ゆびきりしよう

りあ

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1章

3話-まことくん-

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「うう。」

胸がドキドキする。

家に帰って布団に入ってもドキドキは収まらなかった。

2つのドキドキ。

1つはオーディションでの緊張。

もう1つは、、、
あの小学生の男の子の瞳。


どちらも今まで感じたことのない感情で少し困惑してる。


正直オーディションはダメだったと思う。

でもいつも逃げて、クラスで手を挙げることもせず、人前には基本出ないように、目立たないようにしてた、、、
そんな私が勇気を持てたことがすごく嬉しかった。

それも全部あの小学生の男の子の踊っている姿を見たから。


日曜日明日も市民ミュージカルの稽古。
あの男の子に声かけてみようかな。




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「おはよう♪杏!」

「おはよう。」

まみは相変わらずいつも元気だ。
ショートカットで明るくボーイッシュな雰囲気をかもちだし、全く嫌味がない。

「今日、出演者全員オーディション終わるから、配役発表だってさ!」

「そ、、、そっかぁ。」

ダメだとわかっていても
配役発表という言葉の響きは緊張する。

「おっはよーさんのさん。」

!!!
あの男の子だ。
憮然とした態度で友人だろうか小学生の子に挨拶をしてる。

声、かけなきゃ、、、。
でもなんて、、。

「おはようーまこと!」

昨日の、、中田くん!!!
中田くんが颯爽とその子に声をかけた。

「なかちゃんまん!」

“なかちゃんまん”、どうやら中田くんの呼び名らしい。
というか、あの男の子は“まこと”くんという名前なんだ。

「中田くん、おはよう!」

「ん?杏ちゃん!おはよう♪」

おおふ、、、。
男の子に自分から声かけてしまった、、!!
でも、これは“まこと”くんと話すため。
しょうがないことなの。

「あ!なかちゃんまんめ!また女を、騙そうとしてるのか!?」

「おい!俺1度でも騙したことないでしょー!」

「だって僕の知らない女の子だもん!」

「あ、、、あの、杏っていいます。」

知ってほしい。その一心で勇気をだして声をかけた。

「、、、、あんちゃんか、よろしくね!僕、まこと。」

「まことくん、よろしくね!」


そのまま、まことくんと空き時間に沢山話が出来た。

松山誠くん。
小学6年生の11歳。
小学6年生にしては少し幼い顔立ちと少し低めの身長。
あまり感情を顔には出さず、真面目な顔で楽しい台詞を言ったりする。
そんなまことくんが笑ったときにはまるで天使だ。

何故かまことくんは中田くんのことが大好きみたいだ。
中田くんといるときは頬が少し緩んでいる。
そして中田くんに常にべったりだ。

男の子同士ってなんかいいな。



ザワ、、、ザワ、、、、


「では!
大人の配役発表の時間です。
決まってなかった役も全て張り出しますので
各自確認して下さい!」



ドキン。


とうとうこの時が。



人がわらわら配役の紙が貼られたホワイトボードに集まる。
頭と頭の間から背伸びをして覗き込む私。



私の名前は、、、。




「杏!!!」


まみが叫ぶ。



あった。




ケイコ…和泉杏




学校の成績が良くて張り出された時よりも

受験で合格した時よりも


胸がときめいた。




私、、、ここで、お芝居をやるんだ。





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