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No.4 驚愕
File:1 指名手配
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昼下がり。いや、夕暮れの前と言うべきか。私とジョセフ君は、いつものカフェで、頭を抱えていた。
「協会に指名手配……」
「まずったなぁ……」
協会で昨日、大々的に『指名手配』の報が広まった。その名前は『絵画泥棒』。詰まり私達だ。これで私達は明確に、協会と敵対したという事になる。
「顔は見られてねぇのが幸いだが……なぁ……」
「まぁ、上層部の人間を一人殺してこれなら、まだ良かった方じゃないか?そう思おう……」
「だがよぉ……」
上層部一名殺害は確定、容疑として、ダイアモンドクラスとプラチナクラスを複数名殺害……懸賞金の額を考えると、協会は私達を捕まえるのに、相当な人員を割いても不思議は無い。
恐らくアメリカに居る事はバレている。私達の所まで来るのも時間の問題か……
「ポジティブに行こう。私達は生きている。今後は一旦活動を休止……」
「そうも行かねぇ。早速次の絵画の情報が入ってるからな。幸い、こっちは中学の休み時間程度の時間で済みそうだぜ」
「……上層部との戦いで、君が調子に乗っていない事を祈るよ」
あぁしかし、見た感じは楽そうだ。所有者は一般人の老人……どうやら、通常の絵画と混ざって市場に出た所を、偶然彼が手に入れたようだ。確かにこれなら、彼から私が直接買い取るだけで済むし、もし無理なようなら、他と同じようにすれば良い。
しかし、この案件はどうも……
「妙だと思わねぇか?」
「……君も、戦い以外で頭が回る時があるんだね」
「誉め言葉だろうな?」
「さぁね」
今回の案件は、絶対におかしい。この絵画が本当に魔女の絵画としよう。それなら、協会が回収に乗り出さない理由が無い。勿論、協会が出遅れた可能性が無い訳じゃない。だが、世界中に根を張っている協会が、ただの老人一人相手に出遅れるか?
だがもし、この老人が協会を出し抜く程の人物だとするのなら、それらの説明がつく。無理矢理ではあるが。しかしそんな個人が居るとは……
「……この老人についての情報は?」
「そこが問題だ。この老人、これといった功績も無ぇんだ。何かのスポーツで良い成績を収めた訳でも、何かの学問で大成した訳でもねぇ。だから調べても、これといった情報が出て来ねぇ」
「だが本当にただのご老人が、絵画を手に入れられる訳も無い」
「そゆ事。一応言っとくが、協会の偽装って事も、コイツが協会関係者って事もねぇ。魔術師でも錬金術師でもなんでもねぇ、本当にただの一般人。益々不気味だろ?」
ジョセフ君がこう言う位だ。本当に何も無いのか。この老人が只者ではないのは確実だが、対策のしようが無い。まぁ、私が普通に絵画を買えば良い話だ。問題はあるが、クリアは容易。
「取り敢えず、私が個人で接触して話をしてみよう。それで絵画を買えればそれで良いし、買えなかったらまた話し合おう」
「分かった」
また一波乱ありそうだ……協会の上層部とやりあった直後ではキツイが、まぁなんとかなるだろう。
あぁそう言えば、まだやり残した事があった。私はバッグをもう一度膝の上に置き、「そう言えば」と話を切り出した。
「何だ?」
「この前のお礼をしていなかったと思ってね。君は私を攻撃から守ってくれただろう?君は命の恩人のような物だ。そのお礼を忘れていた」
「なんだよ珍しいな。酒か煙草でもくれるのか?」
君は本当に、酒と煙草が好きだよなぁ。未成年の癖に。あまり褒められた物ではないが、何も言うまい。昔は私も、そういう嗜好品に興味があった物だ。
「いや。流石に命を救ってくれたお礼の品に値するような物は持っていない」
「じゃあ何だ?何かくれるんだろ?」
「ん~そうだねぇ……」
考えてみれば、ここまで大きな事はしてもらった事が無い……いや、一度だけあるか。まぁこういう時、どういう風に恩を返せば良いのか分からない。さてどうしよう……あ、そうだ。
「私とセックスでもしてみるかい?」
「っ!?」
おっとお茶を吹き出した。ジョセフ君が横を向いていたお陰で、こっちまでは掛かって来なかったのだけは幸いだ。
「汚いよ。気を付けた方が良い」
「何言ってんだお前!?ま、え……何言ってんだ!?」
「だから私と……」
「そういう事じゃねぇ!」
確かに脈絡が無かったな。それは認めよう。私の悪い癖だ。偶に話の流れが飛んでしまう。まぁ、後から補足すれば補完可能な訳だが。
「見た所、君童貞だろう?女を教えてあげようという事さ」
「うっせぇわ!それが礼になるってか!?」
「まぁ、そこは君に任せるよ。嗜好品の方が良いと言うなら、少し時間を掛けてから渡そう」
「あぁ是非そうしてくれ!」
ふむ……命の恩に報いる事ができるような酒か煙草……少し調べてみようか。かなり金と時間と労力が掛かるだろうが、そこは問題無いだろう。むしろそれらだけで良いのなら安い。
「しかし、本当に良いのかい?君なら酒程度いくらでも……」
「良いんだよ!別に女なんか興味ねーし!?」
「興味ある子は皆そう言う……」
「だーもう出てけ!今日はもう店じまいだ!」
