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分かり易い旅立ち
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そんなこんなで、早一か月が過ぎた。僕らの訓練は次のステージへ移行し、魔術を交えた、実戦形式の訓練になった。
相手はこの国の兵士や騎士、魔術師の皆さんだ。実戦慣れしてるだけあって、中々勝てない。ていうか、結構ボコボコにされる。良くも悪くも、僕らはこの国の将来を担っている訳だし、当然だ。
後衛組は接近戦の対応や、魔術同士の打ち合いの訓練。前衛組は近接だけでなく、遠距離の敵や魔術への対応、魔術の使用の訓練。中々辛い。近接ならまだマシだが、遠距離となると、考える事が多い。
一方で、この世界の歴史についての授業が始まった。やる理由は、多分僕らのやる気を出させる為だろう。正直、自分以外の何かを殺すという行為に嫌悪感を抱かない人間は、少数派だと思う。その少数派ではない僕らが、魔族や獣人を殺す時、少しでも躊躇わないようにする為だろう。
勿論、夜中での情報交換も欠かしていない。どうやら最近は、この世界の貴族が煩いらしい。今の内に、勇者一行と関係を作りたいらしい。僕らはこの世界から帰るのが目的なので、それとなく躱してやり過ごす事にした。
「にしても、最近は一緒の訓練増えたね」
「そうだな。そろそろ、この城から出発しろって言われる前兆なのかね」
今夜も集まった僕らは、そんな事を相談していた。同じ訓練を受ける事が増えた僕らは、四人集まって過ごす事が多くなった。無論、恋人同士の忍さんと大聖だけで行動する所も見るけども。
訓練で言われたまま受け売りだが、魔法は昔存在していた、『魔女』と呼ばれる人達と、一部の『魔獣』という化物が使う物を指す。奇跡とも思えるような力を発揮するらしく、万が一、これを使える人物が居たら、王宮で保護されるらしい。魔術は魔法を研究し、部分的に再現できるようになった技術を指す。魔法よりも弱いらしいが、魔力さえあれば、誰でも使えるらしい。
「なーんて言ってたけど、魔法なんて、本当にあるの?」
「あの教師の話を鵜呑みにするならあるんだろうけど、今は使える存在すら確認されていないって言うし、本当は無かったりするのかもね」
女性陣は、魔法の存在に懐疑的らしい。魔術の大本が魔法なら、昔はあったのだろう。見た事が無い以上、現在もあるのかは分からないが、自分が使えない、相手も恐らく使えないのでは、気にするだけ無駄だろう。
「しかし聡一の体、ガッシリし始めたな。鍛えてるからか?」
「あのしごきに耐え続けたら、自然とこうなるさ」
「いや~俺もこの中じゃ、一番体格があると思ってたのにな~」
「大聖の体格良いのは事実だよ……凄いかっこいいし……」
はいはい恋人同士の惚気は後にしてくれ。
しかし、本当に体付きがしっかりしてきた。筋肉も付いて、腹も割れたし、体の堀が深くなった。大聖が一番体がでかいのは変わらないが、筋肉は僕の方が付いているようだ。
「元の世界に帰ったら、ボディビルダーにでもなったら?」
「嫌だよ。平和な世界に戻っても体を虐め続けるのなんて。それに、きっと長続きしないさ」
「聡一元から顔良いし、筋肉維持するだけでもモテるんじゃないかしら?」
「諒子までか!」
初日のしおらしさはどこへ行ったのか。まあ、元気を出してくれたのは凄くありがたい。元々明るい性格だし、落ち込んでいるのは見てられない。
最近は皆、冗談を言える程度には落ち着いた。この環境に慣れ始めたというのもあるだろう。ただ、僕らの胸の中には、いつか始めるであろう旅と、他の種族との戦争に対する、漠然とした不安が残っていた。
一週間後。僕らはいつものように、歴史の授業を受けていた。
「……とこのように、人類とその他の種族とでは、圧倒的なまでの差が存在し……」
この差別的かつ単純な授業にも、そろそろ飽き飽きしてきた。人類こそ至高の種族であり、その他の種族は、女神の恩恵も受けられない、下等な種族であると伝えるだけの、ただの説教。嫌になる。
この人が間違っているとは言わない。人間、子供の頃から『こうだ』と言われ続けた物は、案外簡単に信じ込む。戦時中の日本でも、戦争に対する意欲や、天皇への忠誠を高める為の教育が施されていたらしい。戦争を否定すれば『非国民』。戦争での死は『栄誉の死』。アメリカ達は『敵』。それと全く同じ事をしているだけだ。
そうは言っても、退屈は退屈。どうやって時間を潰そうか。
そうだ。魔術の授業で教わった、魔力制御の訓練法をやってみよう。体内の魔力を知覚し、それを意のままに操る。心臓から、腹、腰、足、つま先、心臓まで戻って、腕、指先。これを繰り返すと、魔力をより操れるようになるらしい。暇潰しには良い。
「こら!ソーイチ様!授業中ですよ!」
バレた。おい三人共。笑うな。
「済みません。ちょっと試したい事があって……」
「意欲があるのは結構ですが、キチンとしてください。終わった後も少し残ってくださいね!」
「は~い……」
僕は資料に目をやり、嘘が多く含まれているであろう歴史を学ぶ。こんな片方だけに都合が良い歴史、本当にある訳が無い。面倒だな。
授業も終わり、僕だけが教室に残る事になっている。
「じゃ、また後でな」
「うん。気を付けてね」
大聖と軽く挨拶を交わし、三人が教室を出ると、早速説教が始まった。
「あのですね。私は王より、皆様にこの国の歴史を教えるようにと仰せつかっているのです。勇者と言えども、そこを蔑ろにしてもらっては……」
「何の為に?」
僕が話を遮ってこう言うと、教師の女性は驚いた顔をした。
「何の為って……それは……」
「こんな歴史、史実じゃない。そうでしょ?」
女性はさらに目を見開き、目に焦りを浮かべている。
「よく見ると、矛盾だらけなんですよ。ほら、ここの一文。『亜人の軍勢は、アンガルを占拠し……』ってあるでしょ?だけどここでは、『アンガルは亜人の領地』と捉えられる事も書かれている。その間に、アンガルとか言う町が人間の国に渡ったという文は無い」
「それは……」
まさかここまで脆いとは。苛ついたから嫌がらせしてやろうと思ってやったら、まさかここまで綻びが出るとは思わなかった。この国の状態が伺えるな。
「歴史学者なんでしょ?本当は、どうなんですか?」
僕がそう尋ねると、女性は「これが史実です!」とだけ言って、教室を出てしまった。顔には、焦りと疑問の二つがあった。
僕は部屋に戻り、訓練用の服に着替えた。遅れたのだし、早く訓練場へ向かおう。
そうして部屋を出た僕は、金髪の男性と遭遇した。
「貴方は……」
「お疲れ様です、勇者様」
彼の名前はアーサー・ジョセフ・ソーラジア。この国の王子様らしい。才色兼備文武両道質実剛健。とんでもないスペックの人だ。前に訓練で戦う機会があったが、兎に角強かった。
