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今日から二日間のお祭りが始まった
朝早くから 人々が広場に集まって
地方からの特産品や外国からの珍しいものがあったり
大道芸人が子供たちの前で手品をしていたり
音楽隊が にぎやかな音楽を奏でている
その音が屋敷にまで聞こえてきている
「すごいね」ロクは窓から外を見てる
「どうだ?広場ぐらいなら行けそうか?」
出かける準備をしながらロクに声をかける
祭りの開催のあいさつや 街の有力者への挨拶
煩わしいが 必要な事
「行ってみたい でも・・・
テオにもアニタ様にも街の人にも 迷惑かけるかもしれない」
「俺もばあさんもロクが何をしても迷惑なんて思わないよ
それより ロクが外に出てくれる方がうれしいかな
ロクが一緒に挨拶してくれたらもっと嬉しい」
とぎゅっと抱きしめる
「連れて行って」と小さな声が聞こえた
「無理してないか?大丈夫?」
コクリとうなずいた
「用意はできたか?」とアニタ様が声をかけてきた
「ああ」とふたりで振り返る
「ウチの孫達は男前だな ガゼルもそう思うだろ」
「はい 旦那様や奥様にも見ていただきたかったです」
「ロクこれを」とアニタ様が小さな箱を目の前に出してきた
開けてみてと言われ 箱を開けてみる
金色のチェーンが入っていた
「これは?」
「これは テオの父親が持っていた懐中時計の鎖だ ロクにもらってほしい」
「そんなのいただけません」
「テオの父親が生きていれば きっと同じことをしたと思う
鎖をロクの手の中に入れて その上からアニタがロクの手を握る
「テオを守ってくれてありがとう テオをここへ連れて帰ってきてくれてありがとう
そして テオを愛してくれてありがとう」
「おれは そんな・・・おれはそんないい奴ではあません
たくさん人を殺しました たくさんの人を泣かせました おれは人殺しなんです」
「でも 私にとっては恩人だよ 孫を助けてくれた
生きて連れて帰ってくれた
私にとっては 一番の恩人で孫の大切な人
だから 世界中の人がロクを敵だと言っても 私はずっとロクの味方だよ
きっと テオの両親も同じだと思う だからこれをもらってほしいんだ」
「・・・・はい」
おばあちゃんの形見の懐中時計にテオのお父さんの鎖をつける
「大事にします」
「さぁ 行こうか ばあさんが挨拶をしないと祭りが始まらないからな」
とテオが手を差し出してくれる
「うん」とテオの手を取り ゆっくり歩いて街へ向かった
「みんなゆっくりと 楽しんでほしい」
アニタ様の短い言葉で祭りが始まる というか始まっている
テオの周りには たくさんの人が来るが
テオは俺の手を離さないし 側を離れない
「テオ様はロク君の事 よっぽど大事なんだな」とみんなが笑う
「当たり前だ」とテオが言う
「やめてよ」と俺が言うと
「恥ずかしがって かわいいね ロク君は」とみんなに笑われる
手をつないで テオと街を廻る
すれ違う人たちが みんな楽しそうだ
「こっち」とテオが俺の手を引く
「まだ 歩ける?無理なら抱っこでもしようか?」
「歩けるよ どこへ行くの」
テオに黙ったまま 街はずれの丘の上へと手を引かれた
「お墓?」
「そう 父と母が眠ってるんだ」
回りより少しだけ大きな墓標の前に立つ
「父上 母上 私の大切な人を連れてきました
俺よりも強くて優しい人です すこし無茶をしすぎるのが玉にキズです」
テオが俺の背中を押してくれる
「テオのおとうさんおかあさん 初めましてロクです
こんな俺だけど テオがとても大事にしてくれるんです
だから 俺も テオを大事にしたいと思ってます
だから これからもずっと テオと一緒にいること許してください
お願いします」
とお墓に向かって頭を下げる
「ありがとう ロク きっと許してくれるよ」
「ほんとかなぁ」
「本当だ きっとふたりで言ってるぞ 『そんなかわいい子どうやって手に入れた』って」
「ますます 信じられない」と言うと
テオが 俺の顎をクイっと持ち上げて
「ほんとだよ」とキスをしてくれた
「信じるよ」とキスを返した
