謎色の空と無色の魔女

暇神

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序章

序三章 次の町へ

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 ドアミラに来た翌日、私達は次の町に出る準備をしていた。
 先ず、馬車の修理。昨日の内に、修理の業者に依頼して、修理してもらっていたらしい。リーダーさんは、「そろそろガタが来てたからな。デケェ商談も纏まった事だし、修理してもらう事にしたんだ」と言っていた。確かにこの町に来るまでの道で、馬車の所々がギシギシ言っていた。
 次に、食料などの消耗品。こっちは今日、この町にある商会と取引して、物々交換してもらうらしい。エディさんは、「金で買うより、こっちの方が早いし安い。どこかの町では採れる物が、別の町では採れない事も多い。そんなのは高くても売れるから、沢山あった方が良いんだ」と言っていた。村では見ない物を売ってたのもその為かな?
 最後に、非常用の武器や道具の新調だ。この世界には、魔物と呼ばれる生物が居る。奴等は人を襲う。襲われないように、又は襲われても死なないように、人は常に準備しなければならない。リョウコさんは、「リーダーは昔、結構腕の良い用心棒だったの。その時の知識も生かしてるから、彼は長生きしてるらしいわ」と言っていた。リーダーさんの体の傷跡は魔物につけられた物だろう。
 私は、皆について行った。馬車は新しくなって帰って来た。私が増えたからか、若干大きくなった気がする。食料は、干し肉や乾パン、ドライフルーツみたいな、保存のきく物が好ましいらしい。美味しくはないが、使い方次第で普通に食べられるようになる。武器は買い替えなかったが、手入れの道具や、魔物避けのお香は買った。このお香を焚くと、魔物が嫌う臭いが出て、魔物が寄って来なくなる。旅の必需品だ。
 全部買うと、流石に結構な額になったが、商人としてに蓄えもあるのだろう。ツケたりせず、全額その場で支払っていた。リーダーさん曰く、「借金やツケは、命取りになる。商人でも、そうでなくても」らしい。タメになるお話だ。
 荷物を箱に入れ、馬車に積み込むと、次は私を連れて役所に向かった。
「何処に行くんですか?」
「役所。ライラちゃんの身分証を作りにね」
 そういえばまだ仮だった。このままでは一か月で使えなくなるらしいので、早めに作るに越した事は無いらしい。私も何か欲しい。大人っぽくてカッコイイ。

 そして、役所についた私は、その静けさに驚いた。昨日の食事処よりも広くて、尚且つ人も多いのに、とても静かだ。
 私は窓口に連れられて、手続きをする事になった。
「ご用件は?」
「この子の身分証を作りに」
「お名前とご職業をこちらに。代筆はご利用なされますか?」
「書けるよね、ライラちゃん」
「はい!」
 私は渡された紙に、自分の名前と職業を書く。職業は、皆の行商に所属している扱いなので、一応『商人見習い』に当たるらしい。
 やっぱり文字は便利だ。どこでも使うし、何にでも使う。文字を教えてくれたリョウコさんに感謝だ。有難う。
 私は書いた紙を役員のお姉さんに渡すと、役員さんは一旦奥に引っ込み、暫くして戻って来た。
「こちらが、お客様の身分証になります」
 そう言って渡されたのは、『商人ギルド会員証』と書かれた金属の板だった。エディさんに、商人ギルドは何かと聞くと、世界中の商人が所属していて、商人のルールを作って、彼等を取り締まっているらしい。これができる前の商人は、かなりあくどい物だったらしく、借金を作らせては、無償で働かせていたらしい。人のやる事とは思えない程の悪事だ。
 この金属板が、私の身分証の代わりになるらしい。これで私の身分証ができた。これで町に出入りする時も、スムーズになるらしい。何かカッコイイ。
 窓口を出ると、売店で身分証入れを買ってもらって、そこに身分証を仕舞った。オシャレに見える。良い。大人っぽくてカッコイイ。

 役所を出る時も、私はその金属板を眺めながら歩いていた。
「ライラちゃん、前見て歩きな?」
「エディの言う通りよ。誰かとぶつかったら危ないでしょう?」
 そう言われた私は、素直にそれをポケットに仕舞った。流石に金属だから重い。ズボンの右側だけが異様に下にずれそうになる。
 宿に着くと、直ぐにチェックアウトを済ませ、荷物が盗まれていない事を確認すると、町の出口に向かって移動し始めた。
 大して遠い訳でもないので、馬車に乗っていると比較的直ぐに着く。
 門では、入る時と同じように検問を受けた。今回は身分証がある。私の力じゃないとはいえ、ちょっとだけ誇らしい。
 身分証を呈示すると、門番の人は「おっ、身分証作ってもらったのか!よかったな嬢ちゃん」と言ってくれた。嬉しい。作ってくれた役所の人に感謝だ。有難う。
 門を出ると、森への道が見えた。リーダーさんは、馬車を操ってその道を進む。
「ねえリーダーさん、次はどこに行くの?」
「次の目的地は、山だ」
 そう言って、リーダーさんは地図を広げてくれた。
「俺達が今居るのが、この海の辺り。次に向かうのは、この『アンガル火山』っていう山だ」
「『アンガル』っていうのは、古代の言葉で『怒り』という意味よ。昔、とんでもない噴火があってね……それを、『神の怒り』に例えて、この名前がついたとされているわ」
 やっぱりリョウコさんは物知りだ。私が知らない事をいくつも知っている。
 「何しに行くの?」と聞くと、リーダーさんは「そりゃ取引よ」と言った。
「この火山には、昔っから竜人族が住んでてな?海産物は食いてえが、海がねえ。そこで、俺らがこの町で仕入れた海産物を売ってるってわけだ」
 成程。さっきエディさんが言っていた、『その土地に無い物は高く売れる』という事か。
 それにしても火山か……なんか暑そうだな。

 そのまま、馬車は進んで行く。私はこの先、何に出会うのか、何を見るのか、何も知らないけど、この旅は、きっと楽しい事で溢れてる。だからきっと、大丈夫。

 皆と一緒なら、大丈夫。
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