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それから度々 俺は あの兄弟のバラックへ行っていた
食べ物や着るものを置いて帰ることもあった
コンコン・・・コホン・・ケホッ
咳が止まらない 喉がぎゅっとなることが増えてきた
あの子の咳もとまらない 以前はお兄ちゃんと話してることもあったし
起き上って バラックの周りでお兄ちゃんの帰りを待ってることもあったのに
この頃は コンコンと咳をして 横になっていることが多い
こんなところの子は 病院にかかるなんてことはできない
治療代がかかるし 薬を買うお金もない
医者はスラムに住んだいるような人たちは見ない
どうにかしなきゃ どうしたらいいんだろ
げほっげほっと咳が出る
息が苦しい
「おい・・・」と声をかけられたので 振り向いたら
リンゴの子が立っていた
「これ お前だよな」さっきバラックに置いた紙袋がポンと投げられた
「この前から 俺んちにいろんなもの投げ入れてるの アンタだよな」
ケホッと一つ咳をして
「だったら なんだ」
「やめてほしい アンタたち金持ちは 俺らみたいな貧乏人に施しを与えて満足なんだろうけど
毎日誰かが助けてくれるわけじゃない 今日もらっても明日はないんだ
それなら ずっとない方が耐えられる アンタらにはわかんないと思うけど」
ああ そうだ 金持ちは今日の分しかくれない
いくらドアをノックしても 小さな子の診察代を払ってくれる人はいなかった
バシッバシッと何個も紙袋を足元に置かれた
いままで 俺が置いていったものだ
「でも 妹の分の服はもらった ボロばかりできれいな服着たことないから
それだけは もらった・・・・・ありがとう」
「君の分は?」
「おれはいい」
「俺の方こそごめんね そうだよね 君の言うとおりだ ごめん」
「アレクセイ」
「えっ?」
「俺の名前 アレクセイ 妹はアナスタシア
お兄さん もうここには来ない方がいいよ ここは空気が悪いから」
ほら と指をさした空はスモックがかかって 太陽が見えない
「おにいさん ありがとうね」とアレクセイはバラックの方へ歩いて行った
出窓に座って外を見てる 街灯がちゃんとついて 空には星が見えて
自分には温かいショールがあって でもあの子たちには
「けほっ・・・ひゅ、ごほごほっ・・」急に咳が出て胸が苦しくなる
「ロク」テオが背中をさすってくれる
何度か咳き込んで治まった
「ベットに行くか?」と聞かれるが
「もう少しここで外見てる」
「そうか・・・・・なぁ そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか
お前の体が心配だ」
テオに話をする
リンゴの子との再会 何度も彼らの元へ足を運んで最下層へ出入りしていること
「咳の原因は たぶん有害ガスのせい」
テオは立ち上がり 俺を抱き上げる
そしてそのままベットに運び アランに ダイジロウさんを呼ぶように言った
「なぜ そこまであの子たちに手を貸す 自分の体を壊してまで
スラムのいる子はあの子たちだけじゃない たくさんの子がいるんだ
その子たちみんなに 施しを与えるのか?無理だろ
今は無理かもしれないが 近い将来 みんな助けられる社会を俺たちで作る
その兄弟だけじゃない 国中の子供を助ける」
「近い将来っていつ?それまでに何人の子供が死ぬの?
