暗殺者は愛される

５５

「私にお見合いですか？」
「そろそろ　元帥閣下も身を固められてもよろしいかと思いまして」
政治的要素だよな　政府の重鎮と呼ばれる人が
俺にわざわざ話を持ってくるんだからな
「いや　私には・・」
「叶わない恋で無駄な時間を過ごすより　違う恋を探してみるものよろしいのでは」
「私は　そのつもりはないので　断っていただけませんか？」
「一度でもいいから　元帥閣下にお会いしたいとおっしゃってます
国と国のつながりは大切です　
アシエカとは　少し強引に推し進めた経緯もありますから
これからの事も考えていただきたい　よろしいですね」

「さっさとロクとパートナー届出しとけばよかったのに」ヒューがあきれた声を出す

同性でも　“パートナー届”を出しておけば　婚姻関係として認められている
フェルが王太子に選ばれた時　一番最初に作った仕組み
「一番最初の仕事は　俺が俺のために働く」と言って作った
もちろん第一号は　フェルとクリスだ

「ロクは　届けにサインを書いてくれませんか？」とルイは言う
「ああ　今のままがいいって聞かないんだ」
「遠慮しちまうんだろうな　でどうするのお見合い」
「一度会って断るよ」

断ることになると思いますがと先方に伝えたのだが
一度お会いしたいとの返事
では　次の休みにと返事をしてしまった
「明日の休み　人と会うことになってな・・・」
なんとなく　ロクにお見合いとは言えず
「えっあっ　そうなんだ・・・」
「なんか予定あったか？」
もう一度　ロクに聞く
「何もないよ　大丈夫だよ」
ロクの顔が少し沈んだ顔がように見えた


「じゃあ行ってくるから」
「いってらっしゃい」
ロクが玄関まで見送ってくれる
少し元気がないように思う


「今日は一人？また今度にしとく？」ダイジロウさんが聞く
「テオが急に予定が入ったみたいで　大丈夫だよ　この頃調子いいから」
「そう？気分悪くなったら言ってね」
おじいちゃんたちが亡くなってから　またちょっと不安定になった
眠れなくなったり　急に怖くなって外出もできなくなったり
テオが　ダイジロウさんに相談していた
「今度は俺がそばにいるから　落ち着くまで頑張ろうな」
と言ってくれた
「夢を見る回数も減って来たし　ここにも一人で来れるようになったから
もう　大丈夫かなって思う」
「そうだな　でも　もう少しね
それにウチのみんなが喜ぶから　来てくれたらうれしいよ」
とダイジロウさんが笑ってくれた
少しだけ　気持ちが軽くなった
　
ダイジロウさんとの治療は　とにかく話す　
俺がたくさんの人を殺してしまったことも　ゆっくりと話す　テオの手を握りながら
気分が悪くなったり　泣き出してしまったり　
すこし混乱して暴れてしまったりするけど
いつもはテオがいて　手を握っててくれて　俺が泣いても暴れても吐いてしまっても
手をずっと握っててくれて　そばにいてくれて
でも　今日は・・・
「ウッ」口に手を当てて　トイレに走る
背中をさすってくれる手も　優しい声も　今日はない
ダメだな　俺　いつまでたってもダメだな

トイレからでたら　ダイジロウさんが待っててくれた　
「あまり飲まないでね」と少しだけお水をくれた
「少し横になった方がいい」手を引いてくれてソファに寝かせてくれる
「何にも考えないで　今は眠ってね」と毛布をかけてくれた
「迷惑かけて　ごめんなさい」と言うと
「迷惑なんて一度も思ったことないよ」と笑ってくれた