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休日のある日
ミアが買い物へ行こうとしていたのを
「どうせ暇だから俺たちでいかないか」とテオが言って
二人で市場へ買い物に来た
「買い忘れはないか?」
「えーっと たぶん大丈夫かな・・」
ミアから預かったメモを見る
テオがそっと俺の手を握る
「甘いものでも食べて帰るか?」と誘ってくれる
「うん」と俺の好きなアイスクリーム屋さんへ向かおうとした時
「クソガキがぁ」と大きな声を出して 小さな子供を店の外へ放り出した八百屋の店主がいた
「二度と来るなよ」と叫んでいる
その子は ボロボロの服を着て 靴の先がぱっくりと開いている靴を履き
しばらくお風呂にも入っていないような 汚れている子供だった
「何でだ 金ならある リンゴを一つだけ売ってくれと言っただけじゃないか」
「お前らのような 汚いガキに売るリンゴなんかないんだよ さっさと帰れ」
「クソっ」と小さな子供はグッと手を握って 下を向いた
「リンゴ 一つくれ」とテオが八百屋の店主に言った
「えっ あっ はい」と店主はテオにリンゴを一つ渡して
テオはお金を払った
そして 下を向いたままの子供に
「おい坊主 このリンゴでよかったか」とりんごを差し出した
ほら とテオが言うと お金をテオに投げつけ リンゴを奪うように取り
走り去っていった
その後ろ姿が 俺の幼いころとダブる
あの時の俺はお金なんてなくて 店の物を盗もうとして
店主に見つかって 殴られて・・・
「ロク 大丈夫か?気分悪いのか?」
「大丈夫・・・テオ 帰ろ」
「そうだな ミアにココアでも入れてもらおうな」
「うん」
テオは俺の手を離さないでくれた
「あっ あの子」
ミアと買い物をしていたら この前のリンゴの子を見かけた
「ミアごめん ちょっと ごめん」と説明もせずにその子を追った
スパルガリズの首都にこんなところがあるんだな
首都の外れの外れ 大きなゴミの集積所を囲むようにバラックが立ち並んでいる
大きなスラム街だった
その子はバラックの間をぬうように奥へ奥へと歩いていく
昼間なのにだんだん薄暗くなって 異臭もしてくる
呼吸が苦しくなるのを感じた 『何かのガスが出てるな』
なるべく呼吸を押さえて 子供の後を追う
ああ スラムの最下層だな こんなところはどんな国でも一緒なんだな
その奥へと歩いて行った
リンゴの子がキョロキョロとあたりをみてから
そのあたりでも一番ボロボロのバラックの中へ入って行った
これが 彼の家なんだろうな
所々穴が開いてあるのを 段ボールや布が突っ込まれてある
入り口は扉らしいものはあるが きちんと閉まっているわけじゃない
そのバラックの中から 子供の声が聞こえる
「にぃちゃん」と呼ぶ声と ゲホッゲホッと苦しそうな咳が聞こえる
小さな女の子の声だ
ヒュッとロクの喉が詰まる
『息が・・・できない』ロクは急いでその場から離れた
「ただいま」と玄関を開けると アランが立っていた
朝はいつものようにちゃんと玄関まで見送ってくれたのに 調子が悪くなったのか
「ロクは?」
「昼間 ミヤと買い物へ出かけて 何かを見つけて走って行ったそうです
先ほど戻ってきたのですが 呼吸がかなり苦しそうなのと 様子が少し・・・
今はミアがついています」
「ありがとう」
部屋の扉をゆっくりとあける
「テオ様 おかえりなさい」
「ああ ただいま」
ベットの中から ケホッケホッと咳が聞こえる
「ロク 大丈夫か? ソウテツかダイジロウに来てもらうか?」
のっそりと上布から顔を出す
「いい大丈夫 ごめんなさい 少し気分が悪いだけだから 大丈夫」
「そうか わかった」頬を撫でてやる 目をつむって俺の手に手を重ねる
「もう少しだけ このままがいい」
「もう少しだけでいいのか?俺はずっとこのままでもいいぞ」
「・・・・」
「安心しろ 俺はここにいる ロクの側に居る」
しばらくしたら ゆっくりした寝息が聞こえだした 咳もとまったようなので
よかったと胸をなでおろした
「市場で子供を追いかけて行ったんです」
「子供」
「はい 帰って来た時は 苦しそうで息をするのもやっとって感じでした
でも どこで何があったのかは 話してくれませんでした」
市場で子供か・・・この前のリンゴの子か
どちらにせよ ロクが教えてくれないとな
「何があったんだ?」スープを飲んでいるロクに聞いてみた
「・・・」スプーンは口に運んでいる
