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第二話 異世界でも死にたい ~チャプター4~
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町を出て森の中を借りたマップを頼りに歩き、薬草の群生地に着く。
「ここだな。よし、始めよう!」
「お~!」
薬草採取の方法は、根元から草の部分を刈り取り回収する。根元を残すことで数日たてばそこからまた生えてくるという。この薬草自体の高い生命力が、回復薬の効能として利用されているらしい。
「ここはもうだいぶ採ったな。少し場所を移動するか。」
「おっけ~。」
リーナはなんだか楽しそうだ。俺はいつモンスターが飛び出してくるかハラハラしていたが、リーナのそんな様子を見てると少し余裕が出てきた。
「お、あったぞ。よ~し…」
場所を移し採取を再開しようとするが―――
「しっ!ちょっと待って。」
「どうした?」
薬草を取りに行こうとしたところをリーナに制止される。
すると、薬草の近くの植え込みから物音がした。
(この感じ、前にゴブリンが出た時も…)
予感は的中した。植え込みから勢いよく飛び出したのは―――
「ピキィーーーッ!!」
「出た!ツノウサギだよ!」
「こいつが…。」
薄い灰色の体毛に覆われた、自分がよく知る体躯のウサギ。しかしその目つきはとても鋭く、そして何より額から生えたツノ。たったこれだけの違いがかわいいウサギを立派なモンスターたらしめる。
「動きが早いよ!気を付けて!」
「わかった!」
武器を構えツノウサギに突貫する!ブラックエッジの初陣だ!
「とぅ!せぃ!」
しかし相手の素早さの前に刃は虚しく空を切るばかりである。
「はぁ…はぁ…全然当たんね。」
「ユウヤ下がって!エアショック!」
エアショック。相手の眼前の空気を破裂させる風属性の魔術だ。
リーナの声で一歩退くと、ツノウサギはエアショックによってひっくり返り仰向けに倒れ込む。
「今だよ!」
「あ、ああ!」
武器を逆手に持ち替え、相手の腹に思いっきり突き刺す!
「ギィィィィッ!ギィィ…」
「ひっ…」
初めてゴブリンを斬ったあの時のような手ごたえを感じ、思わず顔を背けてしまう。
「ピ…ギ…。」
断末魔の叫びが止んだところで、短剣をそっと抜く。
「はぁ…はぁ…。仕留めた…のか?」
確認しようにも、まだ死体を見るのに抵抗が…
「大丈夫だよ!やったね、ユウヤ!」
リーナが喜びの表情と共に駆け寄ってくる。
こっちは安堵し膝をついた。
「よーし。それじゃあ、はい。」
リーナが俺に向けて掌をかざす。
「ほら、あれだよ。手をパーンって叩くやつ。」
ああ、ハイタッチね。
俺も同じように手を出すと、リーナが勢いよく俺の掌を叩く。
「イェイ!」
「い、いぇい…」
初戦闘はリーナの助力…と言うよりほぼリーナの手柄で何とか勝利できた。
***
「ふ~っ、そろそろ休憩にしよっか。」
薬草採取を再開して1時間ほど。もうすぐお昼ごろになるので休憩をとることにした。
昼飯は丸パンを横に切りその間に小さく切ったマンガ肉とレタスのような葉物野菜を挟んだサンドイッチだ。ルクスの露店街でも人気の商品らしい。
「おいしいね、これ。」
「…あ、ああ。うん」
俺は思い知った。この世界に来てまだ3日目。町にいる間は実感がなかったが、町の外に出ればモンスターが襲い掛かってくる。これが当たり前なのだ。
俺はこの世界について知らないことが多い。だから理解しなければならない。
「どうしたの?難しそうな顔して」
「なんか、改めて気になってきてさ。」
「うん?」
「…ここって、どういう世界なんだろうって。」
