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真章
真二十一章 試運転
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魔道具を作るのに、必ず必要な肯定。それは、魔法陣を書く事だ。ここでミスをすれば、そこまでの全てが無駄になる。私はメモ用紙に書いた、自動制御可能な飛行魔術の魔法陣を、機体に書き写して行く。
魔法陣を物体に書くのには、魔力が込められた、特殊なインクを使う。魔力が込められた素材を使ったインクは、例え百年経っても落ちないらしい。魔力が込められているから、魔術が発動する。だが、失敗すればやり直しは効かない。一発勝負だ。
私は集中して、一本一本線を書く。時間はあっと言う間に過ぎる。浮遊の魔術、風を押し出す魔術、姿勢、高度を制御する魔術、その全てを書き終わる頃には、日が傾いていた。
「やっと終わった……疲れた……」
「お疲れ様、ライラ君。今日は休むかい?」
「いや、これを使って、やりたい事があるんです」
私はそう言って、魔法陣が書かれた部分にカバーを付けた。複雑な魔法陣が露出するのは危険だから、これはあった方が良い。
「君が作った設計を、アレンさんが改良した物らしいね。安全面に気を付けた為、速度は落ちる。だが、それでも早馬と同程度の速度は出る筈だ」
「あまり重い荷物は乗せられないが、人二人を乗せる余裕はある。サイズも、君やマリア君が乗れる程度にした。まあ何にせよ、君が乗って確かめてくれ」
「分かりました」
私はドラグナーに跨り、魔力を垂れ流す。もし上手くできていたら、これで浮く筈だ。そんな私の心配は不要な物でしかなく、機体は普通に、地上から少し浮いた。
「浮いた……」
「成功……だな」
そう言って感激している二人を置いて、私は周囲を走り回った。速度、向きの制御も問題無し。後は……高度かな。私は横にあるレバーを動かして、機体の高度を上げる。機体は直ぐに、アレンさん達が見上げる位まで高く浮いた。
「どこか行くのかい!?」
「はい!マリアを迎えに!」
私はそう言って、本校舎まで飛んで行った。こんな速度で飛ぶのは初めてだ。風圧を防ぐ魔術もあるからか、この速度にしては楽だ。それに気持ち良い。
早馬と同じ速度と言うだけあって、私は直ぐに、本校舎まで着いた。玄関には居ない。どうやらまだ何かやっているようだ。ちょっと探すかな。
「ライラ君かい!?」
突然下から聞こえて来た声に、私は少し驚いた。下に視線を移すと、王子様一行が口を開けたまま、こっちを見ている。何か用なのかな?私は高度を地上まで下げてから、挨拶をした。
「こんにちは、王子様。それにお友達も」
「僕らにそんな態度を取るのは、世界中探しても君だけだろうね」
「で、何か用ですか?」
私がそう聞くと、賢者のお孫さんが、心底嫌そうな顔をして寄って来た。
「『何か用か』じゃない!君、なんだこれは!学校に届けは出したのか!?」
「はい。オーガスタスさんのお陰ですかね。で、これは私達が開発した、移動用の魔道具です。安全面も十分なので、危険物ではないですよ」
王子様方は、この魔道具に興味津々のようだ。まあ、これ以上構ってやる義理も無い。私はマリアを迎えに来たのだ。こんな所で話している訳には……
「あれ?ライラ?」
お、ここに来た理由が来た。王子様方は取り敢えず放って置いて、さっさと連れて行ってしまおう。
「マリア!迎えに来ちゃった!」
「それは……完成したんですの?」
「いや、試作品だよ。普通に使えるし、ちょっと出掛けない?」
マリアは「勿論ですわ!」と言って、私の後ろに乗った。私はレバーを引いて、高度を上げた。私は速度を上げて、学校から少しづつ離れて行く。王子様の姿も直ぐに見えなくなる。
