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真章
真八章 金策
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それから、私達はアレンさんの手伝いをしたり話を聞く事になった。
「でだけど、さっきのはどう思う?」
「正直、凄かったです。魔道具なのにあの威力なんて、一体どんな手を使ったんですか?」
それから、アレンさんは色々な話をしてくれた。
「あの魔道具に、可能な限り威力を上げるように魔法陣を書いたんだ。燃費が悪いから実用化は先だね」
「「へ~」」
ならば、次は燃費を良くするような改造への着手かと思えば、問題はそこではなかったらしい。
「実は……今の生徒会長やら教師やらの反感を買っちゃって……金が無いんだ」
あらら。それは仕方無い……なんて言う気は無い。嫌がらせが露骨だなあお偉いさん。しかし、何がどうなればそんな事になるのだろう。お貴族様特有の派閥争いか?
「会長や一部の偉い教師が予算を横領してる所を見つけて、それが会長にバレた結果、口封じにこんな事に……」
はいクソーこの学校のお偉いさんクソー。
いやそれ生徒会長さんとその教師が悪いだろ絶対。公金の横領とかとんでもねえなオイ。
しかし、新しく人が入るとなれば、少しは金が入るだろう。そうすれば、ある程度は開発も進むだろうし、現状を打破し得る何かが出て来る筈。
「会長。自分で金や材料を用意したりは無かったんですか?」
「できる程僕は強くないし、金も無いからな~……そうだ!良い事思い付いた!」
なんだなんだ碌でもない事になりそうな予感がするぞ。
「君達に金を稼いでもらうってのは」
「「却下」」
場が凍り付いた。いやそりゃダメに決まってるでしょ。私達に、学校の外で魔術を使う事は認められてない。賞金首を取って金を貰ったり、魔物を退治して素材を売ったりもできない。第一、マリアは戦えるような力は……
いや待て。一つ方法がある。学校の外で魔術を使う事は許されてなくても、魔道具の使用は認められている。ならばその魔道具を使って、魔物を倒せば良いのだ。
「いや、それはもう考えたんだ。だけどこの魔道具、中の魔石を交換するのに時間が掛かっちゃうんだ。魔石の魔力が切れたら、コイツはもう使えない。量産もできない、魔石は高価。これじゃ、対人は無理だよ」
「そっか……マスケット銃の仕組みそのまんまなら、そうですよねえ……」
さあてどうした物か。量産する為、改良する為、魔石を買う為の金が無い、魔術を使う許可も無い。これでは、何もできない。金を稼ぐ事も、現時点では難しい。
「ワタクシ、一つアイデアがありますわ」
視線がマリアに集まる。マリアは頭が良いし、何か良いアイデアがあるのかも知れない。
「そのアイデアを武器屋に持ち込むのです。武器屋と共同開発という形にすれば、学校側も介入できませんし、お金の方もなんとかなりますわ」
成程。そうすれば金の問題は無くなる。金の問題が無くなれば、この魔道具の実用化も可能になるだろう。
「流石マリア!あったま良い~!」
「そんな褒められると照れますわ~」
「そうだね。そうと決まれば、早速町に出て、強力してくれる人を探そう。一人位は見つかるかも」
そんな感じで、私達は早速、町へと繰り出した。
しかし、現実はそう甘くない。アレンさんの魔道具は、とんでもない酷評を貰う事になった。
「正直、コストが重い。これじゃ無理だね」「こんなん需要ねえよ」「銃なんて甘えじゃ!」
散々な事を言われた私達は、もう暗くなった夜道を歩いていた。評価を真っ向から受け止めていたアレンさんの背中は、見事に丸まっている。
「うう……あんな言わなくても良いじゃないか……」
「ううん……今の性能で足りないとなれば、改良しか無いですわね……」
「でも、その金が無いと。どうしようかねえ……」
金が無いとなれば、稼ぐ以外にどうしようも無い。しかし、稼ぐ手段は無い。スポンサーも居ない。
いや、まだ手はある。この世の中、諦めなければ光は差す物だ。
「二人共、これから少し、寄り道しても良いかな?」
「え?どこか行くんですの?」
「うん。もしかしたら、少しは現状がマシになるかも」
二人は疑問を顔に浮かべながらも、私について来た。こうなったら奥の手だ。やってやるよ畜生。
町を進み、私達は目的地、冒険者ギルドに着いた。二人は、私に驚きと疑いを向けている。現時点で金を稼ぐ方法はこれしか無いのだ。少しは我慢してくれ。