そのまでに 一人でも二人でも助けたいと思う事はいけない事なの?」
「それは ロクのエゴだ 中途半端に助けるぐらいなら助けないほうがいい 与え続けられるのか 与えるだけでは何も解決にはならない どうやったら その子達がそんな場所で暮らさず 大人になれるかを考えないといけないんだ」
「もういい」ベットから起き上がり 部屋を出ていこうとする
「どこへ行く」
「頭冷やしにいっ・・・ゴホッゴホッ・・」
と咳がでて 最後にゴホッと大きな咳をしたら
手に真っ赤な血がついていた
「ロク」テオが抱きしめてくれる
テオに抱きしめられたまま 何度も咳が出る そのたびに血が出た
テオの服に俺の血がつく
「テ・・・オ・・ごめん・・・また・・めいわ・・・く」
おれはそのまま気を失った
ロクは緊急入院した
「本当にこの子は・・・」と酸素マスクをつけて眠っているロクの頭を撫でた
「トク」
「呼んだか?」
「ロクがこの頃会ってた兄弟の場所わかるか?」
「ああ ついて来い」
スラム街の奥 最下層と呼ばれるところだ 人は誰でも自分よりも下を作りたがる
そして あいつよりはマシと自分に言い聞かせる
こんなところに子供だけで暮らしているのか
トクジロウの後をついて歩く
ここは本当に空気が悪い ロクの言っている ガスが発生しているのだろう
息が苦しくなる
「お前はなんともないのか?」
「お前と鍛え方が違うからな」とニヤリと笑われた
トクジロウが立ち止まった
「ここだ」扉がキチンと閉まっていない バラックを指差す
「誰かいるか?」と声をかける
返事がない
「・・・お・・にい・・・ちゃん」と消えてしまいそうな声と激しい咳の音
そして
「く・・るし・・いよ た・・・すけ・・・て」
扉を開ける バキッと音がしたようだが知らない
小さな女の子が倒れていた
「おい しっかりしろ」
女の子はさらに咳き込み 血を吐く
抱き上げて 外に行こうとした時
背中にドンと衝撃があった
「アナスタシアを離せ」と女の子を抱き上げた腕にぶら下がってくる
りんごの少年だ
「お前は この子の兄か? この子を今から病院に連れて行く 妹を助けたければ大人しくついて来い」
「うそだ そうやってアナスタシアをどこかに売るんだろ 離せよ 返せよ」
腕にしがみつく力は強い そして何より 俺たちが背中を取られた この少年の気配を感じなかった 少女を片腕に持ち替え 少年がぶら下がっている腕を思い切り振った 振り落とされた少年は 床を蹴り 俺に体当たりしてきた
『ほぉ』なかなか見どころのある少年だ
「離せ 返せ 妹を返せ」
「ゴホッゴホッ」と少し落ち着いていた女の子がまた咳き込み 血を吐いた
「アナスタシア」と少年はさらに力を入れた
俺は片手で少年を突き飛ばし
「おい坊主 よく聞け 妹を助けたければ 俺について来い ほら行くぞ」
俺がバラックを出ると 急いで後ろをついてくる兄がいた
食べ物や着るものを置いて帰ることもあった
コンコン・・・コホン・・ケホッ
咳が止まらない 喉がぎゅっとなることが増えてきた
あの子の咳もとまらない 以前はお兄ちゃんと話してることもあったし
起き上って バラックの周りでお兄ちゃんの帰りを待ってることもあったのに
この頃は コンコンと咳をして 横になっていることが多い
こんなところの子は 病院にかかるなんてことはできない
治療代がかかるし 薬を買うお金もない
医者はスラムに住んだいるような人たちは見ない
どうにかしなきゃ どうしたらいいんだろ
げほっげほっと咳が出る
息が苦しい
「おい・・・」と声をかけられたので 振り向いたら
リンゴの子が立っていた
「これ お前だよな」さっきバラックに置いた紙袋がポンと投げられた
「この前から 俺んちにいろんなもの投げ入れてるの アンタだよな」
ケホッと一つ咳をして
「だったら なんだ」
「やめてほしい アンタたち金持ちは 俺らみたいな貧乏人に施しを与えて満足なんだろうけど
毎日誰かが助けてくれるわけじゃない 今日もらっても明日はないんだ
それなら ずっとない方が耐えられる アンタらにはわかんないと思うけど」
ああ そうだ 金持ちは今日の分しかくれない
いくらドアをノックしても 小さな子の診察代を払ってくれる人はいなかった
バシッバシッと何個も紙袋を足元に置かれた
いままで 俺が置いていったものだ
「でも 妹の分の服はもらった ボロばかりできれいな服着たことないから
それだけは もらった・・・・・ありがとう」
「君の分は?」
「おれはいい」
「俺の方こそごめんね そうだよね 君の言うとおりだ ごめん」
「アレクセイ」
「えっ?」
「俺の名前 アレクセイ 妹はアナスタシア
お兄さん もうここには来ない方がいいよ ここは空気が悪いから」
ほら と指をさした空はスモックがかかって 太陽が見えない
「おにいさん ありがとうね」とアレクセイはバラックの方へ歩いて行った
出窓に座って外を見てる 街灯がちゃんとついて 空には星が見えて
自分には温かいショールがあって でもあの子たちには
「けほっ・・・ひゅ、ごほごほっ・・」急に咳が出て胸が苦しくなる
「ロク」テオが背中をさすってくれる
何度か咳き込んで治まった
「ベットに行くか?」と聞かれるが
「もう少しここで外見てる」
「そうか・・・・・なぁ そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか
お前の体が心配だ」
テオに話をする
リンゴの子との再会 何度も彼らの元へ足を運んで最下層へ出入りしていること
「咳の原因は たぶん有害ガスのせい」
テオは立ち上がり 俺を抱き上げる
そしてそのままベットに運び アランに ダイジロウさんを呼ぶように言った
「なぜ そこまであの子たちに手を貸す 自分の体を壊してまで
スラムのいる子はあの子たちだけじゃない たくさんの子がいるんだ
その子たちみんなに 施しを与えるのか?無理だろ
今は無理かもしれないが 近い将来 みんな助けられる社会を俺たちで作る
その兄弟だけじゃない 国中の子供を助ける」
「近い将来っていつ?それまでに何人の子供が死ぬの?