あらら。追い出されてしまったか。まぁ彼の繊細な所に触れてしまったのだし、仕方無いか。それに彼は美形だし、そういう機会が無かっただけで、今後はどうなるか分からない。余計なお世話だったようだ。
さて。今月は少し節約しないとかもな。
「協会に指名手配……」
「まずったなぁ……」
協会で昨日、大々的に『指名手配』の報が広まった。その名前は『絵画泥棒』。詰まり私達だ。これで私達は明確に、協会と敵対したという事になる。
「顔は見られてねぇのが幸いだが……なぁ……」
「まぁ、上層部の人間を一人殺してこれなら、まだ良かった方じゃないか?そう思おう……」
「だがよぉ……」
上層部一名殺害は確定、容疑として、ダイアモンドクラスとプラチナクラスを複数名殺害……懸賞金の額を考えると、協会は私達を捕まえるのに、相当な人員を割いても不思議は無い。
恐らくアメリカに居る事はバレている。私達の所まで来るのも時間の問題か……
「ポジティブに行こう。私達は生きている。今後は一旦活動を休止……」
「そうも行かねぇ。早速次の絵画の情報が入ってるからな。幸い、こっちは中学の休み時間程度の時間で済みそうだぜ」
「……上層部との戦いで、君が調子に乗っていない事を祈るよ」
あぁしかし、見た感じは楽そうだ。所有者は一般人の老人……どうやら、通常の絵画と混ざって市場に出た所を、偶然彼が手に入れたようだ。確かにこれなら、彼から私が直接買い取るだけで済むし、もし無理なようなら、他と同じようにすれば良い。
しかし、この案件はどうも……
「妙だと思わねぇか?」
「……君も、戦い以外で頭が回る時があるんだね」
「誉め言葉だろうな?」
「さぁね」
今回の案件は、絶対におかしい。この絵画が本当に魔女の絵画としよう。それなら、協会が回収に乗り出さない理由が無い。勿論、協会が出遅れた可能性が無い訳じゃない。だが、世界中に根を張っている協会が、ただの老人一人相手に出遅れるか?
だがもし、この老人が協会を出し抜く程の人物だとするのなら、それらの説明がつく。無理矢理ではあるが。しかしそんな個人が居るとは……
「……この老人についての情報は?」
「そこが問題だ。この老人、これといった功績も無ぇんだ。何かのスポーツで良い成績を収めた訳でも、何かの学問で大成した訳でもねぇ。だから調べても、これといった情報が出て来ねぇ」
「だが本当にただのご老人が、絵画を手に入れられる訳も無い」
「そゆ事。一応言っとくが、協会の偽装って事も、コイツが協会関係者って事もねぇ。魔術師でも錬金術師でもなんでもねぇ、本当にただの一般人。益々不気味だろ?」
ジョセフ君がこう言う位だ。本当に何も無いのか。この老人が只者ではないのは確実だが、対策のしようが無い。まぁ、私が普通に絵画を買えば良い話だ。問題はあるが、クリアは容易。
「取り敢えず、私が個人で接触して話をしてみよう。それで絵画を買えればそれで良いし、買えなかったらまた話し合おう」
「分かった」
また一波乱ありそうだ……協会の上層部とやりあった直後ではキツイが、まぁなんとかなるだろう。
あぁそう言えば、まだやり残した事があった。私はバッグをもう一度膝の上に置き、「そう言えば」と話を切り出した。
「何だ?」
「この前のお礼をしていなかったと思ってね。君は私を攻撃から守ってくれただろう?君は命の恩人のような物だ。そのお礼を忘れていた」
「なんだよ珍しいな。酒か煙草でもくれるのか?」
君は本当に、酒と煙草が好きだよなぁ。未成年の癖に。あまり褒められた物ではないが、何も言うまい。昔は私も、そういう嗜好品に興味があった物だ。
「いや。流石に命を救ってくれたお礼の品に値するような物は持っていない」
「じゃあ何だ?何かくれるんだろ?」
「ん~そうだねぇ……」
考えてみれば、ここまで大きな事はしてもらった事が無い……いや、一度だけあるか。まぁこういう時、どういう風に恩を返せば良いのか分からない。さてどうしよう……あ、そうだ。
「私とセックスでもしてみるかい?」
「っ!?」
おっとお茶を吹き出した。ジョセフ君が横を向いていたお陰で、こっちまでは掛かって来なかったのだけは幸いだ。
「汚いよ。気を付けた方が良い」
「何言ってんだお前!?ま、え……何言ってんだ!?」
「だから私と……」
「そういう事じゃねぇ!」
確かに脈絡が無かったな。それは認めよう。私の悪い癖だ。偶に話の流れが飛んでしまう。まぁ、後から補足すれば補完可能な訳だが。
「見た所、君童貞だろう?女を教えてあげようという事さ」
「うっせぇわ!それが礼になるってか!?」
「まぁ、そこは君に任せるよ。嗜好品の方が良いと言うなら、少し時間を掛けてから渡そう」
「あぁ是非そうしてくれ!」
ふむ……命の恩に報いる事ができるような酒か煙草……少し調べてみようか。かなり金と時間と労力が掛かるだろうが、そこは問題無いだろう。むしろそれらだけで良いのなら安い。
「しかし、本当に良いのかい?君なら酒程度いくらでも……」
「良いんだよ!別に女なんか興味ねーし!?」
「興味ある子は皆そう言う……」
「だーもう出てけ!今日はもう店じまいだ!」
あらら。追い出されてしまったか。まぁ彼の繊細な所に触れてしまったのだし、仕方無いか。それに彼は美形だし、そういう機会が無かっただけで、今後はどうなるか分からない。余計なお世話だったようだ。
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