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#7 人類保護連盟
#7ー5 春日部家
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春日部家。その歴史は、現存している退魔師一族ではかなり短い。
初代当主は、百年前の神秘研究協会会長、春日部五郎。彼は類稀なる才能と、常人には一日耐えるのですら難しい訓練の結果、その時代で最強となった。その技術は現代まで継承されており、春日部家はその歴史に見合わない程多くの、優秀な退魔師を輩出している。
春日部日向は、春日部家次期当主の呼び声高い、優秀な退魔師だ。依頼は何があってもこなすし、神秘の研究にも多く携わっている。協会への貢献度で言ったら、会長や慎太郎さんに肩を並べるだろう。
俺は今、彼女の穢れなどあろう筈も無い経歴を、全て洗い出している。彼女の実家、春日部家の怪しい動きと、彼女の関係性を調べる為だ。正直、彼女が関わっているとは考え辛い。それでも、怪しい物は調べる必要がある。
「ご苦労な事だね八神くん」
事務所で彼女の資料を漁っていると、先生が話し掛けて来た。
「ええ。先日俺の経歴を資料にして見せられたんでね。その仕返しにと思って」
「私は最近思うんだが、君は引き摺るタイプなのかい?」
俺は「ええ」と答えながら、資料のページを捲る。現時点、怪しい所は見当たらない。いつも依頼をしているし、そうでなければ研究だ。いつ休みを取っているのかと心配になる程度には働いてばかりだ。
春日部さんの資料を読み終えた俺は、立ち上がって背伸びをした。こうすると、少し頭がすっきりするのだ。
分かった事は、春日部さんはこの件とは無関係だという事だ。彼女は普段、協会本部の部屋を寝泊まりに使っているようだし、連盟と連絡を取る手段は無い。依頼で出ている時は、必ず相棒の柊誠を連れていると記述してある。柊君もグルの可能性はある訳だが、それは後で良いだろう。次は春日部家を調べるか。
「先生、今夜出掛けます。少しの間帰らないんで、よろしくお願いします」
「……また副業かい?」
「いえ、ちょっとした用事ができたんで」
俺がそう答えると、先生は「そうか」と言って、踵を返した。俺は資料を仕舞い、いつものルーティーンに戻る。
その晩、俺は春日部家本家の屋敷がある、兵庫に来ていた。理由は勿論話し合い……ではなく不法侵入だ。
春日部家のような大きな家の資料は、協会には無い。なので直接聞くのが一番早くて安全な訳だが、正直に聞いた所で、怪しい部分を隠されるのがオチだ。ならば、侵入して情報だけ抜き取るのが楽だ。悪い事をしている自覚はある。
俺は鍵を開けて、中に入る。見張りが居る訳でもないが、結界が張られているな。招かれざる客が来ないようにする為だ。だが、この術程度なら簡単にすり抜けられる。
痕跡も残さず、屋敷に侵入した俺は、資料が集められている、資料室に向かった。うん。めっちゃある。そらそうか。短い方とは言っても百年だ。歴史の教科書と違って事細かに書いてある訳だから、こうなるのは必然だ。俺は最近の資料を集めて、読み始める。速読は得意だ。ここ五か月、ついでに一年分なら、今晩あれば読み切れる。
人類保護連盟についての資料は……無い。火器の使用目的については、戦力の増強?春日部家の退魔師に、火器を使う人間が居るのか。もしかしたら春日部さんかもな。あの人部屋に大量の火器を飾っているらしいし。とは言え怪しい。不明な金の動きもある。予算は増えているのに、やっている事が減っている。ここ一年は特にだ。収穫はあった。帰るか。
俺は廊下を歩いて移動する。その気になれば天井に張り付いて移動できるが、それでは霊力で俺だとバレる。霊力は使えないので、地面を歩いている訳だ。足音が出ないように気を付ければ、何の心配も無い。
俺は足元に気を付けながら、玄関へ向かう。音を立てないように扉を開け、外へ出る。その瞬間、俺の目の前に、拳銃の銃口が突き付けられた。
「アンタ……誰?」
「春日部さん」
不幸な事に、どうやら彼女は、今日は実家に帰る気分だったようだ。そこのルーティーンまで目を通したつもりだったんだが、まあ予想外の事態は起こり得る物だ。仕方無い。
「八神蒼佑……アンタね」
「そうですよ。少し、調べたい事がありまして」
「やましい事があるのね」
「そうじゃなきゃ、こうやって夜中に侵入しないですよ」
春日部さんは溜息を吐いて、「今日は見なかった事にしてあげる。次は無いわ」と言って、玄関から屋敷の中に入って行った。一方で、俺は疑問に包まれていた。
先ず、春日部さんが俺を見逃す理由は無い。春日部さんは俺を嫌っている筈だ。この状況は、俺を脅すには結構便利だ。それなのに、『今回は見なかった事にする』とは。やましい事があるのは、もしかしたら春日部さんの方なのかも知れない。
だが、春日部家に何かあるのは、ほぼ確実な物となった。大量の火器、怪しい金の動き、この両方がある。しかも、それが殆ど表に出ても目立たない形になっている。これは、隠したい事がある時の物だ。春日部家の調査は済んだ。後は、春日部家と親密な関係にある人間についてだ。