そのまでに 一人でも二人でも助けたいと思う事はいけない事なの?」
「それは ロクのエゴだ 中途半端に助けるぐらいなら助けないほうがいい 与え続けられるのか 与えるだけでは何も解決にはならない どうやったら その子達がそんな場所で暮らさず 大人になれるかを考えないといけないんだ」
「もういい」ベットから起き上がり 部屋を出ていこうとする
「どこへ行く」
「頭冷やしにいっ・・・ゴホッゴホッ・・」
と咳がでて 最後にゴホッと大きな咳をしたら
手に真っ赤な血がついていた
「ロク」テオが抱きしめてくれる
テオに抱きしめられたまま 何度も咳が出る そのたびに血が出た
テオの服に俺の血がつく
「テ・・・オ・・ごめん・・・また・・めいわ・・・く」
おれはそのまま気を失った
ロクは緊急入院した
「本当にこの子は・・・」と酸素マスクをつけて眠っているロクの頭を撫でた
「トク」
「呼んだか?」
「ロクがこの頃会ってた兄弟の場所わかるか?」
「ああ ついて来い」
スラム街の奥 最下層と呼ばれるところだ 人は誰でも自分よりも下を作りたがる
そして あいつよりはマシと自分に言い聞かせる
こんなところに子供だけで暮らしているのか
トクジロウの後をついて歩く
ここは本当に空気が悪い ロクの言っている ガスが発生しているのだろう
息が苦しくなる
「お前はなんともないのか?」
「お前と鍛え方が違うからな」とニヤリと笑われた
トクジロウが立ち止まった
「ここだ」扉がキチンと閉まっていない バラックを指差す
「誰かいるか?」と声をかける
返事がない
「・・・お・・にい・・・ちゃん」と消えてしまいそうな声と激しい咳の音
そして
「く・・るし・・いよ た・・・すけ・・・て」
扉を開ける バキッと音がしたようだが知らない
小さな女の子が倒れていた
「おい しっかりしろ」
女の子はさらに咳き込み 血を吐く
抱き上げて 外に行こうとした時
背中にドンと衝撃があった
「アナスタシアを離せ」と女の子を抱き上げた腕にぶら下がってくる
りんごの少年だ
「お前は この子の兄か? この子を今から病院に連れて行く 妹を助けたければ大人しくついて来い」
「うそだ そうやってアナスタシアをどこかに売るんだろ 離せよ 返せよ」
腕にしがみつく力は強い そして何より 俺たちが背中を取られた この少年の気配を感じなかった 少女を片腕に持ち替え 少年がぶら下がっている腕を思い切り振った 振り落とされた少年は 床を蹴り 俺に体当たりしてきた
『ほぉ』なかなか見どころのある少年だ
「離せ 返せ 妹を返せ」
「ゴホッゴホッ」と少し落ち着いていた女の子がまた咳き込み 血を吐いた
「アナスタシア」と少年はさらに力を入れた
俺は片手で少年を突き飛ばし
「おい坊主 よく聞け 妹を助けたければ 俺について来い ほら行くぞ」
俺がバラックを出ると 急いで後ろをついてくる兄がいた
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