53 / 70
49
しおりを挟む
「ばあさん ここで何をしているんだ」
「何してるって ロクと話をしているんだ
お前こそ ロクを放っておいて何をしている」
俺は二人のやりとりを聞いていた
テオが俺の方を向く
「どうした 気分が悪いのか それとも…」
「少し気分が悪くなっただけです
大丈夫です 元帥は戻ってください」
「でもな」
「お戻りください 元帥閣下」
仕事は仕事 テオの邪魔はしたくない
「心配するな 私がロクの相手をしている お前はお前の仕事をしろ」
とニヤリと笑う
チィっと大きな舌打ちをして
「いいな無理をするなよ 体がツラいなら部屋で休め いいな」と頬を撫でてくれる
少しだけ 気分が楽になる
「はい」と頬をすり寄せる
「すいませんが ロクをお願いします」
と頭を下げて バルコニーから広間へと戻って行った
バルコニーに残ったふたり
じっと男装の麗人を見ると
「ああ 自己紹介がまだだったな 私はアニタだ テオの祖母だ」
「えっ あっ 失礼しました」
立ちあがろうとしたが 足に力が入らない 立てない
足にぎゅっと爪をたてた
「ダメだ そんなことをしては」とやさしく手を包んでくれる
「足が傷ついてしまうよ」
そして人を呼び 俺を部屋まで運んでもらおうとする
「大丈夫です ここで元帥閣下を待ちます」と慌てて言うと
「ここでは休めないだろう」とアニタ様は心配そうな声を出すが
「大丈夫です しばらく休めば足も動きますから」と返事をする
「補佐官としての返答は満点だな」とアニタ様は笑い
膝掛けを持ってくるようにと使用人に声をかけてくれた
アニタ様との会話は楽しい
会話の中に「ロクはどう思う?」「ロクならどうする?」と聞かれるが
「そうですね 私なら・・・」と自分の考えを伝える
「なるほど」とうなずいてくれる時もあれば
「いやそれではだめだな」と言われるときがあったりと会話が弾む
おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってから
また少し外が怖くなった
人は死んでしまう 親しくなった人がもし・・・と考えてしまう
ブルっと寒気が走る
「・・・・ロクは賢い子だなぁ」とアニタ様が言う声が
『ロクは賢い子だなぁ』とおじいちゃんの声とだぶる
グニャリとアニタ様の顔がゆがみ 声が遠くなっていく
あっ まずい と思ったときには暗い闇が俺を覆っていった
ロクの体が急に私の方へ倒れ込んだ
顔色が悪い 貧血か
「悪いが 元帥閣下を呼んできてはくれないだろうか?」と使用人に頼む
「ロク 大丈夫か」と声をかけるが返事がない
小さく体が震えている
「・・・・・・たすけて」と小さな声が聞こえた
テオが部屋のベットまでロクを運んだ
貧血だな 少し疲れが出たんだろとテオがロクの頭を撫でながら言った
「ありがとう 助かった」とテオが私に頭をさげた
「お前が私に頭を下げるなんてな」と少し笑った
「ミアから少しは聞いてる つらい別れをしたんだろ
思い出させてしまったかな」
「ロクが生まれて初めて『死』と言うものを意識したんだ
今まで自分がしてきたこと 自分がゆるせないって」
「ロクが悪いわけじゃないのにな」
「ああ そう何度も言ってるんだが それでもたくさんの人を殺したのは自分だって
だからやっぱり許せないって苦しんでる」
テオがやさしくロクの頭を撫でている
「手放せないか?」
「ああ」
「そうか お前が幸せならそれでいい」
ふたりでロクをみつめる
ロクの目がゆっくりと開く
「気分はどうだ 気持ち悪くないか」
すぐに起き上がろうとするロクをとめる
「今日はこのまま休め」
「・・・テオ」と手を伸ばしてくる
冷たい手を握ってやる
「ちゃんと仕事してきたよ 何も心配しなくていいよ」
「ん」と言ってロクは目をつむった
「明日は 私の馬車にロクを乗せなさい 私の話し相手になってもらおう
そういえば ロクも馬車に乗ってくれるだろ」
「そうしてもらえたら 助かります」
「明日の朝 発つぞ」
「はい」とテオが返事をした
「何してるって ロクと話をしているんだ
お前こそ ロクを放っておいて何をしている」
俺は二人のやりとりを聞いていた
テオが俺の方を向く
「どうした 気分が悪いのか それとも…」
「少し気分が悪くなっただけです
大丈夫です 元帥は戻ってください」
「でもな」
「お戻りください 元帥閣下」
仕事は仕事 テオの邪魔はしたくない
「心配するな 私がロクの相手をしている お前はお前の仕事をしろ」
とニヤリと笑う
チィっと大きな舌打ちをして
「いいな無理をするなよ 体がツラいなら部屋で休め いいな」と頬を撫でてくれる
少しだけ 気分が楽になる
「はい」と頬をすり寄せる
「すいませんが ロクをお願いします」
と頭を下げて バルコニーから広間へと戻って行った
バルコニーに残ったふたり
じっと男装の麗人を見ると
「ああ 自己紹介がまだだったな 私はアニタだ テオの祖母だ」
「えっ あっ 失礼しました」
立ちあがろうとしたが 足に力が入らない 立てない
足にぎゅっと爪をたてた