「どうされました?もう訓練の時間ですよ?」
「ちょっと居残り命じられて……これから行くつもりです」
僕は彼が少し……いや、かなり苦手だ。自分のアレコレを見透かしているような目をしている。何と言えば良いだろうか。達観しているというか、ここではない遠くを見つめているというか。そして、自分の事は何も言わない。何かされた訳でもないが、怖い。
僕らはその後、少し話しながら、訓練場へ向かった。やはり、既に訓練は始まっていたようで、兵士の皆さんのしごきが始まっていた。王子様はそこに近付き、兵士の皆さんに挨拶した。
「やあ。精が出るね」
「殿下!」
王子様が近付くと、皆敬礼した。やっぱり王子って立場は凄いな。
「聡一!」
「大丈夫だったか!?」
「うん。ただの説教受けただけだよ」
僕ら四人が揃った事を確認すると、後ろの方で見ていたオーガスタスさんが近付いて来た。
「ようやく揃ったか!」
「はい。遅れて済みません」
「あの学者沸点低いんだ。気にせんさ。そんな事より、訓練本番だ!全員で俺に掛かって来い!」
二日前から体力作りは終わり、魔術の授業もかなり少なくなった。その代わり、より実戦に近付くようにと、四人でオーガスタスさんと戦う訓練が始まった。オーガスタスさんはバカみたいに強い。僕らは何度も作戦を練り、その度に打ち破られた。しかも怪我を負わせないようなやり方で。凄い。
しかし、今日は若干違った。オーガスタスさんが、初めて僕らに傷を負わせた。少しづつ動けるようにはなっていたが、今日の変化は急だった。
僕と諒子はその時、二人同時に切り掛かった。いつもなら刃を素手で受け止めるオーガスタスさんが、その時は剣を弾いた。結果、僕ら二人は体勢を崩し、肘を擦り剥いた。
まあ、それ以降はいつも通り、ただボコられるだけで終わった。
訓練後。僕ら四人は、「確認したい事がある」と言われ、オーガスタスさんに呼び出された。今日はよく居残りになるな。
城の一室に集まった僕らに、オーガスタスさんは話し始めた。
「今日、何か違和感は感じたか?」
違和感。今日は、オーガスタスさんが、初めて僕らの攻撃を弾いた。それに加え、言われてみれば程度の違いだが、後衛二人の魔法の発動が早かった気がする。攻撃の間隔が狭かった。
「自分で言うのも変ですが、変に良く動けていました」
「そう。原因に一つ、思い当たる部分があるのです。皆さん。能力を見せてもらえませんか?」
僕らは、言われた通りにした。すると、自分達の能力に、若干の変化が見られた事が分かった。
『荒木聡一 十八歳 男性
階位 一
身長 百七十三センチ
体重 七十九キロ
技能 剣術・一 徒手空拳・一
加護 勇者』
他の皆も、技能の欄に、いくつかの項目が増えていた。諒子は『剣術・二』、忍さんは『魔術《治》・一』、大聖は『魔術《火》・二』、『魔術《木》・一』が増えていた。
「これは何なんです?」
「この能力開示という魔術……いや、『魔法』に近い物は、勇者を含めた、異世界から来た人間にのみ見られる物とされている。そのままお前達の状態、能力を示すコレは、現代魔術でも再現できていない」
「いやそんな事じゃなく」
オーガスタスさんが言うには、これ自体とんでもない物だったらしいが、正直そこには興味が無い。問題は何故この技能の所に、様々な物が増えているのかだ。それをオーガスタスさんに聞くと、オーガスタスさんは少し唸って、答えた。
「正直、良く分からないのが現状。だが、俺はそのまま受け取って良いと思っている。技能を覚えれば、自身の行動に補助が掛かるのだろう。そして、補助が掛かる行動が、そこに示される」
いやマジでゲームじゃん。『スキル』なんて単語だけでゲームっぽいのに、そんな性能あったらそのまんまゲームじゃん。
しかし、そうならかなり便利だ。技能の横にある数字は、恐らく熟練度を示す物だろう。それぞれが担当している武器や魔術の数字が高いのが根拠だ。もしこれが合っているなら、使い続ければ、さらに高い効果が望めるのではないだろうか。
「これを手に入れる条件ってあるんですか?」
「過去の異世界人の証言だと、いつの間にか増えてた事が多いらしい。同じ事をやり続けると、それが技能として現れるのだろう」
ふむ。やはり練習あるのみか。楽して技能を増やせれば、こんなに嬉しい事は無いんだけどな。まあそんな上手くは行かないか。
「話は以上だ。各自、部屋に戻って休んでくれ。明日から、その技能に対する検証を行う。厳しく行くつもりだから、体をしっかり休めとけ」
それを聞いた僕らは、内心『嫌だな』と思ったのだった。
夜。情報交換の時間だ。まあ、今日は四人固まっていたので、交換する物も無い訳だが。
「取り敢えず、『神』と呼べるようなのが居るのは確定かな」
「俺もそう思う」
「私も」
理由は、能力開示と技能の二つだ。正直な所、単語だけでは断定できなかったが、この二つの存在、そしてオーガスタスさんの考察で、ほぼ確定した。
先ず、ステータスの中に、体重や身長なんかが入っているのがおかしい。他人のそれを正確に知っている人間なんて居ないだろう。そして、技能の獲得条件の曖昧さ。『お天道様が見ている』なんて言う位だし、僕らをどこかから監視している、『神』のような物が居てると考えるのが自然だ。
「だけどさ、『神』が居るのが分かって、それでどうするの?もし加護が『神官』とかならまだ希望はあるけど、私は『剣聖』で、忍は『聖女』よ?一体何の役に立つのよ」
「あの王様は『女神』と言った。神があるなら宗教がある。宗教があるなら神事がある。希望を持てるとすれば、そこだね。もし『神』と接触できれば、元の世界に帰れるかも知れない」
僕らの目標は、あくまでも『元の世界に帰る』事だ。この世界で戦争が起きていても、僕らが関与する義務は無い訳だし、できるなら他人を殺したくない。それが叶った上で帰れるなら、喜んでそうしよう。
「『神』ねえ……宗教とか馬鹿にしてたけど、案外そうでもねえな。もうちょっと信心深くなろうと思うぜ」
「特定の宗教を信じるみたいなの、日本人は少なそうだしね。御利益がありそうだし、大聖がそうするなら、私もやろうかな」
しかし、一つ疑問……と言うより、不安が残る。『女神』は、僕らがこの世界に来る時、力を与えた。もし、僕らを元の世界に帰せない理由があるのだとしたら、話は相当厄介で、複雑になりそうだ。
『魔王』、『神』の存在、三つの種族が戦争をする理由、技能。僕らは何から何まで、この世界について知らない。だから、こうして希望を見つけようとするんだ。
翌日。僕らはまた、オーガスタスさんにしごかれている。
後衛組が僕ら前衛組のサポートをする形を試した。大聖が魔術で動きを封じながら攻撃、忍さんが僕ら前衛組の体を回復し続ける事で、出せる力を底上げして、僕と諒子の前衛二人で畳み掛ける。こんな感じの作戦。
