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No.3 果実
File:7 裁きの十字架
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ソフィアの言葉の意味は分かる。時間稼ぎをしろと言いたいらしい。それは詰まり、コイツに魔眼は効かない事を示している。そんな事があり得るとは思えないが、ソフィアが自分でどうもしなかったという事は、何か策があるんだろう。
「遅い」
「うぐっ!?」
強いな畜生!全然攻撃当たんねぇし!斧つっても片手斧で結構小回り効くんだが!?ジジイとは思えねぇ動きしてんぞ!キャプテンアメリカじゃねぇんだから歳相応の動きにしてくれよ!
身体強化魔術の精度が高い上、それで上がったフィジカルを生かせる技術もある!身体能力ならこっちも負けてねぇ上、俺は得物を使ってんのになぁ!?それを全部流して来る!
「空気を消す魔術か。消せるのは掌を起点にバスケットボール一個分程度。しかしクールタイムは無いから範囲なんて無いも同然。多少体制を崩されるが、その程度だ」
俺がメインで使う魔術の中身まで言い当てられるのかよ!格が違うってのはこういう事ね!相手の魔術は距離を開けないと使えないらしいが、それもハッタリだろうしなぁ!だが相手のメインウェポンは潰してる!時間稼ぎだけならこのまま……
「遠距離主体相手に近接を仕掛けるのは良いが、距離を取らないという事は、相手の得意を潰す事と、相手の土俵に入っている可能性を同時に考慮するという事だ。こんな風にな」
「ゲッ!」
腕を掴まれた。そう俺が認識したのと、腕の骨が折られ、千切り捨てられたのはほぼ同時の事だった。怯んだ一瞬で距離を取られ、また目で捉えられない『何か』が飛んで来る。
「片手は斧で埋まっている。そして再生に掛かる時間は不明だが、決して短くない。詰まり、この間、お前はただ身体能力に優れているだけの一般人だ」
「嘗めんじゃねぇ!」
俺は斧を投げ、相手が後退した所に魔術を使って、こっちの間合いに立たせ続ける。そして斧を広い、至近距離投げる。腕はまだ再生しないが、これの繰り返しで十分時間稼ぎはできる。
だが、コイツはそれでどうにかなるレベルじゃない!攻撃一つも当たらねぇし、堅実に反撃して来るから、俺には一方的にダメージ蓄積するし!傷再生させるだけで体力ゴリゴリ無くなるんだよ!
「武術というより、喧嘩だな。目も体も良いが、それを生かせる技術が無い」
「生憎ストリート出身なモンでねぇ!」
勝ってるのは身体能力だけかよ!『目が良い』なんて褒めてる癖、そんな所まで見抜ける辺りそっちの方が良いだろうがよ!魔術も技術もあっちが上、拳銃も初手で壊されたから武器は斧しか無ぇし!
あぁクソ!その道の達人に稽古受けさせられてるような気分だよ畜生!ダメな所は受け流しながら反撃と同時にダメ出しされるしよぉ!
「お前は自身を一流と思っているのか?それは三流の考えだ。お前は策を一つしか用意してない上、戦闘技術は三流にも満たない。『門前の小僧習わぬ経を読む』という日本の諺そのままだな」
あぁ嘗め腐ってくれるなクソジジイ!できるならその禿げた頭に千本針ぶっ刺して髪の代わりにしてやりてぇよクソ!
「うるせぇよジジイ!」
「怒るのは図星だからだな。それでは相手に『自分はもう打てる手がありません』と言ってるような物だ」
あぁその通りだよ!俺ができるのは不意打ち程度だ!だけど俺はまだ手がある!相手は俺の魔術を『空気を消す』と表現した。それなら、俺が物も消せる事を急に出せば、十分勝負になる!
「もう手が無いなら、そろそろ決めるが?」
「そっちの魔術は遠距離じゃねぇと使えねぇんだろ!?」
「メインはな。だが、魔術は掛け合わせでいくらでも魔法に近付ける」
次の瞬間、俺の体は無数の『何か』に貫かれた。肩、腕、腹、頭、足……体の至る所に風穴が空く。何が起こったかを理解する前に、俺の体は地面に伏した。
「ふむ。これでも絶命しないか。心臓を消し飛ばしてもまだ死なないとは……正に法の外だな」
「ぐっ……がぁ……」
ここまで手傷を負っては、再生も効きが悪くなる。体中穴が開いてるせいで、指の一本すら真面に動かせねぇ。
あ~あ。詰みか。
「十年後なら、私もより衰え、お前の肉体も全盛に達しているだろう。もしその状態で戦っていたら……」
そういう慰めは止めてくれよ。たった十年で縮まる差じゃなかった。同じ条件で戦ったとして……あ~ダメだ。考え纏まんねぇ。全然ダメだな~……俺も頑張った方だと思ったんだけどな~……
「このまま傷が塞がらないようにし続けた状態で、朝を迎えれば流石に死ぬだろう。杭と鎖どこにやったか……」
アタリだよ畜生。このままじゃ死ぬよな~。ソフィアがどうにかしてくれたら良いんだがな……
次の瞬間、視界が強い光に包まれた。
はっ!?一体何が……
「若。行きますよ。ほら輸血パック」
「助かる」
成程兄弟共か。生きてたとは驚きだ。頭に穴が空いてた筈……あれ?どうだったか。イマイチ思い出せん。取り敢えず今は、輸血パックの血液飲も。回復が早まるだろうし。
「逃げたな……アイツの仲間は全員絶命した筈だが……?」
閃光弾か。あの女が戻って来たとは思えない。ジョセフの仲間も魔物の特性を持っていたという事か。全く面倒な奴らだ。
しかし、あの程度か。それなら問題無い。魔眼の女が唯一の不安要素だが、ジョセフはこの分身相手にも勝てない。それに、あの絵画を渡す訳には行かないんだよな。索敵でもするか。
「遅い」
「うぐっ!?」
強いな畜生!全然攻撃当たんねぇし!斧つっても片手斧で結構小回り効くんだが!?ジジイとは思えねぇ動きしてんぞ!キャプテンアメリカじゃねぇんだから歳相応の動きにしてくれよ!
