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真章
真十九章 新たな移動手段
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とある夕方。私は二人に、例の魔道具の設計図を見せていた。
「これを一人でやろうとしていたのか……」
「こんなのできるんですの?」
「一応光明は見えてる。後は、上手く作動するかと、人が乗れるサイズまで大きくできるかですね」
私が今作ろうとしているのは、魔術で浮遊し、魔術で移動する、馬のような物だ。最も、手綱は無いし、操作はレバーとかで行う訳だけど。
「今直面しているのが、これを制御できる魔法陣を書けるような素材と、それを加工する技術の問題です」
一般的に、複雑な動作をする魔道具は高価だ。その理由の一つが、素材だ。複雑な魔術を込めるには、それだけの器が要る。詰まる所、より魔力に耐えられる物質が必要だ。そしてそれらは、基本的に危険地帯にある為、高価になる。素材が高ければ、物も高くなる。
「大きさは?」
「半径ニ十センチ、厚み三センチができれば」
「加工はどうするんですの?」
「一番の問題がそこなんだよマリア」
魔力に耐えられる物質は、総じて魔術や錬金術による形状変化が起こり難い。錬金術は、魔力に因る圧を、特殊な媒体を用いるて物質に掛ける事で、物質の形状、性質を変化する物だ。魔力に耐えられるという事は、変化を促す為の魔力の圧が、より大きな物である必要がある。今の私には、そんな魔力も技術も道具も無い。
私達が頭を悩ませていると、小屋の扉が勢い良く開いた。
「どうやら行き詰っているようだな少年少女よ!」
「「「オーガスタスさん!?」」」
扉を開けたのはなんと、名高い冒険者ギルドの創設者。オーガスタスさんだった。
「なんでここに!?」
「『取引先への訪問』って体なら、誰も文句は言うまい。それに、何やら悩んでいる様子だったのでな」
やはり行動力と勇気の化身だ。凄い。私はオーガスタスさんに、ここまでの経緯と、今抱えている問題を話した。一通り聞き終えたオーガスタスさんは、少し考え込んでから、私達に話した。
「ギルドはその方面にも強いが、魔力に耐えうる物質の加工か。そうなると話しは別だ。少し帰って調べる。何か協力できそうな事があったら、その時に連絡する」
「分かりました」
うん。なんとかなりそうだが、やはり問題は魔法陣だ。一つ一つが上手く作動するかもそうだが、全て組み合わせた時、何かバグを起こさないだろうか。正直、不安だ。何があるか分からないのが一番不安だ。
だがそれも、一つ一つを上手く行かせてからにすれば良い。自動制御の基礎はなんとか習得したとは言え、それが上手く他の胴さに落とし込めるかも分からないんだ。悩むのはそれをなんとかした後だ。
私達は、それぞれの役割を確認する。まあ、魔銃の改良の時と大して変わらない。変わった事と言えば、オーガスタスさんのバックアップと、マリアが錬金術を練習し始めた結果、あまり研究会に顔を出せなくなるだろうという事だけだ。私は早速、小さな箱に魔法陣を書き込み始める。
自動制御というのは、魔術を魔術師ではなく、魔法陣で制御する技術だ。魔法陣の中に、魔術を制御する一文を入れる訳だが、それが複雑なのだ。魔術師が制御するなら、込める魔力の量を変えるだけで十分な所を、魔法陣単体で完結させようとするから複雑になる。
だが、今回はそれで良い。これはあくまでも、平民に向けた魔道具で、更に試作品だ。今はこれで良い。少しずつ改良して行けば良い話だ。
だがまあ、現時点でそれすら上手く行かない。時々誤作動を起こして、魔法陣を書きこんだ箱が、勢い良く顔にぶつかって来たりする。ついでに言うなら、偶に爆発する。
その日が終わる頃には、私はかなりボロボロになっていた。爆発で煤だらけだ。制服から作業着に着替えていたから、制服は無事だったが、それでもコレは嫌だ。早くお風呂入りたい。
「お疲れライラ君」
「お疲れ様です。設計の方は大丈夫でしたか?」
「ああ。元のデザインよりも安定した形にできそうだ。ただまあ、実際は飛ばしてみないと分からない事だらけだけどね」
私は物理学とかに詳しくないので、この魔道具の設計は、基本的にアレンさんに任せる事になった。これも適材適所という奴だ。
寮に戻る途中で、マリアと会った。どうやら、この時間まで居残りして勉強していたらしい。
「マリア!お疲れ!」
「ライラ!お疲れ様ですわ」
マリアの話に因ると、錬金術とは案の定、色々な知識が必要なようだ。それぞれの物質の特性を理解した上で、物質の混ぜ方を考えなければならない。物体の変形には、ここを抑えるのが前提にあるらしい。逆にここを完璧に理解すれば、少ない魔力でも物質の変化を作れるらしい。マリアは頭が良いし、そんな道を選ぶのは凄い事だ。
「でも、中々辛いですわ。ワタクシには魔力が極端に少ないですし、これを覚えてもどれだけやれるか……」
「魔力の総量を増やす方法もあるらしいし、今は気にしなくても良いんじゃない?なんだったら協力するよ」
どうやら、マリアは今回の制作に参加できないのが、少しばかり嫌らしい。まあ、今マリアがやっている事は将来的に大いに役立つ事だ。今は何も気にせず、自身の知識欲を満たしてもらおう。