「ダメだ そんなことをしては」とやさしく手を包んでくれる
「足が傷ついてしまうよ」
そして人を呼び 俺を部屋まで運んでもらおうとする
「大丈夫です ここで元帥閣下を待ちます」と慌てて言うと
「ここでは休めないだろう」とアニタ様は心配そうな声を出すが
「大丈夫です しばらく休めば足も動きますから」と返事をする
「補佐官としての返答は満点だな」とアニタ様は笑い
膝掛けを持ってくるようにと使用人に声をかけてくれた
アニタ様との会話は楽しい
会話の中に「ロクはどう思う?」「ロクならどうする?」と聞かれるが
「そうですね 私なら・・・」と自分の考えを伝える
「なるほど」とうなずいてくれる時もあれば
「いやそれではだめだな」と言われるときがあったりと会話が弾む
おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってから
また少し外が怖くなった
人は死んでしまう 親しくなった人がもし・・・と考えてしまう
ブルっと寒気が走る
「・・・・ロクは賢い子だなぁ」とアニタ様が言う声が
『ロクは賢い子だなぁ』とおじいちゃんの声とだぶる
グニャリとアニタ様の顔がゆがみ 声が遠くなっていく
あっ まずい と思ったときには暗い闇が俺を覆っていった
ロクの体が急に私の方へ倒れ込んだ
顔色が悪い 貧血か
「悪いが 元帥閣下を呼んできてはくれないだろうか?」と使用人に頼む
「ロク 大丈夫か」と声をかけるが返事がない
小さく体が震えている
「・・・・・・たすけて」と小さな声が聞こえた
テオが部屋のベットまでロクを運んだ
貧血だな 少し疲れが出たんだろとテオがロクの頭を撫でながら言った
「ありがとう 助かった」とテオが私に頭をさげた
「お前が私に頭を下げるなんてな」と少し笑った
「ミアから少しは聞いてる つらい別れをしたんだろ
思い出させてしまったかな」
「ロクが生まれて初めて『死』と言うものを意識したんだ
今まで自分がしてきたこと 自分がゆるせないって」
「ロクが悪いわけじゃないのにな」
「ああ そう何度も言ってるんだが それでもたくさんの人を殺したのは自分だって
だからやっぱり許せないって苦しんでる」
テオがやさしくロクの頭を撫でている
「手放せないか?」
「ああ」
「そうか お前が幸せならそれでいい」
ふたりでロクをみつめる
ロクの目がゆっくりと開く
「気分はどうだ 気持ち悪くないか」
すぐに起き上がろうとするロクをとめる
「今日はこのまま休め」
「・・・テオ」と手を伸ばしてくる
冷たい手を握ってやる
「ちゃんと仕事してきたよ 何も心配しなくていいよ」
「ん」と言ってロクは目をつむった
「明日は 私の馬車にロクを乗せなさい 私の話し相手になってもらおう
そういえば ロクも馬車に乗ってくれるだろ」
「そうしてもらえたら 助かります」
「明日の朝 発つぞ」
「はい」とテオが返事をした
10
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
孤独な蝶は仮面を被る
緋影 ナヅキ
BL
とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。
全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。
さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。
彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。
あの日、例の不思議な転入生が来るまでは…
ーーーーーーーーー
作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。
学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。
所々シリアス&コメディ(?)風味有り
*表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい
*多少内容を修正しました。2023/07/05
*お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25
*エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20
守護獣騎士団物語 犬と羽付き馬
葉薊【ハアザミ】
BL
一夜にして養父と仲間を喪い天涯孤独となったアブニールは、その後十年間たったひとり何でも屋として生き延びてきた。
そんなある日、依頼を断った相手から命を狙われ気絶したところを守護獣騎士団団長のフラムに助けられる。
フラム曰く、長年の戦闘によって体内に有害物質が蓄積しているというアブニールは長期間のケアのため騎士団の宿舎に留まることになる。
気障な騎士団長×天涯孤独の何でも屋のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる