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No.3 果実
File:17 平穏
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「平和だねぇ……」
「そうだねぇ……朝一番に目にしたのが、玄関で倒れてるソフィアじゃなかったらだけどねぇ……」
「そうだねぇ……」
私はベッドに横たわっている状態で、エラニに介抱されている。命の危機を脱し、無事に家に帰って来た私は、玄関の鍵を閉めた所で意識を失った。そして、目を覚ました時にはベッドの上だ。
エラニが言うには、いつも通り私の家に遊びに来たが、返事は無く、表口だけでなく裏口まで鍵が閉まっていたので、仕方なくピッキングをして玄関を開けたそうだ。すると私が倒れていた。エラニは慌てて私の服を脱がして、ベッドへ運んだそうだ。
「ソフィア。なんであんな所に倒れてたの?凄く顔青かったし、体温も……」
「最近忙しくてね……寝不足だよ。貧血かな。それと疲れだろう」
「ふぅん……」
納得してない様子だね。まぁそうだろう。貧血と疲労でああなるとかもうかなり鬼気迫った状況だ。そんな状態になった私が、エラニに連絡しない訳が無い。まぁ、本当の理由を言う理由も無い訳だが。吸血鬼の友人に血液を与えたとか、実際言える訳が無い。
まぁ、言わなくても然したる問題は無い。疲労が溜まっているのも、寝不足なのも事実だ。嘘を吐いているとも、吐いていないとも言える。要するに、私は悪い事はしていない。大丈夫。
「そんな事よりエラニ。リンゴを剥くのは結構だけど、今日は何もしないのかい?」
「流石に今のソフィア相手に悪戯できないよ。取り敢えず消化に良い物は買って来たよ」
「自炊できたのかい?」
「できるよ。ある程度はね」
まぁそうか。一応一人暮らししている訳だし、できないと生活が成り立たないか。少しばかり見直したよ。真面に社会生活営めるのか怪しいと思ってたんだが……やっぱりこんな童顔でも、しっかりしてる子なんだよな。
そうだ。後でこれらの食事の代金払っておかないと。介抱してくれたお礼も兼ねて、少し多めに……
「ほらソフィア。できたよ。あったまると思うから早めに食べて」
「ありがとう。後でお金渡すよ」
「良いよ。いつも迷惑掛けてるお礼って思ってくれれば」
こうも至れり尽くせりだと、どうも違和感があるな。何せ普段が……いや、こう考えるのはよそう。流石に失礼だ。
「せっかく来てくれたのに、何もしてやれない。済まないね」
「大丈夫だよ。最近忙しかったなら、こういう日があっても良いと思うしね」
確かに、こんな風に休める日というのは中々貴重だ。堪能しておこう。あ~温かい。ほっこりする。
「どうせ来たんだし、話し相手になるよ?」
「ありがたいね。こうも疲れていると、話し相手が居るだけで気が休まるよ」
その後、私達はゆったりとした一日を過ごし、疲れた体を癒した。エラニは本当に、爆弾を仕掛けて行かなかった。
随分と、見くびられた物だと思う。ソフィアが何も言わない時は、追及されたくない時だって分かってるけど。それでも、何も勘付かれていないとでも思ったのかな。
「嘘吐くの、下手だよねぇ……」
そりゃ、私が上手いだなんて言わないけどさ。それでも、下手だと思う。
おかしい。休日なのに、扉を叩いてもソフィアから返事が無い。裏口……も空いてないみたい。出掛けてる?ソフィアが?こんな朝早くから?流石に無いと思うんだけど……
しょうがない。ピッキングして入ろう。鍵の造りはそこそこ古いし、今持っている針金だけでもできる筈。ここをこうして弄繰り回して……よし開いた。これで……
次の瞬間、背筋が凍ったような感覚が私を襲った。生きた心地がしないっていうのは、きっとああいう事を言うんだろう。
「ソフィア!?ソフィア大丈夫!?」
何でこんな事に……こんな事ならもっと早く、本当の事を言っておけば……
いや大丈夫だ。顔は青いし、体も冷たいけど、息はしている。目立った外傷も無い。大丈夫。取り敢えずソフィアの部屋のベッドまで運んで……いやその前に服を脱がした方が楽なんじゃ?でも流石に本人に許可無く……とか言ってる場合じゃないよね!