しかし、こんな付け焼刃の作戦が通じる訳も無く、僕らは皆して投げ飛ばされた。無論、怪我一つ付けずに。その度、僕らは次の作戦を考える。
「いや~オーガスタスさん強すぎでしょ」
「どうする?次の作戦」
「プランAからプランFまで全部つぶされちゃ、私らに今できる事も無いでしょ」
「バフもこれ以上は厳しいよ。どうする?」
トライアンドエラーを繰り返す。それだけの事でも、友人と長く続けると、少し楽しかったりする。僕らの作戦が敗れる度、「これでも駄目か」と、その状況を楽しむ自分が居る。
「木の魔術で出したのを燃やすのは?」
「無理。試したけど、何故か燃えない。実物じゃないからかも」
魔術の知識、戦闘経験、実力。その全てで劣る僕らは、この一日を費やして尚、オーガスタスさんに一太刀も与えられていない。魔術無しの相手にだ。兵士や騎士の皆さんでさえ魔術を使っていたのに、それが無い。それでも、これなのだ。
僕らも、自主的に体力作りに励んでいるのだ。長時間の激しい運動にも慣れて来ているし、一部の兵士さんには勝てるようになった。それでも、オーガスタスさんには届かない。
こんなに強い人が居る状態で、何故前線に向かわせないのだろうか。それだけ魔王が強いのか、僕ら勇者が魔王を倒す事に意味があるのか、それとも王侯貴族の企みか。ただ何となく、オーガスタスさんに勝てない限り、僕らは魔王達には勝てない事だけは分かる。
その日は何も進展が無く、ただオーガスタスさんとの力の差を感じただけで終わった。
夜。情報交換の時間。僕らは、今日手に入れた情報について、意見を出し合う事にした。というのも、忍さんが神について、有力な情報を手に入れたと言うのだ。
「降臨祭?」
「そう。この世界に初めて神が降臨したってされる日に、毎年一回だけ行われるお祭り。それに関して、一個神話を見つけたんだ」
忍さんはそう言って、一冊の本を机の上に置いた。読めない。当然だ。異国とかそういう次元の話じゃない。異世界の言語なんだから、それが当然の筈だ。
だが、何が書いてあるかは読める。見た事も無い文字、聞いた事も無い言葉。それなのに、意味だけ理解できる。これも、『女神の加護』なのだろうか。
「『神はこの世を二等分し、それぞれに役割を持たせた。人類にはこの世の現象の解明、亜人には魔法の研究を』」
「これって……」
『魔族』についての言及が成されていない。それに、二等分という事は、人類と亜人以外の種族は存在していない事になる。なら、魔族とはどういう存在なのか。
そう考える僕らに、忍さんは挿絵を見せた。
「これを見て。この白い球が、多分神様。右側の人達が人類で、左側のが亜人。人類は性別と年代で分かれてるけど、亜人は体の特徴で分けてるんだと思う。これが長耳族でこれが小人族、それでこれが半龍族。でも最後のこれ、なんだと思う?」
あの女教師の話では、この世界に存在する亜人は三種類。長耳族、小人族、|半龍族。今までに絶滅した種族は存在しないとされているので、この四つ目の種族は、現在も生きている事になる。
「もしかして……魔族?」
「多分、そう。この国の人達は、魔族と亜人を分けてるけど、元は一つの括りになってる筈なの。もしかしたら、亜人の国と魔族の国も、人類側が言ってるだけなのかも」
「なら、なんでそんな事を?忍の言う事を否定するつもりは無いが、それをやる事のメリットが無いんじゃないか?」
「私もそう思う。今は両方敵で、分けても分けなくても変わらないでしょ?」
分けるからには理由がある。人間から離れた見た目をしているという点では、半龍族の方を分ける筈だ。なら、どこが境目になってるんだ?
「他に面白い事は?」
「神話には、勇者と亜人王の話が出て来るの。そこでは、亜人王と勇者は相打ちで死んじゃうんだ」
「ちょっと見せて」
そのページを見ると、かなり抽象化された人間と魔族が戦っている絵が書かれていた。僕の加護の名前が『勇者』で、それは女神に与えられた物だと考えると、過去にも、勇者と『王』の名を関する何かの戦いはあったらしい。魔王と勇者という二つの役名は、この神話から来ているのかも知れない。
しかし、なぜ魔族が王なのに、名を『亜人王』としたのだろうか。『魔王』の元がコレなら、『亜人王』である筈だ。亜人と魔族が分かれたから『魔王』になったのだろうか。なら、何故別れたのだろうか。
「魔王と勇者は、以前も存在していたとしか分からないわね。亜人の代表と人間の代表の対決っていう構図に、意味があるのかも」
「いや、もしそうなら両方の王様が来る。人類の代表が異世界から来た余所者なんて、かなりおかしい」
「だーもう分からん!」
亜人王についても、ただ『亜人の王』としか表されていない。勇者は『異界の若者』だけ。これでは、今の僕らと同じ構図が、少なくとも神話には存在しているとしか言えない。そもそも亜人の存在でさえもよく分からないのに、それについて考えようなんて、中々おかしいかも知れない。
この両者の争いの原因も、『派閥争い』としか書かれていない。生存競争の中での衝突は珍しくもないが、これでは考察のしようが無い。
それに、『神話』という題の筈なのに、神が殆ど出て来ないのも不自然だ。これでは、神への知識の手に入れようが無い。
「これだけじゃ何も言えない。これからは、神話についてを調べよう」
三か月後。昨日も僕らは、オーガスタスさんと訓練をしていた。
この三か月、僕らの技能の熟練度も上がり、少しづつ、オーガスタスさんに近付いて来た。二か月前、魔術無しのオーガスタスさんに攻撃を当てられた為、それからはオーガスタスさんも魔術を使っている。
オーガスタスさんの強化された身体能力に加え、魔術まで使われるようになった。僕らは毎日ボコられては、『地球に帰る為』と、自身を奮い立たせた。
そして昨日、僕らはまた、オーガスタスさんに攻撃を当てた。と言っても、木剣がかすっただけだが。
そして今日。僕らは王様に呼び出された。前回王様と話した、つまりこの世界に来た日から、既に四か月が経っている。用件は察しがついた。
「勇者達よ。訓練の最終目標を達成し、遂に旅立ちの時が来た。今宵は宴だ。存分に楽しんでくれ」
どうやら、王様は僕らの出発を祝うパーティーを開くらしい。人類の敵を殺す勇者の出発とは、かなり大きな意味を持つ物らしく、貴族を招いて、かなり大きな催しになる予定との事だ。
その晩。僕らはお城の使用人さん達に、正装に着替えさせられた。かなり窮屈な上、そこそこ派手だ。早く脱ぎたいが、我慢だ。
「聡一お前、けっこうキマってんな」
「大聖こそ。かっこいいよ」
「あんがとよ。さあ、女子陣を迎えに行くぞ」
大聖の顔が結構緩んでる。忍さんの正装が楽しみなんだな。お熱いカップルで羨ましいよ。
僕らは女子陣との合流場所に急ぎ、二人を迎えに行く。そして女子陣の正装を見た僕らは、思わず息を飲んだ。
「綺麗だなあ」
「ああ。凄く分かる」
「ちょっと大聖、こんな所で……」