「気持ち良いですわー!」
「このままちょっと出掛けるよ!風圧はカットできるけど、捕まってて!」
私は更に速度を上げて、城下町の外へ向かう。行きたい所があるのだ。まだ日暮れには時間がある。きっと間に合う筈だ。
夕暮れも近い頃、私達は海岸まで来ていた。
「ライラ?ここには何があるんですの?」
「ここは私が、王都に来る前に来た事がある場所なんだ。恩人に連れられてね。まあ、ちょっと見ててよ」
マリアはよく分からないという顔をしながらも、待ってくれるようだった。私は持って来ていた軽食が入ったバスケットから、サンドウィッチを取り出した。
「サンドウィッチ食べる?」
「頂きますわ」
私達が暇潰ししていると、案外早く、見たいものは見れた。海岸線に沈んでいく夕日は、見事な青色に輝く。私は一年前、行商の皆と一緒に、この色の夕日を見た。リョウコさんが、「王都の近くの海岸はもっと綺麗なのよ」と言っていたので、見たいと思っていたんだ。
「綺麗ですわね……」
「この時期だけ、夕日が青色になるんだ。何が原因かとかは全く分かっていないらしいけど、『青』は神秘的な色ってされてるし、神様が何かしてるのかもね」
私がそう言うと、マリアは不思議そうな顔をしてこっちを見た。
「ライラって、よく神話とか読んでますわよね?信心深いっていうのとは違いますけど……」
「まあ、面白いしね。魔術の勉強にもなる」
マリアは少し関心してくれたようだ。まあ、嘘だけど。私が神話をよく読む理由は、こんな時に言う話じゃない。それに、綺麗な物を見ているんだ。別に良いだろう。
しかし実際、魔術は発想力でもある。神話の一部を再現するとは行かないが、神話を読んで、それを基に考えて、そして魔術を多少改造する。これだけで、ちょっとした罠になる。
夕日も沈んで、少し暗くなって来た辺りで、私達は帰る事にした。
「さ~て、そろそろ帰ろうか!」
「そう言えば、寮母さんには許可取ったんですの?遅くなるって」
「……あ」
この後、私が寮母さんに『私が連れ出した』と説明した結果、私だけ怒られた事は、言うまでも無い事なんだろう。
魔法陣を物体に書くのには、魔力が込められた、特殊なインクを使う。魔力が込められた素材を使ったインクは、例え百年経っても落ちないらしい。魔力が込められているから、魔術が発動する。だが、失敗すればやり直しは効かない。一発勝負だ。
私は集中して、一本一本線を書く。時間はあっと言う間に過ぎる。浮遊の魔術、風を押し出す魔術、姿勢、高度を制御する魔術、その全てを書き終わる頃には、日が傾いていた。
「やっと終わった……疲れた……」
「お疲れ様、ライラ君。今日は休むかい?」
「いや、これを使って、やりたい事があるんです」
私はそう言って、魔法陣が書かれた部分にカバーを付けた。複雑な魔法陣が露出するのは危険だから、これはあった方が良い。
「君が作った設計を、アレンさんが改良した物らしいね。安全面に気を付けた為、速度は落ちる。だが、それでも早馬と同程度の速度は出る筈だ」
「あまり重い荷物は乗せられないが、人二人を乗せる余裕はある。サイズも、君やマリア君が乗れる程度にした。まあ何にせよ、君が乗って確かめてくれ」
「分かりました」
私はドラグナーに跨り、魔力を垂れ流す。もし上手くできていたら、これで浮く筈だ。そんな私の心配は不要な物でしかなく、機体は普通に、地上から少し浮いた。
「浮いた……」
「成功……だな」
そう言って感激している二人を置いて、私は周囲を走り回った。速度、向きの制御も問題無し。後は……高度かな。私は横にあるレバーを動かして、機体の高度を上げる。機体は直ぐに、アレンさん達が見上げる位まで高く浮いた。
「どこか行くのかい!?」
「はい!マリアを迎えに!」
