謎色の空と無色の魔女

暇神

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真章

真十七章 権力者

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 翌日。私達はギルドに居た。理由は勿論、プレゼンだ。
 私達は使う物を確認し、ギルドの会議室に向かった。
「緊張しますわ……ワタクシが一番多く喋るんですわよね?」
「大丈夫。練習であんなしっかりできてたんだし、行けるって」
「準備は万端。僕とライラ君も、可能な限りのサポートはやるしね」
 私達はお互いを励まし合い、合図を待った。
 合図を受け取った私達は、会議室の扉を開けた。中には十人の、いかにも偉そうな人達が居る。ギルドの役員達だろう。若い女性も居れば、年老いた男性も居る。彼等も全員、オーガスタスさんと同じ目をしている。
「じゃ、頼んだぞ」
 オーガスタスさんは私達にそう言って、腕を組んだ。言われずともそのつもり。私は役員全員に資料を配り、アレンさんは投影機を置いて、資料に補足を加えた物を映し出す。マリアは台本を取り出し、説明を始める。
「では、ワタクシ達、王立魔術学校カラニデ所属、魔道具研究会の発表を始めます」
 魔銃の仕組みは単純だ。先ず、通常の銃とガワは同じだ。ていうか、魔獣自体は元々、使えなくなり、廃棄する予定だった銃をアレンさんが盗んで、改造した物だからだ。
 仕組みも殆ど変わっている。火薬を爆発させ、弾丸を飛ばす部分を取っ払い、魔石を装填する部分、魔法陣を刻んでいる部分を取り付けた。弾丸を真っ直ぐ飛ばす為の銃の形は、魔術を使うにも便利で、指向性にあまりリソースを使わずとも、狙い通りの方向に魔術を飛ばす事に成功している。結果、威力全振りの兵器が生まれた訳だ。
 レイバーはその仕組みを、所々簡略化している。先ず、魔石と魔法陣を殆どくっ付く程近付ける事で、魔力の導線の部分を無くした。小さい魔石で打てるのは、ここを無くす事で、魔石に込められた魔力のロスを無くしたからだ。名前は元々、『レイバス』という、古代の言葉で『簡単』という意味の言葉から来ている。名前の通りの形だ。
 それらの説明の後、資料は今後作る予定の魔銃の資料に移った。現在の技術、財力ではできそうにもないが、それでも、理論上は実現可能な物だ。
 プレゼンの手応えは、まあまあある。好奇心程度の物から、恐らく金や実用性にまで考えを回している人まで居る。オーガスタスさんは何故か誇らし気だ。まあ良いか。
 それら全ての説明も終わると、マリアは「ありがとうございました」と、プレゼンを締めた。十人の内九人からは拍手が聞こえ、恐らく良い印象を持ってもらえたのかと思った。
 しかし一人、拍手をしていなければ、良い顔もしていない人が居る。彼女は「ちょっと良いかな?」と言って立ち上がった。
 彼女は確か、エリザベス・ハンターだったか。かつては一流の魔術師として名を馳せた、紛れも無い権力者だ。
「その魔道具、聞いた所燃費が悪そうだが、大丈夫なのか?」
「魔石は変わりが存在します。魔術師はよく、自身の魔力を宝石や魔力が切れた魔石に込めますよね?この魔道具は、それらに込められた魔力でも、問題無く作動します。既に、カラニデに所属している魔術師の殆どに協力してもらっているので、これは保証できます。それだけでなく、魔法陣の燃費も良くしていますが、こちらの説明は、ライラから行います」
 おっとアドリブか。まあこの程度なら想定内。資料も存在する。私はアレンさんの方にアイコンタクトをして、壁に移している物を変えてもらった。
「ライラと申します。この魔銃は、アレンが原型を作り、私が魔法陣を改良いたしました。この資料は……貴女程の魔術師であれば分かると思いますが、魔力弾マギ・バレットの魔法陣です。威力を通常よりも上昇させた上で、燃費を通常の魔力弾マギ・バレットと遜色無い程にしています。威力は単純計算で、五十倍。威力を更に上げる事も可能ですが、燃費に関しては、問題無いと考えています」
「他の魔術ではどうなんだい?」
「現時点では、まだ試作の段階ですが、雷、炎、水、氷、木、岩の魔術で実験をしています。光、闇は資料も少なく、現時点では何とも言えません」
 私の解答を聞いても、まだ彼女は一つ、質問があるらしい。彼女はそれまでの質問とは区切るようにして、「じゃあ、最後に」と言って、質問を続けた。
「君達はどういうつもりで、この魔道具を作ったんだい?」
 質問の意味は、分かる。魔術の力は基本的に、貴族のみが独占している。あの学校もそうだ。貴族や相当な財力を持った商人の子供にしか解けないような問題が出る試験に、優れた魔術の才を持つ人間は、貴族が早々に抱き込む。貴族のみが魔術を行使し、平民は基本的に魔術を使えない。冒険者の中でも、魔術を扱える人間は少ない。『才能が集まる』とまで言われる冒険者でさえこうなのだ。力の独占は、この国では当たり前の事だ。
 しかし、この仕組みに亀裂を作りかねないのが、この魔銃だ。これを扱うのに必要なのは、魔石と、扱えるだけの技術、これを買えるだけの金、後は引き金を引く指だ。これらは基本、頑張れば手に入る。もし大量生産も始まれば、裏から手に入れる輩も出て来るかも知れない。つまり、貴族のみが使える『魔術』という特権が、揺らいでしまうのだ。それはこの国の在り方を、大きく変えてしまうかも知れない。
「その質問は、この魔道具を制作した、アレンから説明いたします」
 私はアレンさんと入れ替わるような形で、アレンさんを前に出した。冷や汗を搔いて、緊張している。だが、彼の志を聞ける機会だ。面白そうじゃないか。
 彼女は再び、質問を繰り返す。

「どういうつもりで、この魔道具を作った?」
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