異世界でもしにたい ~平凡転移者の異世界暮らし~

Tom Oak

文字の大きさ
上 下
4 / 48

第一話 死のうとしたら異世界に連れてかれた ~チャプター3~

しおりを挟む
気絶している最中、少しだけ昔のことを思い出していた。

                  ***

レアな中古ゲームが置いてあるとの情報を聞き、そのゲーム屋がある3駅隣の町の商店街まで来ていた。
無事ゲームを手に入れ、帰路につこうとしたその時だった。

「まま~?ままぁ~?うえぇ~~ん!」

ぬいぐるみを抱えた小さな女の子がベソをかきながらさまよっている。どう見ても迷子だ。

早く家に帰って買ったゲームをしたかったが、なぜだかその時はあの子を放っておけないような気がして―――

                  ***

「……しも~し?すいませ~ん、あの~、生きてますか~?」

女の人の呼びかけが聞こえてきて、意識が引き戻されていく。

このまま他のモンスターのエサにでもなろうかと思ってたが、どうやら人間に見つけられたようだ。

(…なんか、どっかで聞いたことあるような声だな…)

重たい目蓋を開け声の主を確認しようとする。まだぼんやりとする視界を補うように浮かんだのはあの顔だった。

「…てん…し?」
「…え?天使?」

やがて視界がはっきりしていくと、眼前にあったのはあんなちんちくりんではなくもう少し大人びたショートカットの少女の顔。

「あはは、やだなぁ。私のこと天使に見えちゃう?」

苦笑いしながら少女が返す。

「え!?あ、ゴメンナサイっ!」

慌てて起き上がる。
もしかして、寝起きでいきなりナンパかましたチャラ男とでも思われた?

「よかった、ケガもなさそうだし大丈夫みたいだね。」
「あ、うん…」

「ねぇ、なんでこんなところで倒れてたの?」
「えーと、その、ゴブリンを…倒したんだけど…」
「ゴブリン?あー、あれね。」

少女が振り向いた先には、早くも小バエが集り始めたゴブリンの開きが遺されていた。

「ヒェッ!」

目を背ける俺。また思い出して倒れてしまうかと。

「あれきもち悪いよねー。私も慣れるまでだいぶかかったし。」

そう話す少女。見たところ恐らく旅慣れた冒険者で、モンスターと戦うなど日常茶飯事なのだろう。

「あっちの方にきれいな池があるから、そこで顔を洗ってきたらスッキリするんじゃないかな?」
「あ、ありがと…」

少女が指さした方に歩いていくと道脇にある透き通った水が広がる池にたどり着く。
グローブを外し、手で水を掬いバシャバシャと顔に浴びせる。

「はぁ…」
「どお?だいぶ顔色良くなったね。大丈夫?」
「うん、お陰でだいぶ楽になったよ」
「よかった。あ、私はリーナ。回復とか支援系の魔術が得意なんだ。」

丁寧に自己紹介してくれた。ヒーラータイプの子ね。
もし仲間になってくれたら、すごく心強いけど…

「俺…照井勇矢テルイユウヤっていいます。」
「テルイユウヤ…さん?」
「えっと…、テルイが名字でユウヤが名前…」
「名字があるんだ。もしかして貴族様か騎士様?」

しまった。この世界だと位の高い人にしか名字は無いのか?

「あ、いや、ごくフツーの家庭育ちだけど…。え~~っとゴメン!名字は忘れて!ユウヤでいい!ユウヤ!」
「…わかった。」

何かを察したような表情で納得してくれた。変に気を使わせてしまったかな。

「…そうだ。私、この先のルクスの町にある冒険者ギルドに行くところなんだ。ユウヤはもしかしてもうギルドに入ってる?」

ギルド?ゲームとかでよく聞く冒険者の組合みたいなものか。

「いや…、特にそういうのには入ってないけど…」
「そうなんだ!もしよかったら、一緒に来てくれる?というか、パーティ組んじゃお!ね?それで一緒にギルド入ろうよ!」
「…それはありがたいけど、いいの?俺で。ここに来たばっかで、そんな強くないし…」
「そんなことないよ。ゴブリンまっぷたつに出来るんだもん、大丈夫だよ。」

こんなに熱心に誘ってくれるのはすごくありがたい。というか、本当ならこっちからお願いしたいくらいだった。

「…ありがとう。組もう、パーティ」
「やったー!」

飛び跳ねて喜ぶリーナ。さっきまでの落ち着いた雰囲気とは打って変わって少し子供っぽい。

「これからよろしくね、ユウヤ。」
「ああ、よろしく。」

ファンタジー世界について早々、仲間が出来た。
まずは町まで行って、ギルドに入るのがミッションだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

インフィニティ•ゼノ•リバース

タカユキ
ファンタジー
女神様に異世界転移された俺とクラスメイトは、魔王討伐の使命を背負った。 しかし、それを素直に応じるクラスメイト達ではなかった。 それぞれ独自に日常謳歌したりしていた。 最初は真面目に修行していたが、敵の恐ろしい能力を知り、魔王討伐は保留にした。 そして日常を楽しんでいたが…魔族に襲われ、日常に変化が起きた。 そしてある日、2つの自分だけのオリジナルスキルがある事を知る。 その一つは無限の力、もう一つが人形を作り、それを魔族に変える力だった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
 異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。ところが、闇属性だからと草原へ強制転移されてしまう。  頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険がスタートした。  強力な魔物や敵国と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指していく。 ※週に三話ほど投稿していきます。 (再確認や編集作業で一旦投稿を中断することもあります) ※一話3,000字〜4,000字となっています。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...