はいはい若い若い。
しかし、実際綺麗になっている。流石に金が掛かっている。戦時中にコレとは、いつか国民の不満が爆発するのではないだろうか。「自分らはこんなに大変なのに、貴族は贅沢三昧か」みたいな。
しかし、それは僕らが気にしてどうこうなる問題じゃない。宴会場に行くとしよう。
宴会場に着くと、僕らは目を見張った。とても戦争をしている国とは思えない程、煌びやかな部屋だった。人も料理も多い。まるで『タイタニック』のワンシーンだ。
僕らは事前に言われた通り、王様達の居る所まで行って、王様達に挨拶した。正直、言われた事をそのまま繰り返しただけだったので、どんな事を言ったか、まるで覚えていない。
「は~緊張したわね」
「忍、ヒール大丈夫か?」
「ちょっと辛い。けど大丈夫」
「じゃあ、料理でも食べて休もうか。まあ、そんな暇無いかもだけど……」
少し横を見ると、貴族が目を光らせている。ああヤダヤダ。怖い大人の覇権争いに巻き込まれたくないね。
僕らはその人達を適当にあしらいながら、なんとかパーティーをやり過ごした。途中、まだ十歳程度の子を差し出そうとして来た人も居て、ちょっと引いた。
パーティーも終わりに近づいて来た頃、僕らは王様に呼び出された。どうやら、明日についての話らしい。
「大分疲れているようだな勇者たちよ」
「ええすみません。こういう場に成れてなくて」
「まあ良い。明日は平民へ向けてパレードを行う。戦闘用の服に着替えて、昼頃に再び集まってくれ」
『またバカ騒ぎか』という言葉を飲み込み、僕は「はい」と言った。
その夜。最後の情報交換会が開かれた。まあ、明日からこの場を設ける必要が無くなるだけの話だが。
「この三か月、神話について調べてみたけど、『勇者』、『魔王』、『亜人王』、『女神』についての情報は、殆ど無かったね」
「ただまあ、『勇者と魔王』という構図は、何か意味がありそうだよな」
「わざわざ勇者を異世界から呼ぶ理由も、魔王がそうしない理由も無いだろうしね」
「その意味が分からないんじゃ、どうにもならないのよね~」
「「「全く持ってその通り」」」
しかし、どの資料を見ても、全くと言って良い程、先程の四つのワードについての話が無いのだ。結局の所、僕らは三か月前のあの日から、少しも考察が進んでいない。
「ただ、一応目指せる場所はあるよな」
「うん。二か月後、国全体を挙げての神事、『降臨祭』がある。ここなら、女神と接触できるかも」
「二か月……遠いねえ……」
「これしか手掛かりが無いんだから、我慢しなさい」
仰る通り。僕らはそれを目指すしか無いんだ。文句を言っても変わらない。僕らはそこを目指すしか無いんだ。
まあ、そう考えると、この時期での出発も存外悪くない。この城に居る間、僕らは一度も外に出してもらえなかった。恐らくではあるが、この城に居る限り外には出れない。無論、二か月後の神事にも行けない。ならば、今出れた方が良い。
「だけどよ。俺ら今まで、一度もオーガスタスさんに勝ててねえよな。こんな状態で出て良いのか?」
「そこが不安だ。だけど、ここの『階位』の部分が、僕は気になるんだ」
ゲームなんかだと、レベルが上がれば能力も上がる。『外で経験を積みながら行け』という事なのかも知れないけど、ここが上がるとどうなるか、王様達は知っているから、僕らを出発させるんじゃないだろうか。この世界には『魔物』とやらが居るらしい。それを倒せばレベルが上がって、やれる事も増えるという事なのではないだろうか。
「確かにゲームみたいな世界だけど、そんな事あるかしら?」
「そうだよね。私もそう思うよ」
「僕もそう思うけど、正直、ここに変化が無いのが気になるんだ。ここの変化が、何か僕らに影響があるんじゃないだろうか。まあただの推論だし、あんま深く考えない方が良いかな」
「そうだな。一先ず、俺らは明日出る。その後の事は、その後考えよう」
「「「賛成」」」
今は、何も分からない。分からない事をどうとか言えない。だから、少しは前向きになろう。
それからは、元の世界に戻ったら何をするかを話した。『白米をたらふく食べる』とか、『母親に感謝を伝える』とか、そんな下らない事を話した。皆、一日目よりも生き生きをして見えた。
その後、大聖と忍さんは、自分達の部屋に戻った。部屋には、僕と諒子の二人だけが残った。
「こうして二人きりって、こっちに来た日以来だね」
「そうね。あの時は不安でいっぱいだったわ」
「そうそう。ちょっと泣いてたよね」
「それを掘り返さないでよ」
怒っているような口調と裏腹に、その顔は笑っていた。その顔には、自信と不安が入り混じって見えた。
僕はあの日と同じように、ベッドに寝転がった。一つ違った事があるとするなら、諒子も、僕のベッドに横になった事だった。そして諒子は、あの日僕に言った言葉を、そのまま僕に繰り返す。
「本当に、帰れるのかな」
僕はあの日と変わらない、面白味も希望も無い返事をする。
「分からない。あれから四か月経つけど、何も変わってない」
諒子は「そっか」と言って、そのまま黙った。部屋に、心地良い静寂が漂う。
それから暫くして、僕は諒子に、一つの質問をした。
「帰ったとして、行きたい場所、やりたい事が無かったら、そしたら、どうするの?」
そう言った僕を、諒子は見た。僕が横目でそれを見ている事に気付くと、諒子は再び視線を天井へ戻し、ゆっくり答える。
「皆の所に行く。何もしたくなくても、皆と居れば、自然と元気が出る気がするから」
今度は、僕が黙る番だった。再び、部屋に静寂が漂う。
次に話し始めたのは、諒子だった。
「あの日、ここに来た日、私最初は、死んでやろうかなんて考えてたのよ」
僕は、さっき諒子がやった動作を、そのままなぞった。気丈に見える彼女が『死にたい』と思う事に、僕は自然と、安堵していた。
「諒子にも、そういう部分があるんだね」
「そりゃあるわよ。怖くて、不安で、逃げたくても逃げれない。追い詰められてたんでしょうね」
僕らはお互いの顔を見ないまま、天井に向かって笑った。笑い話ではない筈なのに、少し笑ってみたい気分だった。
「でもね、聡一が抱きしめてくれて、ちょっと不安が和らいだの。だから、生きてるのよ」
「そりゃ光栄。僕は「あれで良かったのかな」って不安だったよ」
「ふふ。命の恩人様でも、しっかり人間なのね」
「なにせ、彼女居ない歴イコール年齢な物でね。女性の扱いなんて、全く分からないんだ」
僕がそう言うと、諒子は僕の上に覆い被さった。自然と、視線がかち合う。僕らは、少し言葉を交わす。
「だったら、私がその記録、閉じちゃって良いかな」
「良いのかい?」
「冗談で言うような人じゃない事位、分かるでしょ?」
僕は諒子の首に手を回し、諒子と僕の位置を逆転させる。僕はそのまま、彼女の引き締まった肢体を抱きしめた。
翌日。僕らの出発を祝うパレードは、それはもう盛大に行われた。戦争で大勢人間を殺すような奴が英雄とは、中々におかしい話だ。