身体強化魔術の精度が高い上、それで上がったフィジカルを生かせる技術もある!身体能力ならこっちも負けてねぇ上、俺は得物を使ってんのになぁ!?それを全部流して来る!
「空気を消す魔術か。消せるのは掌を起点にバスケットボール一個分程度。しかしクールタイムは無いから範囲なんて無いも同然。多少体制を崩されるが、その程度だ」
俺がメインで使う魔術の中身まで言い当てられるのかよ!格が違うってのはこういう事ね!相手の魔術は距離を開けないと使えないらしいが、それもハッタリだろうしなぁ!だが相手のメインウェポンは潰してる!時間稼ぎだけならこのまま……
「遠距離主体相手に近接を仕掛けるのは良いが、距離を取らないという事は、相手の得意を潰す事と、相手の土俵に入っている可能性を同時に考慮するという事だ。こんな風にな」
「ゲッ!」
腕を掴まれた。そう俺が認識したのと、腕の骨が折られ、千切り捨てられたのはほぼ同時の事だった。怯んだ一瞬で距離を取られ、また目で捉えられない『何か』が飛んで来る。
「片手は斧で埋まっている。そして再生に掛かる時間は不明だが、決して短くない。詰まり、この間、お前はただ身体能力に優れているだけの一般人だ」
「嘗めんじゃねぇ!」
俺は斧を投げ、相手が後退した所に魔術を使って、こっちの間合いに立たせ続ける。そして斧を広い、至近距離投げる。腕はまだ再生しないが、これの繰り返しで十分時間稼ぎはできる。
だが、コイツはそれでどうにかなるレベルじゃない!攻撃一つも当たらねぇし、堅実に反撃して来るから、俺には一方的にダメージ蓄積するし!傷再生させるだけで体力ゴリゴリ無くなるんだよ!
「武術というより、喧嘩だな。目も体も良いが、それを生かせる技術が無い」
「生憎ストリート出身なモンでねぇ!」
勝ってるのは身体能力だけかよ!『目が良い』なんて褒めてる癖、そんな所まで見抜ける辺りそっちの方が良いだろうがよ!魔術も技術もあっちが上、拳銃も初手で壊されたから武器は斧しか無ぇし!
あぁクソ!その道の達人に稽古受けさせられてるような気分だよ畜生!ダメな所は受け流しながら反撃と同時にダメ出しされるしよぉ!
「お前は自身を一流と思っているのか?それは三流の考えだ。お前は策を一つしか用意してない上、戦闘技術は三流にも満たない。『門前の小僧習わぬ経を読む』という日本の諺そのままだな」
あぁ嘗め腐ってくれるなクソジジイ!できるならその禿げた頭に千本針ぶっ刺して髪の代わりにしてやりてぇよクソ!
「うるせぇよジジイ!」
「怒るのは図星だからだな。それでは相手に『自分はもう打てる手がありません』と言ってるような物だ」
あぁその通りだよ!俺ができるのは不意打ち程度だ!だけど俺はまだ手がある!相手は俺の魔術を『空気を消す』と表現した。それなら、俺が物も消せる事を急に出せば、十分勝負になる!
「もう手が無いなら、そろそろ決めるが?」
「そっちの魔術は遠距離じゃねぇと使えねぇんだろ!?」
「メインはな。だが、魔術は掛け合わせでいくらでも魔法に近付ける」
次の瞬間、俺の体は無数の『何か』に貫かれた。肩、腕、腹、頭、足……体の至る所に風穴が空く。何が起こったかを理解する前に、俺の体は地面に伏した。
「ふむ。これでも絶命しないか。心臓を消し飛ばしてもまだ死なないとは……正に法の外だな」
「ぐっ……がぁ……」
ここまで手傷を負っては、再生も効きが悪くなる。体中穴が開いてるせいで、指の一本すら真面に動かせねぇ。
あ~あ。詰みか。
「十年後なら、私もより衰え、お前の肉体も全盛に達しているだろう。もしその状態で戦っていたら……」
そういう慰めは止めてくれよ。たった十年で縮まる差じゃなかった。同じ条件で戦ったとして……あ~ダメだ。考え纏まんねぇ。全然ダメだな~……俺も頑張った方だと思ったんだけどな~……
「このまま傷が塞がらないようにし続けた状態で、朝を迎えれば流石に死ぬだろう。杭と鎖どこにやったか……」
アタリだよ畜生。このままじゃ死ぬよな~。ソフィアがどうにかしてくれたら良いんだがな……
次の瞬間、視界が強い光に包まれた。
はっ!?一体何が……
「若。行きますよ。ほら輸血パック」
「助かる」
成程兄弟共か。生きてたとは驚きだ。頭に穴が空いてた筈……あれ?どうだったか。イマイチ思い出せん。取り敢えず今は、輸血パックの血液飲も。回復が早まるだろうし。
「逃げたな……アイツの仲間は全員絶命した筈だが……?」
閃光弾か。あの女が戻って来たとは思えない。ジョセフの仲間も魔物の特性を持っていたという事か。全く面倒な奴らだ。
しかし、あの程度か。それなら問題無い。魔眼の女が唯一の不安要素だが、ジョセフはこの分身相手にも勝てない。それに、あの絵画を渡す訳には行かないんだよな。索敵でもするか。
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