話したくないか 「気が向いたら教えてくれ」と言った
ミアが買い物へ行こうとしていたのを
「どうせ暇だから俺たちでいかないか」とテオが言って
二人で市場へ買い物に来た
「買い忘れはないか?」
「えーっと たぶん大丈夫かな・・」
ミアから預かったメモを見る
テオがそっと俺の手を握る
「甘いものでも食べて帰るか?」と誘ってくれる
「うん」と俺の好きなアイスクリーム屋さんへ向かおうとした時
「クソガキがぁ」と大きな声を出して 小さな子供を店の外へ放り出した八百屋の店主がいた
「二度と来るなよ」と叫んでいる
その子は ボロボロの服を着て 靴の先がぱっくりと開いている靴を履き
しばらくお風呂にも入っていないような 汚れている子供だった
「何でだ 金ならある リンゴを一つだけ売ってくれと言っただけじゃないか」
「お前らのような 汚いガキに売るリンゴなんかないんだよ さっさと帰れ」
「クソっ」と小さな子供はグッと手を握って 下を向いた
「リンゴ 一つくれ」とテオが八百屋の店主に言った
「えっ あっ はい」と店主はテオにリンゴを一つ渡して
テオはお金を払った
そして 下を向いたままの子供に
「おい坊主 このリンゴでよかったか」とりんごを差し出した
ほら とテオが言うと お金をテオに投げつけ リンゴを奪うように取り
走り去っていった
その後ろ姿が 俺の幼いころとダブる
あの時の俺はお金なんてなくて 店の物を盗もうとして
店主に見つかって 殴られて・・・
「ロク 大丈夫か?気分悪いのか?」
「大丈夫・・・テオ 帰ろ」
「そうだな ミアにココアでも入れてもらおうな」
「うん」
テオは俺の手を離さないでくれた
「あっ あの子」
ミアと買い物をしていたら この前のリンゴの子を見かけた
「ミアごめん ちょっと ごめん」と説明もせずにその子を追った
スパルガリズの首都にこんなところがあるんだな
首都の外れの外れ 大きなゴミの集積所を囲むようにバラックが立ち並んでいる
大きなスラム街だった
その子はバラックの間をぬうように奥へ奥へと歩いていく
昼間なのにだんだん薄暗くなって 異臭もしてくる
呼吸が苦しくなるのを感じた 『何かのガスが出てるな』
なるべく呼吸を押さえて 子供の後を追う
ああ スラムの最下層だな こんなところはどんな国でも一緒なんだな
その奥へと歩いて行った
リンゴの子がキョロキョロとあたりをみてから
そのあたりでも一番ボロボロのバラックの中へ入って行った
これが 彼の家なんだろうな
所々穴が開いてあるのを 段ボールや布が突っ込まれてある
入り口は扉らしいものはあるが きちんと閉まっているわけじゃない
そのバラックの中から 子供の声が聞こえる
「にぃちゃん」と呼ぶ声と ゲホッゲホッと苦しそうな咳が聞こえる
小さな女の子の声だ
ヒュッとロクの喉が詰まる
『息が・・・できない』ロクは急いでその場から離れた
「ただいま」と玄関を開けると アランが立っていた
朝はいつものようにちゃんと玄関まで見送ってくれたのに 調子が悪くなったのか
「ロクは?」
「昼間 ミヤと買い物へ出かけて 何かを見つけて走って行ったそうです
先ほど戻ってきたのですが 呼吸がかなり苦しそうなのと 様子が少し・・・
今はミアがついています」
「ありがとう」
部屋の扉をゆっくりとあける
「テオ様 おかえりなさい」
「ああ ただいま」
ベットの中から ケホッケホッと咳が聞こえる
「ロク 大丈夫か? ソウテツかダイジロウに来てもらうか?」
のっそりと上布から顔を出す
「いい大丈夫 ごめんなさい 少し気分が悪いだけだから 大丈夫」
「そうか わかった」頬を撫でてやる 目をつむって俺の手に手を重ねる
「もう少しだけ このままがいい」
「もう少しだけでいいのか?俺はずっとこのままでもいいぞ」
「・・・・」
「安心しろ 俺はここにいる ロクの側に居る」
しばらくしたら ゆっくりした寝息が聞こえだした 咳もとまったようなので
よかったと胸をなでおろした
「市場で子供を追いかけて行ったんです」
「子供」
「はい 帰って来た時は 苦しそうで息をするのもやっとって感じでした
でも どこで何があったのかは 話してくれませんでした」
市場で子供か・・・この前のリンゴの子か
どちらにせよ ロクが教えてくれないとな
「何があったんだ?」スープを飲んでいるロクに聞いてみた
「・・・」スプーンは口に運んでいる
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