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#5 過去との対峙
#5ー23 対処法
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奴と殴り合って、いくつか分かった事がある。一つ目。基本的に、オオクニヌシには打撃は効かない。素体の性能のせいだろうが、いくら殴っても傷が付かない。あの科学者を叩き伏せた一撃も、コイツには効かない。刃物は効く。二つ目。霊力量は、素体に上乗せされる。科学者とコイツの霊力の増加量は、大して変わらなかった。三つ目。合成に使われた妖怪の術式は使えない。科学者もコイツも、術式は一つしか使っていない。慣れていない可能性もあるが、基本は一つだけという事だろう。
しかし硬い。霊力で耐久力を上げているのだろうが、それでも傷一つ付かない。理性を保ったままこんな強化とは、中々に恐ろしい技術だ。
「ははは!威勢だけか小童あ!?」
「そっちの攻撃も当たってねえぞ!俺相手でこれなら、最強には程遠いな!」
俺達はお互いを罵倒しながら、お互いを攻撃している。戦いの中でハイになっているのか、顔は笑っている。
俺にはタイムリミットがある。コイツを殺したとして、コイツの『最終兵器』が止まる保証は無い。なるべく早く、コイツとの決着を付けなければ。
俺はここまでの戦いで、色んな事を試した。脳を揺らして動きを止めようとしたり、麻酔銃で眠らせようとしてみたりした。しかし、体を強化しているからか、動きは止まらなかったし、弾丸も弾かれた。どうしろってんだ。
俺は振り上げられた奴の拳を見て、大きく後ろに下がる。それを見た奴は、にやりと笑った。
「どうしたあ?このままでは、村の人間は全員オオクニヌシになるぞお?貴様の大事な『先生』も、死ぬかもなあ?」
どうやら、煽っているつもりのようだ。そんな事をやっても無駄だろうに。
しかし、実際不味い。タイマーは残り十分を表示している。そろそろコイツを殺さないと、不味い頃合いだ。
「安心しろ!勝ち筋が見えた所だ!」
「ほざけ小童あ!」
俺達は再び接近し、お互い拳を相手に向ける。お互いノーダメージ。しかし、これにも意味はある。確実に、コイツを殺す為に、必要な事だ。
「この程度が協会の最高戦力か!片腹痛いわあ!」
「手前もずっと術式を平行して使ってる癖して、俺に傷一つ付けられねえじゃねえか!『全てを手に入れる』なんてほざいてた割に、大した事ねえなあ!」
奴はとうとうキレたのか、大きく拳を振り上げた。だが、俺はそれを待っていた。俺は懐からナイフを取り出し、奴の拳を躱した。大きく振った拳は、後に大きな隙を残し、奴は俺に、胸部を曝け出した。俺はナイフを奴の体に突き立てる。霊力で強化されたナイフは、簡単に奴の肌を切った。
勿論、これだけでは駄目だ。一度切った所で、簡単に再生する。ここから更に、攻撃を叩き込む必要がある。俺は右手に霊力を込め、そのまま傷口を抉った。
「ぎゃあああああああああ!」
「ははは!きたねえ赤がお目見えだ!手前の心よりは綺麗だがなあ!」
俺はその傷が塞がる前に、詠唱を始める。
「妖でも人でもなき、自然ならざる存在よ!我が力を以て、消滅せん!」
確かに体の表面は硬いが、肉しか無い体の内側はどうかな!?