普通ならこんなこと言ったら変に思われるかもしれない。けど、ここは今リーナ以外誰もいないし、リーナならこんな質問してもなにも気にせず答えてくれるだろうと思い、この世界について聞いてみる事にした。
「…えーっと、まず何が聞きたい?」
「そうだな…。俺たちが今いるところってどんな国なんだ?」
この機会に、リーナから色々と話を聞かせてもらった。
俺たちが今いる国はアヴァルー王国という、人間が統治する国でこの大陸の最大勢力だ。国内は人間だけでなく、エルフや獣人など多くの種族が隔たりなく生活しているという。町やギルドにも耳が長かったり獣耳の人も多くいたしな。
そしてアヴァルーに次ぐ勢力が、魔王国ギリアだ。その名の通り国民のほぼ全てが魔族の国だ。
アヴァルーやギリアの他にも小さい国々がこの大陸に存在しているという。
かつてギリアの魔王がこの大陸の支配に乗り出し、アヴァルーをはじめとした周辺諸国と戦争となっていた。
戦いが激化していく中、聖騎士エドリックという人物が魔王討伐に出る。聖騎士は神聖術という特殊能力を持つ人間の事で、唯一魔王に対抗できるという。
仲間と共に魔王の元にたどり着いたエドリックは、魔王との戦いの中で魔王に邪悪な怨霊が取り憑いていることを見抜き、神聖術を用いて怨霊を魔王から引き剥がしこれを封印することに成功する。
怨霊から解放された魔王は降伏し、戦争は終結した。そしてその後、聖騎士エドリックは姿を消したという。
「―――っていう感じかな。理解できたかね?ユウヤ君。」
「はい、リーナ先生。」
「えへへ…。」
先生と呼ばれて照れているようだ。
「でも、戦争が終わってもモンスターの被害は多いんだ。だから私たち冒険者がいるんだよ。」
戦争が終わっても安心して暮らすことが出来ない、生きるだけで命懸けだ。この世界について少しずつ分かってきたような気がした。
さて、十分休んだしそろそろクエスト再開といきますか。――――――
「ここだな。よし、始めよう!」
「お~!」
薬草採取の方法は、根元から草の部分を刈り取り回収する。根元を残すことで数日たてばそこからまた生えてくるという。この薬草自体の高い生命力が、回復薬の効能として利用されているらしい。
「ここはもうだいぶ採ったな。少し場所を移動するか。」
「おっけ~。」
リーナはなんだか楽しそうだ。俺はいつモンスターが飛び出してくるかハラハラしていたが、リーナのそんな様子を見てると少し余裕が出てきた。
「お、あったぞ。よ~し…」
場所を移し採取を再開しようとするが―――
「しっ!ちょっと待って。」
「どうした?」
薬草を取りに行こうとしたところをリーナに制止される。
すると、薬草の近くの植え込みから物音がした。
(この感じ、前にゴブリンが出た時も…)
予感は的中した。植え込みから勢いよく飛び出したのは―――
「ピキィーーーッ!!」
「出た!ツノウサギだよ!」
「こいつが…。」
薄い灰色の体毛に覆われた、自分がよく知る体躯のウサギ。しかしその目つきはとても鋭く、そして何より額から生えたツノ。たったこれだけの違いがかわいいウサギを立派なモンスターたらしめる。
「動きが早いよ!気を付けて!」
「わかった!」
武器を構えツノウサギに突貫する!ブラックエッジの初陣だ!
「とぅ!せぃ!」
しかし相手の素早さの前に刃は虚しく空を切るばかりである。
「はぁ…はぁ…全然当たんね。」
「ユウヤ下がって!エアショック!」
エアショック。相手の眼前の空気を破裂させる風属性の魔術だ。
リーナの声で一歩退くと、ツノウサギはエアショックによってひっくり返り仰向けに倒れ込む。
「今だよ!」
「あ、ああ!」
武器を逆手に持ち替え、相手の腹に思いっきり突き刺す!
