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#3 指名依頼
#3ー6 渡辺家
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彼の母親から渡された住所に向かうと、そこにはデカい屋敷があった。
いや、デカい。先生の実家よりも少しデカい。
驚いていると、正面の門から彼と彼の母親が出て来た。
「ようこそいらっしゃいました。改めて自己紹介を。私の名前は渡辺涼子。こちらが私の息子の渡辺義明。生まれをお話しなかった無礼をお許しください」
驚いた。まさか渡辺家の人間だったとは。ならば、渡辺兄弟の親戚か。聞いてみた所、従兄弟とのことだった。
そして、彼等に案内されるまま、俺達は屋敷の奥に進んでいく。広い。それに魔除けの結界も感じる。やはり平安の世から続く、退魔の一族。呪術の対策が半端じゃない。
「にしても、渡辺家の人間とは驚いた」
「本当ですね。まさかお叱りでも……」
少し不安な俺に、先生は「立場は五分五分。それは無いだろう」と言った。そうだと良いんだがな……
暫く歩いて行くと、突き当りの部屋に辿り着いた。看板には『食堂』と書かれている。やはりタダ飯!こんなに嬉しい事は無い!
その部屋には、既に渡辺家現当主、渡辺颯太郎と、渡辺兄弟の渡辺修一と、渡辺修二が居た。
「お客さんって八神さんと咲良さんだったんだ」
「それによしちゃんも居る」
どうやら彼等と義明君は仲が良いらしい。ならば、問題があるとすれば颯太郎さんか。優しそうな顔をしてるが、油断はしない方が良いだろう。
そして、食事会が始まった。出て来る料理は、どれも洗練された味で、見た目も良かった。まるでどこぞの高級旅館の夕食のようだ。
しかし、以前の岩戸家のような気分ではなかった。颯太郎さんの話が、聞いてて気分が悪い物だったからだ。
「いやしかし、出来損ないの義明が、ここまで強くなるとは……一体どんな手を使ったんですか?」
「基本的な事をおさらいして、弱点を補っただけですよ」
どんな言葉にも、『出来損ない』『修一達の出涸らし』等、義明君を貶す言葉を使う。これでは、彼が傷つくのも無理は無い。ここまでの事を長い事言われ続ければ、自己肯定感が低くなる事だろう。
食事が終わった頃、颯太郎さんは俺達に話かけて来た。
「お二人共、どうか今後も我々と、良い関係を築いて行きましょう。それが、我々にとっての最善の道の筈」
「はあ……まあ、よろしくお願いします」
やはり胸糞悪い。要するに、何かあれば我らの味方をしろだろう?全く人の教え子を貶しておいて図々しい。
俺達は、一応挨拶だけして、事務所に戻った。
「何なんだあいつ!身内とは言え、前途ある若者にあんな言葉!」
「あの家が求めてたのは、努力でなる秀才じゃかった。笑いながら高みへ登る、天才だっただけでしょう」
先生は、颯太郎さんの態度に、相当腹を立てたらしく、事務所に戻っても文句を垂れている。タダ飯にありつけたのは嬉しいが、気分は悪い。
「それに、彼は自分の力で白金級まで行ったのに、彼を未だ『出来損ない』と罵るとは!」
「一度否定しておいて手のひら返しなんて、彼等の無駄なプライドが許さないんでしょう。無駄なプライドなんて、障害でしかないのに……」
先生を宥めながら、俺は風呂の支度をする。もう九時だ。風呂に入れば、ある程度の嫌な事は忘れられる。さっさと入ってもらおう。それで明日からまた元通りだ。
その後は、特に何か起こる訳でもなく、一日が終わった。
いや、デカい。先生の実家よりも少しデカい。
驚いていると、正面の門から彼と彼の母親が出て来た。
「ようこそいらっしゃいました。改めて自己紹介を。私の名前は渡辺涼子。こちらが私の息子の渡辺義明。生まれをお話しなかった無礼をお許しください」
驚いた。まさか渡辺家の人間だったとは。ならば、渡辺兄弟の親戚か。聞いてみた所、従兄弟とのことだった。
そして、彼等に案内されるまま、俺達は屋敷の奥に進んでいく。広い。それに魔除けの結界も感じる。やはり平安の世から続く、退魔の一族。呪術の対策が半端じゃない。
「にしても、渡辺家の人間とは驚いた」
「本当ですね。まさかお叱りでも……」
少し不安な俺に、先生は「立場は五分五分。それは無いだろう」と言った。そうだと良いんだがな……
暫く歩いて行くと、突き当りの部屋に辿り着いた。看板には『食堂』と書かれている。やはりタダ飯!こんなに嬉しい事は無い!
その部屋には、既に渡辺家現当主、渡辺颯太郎と、渡辺兄弟の渡辺修一と、渡辺修二が居た。
「お客さんって八神さんと咲良さんだったんだ」
「それによしちゃんも居る」
どうやら彼等と義明君は仲が良いらしい。ならば、問題があるとすれば颯太郎さんか。優しそうな顔をしてるが、油断はしない方が良いだろう。
そして、食事会が始まった。出て来る料理は、どれも洗練された味で、見た目も良かった。まるでどこぞの高級旅館の夕食のようだ。
しかし、以前の岩戸家のような気分ではなかった。颯太郎さんの話が、聞いてて気分が悪い物だったからだ。
「いやしかし、出来損ないの義明が、ここまで強くなるとは……一体どんな手を使ったんですか?」
「基本的な事をおさらいして、弱点を補っただけですよ」
どんな言葉にも、『出来損ない』『修一達の出涸らし』等、義明君を貶す言葉を使う。これでは、彼が傷つくのも無理は無い。ここまでの事を長い事言われ続ければ、自己肯定感が低くなる事だろう。
食事が終わった頃、颯太郎さんは俺達に話かけて来た。
「お二人共、どうか今後も我々と、良い関係を築いて行きましょう。それが、我々にとっての最善の道の筈」
「はあ……まあ、よろしくお願いします」
やはり胸糞悪い。要するに、何かあれば我らの味方をしろだろう?全く人の教え子を貶しておいて図々しい。
俺達は、一応挨拶だけして、事務所に戻った。
「何なんだあいつ!身内とは言え、前途ある若者にあんな言葉!」
「あの家が求めてたのは、努力でなる秀才じゃかった。笑いながら高みへ登る、天才だっただけでしょう」
先生は、颯太郎さんの態度に、相当腹を立てたらしく、事務所に戻っても文句を垂れている。タダ飯にありつけたのは嬉しいが、気分は悪い。
「それに、彼は自分の力で白金級まで行ったのに、彼を未だ『出来損ない』と罵るとは!」
「一度否定しておいて手のひら返しなんて、彼等の無駄なプライドが許さないんでしょう。無駄なプライドなんて、障害でしかないのに……」
先生を宥めながら、俺は風呂の支度をする。もう九時だ。風呂に入れば、ある程度の嫌な事は忘れられる。さっさと入ってもらおう。それで明日からまた元通りだ。
その後は、特に何か起こる訳でもなく、一日が終わった。
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