「我が名は八神蒼佑!百の物語を紡ぐ者也!」
懐に仕舞っていた原稿用紙は光を放ち、一本の槍となって、奴の傷口に向かう。そのままやりは届き、奴の体を貫いた。
しかし、奴が事前に繰り出していた拳は、俺に届いた。俺は受け身も取れず、まともに拳を食らい、壁に激突した。正直凄く痛い。
しかし、これでどうにかなる筈。自分の実力の百二十パーセントの力を出す詠唱を行った上、残った霊力の殆どを込めた一撃を、体の内側に抉り込んだ。俺ももう、霊力に因る強化はできないが、肉体があっても、流石に死ぬ筈。
奴は体の再生ができていないようだった。更に、体の内側から炸裂したような傷跡は、間違いなく致命傷だ。奴はこのまま死ぬ。これで後は、奴の『最終兵器』を止める為だ。
「ハハハハハ……これで終わると、思っているのか?」
「そうだろ。手前はこれから死ぬ。『最終兵器』とやらも、これから止める。もう、終わりだ」
俺がそう言うと、奴は笑った顔を保ったまま、こう返した。
「兵器を止める装置は、既に地下深くの倉庫に隠した。あそこを見つける事はできるだろうが、辿り着けはしない。チェックメイトだ」
マジか。それが本当なら、相当不味い事になった。俺はもう霊力が無い。身体強化に回せる量も無い程だ。位置の特定すら厳しいのに、そこからまた一手間あるのか。これは不味い。
いや、諦めるべきではない。根性論にはなるが、この際無駄なポリシーは捨てよう。残りカスでもあるんだ。使え。霊力を極限まで練るんだ。根性見せろ、八神蒼佑。
俺は奴の死体に手を当て、術式を使う。一刻でも早く、位置を特定しなければ。タイマーは既に、残り五分を切った。時間が無い。早く。
霊力が減る。俺は事前に用意しておいた、霊力の担保を使い、ほんの少しだけ霊力を増やす。そしてまた、術式に神経を集中させる。
「見つけた」
そして数十秒で、俺は答えに辿り着いた。この屋敷の真下。地下室の、更に下。見つけた。
これで後は掘るだけ。俺は体を強化しようとして、体に力を込めた。
しかし、そこで俺は、自分の体に力が入らない事に気が付いた。疲労か霊力切れに因る不調か。どちらにせよ、俺は何もできない。詰んだ。
先生はここに気が付いているだろうか。ああでも、先生はアレの位置を知らない。今すぐ来てくれないかな。
俺は、そんな事を考えながら、意識を手放そうとした。その瞬間、一筋の光が、目に飛び込んで来た。
「八神くん!無事かい!?」
先生が来てくれた。俺は無理矢理に笑い、「絶好調ですよ」と、嘘を吐いた。
しかし硬い。霊力で耐久力を上げているのだろうが、それでも傷一つ付かない。理性を保ったままこんな強化とは、中々に恐ろしい技術だ。
「ははは!威勢だけか小童あ!?」
「そっちの攻撃も当たってねえぞ!俺相手でこれなら、最強には程遠いな!」
俺達はお互いを罵倒しながら、お互いを攻撃している。戦いの中でハイになっているのか、顔は笑っている。
俺にはタイムリミットがある。コイツを殺したとして、コイツの『最終兵器』が止まる保証は無い。なるべく早く、コイツとの決着を付けなければ。
俺はここまでの戦いで、色んな事を試した。脳を揺らして動きを止めようとしたり、麻酔銃で眠らせようとしてみたりした。しかし、体を強化しているからか、動きは止まらなかったし、弾丸も弾かれた。どうしろってんだ。
俺は振り上げられた奴の拳を見て、大きく後ろに下がる。それを見た奴は、にやりと笑った。
「どうしたあ?このままでは、村の人間は全員オオクニヌシになるぞお?貴様の大事な『先生』も、死ぬかもなあ?」
どうやら、煽っているつもりのようだ。そんな事をやっても無駄だろうに。
しかし、実際不味い。タイマーは残り十分を表示している。そろそろコイツを殺さないと、不味い頃合いだ。
「安心しろ!勝ち筋が見えた所だ!」
「ほざけ小童あ!」
俺達は再び接近し、お互い拳を相手に向ける。お互いノーダメージ。しかし、これにも意味はある。確実に、コイツを殺す為に、必要な事だ。
「この程度が協会の最高戦力か!片腹痛いわあ!」
「手前もずっと術式を平行して使ってる癖して、俺に傷一つ付けられねえじゃねえか!『全てを手に入れる』なんてほざいてた割に、大した事ねえなあ!」
奴はとうとうキレたのか、大きく拳を振り上げた。だが、俺はそれを待っていた。俺は懐からナイフを取り出し、奴の拳を躱した。大きく振った拳は、後に大きな隙を残し、奴は俺に、胸部を曝け出した。俺はナイフを奴の体に突き立てる。霊力で強化されたナイフは、簡単に奴の肌を切った。
勿論、これだけでは駄目だ。一度切った所で、簡単に再生する。ここから更に、攻撃を叩き込む必要がある。俺は右手に霊力を込め、そのまま傷口を抉った。
「ぎゃあああああああああ!」
「ははは!きたねえ赤がお目見えだ!手前の心よりは綺麗だがなあ!」
俺はその傷が塞がる前に、詠唱を始める。
「妖でも人でもなき、自然ならざる存在よ!我が力を以て、消滅せん!」
確かに体の表面は硬いが、肉しか無い体の内側はどうかな!?
