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序章
序五章 特効薬
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マニシン商会の会長が病気に罹ったという事で、一旦案内された部屋で、私達は話し合っている。
「どうするよリーダー?」
「どうするも何も、あの様子じゃあ当分は無理だろう」
「でも、金銭的にも時間的にも、この取引はしないと!」
「分かってる!でもなあ……」
確かに、病気に罹っているのでは話し合いにならない。かと言って、ここで町を出れば、次の町までの旅費が足りない。
良い案も出ず唸っていたが、部屋の扉が開いた。そして、数人の職員さんが入って来た。
「え~と、この度は、会長が病に罹ったという事で、代理で参りました。ヴィンデルド・イルシュタインです」
おお。代理の方がでてくれるとは有り難い。これだけ大きい商会なのだから、当然と言えば当然だが、どうにかなりそうだという安心感が凄い。
代理人さんは、私達に書類を渡した。どうやら取引の金額が書いてあるようだ。
しかしリーダーさんは、それを見るなり「ふざけるな!」と言って立ち上がった。
「何だこの額は!これじゃあ次の町までに金が無くなる!」
私達も、その書類を見る。そこには、仕入れ値との差額はプラスに傾いているが、とても次の町まで行ける額には思えない金額が記されている。これではリーダーさんが怒るのも仕方無い。
しかし、この金額にも事情があるようで、代理人さんは重い口を開いた。
「すみません!しかし、会長の病は少し厄介でして……治療費がかさむ上、いつまで続くかもわかりません。この額で、納得しては頂けないでしょうか」
う~ん……向こうの事情は分かったが、こっちも生活が懸かっているのだ。引き下がる訳にはいかない。
何か良い案は無い物かと、頭を抱えていると、リーダーさんが口を開いた。
「なあ、会長殿が罹った病ってのは、どんな病気なんだ?」
そういえば、そこの話は聞いてない。あそこまで大慌てになる病気なんて、どんな恐ろしい病気なんだろう。
視線が一気に代理人さんに集まる。代理人さんは、「実は……」と、少し気が進まない様子ではあったが、話してくれた。
「ダパナ病と言う、恐ろしい病なんです」
リョウコさんが息を飲む。ダパナ病とは、一部の動物や虫を通じて感染する病気で、人以外の生物では、感染していても外から確認できる症状が少なく、対策が取り辛い上、高熱が長いと一か月続き、最悪死んでしまうという、かなり有名な病気だ。
リーダーさんも、これを聞くと顔をしかめ、「そうか……」と呟いた。
「ダパナ病の薬なんて、結構な値段するって言うしな……しかし、こちらも引き下がれない……」
私の村でも、ダパナ病に罹った人が居たが、何と言っても薬が高額なのだ。それこそ、あの村で働いていては、一行に集まらないような金額だった。
しかし、ここで私がこの話し合いで初めて口を開いた。
「あの、その病気なら、なんとかなるかも知れません」
全員が私を見る。そう、私の村では対処法があった。これが本当に効けば、何とかなるかもしれない。
私の村では、この病気が出た時は、決まって飲む薬があった。果たしてその材料があるかどうか……
「私の村でこの病気が出た時、皆は決まって、マンドラゴラの粉末と、カラミリの薬草を混ぜた物を飲んでました。村の言い伝えとか、お呪い程度の物で、確実とは言えないんですけど、それを飲んだ人は、皆元気になっていました」
皆は、少し悩んだ末、やるだけやってみるという話になったそうで、代理人さんは部下の人に、急いで材料を揃えるように、指示をだしていました。
しかしこの世と言うのは、一つ問題を解決すると、また一つ問題が出て来るもので、部下の人は、青い顔をして帰って来た。
「若様!大変です!」
息を切らしている彼に、代理人さんは駆け寄った。
「どうした!?先ず落ち着いて、話してみろ!」
「やられました!コラレ商会に、マンドラゴラを買い占められてます!」
皆が、驚いた顔をしているので、気になって聞いてみると、リーダーさんが答えてくれた。
「コラレ商会ってのは、人間至上主義の奴等が集まってる所で、人間種以外はこの世の異物だとか言ってる差別主義者共だ。あの様子を見るに、法外な値段を吹っ掛けられたんだろう」
部下さんは頷き、言われた事を隠す事無く伝えた。
「奴等、まるで会長がダパナにやられたのが分かってたみたいに、グループ総出で買い占めてやがりました!そんで、「下等な獣共は、こんな草にも血眼になるのか」なんて言って……!」
「奴等お得意の嫌味だ。真に受けるな。それに、奴等は商品を買っただけだ。私達にどうこう言う権利は無い」
そんな事を言う代理人さんも、悔しそうに顔を歪めている。
どうする事もできないのかと、部屋の中に沈黙が流れる。それを破ったのは、リョウコさんだった。
「なら、私達が行きましょう」
代理人さんが、驚いた顔でこっちを見る。しかし、その人等が人間相手なら対等な商売をするなら、まだ希望はある。私達は、荷物を纏め、屋敷を出た。
玄関先には、代理人さん達が来てくれた。私達が振り返ると、彼は頭を下げて来た。
「こちらの都合に巻き込んでしまい、申し訳ありません。こちらでも病の対処法を調べますので、よろしくお願いいたします」
リーダーさんは、彼に近づき、肩に手を置いた。
「なあに、お安い御用だ。それに、俺達は商人だ。成功した暁には、相応に対価を貰うぜ」
その言葉で、代理人さんは顔を上げ、「勿論です!」と答えた。
さあ、ここからが勝負だ。目当てはマンドラゴラ。商会からの見返りを求めて、いざ行かん!