建物の中に入ると、一気に酒の匂いが襲い掛かって来た。仕事終わりの冒険者達が酒盛りをしているのだ。いくら来ても、この匂いには慣れないな。後ろの二人は、あからさまにしかめっ面をしている。
「こんな所に何の用があると言うんですの?ワタクシ、もう帰りたいですわ」
「彼女の言う通りさ。冒険者として稼ぐなら、基本魔物や賞金首の討伐だ。今の僕らにそんな力は……」
「二人が考えているよりも、冒険者の仕事って多いんだよ」
そう、冒険者の仕事は多い。目立つ物だけ見れば、魔物の退治、新大陸の調査などが挙げられるが、正直な所を言うなら、冒険者は体の良い何でも屋だ。『居なくなった猫を探して』とか、『紛失物を探して』みたいな、簡単な物も結構ある。貰える金は少ないが、塵も積もれば山となると言うし、そこは数でカバーしよう。
カウンターに向かって歩いていると、柄の悪い男が話しかけて来た。
「おうライラ!一週間振りか!?」
「ラインハルトさん……また酒飲んでるんですか」
あら後ろの二人が大きな口を開けてポカンとしている。まあ知り合いがこんな柄の悪い男と親しげに話していたらこうなるか。私は二人に向き合い、彼の紹介をする。
「二人共、こちらはラインハルトさんと言います。私の友人で、結構お世話になっています」
「ラインハルトだ!学園のヒヨッコ共!よろしくな!」
「マリアです……」
「アレンです……」
二人はすっかり縮こまっているが、この人はこのデカすぎる声に慣れれば、結構良い人だ。面倒見も良いし、王都で知らない事は無いと言われる程の情報力がある。今日は彼を頼りに来たのだ。
彼は大分身長差がある私を見下ろしながら、本題に入った。
「で、ライラ。今日は何の用だ?」
「仕事を貰いに来たのと、ラインハルトさんの情報を頼りに来たの二つです」
彼は興味深そうに眼を細めて、私達を見つめた。そして、アレンさんが抱えている、魔道具が入った包みを指差した。
「仕事って事は金か。大方、その魔道具の改良資金ってとこか。情報ってのもソイツ関連だろ」
「さっすがラインハルトさん!話が早くて助かりますよ!」
それから、私はここに至るまでの経緯を、ラインハルトさんに話した。ラインハルトさんは考え込むように目を閉じて、何か思い付いたような顔をして、大声で宣言した。
「話は分かった!少し座れ!」
うん。これで何とかなりそうだ。
さあ、金稼ぎに移ろうか。
「でだけど、さっきのはどう思う?」
「正直、凄かったです。魔道具なのにあの威力なんて、一体どんな手を使ったんですか?」
それから、アレンさんは色々な話をしてくれた。
「あの魔道具に、可能な限り威力を上げるように魔法陣を書いたんだ。燃費が悪いから実用化は先だね」
「「へ~」」
ならば、次は燃費を良くするような改造への着手かと思えば、問題はそこではなかったらしい。
「実は……今の生徒会長やら教師やらの反感を買っちゃって……金が無いんだ」
あらら。それは仕方無い……なんて言う気は無い。嫌がらせが露骨だなあお偉いさん。しかし、何がどうなればそんな事になるのだろう。お貴族様特有の派閥争いか?
「会長や一部の偉い教師が予算を横領してる所を見つけて、それが会長にバレた結果、口封じにこんな事に……」
はいクソーこの学校のお偉いさんクソー。
いやそれ生徒会長さんとその教師が悪いだろ絶対。公金の横領とかとんでもねえなオイ。
しかし、新しく人が入るとなれば、少しは金が入るだろう。そうすれば、ある程度は開発も進むだろうし、現状を打破し得る何かが出て来る筈。
「会長。自分で金や材料を用意したりは無かったんですか?」
「できる程僕は強くないし、金も無いからな~……そうだ!良い事思い付いた!」
なんだなんだ碌でもない事になりそうな予感がするぞ。
「君達に金を稼いでもらうってのは」
「「却下」」
場が凍り付いた。いやそりゃダメに決まってるでしょ。私達に、学校の外で魔術を使う事は認められてない。賞金首を取って金を貰ったり、魔物を退治して素材を売ったりもできない。第一、マリアは戦えるような力は……
いや待て。一つ方法がある。学校の外で魔術を使う事は許されてなくても、魔道具の使用は認められている。ならばその魔道具を使って、魔物を倒せば良いのだ。
「いや、それはもう考えたんだ。だけどこの魔道具、中の魔石を交換するのに時間が掛かっちゃうんだ。魔石の魔力が切れたら、コイツはもう使えない。量産もできない、魔石は高価。これじゃ、対人は無理だよ」