私はそう言って、本校舎まで飛んで行った。こんな速度で飛ぶのは初めてだ。風圧を防ぐ魔術もあるからか、この速度にしては楽だ。それに気持ち良い。
早馬と同じ速度と言うだけあって、私は直ぐに、本校舎まで着いた。玄関には居ない。どうやらまだ何かやっているようだ。ちょっと探すかな。
「ライラ君かい!?」
突然下から聞こえて来た声に、私は少し驚いた。下に視線を移すと、王子様一行が口を開けたまま、こっちを見ている。何か用なのかな?私は高度を地上まで下げてから、挨拶をした。
「こんにちは、王子様。それにお友達も」
「僕らにそんな態度を取るのは、世界中探しても君だけだろうね」
「で、何か用ですか?」
私がそう聞くと、賢者のお孫さんが、心底嫌そうな顔をして寄って来た。
「『何か用か』じゃない!君、なんだこれは!学校に届けは出したのか!?」
「はい。オーガスタスさんのお陰ですかね。で、これは私達が開発した、移動用の魔道具です。安全面も十分なので、危険物ではないですよ」
王子様方は、この魔道具に興味津々のようだ。まあ、これ以上構ってやる義理も無い。私はマリアを迎えに来たのだ。こんな所で話している訳には……
「あれ?ライラ?」
お、ここに来た理由が来た。王子様方は取り敢えず放って置いて、さっさと連れて行ってしまおう。
「マリア!迎えに来ちゃった!」
「それは……完成したんですの?」
「いや、試作品だよ。普通に使えるし、ちょっと出掛けない?」
マリアは「勿論ですわ!」と言って、私の後ろに乗った。私はレバーを引いて、高度を上げた。私は速度を上げて、学校から少しづつ離れて行く。王子様の姿も直ぐに見えなくなる。
「気持ち良いですわー!」
「このままちょっと出掛けるよ!風圧はカットできるけど、捕まってて!」
私は更に速度を上げて、城下町の外へ向かう。行きたい所があるのだ。まだ日暮れには時間がある。きっと間に合う筈だ。
夕暮れも近い頃、私達は海岸まで来ていた。
「ライラ?ここには何があるんですの?」
「ここは私が、王都に来る前に来た事がある場所なんだ。恩人に連れられてね。まあ、ちょっと見ててよ」
マリアはよく分からないという顔をしながらも、待ってくれるようだった。私は持って来ていた軽食が入ったバスケットから、サンドウィッチを取り出した。
「サンドウィッチ食べる?」
「頂きますわ」
私達が暇潰ししていると、案外早く、見たいものは見れた。海岸線に沈んでいく夕日は、見事な青色に輝く。私は一年前、行商の皆と一緒に、この色の夕日を見た。リョウコさんが、「王都の近くの海岸はもっと綺麗なのよ」と言っていたので、見たいと思っていたんだ。
「綺麗ですわね……」
「この時期だけ、夕日が青色になるんだ。何が原因かとかは全く分かっていないらしいけど、『青』は神秘的な色ってされてるし、神様が何かしてるのかもね」
私がそう言うと、マリアは不思議そうな顔をしてこっちを見た。
「ライラって、よく神話とか読んでますわよね?信心深いっていうのとは違いますけど……」
「まあ、面白いしね。魔術の勉強にもなる」
マリアは少し関心してくれたようだ。まあ、嘘だけど。私が神話をよく読む理由は、こんな時に言う話じゃない。それに、綺麗な物を見ているんだ。別に良いだろう。
しかし実際、魔術は発想力でもある。神話の一部を再現するとは行かないが、神話を読んで、それを基に考えて、そして魔術を多少改造する。これだけで、ちょっとした罠になる。
夕日も沈んで、少し暗くなって来た辺りで、私達は帰る事にした。
「さ~て、そろそろ帰ろうか!」
「そう言えば、寮母さんには許可取ったんですの?遅くなるって」
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