「どうするよリーダー?」
「どうするも何も、あの様子じゃあ当分は無理だろう」
「でも、金銭的にも時間的にも、この取引はしないと!」
「分かってる!でもなあ……」
確かに、病気に罹っているのでは話し合いにならない。かと言って、ここで町を出れば、次の町までの旅費が足りない。
良い案も出ず唸っていたが、部屋の扉が開いた。そして、数人の職員さんが入って来た。
「え~と、この度は、会長が病に罹ったという事で、代理で参りました。ヴィンデルド・イルシュタインです」
おお。代理の方がでてくれるとは有り難い。これだけ大きい商会なのだから、当然と言えば当然だが、どうにかなりそうだという安心感が凄い。
代理人さんは、私達に書類を渡した。どうやら取引の金額が書いてあるようだ。
しかしリーダーさんは、それを見るなり「ふざけるな!」と言って立ち上がった。
「何だこの額は!これじゃあ次の町までに金が無くなる!」
私達も、その書類を見る。そこには、仕入れ値との差額はプラスに傾いているが、とても次の町まで行ける額には思えない金額が記されている。これではリーダーさんが怒るのも仕方無い。
しかし、この金額にも事情があるようで、代理人さんは重い口を開いた。
「すみません!しかし、会長の病は少し厄介でして……治療費がかさむ上、いつまで続くかもわかりません。この額で、納得しては頂けないでしょうか」
う~ん……向こうの事情は分かったが、こっちも生活が懸かっているのだ。引き下がる訳にはいかない。
何か良い案は無い物かと、頭を抱えていると、リーダーさんが口を開いた。
「なあ、会長殿が罹った病ってのは、どんな病気なんだ?」
そういえば、そこの話は聞いてない。あそこまで大慌てになる病気なんて、どんな恐ろしい病気なんだろう。
視線が一気に代理人さんに集まる。代理人さんは、「実は……」と、少し気が進まない様子ではあったが、話してくれた。
「ダパナ病と言う、恐ろしい病なんです」
リョウコさんが息を飲む。ダパナ病とは、一部の動物や虫を通じて感染する病気で、人以外の生物では、感染していても外から確認できる症状が少なく、対策が取り辛い上、高熱が長いと一か月続き、最悪死んでしまうという、かなり有名な病気だ。
リーダーさんも、これを聞くと顔をしかめ、「そうか……」と呟いた。
「ダパナ病の薬なんて、結構な値段するって言うしな……しかし、こちらも引き下がれない……」
私の村でも、ダパナ病に罹った人が居たが、何と言っても薬が高額なのだ。それこそ、あの村で働いていては、一行に集まらないような金額だった。
しかし、ここで私がこの話し合いで初めて口を開いた。
「あの、その病気なら、なんとかなるかも知れません」
全員が私を見る。そう、私の村では対処法があった。これが本当に効けば、何とかなるかもしれない。
私の村では、この病気が出た時は、決まって飲む薬があった。果たしてその材料があるかどうか……
「私の村でこの病気が出た時、皆は決まって、マンドラゴラの粉末と、カラミリの薬草を混ぜた物を飲んでました。村の言い伝えとか、お呪い程度の物で、確実とは言えないんですけど、それを飲んだ人は、皆元気になっていました」
皆は、少し悩んだ末、やるだけやってみるという話になったそうで、代理人さんは部下の人に、急いで材料を揃えるように、指示をだしていました。
しかしこの世と言うのは、一つ問題を解決すると、また一つ問題が出て来るもので、部下の人は、青い顔をして帰って来た。
「若様!大変です!」
息を切らしている彼に、代理人さんは駆け寄った。
「どうした!?先ず落ち着いて、話してみろ!」
「やられました!コラレ商会に、マンドラゴラを買い占められてます!」
皆が、驚いた顔をしているので、気になって聞いてみると、リーダーさんが答えてくれた。
「コラレ商会ってのは、人間至上主義の奴等が集まってる所で、人間種以外はこの世の異物だとか言ってる差別主義者共だ。あの様子を見るに、法外な値段を吹っ掛けられたんだろう」
部下さんは頷き、言われた事を隠す事無く伝えた。
「奴等、まるで会長がダパナにやられたのが分かってたみたいに、グループ総出で買い占めてやがりました!そんで、「下等な獣共は、こんな草にも血眼になるのか」なんて言って……!」
「奴等お得意の嫌味だ。真に受けるな。それに、奴等は商品を買っただけだ。私達にどうこう言う権利は無い」
そんな事を言う代理人さんも、悔しそうに顔を歪めている。
どうする事もできないのかと、部屋の中に沈黙が流れる。それを破ったのは、リョウコさんだった。
「なら、私達が行きましょう」
代理人さんが、驚いた顔でこっちを見る。しかし、その人等が人間相手なら対等な商売をするなら、まだ希望はある。私達は、荷物を纏め、屋敷を出た。
玄関先には、代理人さん達が来てくれた。私達が振り返ると、彼は頭を下げて来た。
「こちらの都合に巻き込んでしまい、申し訳ありません。こちらでも病の対処法を調べますので、よろしくお願いいたします」
リーダーさんは、彼に近づき、肩に手を置いた。
「なあに、お安い御用だ。それに、俺達は商人だ。成功した暁には、相応に対価を貰うぜ」
その言葉で、代理人さんは顔を上げ、「勿論です!」と答えた。
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