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第七話 里を守れ!メルの決意 ~チャプター3~
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「………。」
姫様があの魔獣使い相手に行った拷問…もといインタビューの話。
その内容のすさまじさに馬車の中はなんかヘンな空気に包まれていた。
「……ゴメン、なんか怖い思いさせちゃったかしら?」
「あ、いや…。」
怖いというか、ドン引きだよ。
「…あ、そうそう。メルに渡すものがあるのよ。」
そう言って姫様は傍らにあった荷物から小さな木箱を取り出し、蓋を開けてみせる。
中に入っていたのは魔方陣が描かれた少々無骨なデザインのペンダントだった。
「これは?」
「これはね、悪意のある魔獣使いの隷属術から守ってくれるタリスマンよ。」
「タリスマン?」
「ウチの城にね、隷属術の研究をしている部門があるの。この間メルが魔獣使いに操られちゃったときの事をそこに相談してみたら、この試作品のタリスマンをくれたのよ。」
「姫様……」
こうやって人間や他の種族たちと同じように過ごしてるけど、私はラミア、モンスターだ。魔物を操れる魔獣使いによってまた意識を乗っ取られてしまうかもしれない。
でも、そんな私の為に姫様は動いてくれた。こんな嬉しい事って…
「でも、メルにこのままコレを渡すのはなんだか忍びないわ。」
「え…、なんで?」
「これはあくまで試作品なの。効果は保証するけれど、見た目がなんかすごくダサいでしょ?オシャレかわいいメルにこんなゴツいペンダントつけさせるのはアタシの美意識が許さないわ。」
「…?」
「だから、アタシがすぐにもっとイケてるデザインのものを作ってあげるから、今はこれで我慢してね。」
「姫様…あうっ…えぐっ」
姫様の心遣いに思わず涙を浮かべてしまう。
「…ちょっと、泣くのはまだ早いわよ。闇ハンターどもをとっ捕まえて、里のみんなを守るんでしょ?それが全部出来てから、思いっきり泣きましょ。」
「ひめ…さま…、うん!」
「トーリ湖まではまだあるわ。今から気を張ってても仕方ないから、外の景色でも眺めてリラックスしていきましょ。」
―――トーリ湖を目指し、馬車の列が林道を駆け抜けていく。
馬の速さもさることながら、途中の町で牽引する馬を交代させたりして、止まることなく馬車が走る。
そして、出発してから1日半ほど過ぎ―――
「あと半日もすればトーリ湖に着くわ。」
「うん…。」
「不安?」
「うん、正直…ね。」
「ここまで来たんだもの。今は信じて進むしかないわ。」
そう言いながら姫様が外の景色に目をやると―――
「ん?あれは?」
上空から何かがこちらに向かって飛んで来ているのを見つける。
「ちょっと!馬車を止めて!」
馬車が急停車し、降りた姫様がその飛行体を確認する。
「あれは…グリフォン?ウチのだわ!」
グリフォン。猛禽の上半身と獅子の下半身を持つ、数少ない飛行能力を持つ魔獣だ。
数はまだ少ないけど人間たちに貴重な移動手段として飼育されているそうだ。
そのグリフォンが私たちの目の前に降り立つ。そしてそれには王国の兵士が一人乗っていた。
「報告します!」
「何があったの?」
「闇ハンターの一団がラミアの集落への襲撃を始めました!」
「な?!」
ウソ…間に合わなかった!?
「現在周辺を張っていた先遣隊が応戦しておりますが、相手の数が多い上、中には強力な魔物を連れた魔獣使いもおり、こちらが苦戦を強いられています!」
「そ…んな……。」
失意の底に陥りそうになったが―――
「まだよ!そのグリフォン寄越しなさい!」
「で、殿下!?」
まだ諦めていなかった姫様はグリフォンに跨って―――
「メル!一緒に乗って!」
「あ…うん!」
私も姫様の後ろに乗り込む。
「飛ばすわよ!しっかり捕まって!」
私たちを乗せグリフォンは勢いよく飛び立つ!
「ひぃ~~~っ!」
「メル!ラミアの集落はどっち!?」
怖くて目をつぶっていた私は意を決して目を開く。
眼下には森が広がり、前方にはトーリ湖が一望できる。
「!?…あっち!」
トーリ湖の左方の森から幾筋もの煙が立ち昇っているのがみえた。
「煙が上がってる…あそこに集落があるのね!?」
「うん!」
「それじゃあ、急ぐわよ!」
戦場と化しているであろうラミアの里に向かい、グリフォンがスピードを上げ飛んでいく!