「ギィィィィッ!ギィィ…」
「ひっ…」
初めてゴブリンを斬ったあの時のような手ごたえを感じ、思わず顔を背けてしまう。
「ピ…ギ…。」
断末魔の叫びが止んだところで、短剣をそっと抜く。
「はぁ…はぁ…。仕留めた…のか?」
確認しようにも、まだ死体を見るのに抵抗が…
「大丈夫だよ!やったね、ユウヤ!」
リーナが喜びの表情と共に駆け寄ってくる。
こっちは安堵し膝をついた。
「よーし。それじゃあ、はい。」
リーナが俺に向けて掌をかざす。
「ほら、あれだよ。手をパーンって叩くやつ。」
ああ、ハイタッチね。
俺も同じように手を出すと、リーナが勢いよく俺の掌を叩く。
「イェイ!」
「い、いぇい…」
初戦闘はリーナの助力…と言うよりほぼリーナの手柄で何とか勝利できた。
***
「ふ~っ、そろそろ休憩にしよっか。」
薬草採取を再開して1時間ほど。もうすぐお昼ごろになるので休憩をとることにした。
昼飯は丸パンを横に切りその間に小さく切ったマンガ肉とレタスのような葉物野菜を挟んだサンドイッチだ。ルクスの露店街でも人気の商品らしい。
「おいしいね、これ。」
「…あ、ああ。うん」
俺は思い知った。この世界に来てまだ3日目。町にいる間は実感がなかったが、町の外に出ればモンスターが襲い掛かってくる。これが当たり前なのだ。
俺はこの世界について知らないことが多い。だから理解しなければならない。
「どうしたの?難しそうな顔して」
「なんか、改めて気になってきてさ。」
「うん?」
「…ここって、どういう世界なんだろうって。」
普通ならこんなこと言ったら変に思われるかもしれない。けど、ここは今リーナ以外誰もいないし、リーナならこんな質問してもなにも気にせず答えてくれるだろうと思い、この世界について聞いてみる事にした。
「…えーっと、まず何が聞きたい?」
「そうだな…。俺たちが今いるところってどんな国なんだ?」
この機会に、リーナから色々と話を聞かせてもらった。
俺たちが今いる国はアヴァルー王国という、人間が統治する国でこの大陸の最大勢力だ。国内は人間だけでなく、エルフや獣人など多くの種族が隔たりなく生活しているという。町やギルドにも耳が長かったり獣耳の人も多くいたしな。
そしてアヴァルーに次ぐ勢力が、魔王国ギリアだ。その名の通り国民のほぼ全てが魔族の国だ。
アヴァルーやギリアの他にも小さい国々がこの大陸に存在しているという。
かつてギリアの魔王がこの大陸の支配に乗り出し、アヴァルーをはじめとした周辺諸国と戦争となっていた。
戦いが激化していく中、聖騎士エドリックという人物が魔王討伐に出る。聖騎士は神聖術という特殊能力を持つ人間の事で、唯一魔王に対抗できるという。
仲間と共に魔王の元にたどり着いたエドリックは、魔王との戦いの中で魔王に邪悪な怨霊が取り憑いていることを見抜き、神聖術を用いて怨霊を魔王から引き剥がしこれを封印することに成功する。
怨霊から解放された魔王は降伏し、戦争は終結した。そしてその後、聖騎士エドリックは姿を消したという。
「―――っていう感じかな。理解できたかね?ユウヤ君。」
「はい、リーナ先生。」
「えへへ…。」
先生と呼ばれて照れているようだ。
「でも、戦争が終わってもモンスターの被害は多いんだ。だから私たち冒険者がいるんだよ。」
戦争が終わっても安心して暮らすことが出来ない、生きるだけで命懸けだ。この世界について少しずつ分かってきたような気がした。
さて、十分休んだしそろそろクエスト再開といきますか。――――――
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