ともあれ、これで城を出られた。目指すは我が家。僕らの長い旅は、こうして始まった。
相手はこの国の兵士や騎士、魔術師の皆さんだ。実戦慣れしてるだけあって、中々勝てない。ていうか、結構ボコボコにされる。良くも悪くも、僕らはこの国の将来を担っている訳だし、当然だ。
後衛組は接近戦の対応や、魔術同士の打ち合いの訓練。前衛組は近接だけでなく、遠距離の敵や魔術への対応、魔術の使用の訓練。中々辛い。近接ならまだマシだが、遠距離となると、考える事が多い。
一方で、この世界の歴史についての授業が始まった。やる理由は、多分僕らのやる気を出させる為だろう。正直、自分以外の何かを殺すという行為に嫌悪感を抱かない人間は、少数派だと思う。その少数派ではない僕らが、魔族や獣人を殺す時、少しでも躊躇わないようにする為だろう。
勿論、夜中での情報交換も欠かしていない。どうやら最近は、この世界の貴族が煩いらしい。今の内に、勇者一行と関係を作りたいらしい。僕らはこの世界から帰るのが目的なので、それとなく躱してやり過ごす事にした。
「にしても、最近は一緒の訓練増えたね」
「そうだな。そろそろ、この城から出発しろって言われる前兆なのかね」
今夜も集まった僕らは、そんな事を相談していた。同じ訓練を受ける事が増えた僕らは、四人集まって過ごす事が多くなった。無論、恋人同士の忍さんと大聖だけで行動する所も見るけども。
訓練で言われたまま受け売りだが、魔法は昔存在していた、『魔女』と呼ばれる人達と、一部の『魔獣』という化物が使う物を指す。奇跡とも思えるような力を発揮するらしく、万が一、これを使える人物が居たら、王宮で保護されるらしい。魔術は魔法を研究し、部分的に再現できるようになった技術を指す。魔法よりも弱いらしいが、魔力さえあれば、誰でも使えるらしい。
「なーんて言ってたけど、魔法なんて、本当にあるの?」
「あの教師の話を鵜呑みにするならあるんだろうけど、今は使える存在すら確認されていないって言うし、本当は無かったりするのかもね」
女性陣は、魔法の存在に懐疑的らしい。魔術の大本が魔法なら、昔はあったのだろう。見た事が無い以上、現在もあるのかは分からないが、自分が使えない、相手も恐らく使えないのでは、気にするだけ無駄だろう。
「しかし聡一の体、ガッシリし始めたな。鍛えてるからか?」
「あのしごきに耐え続けたら、自然とこうなるさ」
「いや~俺もこの中じゃ、一番体格があると思ってたのにな~」
「大聖の体格良いのは事実だよ……凄いかっこいいし……」
はいはい恋人同士の惚気は後にしてくれ。
しかし、本当に体付きがしっかりしてきた。筋肉も付いて、腹も割れたし、体の堀が深くなった。大聖が一番体がでかいのは変わらないが、筋肉は僕の方が付いているようだ。
「元の世界に帰ったら、ボディビルダーにでもなったら?」
「嫌だよ。平和な世界に戻っても体を虐め続けるのなんて。それに、きっと長続きしないさ」
「聡一元から顔良いし、筋肉維持するだけでもモテるんじゃないかしら?」
「諒子までか!」
初日のしおらしさはどこへ行ったのか。まあ、元気を出してくれたのは凄くありがたい。元々明るい性格だし、落ち込んでいるのは見てられない。
最近は皆、冗談を言える程度には落ち着いた。この環境に慣れ始めたというのもあるだろう。ただ、僕らの胸の中には、いつか始めるであろう旅と、他の種族との戦争に対する、漠然とした不安が残っていた。
一週間後。僕らはいつものように、歴史の授業を受けていた。
「……とこのように、人類とその他の種族とでは、圧倒的なまでの差が存在し……」
この差別的かつ単純な授業にも、そろそろ飽き飽きしてきた。人類こそ至高の種族であり、その他の種族は、女神の恩恵も受けられない、下等な種族であると伝えるだけの、ただの説教。嫌になる。
この人が間違っているとは言わない。人間、子供の頃から『こうだ』と言われ続けた物は、案外簡単に信じ込む。戦時中の日本でも、戦争に対する意欲や、天皇への忠誠を高める為の教育が施されていたらしい。戦争を否定すれば『非国民』。戦争での死は『栄誉の死』。アメリカ達は『敵』。それと全く同じ事をしているだけだ。
そうは言っても、退屈は退屈。どうやって時間を潰そうか。
そうだ。魔術の授業で教わった、魔力制御の訓練法をやってみよう。体内の魔力を知覚し、それを意のままに操る。心臓から、腹、腰、足、つま先、心臓まで戻って、腕、指先。これを繰り返すと、魔力をより操れるようになるらしい。暇潰しには良い。
「こら!ソーイチ様!授業中ですよ!」
バレた。おい三人共。笑うな。
「済みません。ちょっと試したい事があって……」
「意欲があるのは結構ですが、キチンとしてください。終わった後も少し残ってくださいね!」
「は~い……」
僕は資料に目をやり、嘘が多く含まれているであろう歴史を学ぶ。こんな片方だけに都合が良い歴史、本当にある訳が無い。面倒だな。
授業も終わり、僕だけが教室に残る事になっている。
「じゃ、また後でな」
「うん。気を付けてね」
大聖と軽く挨拶を交わし、三人が教室を出ると、早速説教が始まった。
「あのですね。私は王より、皆様にこの国の歴史を教えるようにと仰せつかっているのです。勇者と言えども、そこを蔑ろにしてもらっては……」
「何の為に?」
僕が話を遮ってこう言うと、教師の女性は驚いた顔をした。
「何の為って……それは……」
「こんな歴史、史実じゃない。そうでしょ?」
女性はさらに目を見開き、目に焦りを浮かべている。
「よく見ると、矛盾だらけなんですよ。ほら、ここの一文。『亜人の軍勢は、アンガルを占拠し……』ってあるでしょ?だけどここでは、『アンガルは亜人の領地』と捉えられる事も書かれている。その間に、アンガルとか言う町が人間の国に渡ったという文は無い」
「それは……」
まさかここまで脆いとは。苛ついたから嫌がらせしてやろうと思ってやったら、まさかここまで綻びが出るとは思わなかった。この国の状態が伺えるな。
「歴史学者なんでしょ?本当は、どうなんですか?」
僕がそう尋ねると、女性は「これが史実です!」とだけ言って、教室を出てしまった。顔には、焦りと疑問の二つがあった。
僕は部屋に戻り、訓練用の服に着替えた。遅れたのだし、早く訓練場へ向かおう。
そうして部屋を出た僕は、金髪の男性と遭遇した。
「貴方は……」
「お疲れ様です、勇者様」
彼の名前はアーサー・ジョセフ・ソーラジア。この国の王子様らしい。才色兼備文武両道質実剛健。とんでもないスペックの人だ。前に訓練で戦う機会があったが、兎に角強かった。
「どうされました?もう訓練の時間ですよ?」
「ちょっと居残り命じられて……これから行くつもりです」