姫様があの魔獣使い相手に行った拷問…もといインタビューの話。
その内容のすさまじさに馬車の中はなんかヘンな空気に包まれていた。
「……ゴメン、なんか怖い思いさせちゃったかしら?」
「あ、いや…。」
怖いというか、ドン引きだよ。
「…あ、そうそう。メルに渡すものがあるのよ。」
そう言って姫様は傍らにあった荷物から小さな木箱を取り出し、蓋を開けてみせる。
中に入っていたのは魔方陣が描かれた少々無骨なデザインのペンダントだった。
「これは?」
「これはね、悪意のある魔獣使いの隷属術から守ってくれるタリスマンよ。」
「タリスマン?」
「ウチの城にね、隷属術の研究をしている部門があるの。この間メルが魔獣使いに操られちゃったときの事をそこに相談してみたら、この試作品のタリスマンをくれたのよ。」
「姫様……」
こうやって人間や他の種族たちと同じように過ごしてるけど、私はラミア、モンスターだ。魔物を操れる魔獣使いによってまた意識を乗っ取られてしまうかもしれない。
でも、そんな私の為に姫様は動いてくれた。こんな嬉しい事って…
「でも、メルにこのままコレを渡すのはなんだか忍びないわ。」
「え…、なんで?」
「これはあくまで試作品なの。効果は保証するけれど、見た目がなんかすごくダサいでしょ?オシャレかわいいメルにこんなゴツいペンダントつけさせるのはアタシの美意識が許さないわ。」
「…?」
「だから、アタシがすぐにもっとイケてるデザインのものを作ってあげるから、今はこれで我慢してね。」
「姫様…あうっ…えぐっ」
姫様の心遣いに思わず涙を浮かべてしまう。
「…ちょっと、泣くのはまだ早いわよ。闇ハンターどもをとっ捕まえて、里のみんなを守るんでしょ?それが全部出来てから、思いっきり泣きましょ。」
「ひめ…さま…、うん!」
「トーリ湖まではまだあるわ。今から気を張ってても仕方ないから、外の景色でも眺めてリラックスしていきましょ。」
―――トーリ湖を目指し、馬車の列が林道を駆け抜けていく。
馬の速さもさることながら、途中の町で牽引する馬を交代させたりして、止まることなく馬車が走る。
そして、出発してから1日半ほど過ぎ―――
「あと半日もすればトーリ湖に着くわ。」
「うん…。」
「不安?」
「うん、正直…ね。」
「ここまで来たんだもの。今は信じて進むしかないわ。」
そう言いながら姫様が外の景色に目をやると―――
「ん?あれは?」
上空から何かがこちらに向かって飛んで来ているのを見つける。
「ちょっと!馬車を止めて!」
馬車が急停車し、降りた姫様がその飛行体を確認する。
「あれは…グリフォン?ウチのだわ!」
グリフォン。猛禽の上半身と獅子の下半身を持つ、数少ない飛行能力を持つ魔獣だ。
数はまだ少ないけど人間たちに貴重な移動手段として飼育されているそうだ。
そのグリフォンが私たちの目の前に降り立つ。そしてそれには王国の兵士が一人乗っていた。
「報告します!」
「何があったの?」
「闇ハンターの一団がラミアの集落への襲撃を始めました!」
「な?!」
ウソ…間に合わなかった!?
「現在周辺を張っていた先遣隊が応戦しておりますが、相手の数が多い上、中には強力な魔物を連れた魔獣使いもおり、こちらが苦戦を強いられています!」
「そ…んな……。」
失意の底に陥りそうになったが―――
「まだよ!そのグリフォン寄越しなさい!」
「で、殿下!?」
まだ諦めていなかった姫様はグリフォンに跨って―――
「メル!一緒に乗って!」
「あ…うん!」
私も姫様の後ろに乗り込む。
「飛ばすわよ!しっかり捕まって!」
私たちを乗せグリフォンは勢いよく飛び立つ!
「ひぃ~~~っ!」
「メル!ラミアの集落はどっち!?」
怖くて目をつぶっていた私は意を決して目を開く。
眼下には森が広がり、前方にはトーリ湖が一望できる。
「!?…あっち!」
トーリ湖の左方の森から幾筋もの煙が立ち昇っているのがみえた。
「煙が上がってる…あそこに集落があるのね!?」
「うん!」
「それじゃあ、急ぐわよ!」
戦場と化しているであろうラミアの里に向かい、グリフォンがスピードを上げ飛んでいく!
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