「ごめん!ソフィア!」
そう言って、ソフィアの首元のボタンに手を伸ばした時だった。そこに傷があるのに気が付いた。それも一つではない。小さな穴のような傷が二つ、首にあった。
なんでこんな所に傷が……位置とおおよそ深さから見て、周囲に血が付いててもおかしくない。なのに血は出てない。だけど処置されたような感じでもない。何故こんな……
いやそれより、今はソフィアを楽な状態にしてベッドに寝かせないと。えっとこことここのボタンを外して……寝かせたら何か食べ物を買って来よう。
これで取り敢えず、やれる事はやった。こうして見ると、ソフィアって結構がっしりしてるんだなぁ。筋トレの道具も無いのに、どこで鍛えてるんだろ。
「うぅ……」
「あ、ソフィア」
「エラニ?何で……て言うかここは……」
「玄関で倒れてたからここに運んだの。勝手に開錠したから、そこはごめん」
「そうか……うん。助かったよ」
無理してる……訳じゃない。ただそれでも、何かあったのは確実。何も無く、首にあんな、不自然な傷ができる訳が無い。
「ソフィア。なんであんな所に倒れてたの?凄く顔青かったし、体温も……」
「最近忙しくてね……寝不足だよ。貧血かな。それと疲れだろう」
「ふぅん……」
答える気は無し……こういう時は探るだけ無駄だ。今はなるべく、ソフィアが休めるようにしてあげよう。無理はさせないよう、安心できるよう、話し相手になってあげよう。
ソフィア。私はソフィアが何をしてるのかは知らない。だけど、守りたいって思ってるよ。私もいつか、本当の私を見せるから、だからいつか、ソフィアが抱える本当の事も、話してくれると嬉しいな。
「そうだねぇ……朝一番に目にしたのが、玄関で倒れてるソフィアじゃなかったらだけどねぇ……」
「そうだねぇ……」
私はベッドに横たわっている状態で、エラニに介抱されている。命の危機を脱し、無事に家に帰って来た私は、玄関の鍵を閉めた所で意識を失った。そして、目を覚ました時にはベッドの上だ。
エラニが言うには、いつも通り私の家に遊びに来たが、返事は無く、表口だけでなく裏口まで鍵が閉まっていたので、仕方なくピッキングをして玄関を開けたそうだ。すると私が倒れていた。エラニは慌てて私の服を脱がして、ベッドへ運んだそうだ。
「ソフィア。なんであんな所に倒れてたの?凄く顔青かったし、体温も……」
「最近忙しくてね……寝不足だよ。貧血かな。それと疲れだろう」
「ふぅん……」
納得してない様子だね。まぁそうだろう。貧血と疲労でああなるとかもうかなり鬼気迫った状況だ。そんな状態になった私が、エラニに連絡しない訳が無い。まぁ、本当の理由を言う理由も無い訳だが。吸血鬼の友人に血液を与えたとか、実際言える訳が無い。
まぁ、言わなくても然したる問題は無い。疲労が溜まっているのも、寝不足なのも事実だ。嘘を吐いているとも、吐いていないとも言える。要するに、私は悪い事はしていない。大丈夫。
「そんな事よりエラニ。リンゴを剥くのは結構だけど、今日は何もしないのかい?」
「流石に今のソフィア相手に悪戯できないよ。取り敢えず消化に良い物は買って来たよ」
「自炊できたのかい?」
「できるよ。ある程度はね」
まぁそうか。一応一人暮らししている訳だし、できないと生活が成り立たないか。少しばかり見直したよ。真面に社会生活営めるのか怪しいと思ってたんだが……やっぱりこんな童顔でも、しっかりしてる子なんだよな。
そうだ。後でこれらの食事の代金払っておかないと。介抱してくれたお礼も兼ねて、少し多めに……
「ほらソフィア。できたよ。あったまると思うから早めに食べて」
「ありがとう。後でお金渡すよ」
