響いた。
「何ですの!?」
「魔力……犯罪者組織のテロかもね」
テロか。今日は人が大勢集まる上、外に出る人間が多い。人を大勢殺すのが目的なら、今日はこの上無く適した日だ。
「こういう時は、一旦学校に戻ろう。あそこには先生方が居るし、あそこに行けば、守ってもらえるだろう」
「この場に居る皆は?」
「何度も爆発が起きてないという事は、何か要求があるという事だ。直ぐに殺される事は無い」
成程。こういう時も、アレンさんは頭が回るな。凄い人だ。今は兎に角、学校に戻る必要があるという事らしい。
私達は学校に向かって進みだした。路地裏を選ぶ事で、少し遠回りになるが、確実に進む事にした。私達は今、魔銃を持って来ていない。攻撃魔術を使う事が許されない私達は、現時点で戦う事はできない。学校にある魔銃を取って来れれば話は別だが、学校に着いたら、自分で戦うよりも先生方に任せた方が良い。私達はこういう時、何もできないのだ。
「マリア、錬金術で武器作れたりしない?」
「無理ですわね。少なくとも、道具が無いと厳しいですわ」
私達はなんとか、学校の手前まで来る事に成功した。しかし学校の敷地の周りには、大量の見張りが居る。この状況を見るに、学校も占領されているんだろう。しかし、私達も魔銃が無い事にはどうしようも無い。どうしようかな。
「どうするんですか?この状況だと、私達も何もできないですよ?」
「ワタクシ達には武器もありませんわ。どうにかしませんと」
「兎に角、今はあの小屋に行く事に専念しよう。あそこは幸い、学校から少し離れている。運が良ければ、見張りが居ないかも」
私達は更に歩き、研究会でいつもい使っている小屋を目指した。そこには誰も居ないらしく、見張りの姿は無かった。私達は中に入り、それぞれ魔銃を手に取る。
「これからどうするんですの?」
「多分奴等は、生徒の中の誰か、恐らく高位の貴族や王家の子供を人質にしているんだと思う」
「そう。僕らが魔銃を使っても、それをどうこうできるとは思えない。何か策を練る必要がある」
しかし、人質が一人とは限らない。それにバラバラに人質が配置されていた場合、そこか一つ、または三つを叩いた所で、他の所の人質が殺される。そうなっては意味が無い。そんな状況で良い案が思い付く筈も無く、私達は小屋から動けずにいた。
そうしていると、小屋の扉が突如開かれた。身構えた私達だったが、そこに居たのは、見慣れた顔だった。
「はあ……ここは安全なのですか?」
「ああ。多分ね……って、ライラさん!?」
そこに居たのは、王子様一行とアリスさんだった。
「なんで武装してここに居るんですか?答えてください」
おーおー賢者のお孫さん、そうピリピリする物じゃないぞ。まあ良いか。私達は彼等に今までの経緯を説明して、話し合う事にした。
「で?そっちは何で?」
「お前らと同じだ。学校に見張りが居たからこっちに来た」
ここに居るのは七人。この人数でも、やれる事の幅は大して変わらないだろう。さてどうした物か。
「何でも良い。策は無いのですか?王子殿下」
「そう言われても……年上のそっちが無いんじゃ、私の知識では……」
役に立たないな。まあ期待はしていない。
「こうしていても埒が空きません。私が偵察して来ます」
「ライラ!?」
「それは無謀じゃないか?いくら特待生の中でも随一の実力がある君でも……」
オイオイ。私よりも強い子が一人居ただろうよ。まあ体育には出て来ないけど。
「この中で一番ステルス性能が高いのは私です。適任でしょ」
「いや、それでは君が一人で危険に……」
私の手を掴んで来た王子サマの目を、私は軽く睨んでやる。なんだコイツは。この状況で、リスクが全く無い手段なんてある訳が無いだろう。狩りの時もそうだ。どこから何が出て来るか分からない状況で、村の人達はリスクを背負って行動していた。それと同じという事が分からないのか?
私は傲慢で独善的な王子サマに、少し本音を言ってみる事にした。
「この中で、私の命の価値が一番軽いんですよ」
「命は平等だ。平民も、貴族も、王家も」
「平等はこの世界にはありませんよ。生まれた瞬間、その人間が目指せる幸せの一番上が決まる。家柄、財力、容姿……この世で平等な事は何一つ無い。この学校で、私が学んだ事の一つです。価値は自分で決める物です。私は様々な要因から、この中で一番、死んでも大した影響が無い私の価値が低いと判断しました。だから行くんですよ」
私が王子サマから目を離すと、王子サマも手を離した。私はそのまま、小屋の扉を開ける。
「ライラ!」
不意に、後ろからマリアが話し掛けて来た。私はマリアの方に振り向き、目を合わせる。
「必ず、無事で居てね」
「賭けるのは勇者で、捨てるのは愚者だ。私はまだ、マリアと生きる日々を手放す気は無いよ」
私はそう言って、小屋の外に出て、扉を閉めた。
さあ、久し振りに自由に魔術と魔法を使える。ちょっとだけ、羽を伸ばしてやろうかな。私は飛行魔術と透明化の魔術を使った上で、自身の体から漏れる魔力を押さえ付けた。私は夜の空を飛び、学校で一番広い、大聖堂へ向かう事にした。
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