私達は雑談しながら寮に戻った。マリアと話していると、少し安心できる。私は寮に戻ると、風呂場でシャワーを浴びてから、布団に飛び込んだ。
「これを一人でやろうとしていたのか……」
「こんなのできるんですの?」
「一応光明は見えてる。後は、上手く作動するかと、人が乗れるサイズまで大きくできるかですね」
私が今作ろうとしているのは、魔術で浮遊し、魔術で移動する、馬のような物だ。最も、手綱は無いし、操作はレバーとかで行う訳だけど。
「今直面しているのが、これを制御できる魔法陣を書けるような素材と、それを加工する技術の問題です」
一般的に、複雑な動作をする魔道具は高価だ。その理由の一つが、素材だ。複雑な魔術を込めるには、それだけの器が要る。詰まる所、より魔力に耐えられる物質が必要だ。そしてそれらは、基本的に危険地帯にある為、高価になる。素材が高ければ、物も高くなる。
「大きさは?」
「半径ニ十センチ、厚み三センチができれば」
「加工はどうするんですの?」
「一番の問題がそこなんだよマリア」
魔力に耐えられる物質は、総じて魔術や錬金術による形状変化が起こり難い。錬金術は、魔力に因る圧を、特殊な媒体を用いるて物質に掛ける事で、物質の形状、性質を変化する物だ。魔力に耐えられるという事は、変化を促す為の魔力の圧が、より大きな物である必要がある。今の私には、そんな魔力も技術も道具も無い。
私達が頭を悩ませていると、小屋の扉が勢い良く開いた。
「どうやら行き詰っているようだな少年少女よ!」
「「「オーガスタスさん!?」」」
扉を開けたのはなんと、名高い冒険者ギルドの創設者。オーガスタスさんだった。
「なんでここに!?」
「『取引先への訪問』って体なら、誰も文句は言うまい。それに、何やら悩んでいる様子だったのでな」
やはり行動力と勇気の化身だ。凄い。私はオーガスタスさんに、ここまでの経緯と、今抱えている問題を話した。一通り聞き終えたオーガスタスさんは、少し考え込んでから、私達に話した。
「ギルドはその方面にも強いが、魔力に耐えうる物質の加工か。そうなると話しは別だ。少し帰って調べる。何か協力できそうな事があったら、その時に連絡する」
「分かりました」
うん。なんとかなりそうだが、やはり問題は魔法陣だ。一つ一つが上手く作動するかもそうだが、全て組み合わせた時、何かバグを起こさないだろうか。正直、不安だ。何があるか分からないのが一番不安だ。
だがそれも、一つ一つを上手く行かせてからにすれば良い。自動制御の基礎はなんとか習得したとは言え、それが上手く他の胴さに落とし込めるかも分からないんだ。悩むのはそれをなんとかした後だ。
私達は、それぞれの役割を確認する。まあ、魔銃の改良の時と大して変わらない。変わった事と言えば、オーガスタスさんのバックアップと、マリアが錬金術を練習し始めた結果、あまり研究会に顔を出せなくなるだろうという事だけだ。私は早速、小さな箱に魔法陣を書き込み始める。
自動制御というのは、魔術を魔術師ではなく、魔法陣で制御する技術だ。魔法陣の中に、魔術を制御する一文を入れる訳だが、それが複雑なのだ。魔術師が制御するなら、込める魔力の量を変えるだけで十分な所を、魔法陣単体で完結させようとするから複雑になる。
だが、今回はそれで良い。これはあくまでも、平民に向けた魔道具で、更に試作品だ。今はこれで良い。少しずつ改良して行けば良い話だ。
だがまあ、現時点でそれすら上手く行かない。時々誤作動を起こして、魔法陣を書きこんだ箱が、勢い良く顔にぶつかって来たりする。ついでに言うなら、偶に爆発する。
その日が終わる頃には、私はかなりボロボロになっていた。爆発で煤だらけだ。制服から作業着に着替えていたから、制服は無事だったが、それでもコレは嫌だ。早くお風呂入りたい。
「お疲れライラ君」
「お疲れ様です。設計の方は大丈夫でしたか?」
「ああ。元のデザインよりも安定した形にできそうだ。ただまあ、実際は飛ばしてみないと分からない事だらけだけどね」
私は物理学とかに詳しくないので、この魔道具の設計は、基本的にアレンさんに任せる事になった。これも適材適所という奴だ。
寮に戻る途中で、マリアと会った。どうやら、この時間まで居残りして勉強していたらしい。
「マリア!お疲れ!」
「ライラ!お疲れ様ですわ」
マリアの話に因ると、錬金術とは案の定、色々な知識が必要なようだ。それぞれの物質の特性を理解した上で、物質の混ぜ方を考えなければならない。物体の変形には、ここを抑えるのが前提にあるらしい。逆にここを完璧に理解すれば、少ない魔力でも物質の変化を作れるらしい。マリアは頭が良いし、そんな道を選ぶのは凄い事だ。
「でも、中々辛いですわ。ワタクシには魔力が極端に少ないですし、これを覚えてもどれだけやれるか……」
「魔力の総量を増やす方法もあるらしいし、今は気にしなくても良いんじゃない?なんだったら協力するよ」
どうやら、マリアは今回の制作に参加できないのが、少しばかり嫌らしい。まあ、今マリアがやっている事は将来的に大いに役立つ事だ。今は何も気にせず、自身の知識欲を満たしてもらおう。
私達は雑談しながら寮に戻った。マリアと話していると、少し安心できる。私は寮に戻ると、風呂場でシャワーを浴びてから、布団に飛び込んだ。
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