異世界でもしにたい ~平凡転移者の異世界暮らし~

Tom Oak

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第三話 新たな仲間は○○娘!? ~チャプター3~

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逃げたモンスターの跡を追い、森の中に進入する。
鬱蒼とした森の中を、かすかに残るモンスターの足取りを頼りに進む。

「それにしても、巨大なヘビかぁ…。もし対峙することになったら逃げきれるのか?」
「うーん、難しいと思うから、出来るだけ相手に気付かれないようにしないとね。」

ヘビと聞いて注意すべきは、まず毒だ。ヘビのモンスターともなれば、大抵毒があると思うべきだろう。リーナの回復術で毒の治癒も出来るとは思うが、そのリーナの方を狙われてしまえば元も子もない。一応、毒の治療薬は用意してある。
毒が無いにしても、あの大きさだ。畑で見られた跡からすると、胴回りは恐らく5、60センチ近くはあるだろう。そんな巨体に巻き付かれて締め上げられたらと思うと…。

後ろ向きな考えが俺の表情に影を落としていく。

「…大丈夫だよ。もうユウヤの事はひとりにしないし、私が絶対に守るよ。」
「リーナ…。」

前回のクエストで大ケガをしてしまった俺。俺の不注意と油断が原因だが、手分けして作業することを提案したのはリーナの方だった。その事についてリーナも負い目に感じているところもあるだろう。

捜索する二人の空気が、次第に重くなっていく。

「!?…ねぇ、ユウヤ。ちょっとこっちに来て。」

何かを見つけたのか、リーナが小声で呼びかける。

「どうした?」
「あっち。ちょっと見てみて。」

リーナが指した先には開けた場所があり、中央に大木が一本伸びている。
そして、その根元に――――――

「…女の子?」

オレンジゴールドの長い髪の少女が一人、弱々しく横たわっている。少女には首と両手に枷がはめられ、両手は鎖で繋がれていた。
俺たちは藪に隠れて様子を見る。

「なんでこんなところに?どこから逃げてきたのか?」
「ユウヤ、あのの事よく見て。」

少女の服装は胸元が隠れる程度の短いチューブトップのような布、そして丈の短いスカートという露出度の高い格好であったが――――――

「え、あれって…」

その少女のスカートの中から伸びていたのは人間の脚ではなく、ローズピンクの鱗に覆われたヘビのそれであったのだ。

「へ…ヘビ!?」
「しっ。ラミアだね。この辺だと珍しいモンスターなんだけど…。」

あれがモンスター?確かに下は巨大なヘビだが、上半身は見るからに人間の形をしている。

「もしかして、あの娘が犯人?」
「多分そうだと思う。あっちを見て。」

横たわるラミアの横には、畑から盗んだであろう半熟のトマトがいくつか転がっている。中には食べかけのものもある。

「きっと奴隷商か何かに捕まって、そこから逃げてきたんだね。」
「奴隷商?そんな奴らが…」

ラミアの様子をもう少し詳しく伺おうとしてそっと近づこうとしたが…

―――パキッ

「あ……。」

木の枝を踏み折ってしまった。

「!?」

気付かれた!?

「誰!?そこに誰かいるの!?」

急いで藪の中に戻ったが、もうバレてしまったようだ。
俺とリーナは観念して藪の中から姿を現す。

「人間!?あんたたち、もしかしてハンター!?」
「…ハンターって?」

ひっそりとリーナに尋ねる。

「動物やモンスターを狩る専門の冒険者の事だけど、この娘が言ってるのは多分、闇ハンターの事だと思う。」
「闇ハンター?」
「狩猟が禁止されてる動物を密猟したり、人やモンスターを捕まえて奴隷商に売っちゃう悪い人たちの事だよ。」

そんな連中が居るのか。どこの世でも悪人は存在するんだな。

「何コソコソ話しているの!?」
「…いや、俺たちは普通の冒険者だ。ハンターなんかじゃない。」
「ウソよ!私を連れ戻しに来たんでしょ!?」

咄嗟の出来事で気に留める暇はなかったが、相手とは普通に会話が出来ている。これなら話し合いで何とかできないものか。

「違う、俺たちは…」
「ち、近寄るな!」

ラミアは爪を伸ばし、こちらに向けてきた。
咄嗟にこちらも武器を取り出し、相手に向ける。

(くッ、どうすれば…)

互いに得物を向けながら、じっと様子をうかがう。
張り詰めた空気が漂う中、突然―――

「ぐぅぅぅぅ……」

腹の虫の声が、森の中を木霊する。

「……ユウヤ?」
「ち、違う!俺じゃない!」
「えー?私でもないよ?」

と、いう事は―――

「……。」

そっとラミアの方を伺う。
彼女はうつむいているが、その顔が赤面しているというのは見てとれた。

「…えーっと」
「う…うるさい!こっち見るな!」

ラミアは涙目で訴える。

「ねぇねぇ、ユウヤ。」

リーナが寄ってきて、俺に耳打ちをしながらこっそり何かを渡してきた。
俺はうなずき、武器を構えながらラミアに迫る。

「な、何よ!?近づかないで!」

ある程度距離を詰めた後、武器を持つ手を引き、後ろ手にしていた反対の手を差し出す。
その手に持っていたのは、俺が昼飯に食おうとしてリーナに預けていた―――

「…マンガ肉のサンドイッチだ。」
「な、なんのつもり?」
「俺たちと話をする気になってくれるなら、こいつをお前にやる。」
「た、食べ物…なんかで…」

そう言うラミアの声は明らかに動揺を隠せずにいる。

「どうだ、旨そうだろ。街でも人気の品だぜ。」

ラミアは必死に平静を保とうとしていたが、自らの口から滴るよだれを止めることは出来なかったようだ。
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