「良いよ。いつも迷惑掛けてるお礼って思ってくれれば」
こうも至れり尽くせりだと、どうも違和感があるな。何せ普段が……いや、こう考えるのはよそう。流石に失礼だ。
「せっかく来てくれたのに、何もしてやれない。済まないね」
「大丈夫だよ。最近忙しかったなら、こういう日があっても良いと思うしね」
確かに、こんな風に休める日というのは中々貴重だ。堪能しておこう。あ~温かい。ほっこりする。
「どうせ来たんだし、話し相手になるよ?」
「ありがたいね。こうも疲れていると、話し相手が居るだけで気が休まるよ」
その後、私達はゆったりとした一日を過ごし、疲れた体を癒した。エラニは本当に、爆弾を仕掛けて行かなかった。
随分と、見くびられた物だと思う。ソフィアが何も言わない時は、追及されたくない時だって分かってるけど。それでも、何も勘付かれていないとでも思ったのかな。
「嘘吐くの、下手だよねぇ……」
そりゃ、私が上手いだなんて言わないけどさ。それでも、下手だと思う。
おかしい。休日なのに、扉を叩いてもソフィアから返事が無い。裏口……も空いてないみたい。出掛けてる?ソフィアが?こんな朝早くから?流石に無いと思うんだけど……
しょうがない。ピッキングして入ろう。鍵の造りはそこそこ古いし、今持っている針金だけでもできる筈。ここをこうして弄繰り回して……よし開いた。これで……
次の瞬間、背筋が凍ったような感覚が私を襲った。生きた心地がしないっていうのは、きっとああいう事を言うんだろう。
「ソフィア!?ソフィア大丈夫!?」
何でこんな事に……こんな事ならもっと早く、本当の事を言っておけば……
いや大丈夫だ。顔は青いし、体も冷たいけど、息はしている。目立った外傷も無い。大丈夫。取り敢えずソフィアの部屋のベッドまで運んで……いやその前に服を脱がした方が楽なんじゃ?でも流石に本人に許可無く……とか言ってる場合じゃないよね!
「ごめん!ソフィア!」
そう言って、ソフィアの首元のボタンに手を伸ばした時だった。そこに傷があるのに気が付いた。それも一つではない。小さな穴のような傷が二つ、首にあった。
なんでこんな所に傷が……位置とおおよそ深さから見て、周囲に血が付いててもおかしくない。なのに血は出てない。だけど処置されたような感じでもない。何故こんな……
いやそれより、今はソフィアを楽な状態にしてベッドに寝かせないと。えっとこことここのボタンを外して……寝かせたら何か食べ物を買って来よう。
これで取り敢えず、やれる事はやった。こうして見ると、ソフィアって結構がっしりしてるんだなぁ。筋トレの道具も無いのに、どこで鍛えてるんだろ。
「うぅ……」
「あ、ソフィア」
「エラニ?何で……て言うかここは……」
「玄関で倒れてたからここに運んだの。勝手に開錠したから、そこはごめん」
「そうか……うん。助かったよ」
無理してる……訳じゃない。ただそれでも、何かあったのは確実。何も無く、首にあんな、不自然な傷ができる訳が無い。
「ソフィア。なんであんな所に倒れてたの?凄く顔青かったし、体温も……」
「最近忙しくてね……寝不足だよ。貧血かな。それと疲れだろう」
「ふぅん……」
答える気は無し……こういう時は探るだけ無駄だ。今はなるべく、ソフィアが休めるようにしてあげよう。無理はさせないよう、安心できるよう、話し相手になってあげよう。
ソフィア。私はソフィアが何をしてるのかは知らない。だけど、守りたいって思ってるよ。私もいつか、本当の私を見せるから、だからいつか、ソフィアが抱える本当の事も、話してくれると嬉しいな。
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