僕は彼が少し……いや、かなり苦手だ。自分のアレコレを見透かしているような目をしている。何と言えば良いだろうか。達観しているというか、ここではない遠くを見つめているというか。そして、自分の事は何も言わない。何かされた訳でもないが、怖い。
僕らはその後、少し話しながら、訓練場へ向かった。やはり、既に訓練は始まっていたようで、兵士の皆さんのしごきが始まっていた。王子様はそこに近付き、兵士の皆さんに挨拶した。
「やあ。精が出るね」
「殿下!」
王子様が近付くと、皆敬礼した。やっぱり王子って立場は凄いな。
「聡一!」
「大丈夫だったか!?」
「うん。ただの説教受けただけだよ」
僕ら四人が揃った事を確認すると、後ろの方で見ていたオーガスタスさんが近付いて来た。
「ようやく揃ったか!」
「はい。遅れて済みません」
「あの学者沸点低いんだ。気にせんさ。そんな事より、訓練本番だ!全員で俺に掛かって来い!」
二日前から体力作りは終わり、魔術の授業もかなり少なくなった。その代わり、より実戦に近付くようにと、四人でオーガスタスさんと戦う訓練が始まった。オーガスタスさんはバカみたいに強い。僕らは何度も作戦を練り、その度に打ち破られた。しかも怪我を負わせないようなやり方で。凄い。
しかし、今日は若干違った。オーガスタスさんが、初めて僕らに傷を負わせた。少しづつ動けるようにはなっていたが、今日の変化は急だった。
僕と諒子はその時、二人同時に切り掛かった。いつもなら刃を素手で受け止めるオーガスタスさんが、その時は剣を弾いた。結果、僕ら二人は体勢を崩し、肘を擦り剥いた。
まあ、それ以降はいつも通り、ただボコられるだけで終わった。
訓練後。僕ら四人は、「確認したい事がある」と言われ、オーガスタスさんに呼び出された。今日はよく居残りになるな。
城の一室に集まった僕らに、オーガスタスさんは話し始めた。
「今日、何か違和感は感じたか?」
違和感。今日は、オーガスタスさんが、初めて僕らの攻撃を弾いた。それに加え、言われてみれば程度の違いだが、後衛二人の魔法の発動が早かった気がする。攻撃の間隔が狭かった。
「自分で言うのも変ですが、変に良く動けていました」
「そう。原因に一つ、思い当たる部分があるのです。皆さん。能力を見せてもらえませんか?」
僕らは、言われた通りにした。すると、自分達の能力に、若干の変化が見られた事が分かった。
『荒木聡一 十八歳 男性
階位 一
身長 百七十三センチ
体重 七十九キロ
技能 剣術・一 徒手空拳・一
加護 勇者』
他の皆も、技能の欄に、いくつかの項目が増えていた。諒子は『剣術・二』、忍さんは『魔術《治》・一』、大聖は『魔術《火》・二』、『魔術《木》・一』が増えていた。
「これは何なんです?」
「この能力開示という魔術……いや、『魔法』に近い物は、勇者を含めた、異世界から来た人間にのみ見られる物とされている。そのままお前達の状態、能力を示すコレは、現代魔術でも再現できていない」
「いやそんな事じゃなく」
オーガスタスさんが言うには、これ自体とんでもない物だったらしいが、正直そこには興味が無い。問題は何故この技能の所に、様々な物が増えているのかだ。それをオーガスタスさんに聞くと、オーガスタスさんは少し唸って、答えた。
「正直、良く分からないのが現状。だが、俺はそのまま受け取って良いと思っている。技能を覚えれば、自身の行動に補助が掛かるのだろう。そして、補助が掛かる行動が、そこに示される」
いやマジでゲームじゃん。『スキル』なんて単語だけでゲームっぽいのに、そんな性能あったらそのまんまゲームじゃん。
しかし、そうならかなり便利だ。技能の横にある数字は、恐らく熟練度を示す物だろう。それぞれが担当している武器や魔術の数字が高いのが根拠だ。もしこれが合っているなら、使い続ければ、さらに高い効果が望めるのではないだろうか。
「これを手に入れる条件ってあるんですか?」
「過去の異世界人の証言だと、いつの間にか増えてた事が多いらしい。同じ事をやり続けると、それが技能として現れるのだろう」
ふむ。やはり練習あるのみか。楽して技能を増やせれば、こんなに嬉しい事は無いんだけどな。まあそんな上手くは行かないか。
「話は以上だ。各自、部屋に戻って休んでくれ。明日から、その技能に対する検証を行う。厳しく行くつもりだから、体をしっかり休めとけ」
それを聞いた僕らは、内心『嫌だな』と思ったのだった。
夜。情報交換の時間だ。まあ、今日は四人固まっていたので、交換する物も無い訳だが。
「取り敢えず、『神』と呼べるようなのが居るのは確定かな」
「俺もそう思う」
「私も」
理由は、能力開示と技能の二つだ。正直な所、単語だけでは断定できなかったが、この二つの存在、そしてオーガスタスさんの考察で、ほぼ確定した。
先ず、ステータスの中に、体重や身長なんかが入っているのがおかしい。他人のそれを正確に知っている人間なんて居ないだろう。そして、技能の獲得条件の曖昧さ。『お天道様が見ている』なんて言う位だし、僕らをどこかから監視している、『神』のような物が居てると考えるのが自然だ。
「だけどさ、『神』が居るのが分かって、それでどうするの?もし加護が『神官』とかならまだ希望はあるけど、私は『剣聖』で、忍は『聖女』よ?一体何の役に立つのよ」
「あの王様は『女神』と言った。神があるなら宗教がある。宗教があるなら神事がある。希望を持てるとすれば、そこだね。もし『神』と接触できれば、元の世界に帰れるかも知れない」
僕らの目標は、あくまでも『元の世界に帰る』事だ。この世界で戦争が起きていても、僕らが関与する義務は無い訳だし、できるなら他人を殺したくない。それが叶った上で帰れるなら、喜んでそうしよう。
「『神』ねえ……宗教とか馬鹿にしてたけど、案外そうでもねえな。もうちょっと信心深くなろうと思うぜ」
「特定の宗教を信じるみたいなの、日本人は少なそうだしね。御利益がありそうだし、大聖がそうするなら、私もやろうかな」
しかし、一つ疑問……と言うより、不安が残る。『女神』は、僕らがこの世界に来る時、力を与えた。もし、僕らを元の世界に帰せない理由があるのだとしたら、話は相当厄介で、複雑になりそうだ。
『魔王』、『神』の存在、三つの種族が戦争をする理由、技能。僕らは何から何まで、この世界について知らない。だから、こうして希望を見つけようとするんだ。
翌日。僕らはまた、オーガスタスさんにしごかれている。
後衛組が僕ら前衛組のサポートをする形を試した。大聖が魔術で動きを封じながら攻撃、忍さんが僕ら前衛組の体を回復し続ける事で、出せる力を底上げして、僕と諒子の前衛二人で畳み掛ける。こんな感じの作戦。
しかし、こんな付け焼刃の作戦が通じる訳も無く、僕らは皆して投げ飛ばされた。無論、怪我一つ付けずに。その度、僕らは次の作戦を考える。
「いや~オーガスタスさん強すぎでしょ」
「どうする?次の作戦」
「プランAからプランFまで全部つぶされちゃ、私らに今できる事も無いでしょ」