次に調べるのは誠君。春日部さんの相棒だ。
初代当主は、百年前の神秘研究協会会長、春日部五郎。彼は類稀なる才能と、常人には一日耐えるのですら難しい訓練の結果、その時代で最強となった。その技術は現代まで継承されており、春日部家はその歴史に見合わない程多くの、優秀な退魔師を輩出している。
春日部日向は、春日部家次期当主の呼び声高い、優秀な退魔師だ。依頼は何があってもこなすし、神秘の研究にも多く携わっている。協会への貢献度で言ったら、会長や慎太郎さんに肩を並べるだろう。
俺は今、彼女の穢れなどあろう筈も無い経歴を、全て洗い出している。彼女の実家、春日部家の怪しい動きと、彼女の関係性を調べる為だ。正直、彼女が関わっているとは考え辛い。それでも、怪しい物は調べる必要がある。
「ご苦労な事だね八神くん」
事務所で彼女の資料を漁っていると、先生が話し掛けて来た。
「ええ。先日俺の経歴を資料にして見せられたんでね。その仕返しにと思って」
「私は最近思うんだが、君は引き摺るタイプなのかい?」
俺は「ええ」と答えながら、資料のページを捲る。現時点、怪しい所は見当たらない。いつも依頼をしているし、そうでなければ研究だ。いつ休みを取っているのかと心配になる程度には働いてばかりだ。
春日部さんの資料を読み終えた俺は、立ち上がって背伸びをした。こうすると、少し頭がすっきりするのだ。
分かった事は、春日部さんはこの件とは無関係だという事だ。彼女は普段、協会本部の部屋を寝泊まりに使っているようだし、連盟と連絡を取る手段は無い。依頼で出ている時は、必ず相棒の柊誠を連れていると記述してある。柊君もグルの可能性はある訳だが、それは後で良いだろう。次は春日部家を調べるか。
「先生、今夜出掛けます。少しの間帰らないんで、よろしくお願いします」
「……また副業かい?」
「いえ、ちょっとした用事ができたんで」
俺がそう答えると、先生は「そうか」と言って、踵を返した。俺は資料を仕舞い、いつものルーティーンに戻る。
その晩、俺は春日部家本家の屋敷がある、兵庫に来ていた。理由は勿論話し合い……ではなく不法侵入だ。
春日部家のような大きな家の資料は、協会には無い。なので直接聞くのが一番早くて安全な訳だが、正直に聞いた所で、怪しい部分を隠されるのがオチだ。ならば、侵入して情報だけ抜き取るのが楽だ。悪い事をしている自覚はある。
俺は鍵を開けて、中に入る。見張りが居る訳でもないが、結界が張られているな。招かれざる客が来ないようにする為だ。だが、この術程度なら簡単にすり抜けられる。
痕跡も残さず、屋敷に侵入した俺は、資料が集められている、資料室に向かった。うん。めっちゃある。そらそうか。短い方とは言っても百年だ。歴史の教科書と違って事細かに書いてある訳だから、こうなるのは必然だ。俺は最近の資料を集めて、読み始める。速読は得意だ。ここ五か月、ついでに一年分なら、今晩あれば読み切れる。
人類保護連盟についての資料は……無い。火器の使用目的については、戦力の増強?春日部家の退魔師に、火器を使う人間が居るのか。もしかしたら春日部さんかもな。あの人部屋に大量の火器を飾っているらしいし。とは言え怪しい。不明な金の動きもある。予算は増えているのに、やっている事が減っている。ここ一年は特にだ。収穫はあった。帰るか。
俺は廊下を歩いて移動する。その気になれば天井に張り付いて移動できるが、それでは霊力で俺だとバレる。霊力は使えないので、地面を歩いている訳だ。足音が出ないように気を付ければ、何の心配も無い。
俺は足元に気を付けながら、玄関へ向かう。音を立てないように扉を開け、外へ出る。その瞬間、俺の目の前に、拳銃の銃口が突き付けられた。
「アンタ……誰?」
「春日部さん」
不幸な事に、どうやら彼女は、今日は実家に帰る気分だったようだ。そこのルーティーンまで目を通したつもりだったんだが、まあ予想外の事態は起こり得る物だ。仕方無い。
「八神蒼佑……アンタね」
「そうですよ。少し、調べたい事がありまして」
「やましい事があるのね」
「そうじゃなきゃ、こうやって夜中に侵入しないですよ」
春日部さんは溜息を吐いて、「今日は見なかった事にしてあげる。次は無いわ」と言って、玄関から屋敷の中に入って行った。一方で、俺は疑問に包まれていた。
先ず、春日部さんが俺を見逃す理由は無い。春日部さんは俺を嫌っている筈だ。この状況は、俺を脅すには結構便利だ。それなのに、『今回は見なかった事にする』とは。やましい事があるのは、もしかしたら春日部さんの方なのかも知れない。
だが、春日部家に何かあるのは、ほぼ確実な物となった。大量の火器、怪しい金の動き、この両方がある。しかも、それが殆ど表に出ても目立たない形になっている。これは、隠したい事がある時の物だ。春日部家の調査は済んだ。後は、春日部家と親密な関係にある人間についてだ。
次に調べるのは誠君。春日部さんの相棒だ。
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