異世界でもしにたい ~平凡転移者の異世界暮らし~

Tom Oak

文字の大きさ
上 下
24 / 48

第五話 トラウマ克服!?ゴブリン退治 ~チャプター3~

しおりを挟む
「何なの一体?…これをゴブリンが造ったっていうの!?」

逃げたゴブリンを追った先に待ち受けていた、巨大な木造の砦。
周囲は丸太を隙間なく並べて作られた壁に囲われ、門には見張りのゴブリンが左右に二匹、門の上の物見櫓に一匹と配置され警戒をしている。

「いくら知恵が働くといえど、ここまでの建造物をゴブリンが建てられるとはとても思えませんね。ゴブリン達の動きもかなり統率が取れているように見えましたし…。」
「…裏でもっと上位の魔物が操ってるってこと?」
「その可能性は高いですね。」

どうする?ゴブリンより強力な魔物が居たとしたら、一度ギルドに戻って報告した方が…

「でもこの中に攫われた女性たちがいる筈よ。一刻も早く助け出さないと!」

ノルンの方は引き返す気は無いようだ。

「…わかった。ここは慎重に―――」
「ストームブラスト!」

ノルンはいきなり強力な風の魔術をぶっ放した!

「な…はあああぁぁぁぁ!?」

門の扉が破壊され、見張りをしていたゴブリンは吹き飛ばされる。

「さ、行くわよ!」

もしかしてこの姫、意外と脳筋なの!?

そうして俺たちはやむを得ず、混乱し始めるゴブリンの砦に侵入していく。
物見櫓にいた一匹が警鐘をならし、次々とゴブリンが集まってきた。

「ウィンドスラッシャー!」「フレアショット!」

ノルンとシエルが集まってくるゴブリンを次々と撃退していく。それにしてもノルンはともかく普段清楚に見えるシエル…シアリーゼ姫にしては派手な暴れっぷりだ。

「アタシとシエルでここに雑魚を引き付けておくから、貴方たちはその隙に奥の方を探ってきて!」

どうやら騒ぎを起こしてここに雑兵を集める作戦のようだ。
いきなり門を破壊した時はこいつどうかしてると思っていたが、ちゃんと考えはあるらしい。

「あんたもしかしてアタシの事ただの脳筋とでも思ってたワケ!?」
「え、えーっと…」
「なんならアンタを磔にして囮にしてあげてもいいんだけど?」
「リーナ!メル!行くぞ!」

俺は二人を引き連れそそくさと奥の方を探りに行った。

「まったく、アイツ後で不敬罪でしょっ引いてホントに磔にしてやろうかしら。」
「あら?今のわたくし達はただの冒険者では?」
「意外とアイツの肩を持つのね、シア。」
「見ていて飽きませんもの、ユウヤさんは。」

軽口を吐きつつも二人は魔術の段階を上げていき騒ぎを大きくしていった。

                   ***

砦の奥の方へと突き進んでいく俺たち。
姫様たちが敵を引き付けてくれてるお陰で道中で出くわす敵の数も最小限だ。

「この奥にボスが…。捕まった人たちも探さなきゃな。」

進んでいくにつれ警戒を強めていく。

すると、地面を揺らすほどの重苦しい足音が奥の方から響いてきた。

「な、なんだ!?」

現れたのは、身の丈4メートルはあろうボディビルダーの如き屈強な体躯の巨大なゴブリンだった。

「グオオオォォォォォォ!!!」
「こ、こいつがここのボス!?」

圧倒的な存在感を前にたじろいでいると…

「なんだぁ?騒がしいと思ったらやっぱり正規ギルドの冒険者どもか。」

巨大ゴブリンの陰から出てきたのは、肩まで頭髪を伸ばしローブを羽織った黒ずくめの男。

「に、人間!?」
「よくもオレ様の下僕どもをかわいがってくれたなぁ?」
「まさか、闇ギルドの魔獣使い!?」

リーナが男の素性を推し量ろうとする。

「ハァッ!よく見たら結構イイ女どもじゃねぇか!そんな冴えない野郎捨ててオレ様のものになれや!」
「キモ!何なのコイツ!」
「…ここのゴブリンたちは皆あなたが操ってるの?」

男にそう問いかけるリーナ。

「まさか!いくらオレ様でも百を超えるゴブリン全部隷属は出来ねぇよ。リーダーになりそうな奴数匹操って、そいつを通して指令を出してるだけだ。」
「手の内ペラペラしゃべってくれて、余裕だな!」
「冥土の土産だよ。お前ら全員タダでここから逃がすつもりは無ぇからな!」

すると男の背後から十数匹のゴブリンが飛び出してくる!

「野郎は殺せ!女どもは生かして捕らえろよ!」

巨大ゴブリンだけでなく普通ゴブリンの大群まで相手しなきゃいけないのかよ!

「アクアカッター!」「ファイアバレット!」

普通ゴブリンの方はリーナとメルが魔術で応戦しているが―――

「グォッ!グァッ!」
「おわっ!ひぃっ!」

俺の方は巨大ゴブリンが振り回す棍棒から逃げ回るので精いっぱいだ。
だが俺がこいつを引き付けている間に二人が雑魚を粗方片づけてくれたようだ。

「さあ、雑魚は片づけたわよ!覚悟しなさい、変態魔獣使い!」
「チッ!雑魚どもが…」

すると魔獣使いの男はあることに気付く。

「ん?お前人間じゃねぇな?…ラミアか!?」

男は女性の顔面ツラしか見てなかったのか、今までメルがラミアだと気づいてなかったようだ。

「だったらなんだって言うの!?」
「もしかしてハンターどもが取り逃がしたラミアってお前の事かぁ?だったら傑作だな!」

男は高笑いを上げる。

「まさか正規ギルドの連中に拾われて隷属つかわされてるとはなぁ!」
「つかう!?違う!メルは俺たちの仲間だ!」
「グオォッ!」
「おわっと!」

巨大ゴブリンの攻撃から逃げ回りながら、何やら聞き捨てならない事が聞こえたので反論する。

「ハッ、そうかよ。それじゃあこいつの事はオレ様が貰ってやるぜ!」
「!?、メル!そいつから離れて!」
「え!?」
「遅ぇわ!」

するとメルは自分の感覚に違和感を覚える。

「な…何?嫌…何かが…入っ…!?…いやぁぁ!」
「ヒャーハッハッハ!こいつはもうオレ様のもんだぁ!」

「ッぁぁああああ!あああああッ!」

メルが急に苦しみだした。それを見たリーナの表情がどんどん青ざめていく。

「どうしたんだ!メル!リーナ!何があった!」

「…メルが……メルが、アイツに…隷属れいぞくされちゃう!―――」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
 異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。ところが、闇属性だからと草原へ強制転移されてしまう。  頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険がスタートした。  強力な魔物や敵国と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指していく。 ※週に三話ほど投稿していきます。 (再確認や編集作業で一旦投稿を中断することもあります) ※一話3,000字〜4,000字となっています。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...