「バフもこれ以上は厳しいよ。どうする?」
トライアンドエラーを繰り返す。それだけの事でも、友人と長く続けると、少し楽しかったりする。僕らの作戦が敗れる度、「これでも駄目か」と、その状況を楽しむ自分が居る。
「木の魔術で出したのを燃やすのは?」
「無理。試したけど、何故か燃えない。実物じゃないからかも」
魔術の知識、戦闘経験、実力。その全てで劣る僕らは、この一日を費やして尚、オーガスタスさんに一太刀も与えられていない。魔術無しの相手にだ。兵士や騎士の皆さんでさえ魔術を使っていたのに、それが無い。それでも、これなのだ。
僕らも、自主的に体力作りに励んでいるのだ。長時間の激しい運動にも慣れて来ているし、一部の兵士さんには勝てるようになった。それでも、オーガスタスさんには届かない。
こんなに強い人が居る状態で、何故前線に向かわせないのだろうか。それだけ魔王が強いのか、僕ら勇者が魔王を倒す事に意味があるのか、それとも王侯貴族の企みか。ただ何となく、オーガスタスさんに勝てない限り、僕らは魔王達には勝てない事だけは分かる。
その日は何も進展が無く、ただオーガスタスさんとの力の差を感じただけで終わった。
夜。情報交換の時間。僕らは、今日手に入れた情報について、意見を出し合う事にした。というのも、忍さんが神について、有力な情報を手に入れたと言うのだ。
「降臨祭?」
「そう。この世界に初めて神が降臨したってされる日に、毎年一回だけ行われるお祭り。それに関して、一個神話を見つけたんだ」
忍さんはそう言って、一冊の本を机の上に置いた。読めない。当然だ。異国とかそういう次元の話じゃない。異世界の言語なんだから、それが当然の筈だ。
だが、何が書いてあるかは読める。見た事も無い文字、聞いた事も無い言葉。それなのに、意味だけ理解できる。これも、『女神の加護』なのだろうか。
「『神はこの世を二等分し、それぞれに役割を持たせた。人類にはこの世の現象の解明、亜人には魔法の研究を』」
「これって……」
『魔族』についての言及が成されていない。それに、二等分という事は、人類と亜人以外の種族は存在していない事になる。なら、魔族とはどういう存在なのか。
そう考える僕らに、忍さんは挿絵を見せた。
「これを見て。この白い球が、多分神様。右側の人達が人類で、左側のが亜人。人類は性別と年代で分かれてるけど、亜人は体の特徴で分けてるんだと思う。これが長耳族でこれが小人族、それでこれが半龍族。でも最後のこれ、なんだと思う?」
あの女教師の話では、この世界に存在する亜人は三種類。長耳族、小人族、|半龍族。今までに絶滅した種族は存在しないとされているので、この四つ目の種族は、現在も生きている事になる。
「もしかして……魔族?」
「多分、そう。この国の人達は、魔族と亜人を分けてるけど、元は一つの括りになってる筈なの。もしかしたら、亜人の国と魔族の国も、人類側が言ってるだけなのかも」
「なら、なんでそんな事を?忍の言う事を否定するつもりは無いが、それをやる事のメリットが無いんじゃないか?」
「私もそう思う。今は両方敵で、分けても分けなくても変わらないでしょ?」
分けるからには理由がある。人間から離れた見た目をしているという点では、半龍族の方を分ける筈だ。なら、どこが境目になってるんだ?
「他に面白い事は?」
「神話には、勇者と亜人王の話が出て来るの。そこでは、亜人王と勇者は相打ちで死んじゃうんだ」
「ちょっと見せて」
そのページを見ると、かなり抽象化された人間と魔族が戦っている絵が書かれていた。僕の加護の名前が『勇者』で、それは女神に与えられた物だと考えると、過去にも、勇者と『王』の名を関する何かの戦いはあったらしい。魔王と勇者という二つの役名は、この神話から来ているのかも知れない。
しかし、なぜ魔族が王なのに、名を『亜人王』としたのだろうか。『魔王』の元がコレなら、『亜人王』である筈だ。亜人と魔族が分かれたから『魔王』になったのだろうか。なら、何故別れたのだろうか。
「魔王と勇者は、以前も存在していたとしか分からないわね。亜人の代表と人間の代表の対決っていう構図に、意味があるのかも」
「いや、もしそうなら両方の王様が来る。人類の代表が異世界から来た余所者なんて、かなりおかしい」
「だーもう分からん!」
亜人王についても、ただ『亜人の王』としか表されていない。勇者は『異界の若者』だけ。これでは、今の僕らと同じ構図が、少なくとも神話には存在しているとしか言えない。そもそも亜人の存在でさえもよく分からないのに、それについて考えようなんて、中々おかしいかも知れない。
この両者の争いの原因も、『派閥争い』としか書かれていない。生存競争の中での衝突は珍しくもないが、これでは考察のしようが無い。
それに、『神話』という題の筈なのに、神が殆ど出て来ないのも不自然だ。これでは、神への知識の手に入れようが無い。
「これだけじゃ何も言えない。これからは、神話についてを調べよう」
三か月後。昨日も僕らは、オーガスタスさんと訓練をしていた。
この三か月、僕らの技能の熟練度も上がり、少しづつ、オーガスタスさんに近付いて来た。二か月前、魔術無しのオーガスタスさんに攻撃を当てられた為、それからはオーガスタスさんも魔術を使っている。
オーガスタスさんの強化された身体能力に加え、魔術まで使われるようになった。僕らは毎日ボコられては、『地球に帰る為』と、自身を奮い立たせた。
そして昨日、僕らはまた、オーガスタスさんに攻撃を当てた。と言っても、木剣がかすっただけだが。
そして今日。僕らは王様に呼び出された。前回王様と話した、つまりこの世界に来た日から、既に四か月が経っている。用件は察しがついた。
「勇者達よ。訓練の最終目標を達成し、遂に旅立ちの時が来た。今宵は宴だ。存分に楽しんでくれ」
どうやら、王様は僕らの出発を祝うパーティーを開くらしい。人類の敵を殺す勇者の出発とは、かなり大きな意味を持つ物らしく、貴族を招いて、かなり大きな催しになる予定との事だ。
その晩。僕らはお城の使用人さん達に、正装に着替えさせられた。かなり窮屈な上、そこそこ派手だ。早く脱ぎたいが、我慢だ。
「聡一お前、けっこうキマってんな」
「大聖こそ。かっこいいよ」
「あんがとよ。さあ、女子陣を迎えに行くぞ」
大聖の顔が結構緩んでる。忍さんの正装が楽しみなんだな。お熱いカップルで羨ましいよ。
僕らは女子陣との合流場所に急ぎ、二人を迎えに行く。そして女子陣の正装を見た僕らは、思わず息を飲んだ。
「綺麗だなあ」
「ああ。凄く分かる」
「ちょっと大聖、こんな所で……」
はいはい若い若い。
しかし、実際綺麗になっている。流石に金が掛かっている。戦時中にコレとは、いつか国民の不満が爆発するのではないだろうか。「自分らはこんなに大変なのに、貴族は贅沢三昧か」みたいな。