朝早くから 人々が広場に集まって
地方からの特産品や外国からの珍しいものがあったり
大道芸人が子供たちの前で手品をしていたり
音楽隊が にぎやかな音楽を奏でている
その音が屋敷にまで聞こえてきている
「すごいね」ロクは窓から外を見てる
「どうだ?広場ぐらいなら行けそうか?」
出かける準備をしながらロクに声をかける
祭りの開催のあいさつや 街の有力者への挨拶
煩わしいが 必要な事
「行ってみたい でも・・・
テオにもアニタ様にも街の人にも 迷惑かけるかもしれない」
「俺もばあさんもロクが何をしても迷惑なんて思わないよ
それより ロクが外に出てくれる方がうれしいかな
ロクが一緒に挨拶してくれたらもっと嬉しい」
とぎゅっと抱きしめる
「連れて行って」と小さな声が聞こえた
「無理してないか?大丈夫?」
コクリとうなずいた
「用意はできたか?」とアニタ様が声をかけてきた
「ああ」とふたりで振り返る
「ウチの孫達は男前だな ガゼルもそう思うだろ」
「はい 旦那様や奥様にも見ていただきたかったです」
「ロクこれを」とアニタ様が小さな箱を目の前に出してきた
開けてみてと言われ 箱を開けてみる
金色のチェーンが入っていた
「これは?」
「これは テオの父親が持っていた懐中時計の鎖だ ロクにもらってほしい」
「そんなのいただけません」
「テオの父親が生きていれば きっと同じことをしたと思う
鎖をロクの手の中に入れて その上からアニタがロクの手を握る
「テオを守ってくれてありがとう テオをここへ連れて帰ってきてくれてありがとう
そして テオを愛してくれてありがとう」
「おれは そんな・・・おれはそんないい奴ではあません
たくさん人を殺しました たくさんの人を泣かせました おれは人殺しなんです」
「でも 私にとっては恩人だよ 孫を助けてくれた
生きて連れて帰ってくれた
私にとっては 一番の恩人で孫の大切な人
だから 世界中の人がロクを敵だと言っても 私はずっとロクの味方だよ
きっと テオの両親も同じだと思う だからこれをもらってほしいんだ」
「・・・・はい」
おばあちゃんの形見の懐中時計にテオのお父さんの鎖をつける
「大事にします」
「さぁ 行こうか ばあさんが挨拶をしないと祭りが始まらないからな」
とテオが手を差し出してくれる
「うん」とテオの手を取り ゆっくり歩いて街へ向かった
「みんなゆっくりと 楽しんでほしい」
アニタ様の短い言葉で祭りが始まる というか始まっている
テオの周りには たくさんの人が来るが
テオは俺の手を離さないし 側を離れない
「テオ様はロク君の事 よっぽど大事なんだな」とみんなが笑う
「当たり前だ」とテオが言う
「やめてよ」と俺が言うと
「恥ずかしがって かわいいね ロク君は」とみんなに笑われる
手をつないで テオと街を廻る
すれ違う人たちが みんな楽しそうだ
「こっち」とテオが俺の手を引く
「まだ 歩ける?無理なら抱っこでもしようか?」
「歩けるよ どこへ行くの」
テオに黙ったまま 街はずれの丘の上へと手を引かれた
「お墓?」
「そう 父と母が眠ってるんだ」
回りより少しだけ大きな墓標の前に立つ
「父上 母上 私の大切な人を連れてきました
俺よりも強くて優しい人です すこし無茶をしすぎるのが玉にキズです」
テオが俺の背中を押してくれる
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こんな俺だけど テオがとても大事にしてくれるんです
だから 俺も テオを大事にしたいと思ってます
だから これからもずっと テオと一緒にいること許してください
お願いします」
とお墓に向かって頭を下げる
「ありがとう ロク きっと許してくれるよ」
「ほんとかなぁ」
「本当だ きっとふたりで言ってるぞ 『そんなかわいい子どうやって手に入れた』って」
「ますます 信じられない」と言うと
テオが 俺の顎をクイっと持ち上げて
「ほんとだよ」とキスをしてくれた
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