「我が名は八神蒼佑!百の物語を紡ぐ者也!」
懐に仕舞っていた原稿用紙は光を放ち、一本の槍となって、奴の傷口に向かう。そのままやりは届き、奴の体を貫いた。
しかし、奴が事前に繰り出していた拳は、俺に届いた。俺は受け身も取れず、まともに拳を食らい、壁に激突した。正直凄く痛い。
しかし、これでどうにかなる筈。自分の実力の百二十パーセントの力を出す詠唱を行った上、残った霊力の殆どを込めた一撃を、体の内側に抉り込んだ。俺ももう、霊力に因る強化はできないが、肉体があっても、流石に死ぬ筈。
奴は体の再生ができていないようだった。更に、体の内側から炸裂したような傷跡は、間違いなく致命傷だ。奴はこのまま死ぬ。これで後は、奴の『最終兵器』を止める為だ。
「ハハハハハ……これで終わると、思っているのか?」
「そうだろ。手前はこれから死ぬ。『最終兵器』とやらも、これから止める。もう、終わりだ」
俺がそう言うと、奴は笑った顔を保ったまま、こう返した。
「兵器を止める装置は、既に地下深くの倉庫に隠した。あそこを見つける事はできるだろうが、辿り着けはしない。チェックメイトだ」
マジか。それが本当なら、相当不味い事になった。俺はもう霊力が無い。身体強化に回せる量も無い程だ。位置の特定すら厳しいのに、そこからまた一手間あるのか。これは不味い。
いや、諦めるべきではない。根性論にはなるが、この際無駄なポリシーは捨てよう。残りカスでもあるんだ。使え。霊力を極限まで練るんだ。根性見せろ、八神蒼佑。
俺は奴の死体に手を当て、術式を使う。一刻でも早く、位置を特定しなければ。タイマーは既に、残り五分を切った。時間が無い。早く。
霊力が減る。俺は事前に用意しておいた、霊力の担保を使い、ほんの少しだけ霊力を増やす。そしてまた、術式に神経を集中させる。
「見つけた」
そして数十秒で、俺は答えに辿り着いた。この屋敷の真下。地下室の、更に下。見つけた。
これで後は掘るだけ。俺は体を強化しようとして、体に力を込めた。
しかし、そこで俺は、自分の体に力が入らない事に気が付いた。疲労か霊力切れに因る不調か。どちらにせよ、俺は何もできない。詰んだ。
先生はここに気が付いているだろうか。ああでも、先生はアレの位置を知らない。今すぐ来てくれないかな。
俺は、そんな事を考えながら、意識を手放そうとした。その瞬間、一筋の光が、目に飛び込んで来た。
「八神くん!無事かい!?」
先生が来てくれた。俺は無理矢理に笑い、「絶好調ですよ」と、嘘を吐いた。
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