「そっか……マスケット銃の仕組みそのまんまなら、そうですよねえ……」
さあてどうした物か。量産する為、改良する為、魔石を買う為の金が無い、魔術を使う許可も無い。これでは、何もできない。金を稼ぐ事も、現時点では難しい。
「ワタクシ、一つアイデアがありますわ」
視線がマリアに集まる。マリアは頭が良いし、何か良いアイデアがあるのかも知れない。
「そのアイデアを武器屋に持ち込むのです。武器屋と共同開発という形にすれば、学校側も介入できませんし、お金の方もなんとかなりますわ」
成程。そうすれば金の問題は無くなる。金の問題が無くなれば、この魔道具の実用化も可能になるだろう。
「流石マリア!あったま良い~!」
「そんな褒められると照れますわ~」
「そうだね。そうと決まれば、早速町に出て、強力してくれる人を探そう。一人位は見つかるかも」
そんな感じで、私達は早速、町へと繰り出した。
しかし、現実はそう甘くない。アレンさんの魔道具は、とんでもない酷評を貰う事になった。
「正直、コストが重い。これじゃ無理だね」「こんなん需要ねえよ」「銃なんて甘えじゃ!」
散々な事を言われた私達は、もう暗くなった夜道を歩いていた。評価を真っ向から受け止めていたアレンさんの背中は、見事に丸まっている。
「うう……あんな言わなくても良いじゃないか……」
「ううん……今の性能で足りないとなれば、改良しか無いですわね……」
「でも、その金が無いと。どうしようかねえ……」
金が無いとなれば、稼ぐ以外にどうしようも無い。しかし、稼ぐ手段は無い。スポンサーも居ない。
いや、まだ手はある。この世の中、諦めなければ光は差す物だ。
「二人共、これから少し、寄り道しても良いかな?」
「え?どこか行くんですの?」
「うん。もしかしたら、少しは現状がマシになるかも」
二人は疑問を顔に浮かべながらも、私について来た。こうなったら奥の手だ。やってやるよ畜生。
町を進み、私達は目的地、冒険者ギルドに着いた。二人は、私に驚きと疑いを向けている。現時点で金を稼ぐ方法はこれしか無いのだ。少しは我慢してくれ。
建物の中に入ると、一気に酒の匂いが襲い掛かって来た。仕事終わりの冒険者達が酒盛りをしているのだ。いくら来ても、この匂いには慣れないな。後ろの二人は、あからさまにしかめっ面をしている。
「こんな所に何の用があると言うんですの?ワタクシ、もう帰りたいですわ」
「彼女の言う通りさ。冒険者として稼ぐなら、基本魔物や賞金首の討伐だ。今の僕らにそんな力は……」
「二人が考えているよりも、冒険者の仕事って多いんだよ」
そう、冒険者の仕事は多い。目立つ物だけ見れば、魔物の退治、新大陸の調査などが挙げられるが、正直な所を言うなら、冒険者は体の良い何でも屋だ。『居なくなった猫を探して』とか、『紛失物を探して』みたいな、簡単な物も結構ある。貰える金は少ないが、塵も積もれば山となると言うし、そこは数でカバーしよう。
カウンターに向かって歩いていると、柄の悪い男が話しかけて来た。
「おうライラ!一週間振りか!?」
「ラインハルトさん……また酒飲んでるんですか」
あら後ろの二人が大きな口を開けてポカンとしている。まあ知り合いがこんな柄の悪い男と親しげに話していたらこうなるか。私は二人に向き合い、彼の紹介をする。
「二人共、こちらはラインハルトさんと言います。私の友人で、結構お世話になっています」
「ラインハルトだ!学園のヒヨッコ共!よろしくな!」
「マリアです……」
「アレンです……」
二人はすっかり縮こまっているが、この人はこのデカすぎる声に慣れれば、結構良い人だ。面倒見も良いし、王都で知らない事は無いと言われる程の情報力がある。今日は彼を頼りに来たのだ。
彼は大分身長差がある私を見下ろしながら、本題に入った。
「で、ライラ。今日は何の用だ?」
「仕事を貰いに来たのと、ラインハルトさんの情報を頼りに来たの二つです」
彼は興味深そうに眼を細めて、私達を見つめた。そして、アレンさんが抱えている、魔道具が入った包みを指差した。
「仕事って事は金か。大方、その魔道具の改良資金ってとこか。情報ってのもソイツ関連だろ」
「さっすがラインハルトさん!話が早くて助かりますよ!」
それから、私はここに至るまでの経緯を、ラインハルトさんに話した。ラインハルトさんは考え込むように目を閉じて、何か思い付いたような顔をして、大声で宣言した。
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