暗殺者は愛される

うー吉

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「・・・テオ」
「ロク どうした 何かあったのか?」
「何にもないよ 買い物に来たついでにここに来たの」
「あなたが ロク君ね」
声のする方へ顔を向けた
きれいで落ち着いた感じの女の人がテオの横に立っていた
あの香水の匂いは きっとこの女の人だ
俺とは違う 綺麗な人
「あっ」買い物したものを落としてしまう
「あら 大変」と女の人が拾おうとしてくれたのに
親切で拾おうとしてくれたのに
「さわるなッ」
「きゃっ」
手をはたいてしまった 

「ロクッ」
ロクの体がビクッとなる
「テオ様 私は大丈夫ですから 
ロク君ごめんなさいね 驚かせてしまったのね」
優しく エジョリナがロクに声をかけてくれてるのに
それでもロクは下を向いたまま何も言わずに
丘を下りて行ってしまった


「すいません いつもはあんな事する子じゃないんです 
優しい子なんです ほんとなんです」
「わかってますよ」
「本当に優しくて 自分の事より人の事心配するような子なのに どうしたんだろ」
「テオ様」
「何かあったんだろうか・・・」
「テオ様」
「あっ はい」
「お戻りになられた方がいいですよ
ロクくん泣いてましたから
目にいっぱい涙ためて ごめんなさいって何度も言ってましたよ 
急に私が現れたので驚いたんですね きっと・・・
勘違いしたのかも 優しい子なんですよね テオ様の事とても大事に思ってる
ほら 早く追いかけて このままではロク君が可哀そうです
ちゃんと説明してくださいね」

エジョリナに背中を押されるように ロクを追いかけた

テオの横にはきっとあんな人が似合うんだ
わかってる わかってる
「元帥が女の人と歩いてたって」
「なんか アシエカの貴族の娘って聞いたぞ」
「いつまでも 独身とはいかねーよ 立場があるもんな」
聞きたくなくても聞こえてくる
街で見てしまった
テオと女の人が歩いているところを
笑って話をしていた
なんだろう このモヤモヤした気持ち
お似合いだなぁと思うのに
イヤだ 
テオに笑いかけるな テオに話しかけるな
やめて 
心がモヤモヤ 気持ちがドロドロしてる
何だろうこの気持ち わからない
手を叩いてしまった ごめんなさい 
もう テオの側にいれないと思うと 心が痛いすごく痛い
おじいちゃんやおばあちゃんとお別れした時よりも
銃で撃たれた時よりも
研究所で男におもちゃにされてた時よりも
すごく痛い

「あっ」急ぎすぎて足がもつれる 足の力が抜けて転びそうになる
「あぶない」と後ろから抱きしめられた
「あぶない そんなに急いだら危ないだろ」やさしいいつもの声
「離して」と一歩足を踏み出した
ズキッと足に痛みが走る
「どうした?」
「・・・・何でもない」
「何もないはないだろう 足痛めたのか」
見せてみろと 近くにあったベンチに座らされた
「腫れてるな ちょっとひどいな 痛むだろ」
「大丈夫だよ 歩ける」立ち上がろうとしたら
「無理したらひどくなる ダメだ」と座らされる
ほら と背中を俺に見せて座った
「これがイヤなら 無理矢理お姫様抱っこだぞ」

背中に乗せてもらう
「彼女な ここに人探しに来たんだ」

スパルガリズがアシエカに侵攻してきた時に 
貴族で他の者たちより いい思いもしていたはずなのに
首都から逃げようとしてたんです
それを見つけられて 私たち一家は責められてました
そんな時 スパルガリズの軍人さんが
私たちの前に立ってくれて
“止めませんか みんなでいい国にするために私たちはここに来たんです
貴族が悪いとかじゃなくて これからこの国がいい方向に向くように
一緒に頑張りませんか”
ってみんなの前で言ってくださって
それから その方が帰られるまで 私たち家族に親切にしていただいたのですが
お礼もすることができなくて
アシエカからこの国に入るのはまだ規制が厳しくて
探すことも難しくて でもそんなときに テオ様と見合いの話が来て
断られたんですが どうしてもこの国に来てみたくて
無理を承知でお願いしました

「そうなんだ・・・」
「ちゃんと説明したらよかったな」
「べつに・・・」
「イヤな思いさせた 不安にさせた 苦しくならなかったか?」
「だいじょうぶ」
「ごめんな」
「なんで テオが謝るの 何にも悪くないでしょ 俺が勝手に」
そうだ ダイジロウさんのことろへ行くことも忘れてるとか
あの丘の事もあの女の人に教えたこととか
俺の心が勝手にモヤモヤしただけで 
俺が勝手に思ってるだけで テオは悪くない
「テオは何も悪くないよ」
その後に言葉は何も出てこなかった
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