暗殺者は愛される

うー吉

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「はい ロク飲んで」
ミアが ロクの手に白湯の入ったマグを持たせる
小さく震えている
「寒いか?」
首を横に振る
ゆっくり 白湯を飲む

力なく 倒れそうになるのを受け止める
ベットに寝かせてやる

頭をなでて ほっぺに手をやる
ロクが手を添えてくる
「冷たいな どれぐらい外にいたんだ」
「わかんない」
ロクは目をつむった
「ねぇ テオ おじいもおばあちゃんも死んだんだ」
「そうだな」
「なんで 死んだのかな」
「悲しくて さみしくて もうおじいと組み手ができないんだ
とか 街へ買い物へ行けないとか 一緒に本を読んだり 
おばあちゃんとも会えない 三人で話する事も 出来ないんだ
と思ったら さみしくて 苦しいんだ」
「そうだな」
「テオ さみしい おじいとおばあちゃんがいなくなって寂しいよ
人が死ぬってこんなに寂しいんだ 初めて知った
俺はたくさんの人にこんな思いさせてたんだ
こんなつらい思いをたくさんの人にさせたんだ
どうしよう どうしたらいい
俺は どうすればよかったのかな
テオ 俺本当にわかんないよ」

ゆっくり瞼が落ちる
ミアの白湯の中に睡眠薬を入れておいた

「・・・・ごめんなさい」と夢の中で謝りながら涙を流す ロク
ロクが 捨てられることなく家族の中で育っていれば
父と母と兄と優しい祖父と祖母に囲まれ 幸せに死んでいったのではないのか
体も心もボロボロにして 生きている 今
ロクの本当の幸せは どこにあるんだろうか と考えてしまう

 
「ロク フィルとクスリが会いたいって言ってるけど どうする? イヤならまた今度にしてもらうが」
「会うよ」
二人が家に来た
クリスは ロクを抱きしめ
「無理してない?大丈夫?」と聞いた
「大丈夫だよ 心配かけてごめんね」
気にしないでとクリスは笑った


「今日来たのは これを渡そうと思って」
短剣と懐中時計だった
「教官の家の整理をしたんだ」
国の決まりで 引き継ぐ者がいない家は 国の管理となる 
国に貢献したものに対して 褒美として 家や称号 名前などが与えられることもある
おじいとおばあちゃんの家が残るのは嬉しい 誰かが継いでくれたらもっと嬉しい
「これだけは行き先が指定されててね」
ズイと俺の方へ フィルが差し出す
「教官と夫人がロクにって」

手紙も渡してくれる

ロク
悲しむな
前を向け

幸せになりなさい

おじいちゃんとおばあちゃんはいつも空からお前を見てる

「じいちゃん ばあちゃん」
ロクは手紙を握りしめて 涙をグッと我慢してる
「泣いていいんだよ 泣いて 涙を流して 悲しもう」
「うん うん」


「眠ったみたいだね」クリスが言う
「ああ」
「明日は目が腫れるだろうな」とほっぺをツンとつくフィル
「ああ ゆっくり眠れ」ともう一度抱きしめた


短剣と時計は家の飾り棚に飾られている
ロクがじっとそれを見ている時がある
「どうした?」と聞いたら
「おじいちゃんとおばあちゃんと話をしてるの」と言うようになった

ロクが本当の事を知るべきなのか
答えは見つかっていない
でも
「俺は俺のまま ここにいたい」
と飾り棚の前で言った
「ああ ずっとこのままここで一緒にいような」
と改めて誓う

短剣と懐中時計に
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