怪しい二人 夢見る文豪と文学少女

暇神

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#7 人類保護連盟

#7ー28 終結?

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 翌日。俺を含めた多くの退魔師は協会本部に召集された。事前に知らされていた話では、人類保護連盟についての話をするらしい。
「八神君、連盟って結局、本部は潰れたんだよね?」
「本部と思わしき神隠しは消滅しましたから、そうですね」
 しかし、昨日の今日で話すとは対応が早い。あの作戦自体秘密裏に行われた物だし、百鬼夜行が近い今、連盟なんていうイレギュラー要素はなるべく早めに無くしたいのか。
 しかし気掛かりなのは、ギエル、及び修司君が遭遇したという幹部らしき人間だ。あの辺りをどう説明するんだろう。俺は何も聞かされていないぞ。
 暫く待つと、協会のモニターに会長の姿が映り、「諸君、先ずは折角の日曜日に、集まってくれた事を感謝しよう」と前置きをして、話を始める。
「今回集まってもらったのは他でもない。以前より協会の中で話題になっていた、人類保護連盟についてじゃ」
 『人類保護連盟』という名前に、俺の周りに居る退魔師が少しだけざわつく。何が起こったのか知らない人間が殆どな中、急に集められ話をされるというのは、やはり何が起こったのか気になる物だ。
「協会と並ぶ戦力を有する敵対勢力の連盟じゃ。儂らは早期に対処する事を選んだ。早速話の核心に切り込むが、儂らは昨晩、協会の本部と考えられる神隠しを襲撃し、消滅させた」
 周囲から声が上がる。『もうやったのか』と驚く者、『流石は会長だ』と歓喜する者の二通りが、この場所のほぼ全てを締めている。
「じゃが取り逃した者も居る。敵のリーダーであるギエルを中心に、数名の幹部が逃げたという情報がある。諸君には引き続き、連盟の調査及び、日々の鍛錬に励んでくれ。話は以上じゃ」
 モニターは一瞬消え、直ぐに地上波の映像が流れ始める。退魔師達はざわざわと話をしながら、本部から出て行く。
「じゃ、行きますか」
「そうだね。今日の昼食は何かな~」
「咲良さんって食いしん坊だよね」
「私は食べるのが大好きなんだ」
 俺達もその流れに逆らう事無く、協会の出入り口へ向かう。しかしそこに、話し掛けて来た人が居た。
「ちょっと待ってくれ!三人共!」
 後ろを振り向くと、春日部さんと誠君の姿があった。何か用でもあるんだろうか。
「何かあった?」
「何かって……一部の白金級の退魔師と金剛級の退魔師は、会議室に集まるようにって言われてたじゃないか」
「そんな連絡一度も……」
 待て。前にもこんな事があったような気がする。協会からの連絡を無視して、俺の携帯までいじって、協会からの招集に応じたがらなかった人が身近に。俺は右斜め前に居る、自分よりも二回り程度小さな人の後頭部を見つめる。その人は冷や汗を滝のように流しながら、俺の方を見た。
「先生?何か言う事は?」
「えっと……許して?」
 俺は嫌がる先生を担いで、協会本部の会議室へ向かった。因みに、その場面を見た人のほぼ全てが、どこか呆れたような顔をした。

 会議室に集まったのは、やはり見慣れた面子だった。浩太も居るし、どうやら義明君も居るようだった。
「あら蒼佑ちゃん。やっぱり来たのね」
「先生が根回ししてたお陰で遅れましたよ。義明君も居るんですね」
「ええ。スピード出世って奴かしらね。まあ、あんまり嬉しくなさそうな子も居るけど」
 浩太はそう言って、渡辺兄弟を顎で示した。彼等は義明君と仲が良い印象だったが……俺の人間観察能力もまだまだって事かな。まあ良いか。少なくとも、義明君の実力はケチの付けようが無い。手を出す事は無いだろうな。
 俺達は用意されていた席に座る。全員揃った事を確認した会長は、やはりどこからともなくホワイトボードを持って来て、資料を全員に配った。
「では春日部日向術師、よろしく頼むぞ」
「はい」
 春日部さんは事前に渡されていたのであろう資料を持って、ホワイトボードに貼られた写真を指す。
「今回の件で、人類保護連盟の本部は無くなりました。しかし、依然として敵の最高戦力と考えられる幹部、及びリーダーギエルの行方は掴めておりません。しかし、奴等の行方を追うのはほぼ不可能。なので皆さんには、一年後に襲来する、百鬼夜行への対策を考えていただきます」
 そういう話か。それなら俺は何も言えないな。俺はこの中で、義明君と並ぶ程度には退魔師歴が短い。こういう時の良い対策案も考え付かない。
 俺が静観しようと決めたのとぼ同時に、透哉さんが話し始めた。
「会長。会長は以前の百鬼夜行に参加していると聞きます。その時はどういった対策が成されたのでしょうか」
「き、如月透哉術師は、歴史の勉強がお嫌いなようですね」
「そういう八谷道子術師は、人の目を見て話すのが苦手なようだ」
「まあまあ二人共、ここは喧嘩する場じゃないんだから」
 この場に居たほぼ全員が『また始まったよ』と思った事だろう。透哉さんは道子さんと仲が悪いらしい。こういう話し合いの場で、どちらか一方が意見を言うと、それが合図だと言う風に、お互いに激論をぶつけ合う……と言うよりは罵り合うのだ。
「だ、大体透哉さんは、いつも一人で行動しようとしないでくださいよ!」
「貴女いっつも家に居るから動きが鈍いじゃないか!置いてった方が楽なんだよ!」
「わ、私はインドア派なんです!」
「ただの引きこもりをそれっぽく言うのはやめろ!」
 こんな感じで、話し合いはグダグダになったが、結局は会長が参加した百鬼夜行と同じ、四十七都道府県にそれぞれ白金級以上の退魔師を配置し、対処に当たる事となった。

 話し合いが終わると、義明君が驚き冷めやらぬ表情で話し掛けて来た。
「し、師匠……金剛級退魔師って、あんな感じなんですか?」
「まあ……かなり個性的な面子ではあるよね」
「八神くん、こういう時は誤魔化さず、『イロモノ揃い』って言った方が良いよ」
 そういう言い方は角が立ちそうで怖いんだよ。まあ先生はそういう事言える人だけどさ。
 因みに、あの二人の口喧嘩はいつもの事だが、義明君を除いた、あの場に居る人間の共通の認識として、『結局二人は仲が良い』という事だ。二人は相棒として協会に登録されている。どちらか片方でも金剛級術師として戦える実力はあるのにも関わらず、その関係を続けているので、仲が良いと思われている。俺もそうだし。
「まあ、その内慣れるよ。それに、少なくとも百鬼夜行までは、時々顔を合わせる事もあるだろうし」
「慣れれば良いんですけどね……」
 遠い目をする義明君を少しだけ笑いながら、俺達は会議室を出る。

 これで、人類保護連盟に関する事件は、様々な謎を残したまま、一旦の終結を迎えた。
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