しかし、それは僕らが気にしてどうこうなる問題じゃない。宴会場に行くとしよう。
宴会場に着くと、僕らは目を見張った。とても戦争をしている国とは思えない程、煌びやかな部屋だった。人も料理も多い。まるで『タイタニック』のワンシーンだ。
僕らは事前に言われた通り、王様達の居る所まで行って、王様達に挨拶した。正直、言われた事をそのまま繰り返しただけだったので、どんな事を言ったか、まるで覚えていない。
「は~緊張したわね」
「忍、ヒール大丈夫か?」
「ちょっと辛い。けど大丈夫」
「じゃあ、料理でも食べて休もうか。まあ、そんな暇無いかもだけど……」
少し横を見ると、貴族が目を光らせている。ああヤダヤダ。怖い大人の覇権争いに巻き込まれたくないね。
僕らはその人達を適当にあしらいながら、なんとかパーティーをやり過ごした。途中、まだ十歳程度の子を差し出そうとして来た人も居て、ちょっと引いた。
パーティーも終わりに近づいて来た頃、僕らは王様に呼び出された。どうやら、明日についての話らしい。
「大分疲れているようだな勇者たちよ」
「ええすみません。こういう場に成れてなくて」
「まあ良い。明日は平民へ向けてパレードを行う。戦闘用の服に着替えて、昼頃に再び集まってくれ」
『またバカ騒ぎか』という言葉を飲み込み、僕は「はい」と言った。
その夜。最後の情報交換会が開かれた。まあ、明日からこの場を設ける必要が無くなるだけの話だが。
「この三か月、神話について調べてみたけど、『勇者』、『魔王』、『亜人王』、『女神』についての情報は、殆ど無かったね」
「ただまあ、『勇者と魔王』という構図は、何か意味がありそうだよな」
「わざわざ勇者を異世界から呼ぶ理由も、魔王がそうしない理由も無いだろうしね」
「その意味が分からないんじゃ、どうにもならないのよね~」
「「「全く持ってその通り」」」
しかし、どの資料を見ても、全くと言って良い程、先程の四つのワードについての話が無いのだ。結局の所、僕らは三か月前のあの日から、少しも考察が進んでいない。
「ただ、一応目指せる場所はあるよな」
「うん。二か月後、国全体を挙げての神事、『降臨祭』がある。ここなら、女神と接触できるかも」
「二か月……遠いねえ……」
「これしか手掛かりが無いんだから、我慢しなさい」
仰る通り。僕らはそれを目指すしか無いんだ。文句を言っても変わらない。僕らはそこを目指すしか無いんだ。
まあ、そう考えると、この時期での出発も存外悪くない。この城に居る間、僕らは一度も外に出してもらえなかった。恐らくではあるが、この城に居る限り外には出れない。無論、二か月後の神事にも行けない。ならば、今出れた方が良い。
「だけどよ。俺ら今まで、一度もオーガスタスさんに勝ててねえよな。こんな状態で出て良いのか?」
「そこが不安だ。だけど、ここの『階位』の部分が、僕は気になるんだ」
ゲームなんかだと、レベルが上がれば能力も上がる。『外で経験を積みながら行け』という事なのかも知れないけど、ここが上がるとどうなるか、王様達は知っているから、僕らを出発させるんじゃないだろうか。この世界には『魔物』とやらが居るらしい。それを倒せばレベルが上がって、やれる事も増えるという事なのではないだろうか。
「確かにゲームみたいな世界だけど、そんな事あるかしら?」
「そうだよね。私もそう思うよ」
「僕もそう思うけど、正直、ここに変化が無いのが気になるんだ。ここの変化が、何か僕らに影響があるんじゃないだろうか。まあただの推論だし、あんま深く考えない方が良いかな」
「そうだな。一先ず、俺らは明日出る。その後の事は、その後考えよう」
「「「賛成」」」
今は、何も分からない。分からない事をどうとか言えない。だから、少しは前向きになろう。
それからは、元の世界に戻ったら何をするかを話した。『白米をたらふく食べる』とか、『母親に感謝を伝える』とか、そんな下らない事を話した。皆、一日目よりも生き生きをして見えた。
その後、大聖と忍さんは、自分達の部屋に戻った。部屋には、僕と諒子の二人だけが残った。
「こうして二人きりって、こっちに来た日以来だね」
「そうね。あの時は不安でいっぱいだったわ」
「そうそう。ちょっと泣いてたよね」
「それを掘り返さないでよ」
怒っているような口調と裏腹に、その顔は笑っていた。その顔には、自信と不安が入り混じって見えた。
僕はあの日と同じように、ベッドに寝転がった。一つ違った事があるとするなら、諒子も、僕のベッドに横になった事だった。そして諒子は、あの日僕に言った言葉を、そのまま僕に繰り返す。
「本当に、帰れるのかな」
僕はあの日と変わらない、面白味も希望も無い返事をする。
「分からない。あれから四か月経つけど、何も変わってない」
諒子は「そっか」と言って、そのまま黙った。部屋に、心地良い静寂が漂う。
それから暫くして、僕は諒子に、一つの質問をした。
「帰ったとして、行きたい場所、やりたい事が無かったら、そしたら、どうするの?」
そう言った僕を、諒子は見た。僕が横目でそれを見ている事に気付くと、諒子は再び視線を天井へ戻し、ゆっくり答える。
「皆の所に行く。何もしたくなくても、皆と居れば、自然と元気が出る気がするから」
今度は、僕が黙る番だった。再び、部屋に静寂が漂う。
次に話し始めたのは、諒子だった。
「あの日、ここに来た日、私最初は、死んでやろうかなんて考えてたのよ」
僕は、さっき諒子がやった動作を、そのままなぞった。気丈に見える彼女が『死にたい』と思う事に、僕は自然と、安堵していた。
「諒子にも、そういう部分があるんだね」
「そりゃあるわよ。怖くて、不安で、逃げたくても逃げれない。追い詰められてたんでしょうね」
僕らはお互いの顔を見ないまま、天井に向かって笑った。笑い話ではない筈なのに、少し笑ってみたい気分だった。
「でもね、聡一が抱きしめてくれて、ちょっと不安が和らいだの。だから、生きてるのよ」
「そりゃ光栄。僕は「あれで良かったのかな」って不安だったよ」
「ふふ。命の恩人様でも、しっかり人間なのね」
「なにせ、彼女居ない歴イコール年齢な物でね。女性の扱いなんて、全く分からないんだ」
僕がそう言うと、諒子は僕の上に覆い被さった。自然と、視線がかち合う。僕らは、少し言葉を交わす。
「だったら、私がその記録、閉じちゃって良いかな」
「良いのかい?」
「冗談で言うような人じゃない事位、分かるでしょ?」
僕は諒子の首に手を回し、諒子と僕の位置を逆転させる。僕はそのまま、彼女の引き締まった肢体を抱きしめた。
翌日。僕らの出発を祝うパレードは、それはもう盛大に行われた。戦争で大勢人間を殺すような奴が英雄とは、中々におかしい話だ。
ともあれ、これで城を出られた。目指すは我が家。僕らの長い旅は、こうして始まった。
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