暗殺者は愛される

うー吉

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「大将」とヒューが呼んでいる
アシエカに視察に来たが ルイが今回も頑張ってくれたのだろう
思っていたよりも落ち着くのが早い
ルイもヒューがそばにいることで 安心できているようだ
ヒューが それはルイの仕事じゃないな お前らで考えろよ
と厳しくアシエカの重鎮たちを指導してくれるから助かるんです
とルイがアシエカに着いた早々に話してくれた
思ったより 早く帰ってこれそうだなと思う

「どうした」
ヒューの顔が少し曇っている
「スパルガリズからの早便です」と紙を渡される
差出人はクリスから
【ロク 入院 急ぎ帰国しろ】とだけ書いてあった
「何かあったんですか」と聞くので紙を見せる
ヒューがそのまま大股で歩き 指示を出す
「早い馬を用意しろ ついてこれる奴いるか」
ルイがどうしたのとやってきた ヒューが説明している
入院したってなんだ 急いで帰国しないといけないほどの事ってなんだ 大人しくしてれば大丈夫てソウテツは言ってたぞ
お土産楽しみにしてるからねって見送ってくれたぞ
ゴンと頭にゲンコツが落ちた
「おい大将 ボケてんじゃねぇぞ 早く帰ってやれよ ロクが待ってる」
「ああ悪いがそうさせてもらう 後は頼んだ」 
「ヒュー テオ様についていって お前が一番ついて行ける 早く用意する」
「え でも」
「ここは大丈夫 ロクが落ち着いたら帰ってきてくれたらいい」
「ああ 行ってくる ほら大将 帰るぞ」
2時間後には小隊を組んで アシエカを出た
「ロク テオ様帰ったからね いい子で待ってるんだよ」とスパルガリズの方向に向かって言った

走り続ける事はできない
「今日はこの辺にしましょう」
と馬を止める 後半分ぐらいか 
「ヒューどうだ 皆ついてこれてるのか 無理する事はない」らしくない事を言うな
「あんたの部下なめんなよ みんなついて来れてるよ」
「そうか 悪かった」アンタはウチの大将は偉そうにしてればいいんだ
「俺たちの心配するな 前へ進む事だけ考えろ」
「ああ」
肩を叩いて 馬見てくるよと言ってその場を離れて行った
くそっ ロクお前さんがいないとホントダメなんだからなわかってるのかとスパルガリズの方向に向けて言う

明日にはつけるなと話をして休もうといていたら ヒューが近づいて来た
「なぜロクを連れて来なかった」
「・・・・・」
「言いたくないならいいけど ちょっと気になっただけだから 悪い」その場をさろうとした
「足の調子が悪かったんだ 突然力が入らなくなって立てなくなる 生活するにはそれほど支障はないが 馬に乗って移動となると少し無理だったんだ」
「そうか」
「だから そう決めたのに 判断を間違えたのかしれない」
そんな事ない そんな事ないとヒューは繰り返し言ってくれた



病院につき ロクの元へと急ぐ
病室の前にクリスがいた 
「そろそろ着く頃だと思って」と一緒に病室へ入った

「ハァ…ハァ…ハァ やっ…」と苦しそうに熱のこもった息をするロク
「やだ…やっ……はぁはっ…くるな…やっ」
「ロク 目を開けろ ロク」
ロクの熱い手を握る
「なんで 足の調子が悪いとは言ってたが
体調は悪くないって言ってたぞ」
とベットの横に立っているクリスを見る
「足の調子悪かったの?そんなの一言も聞いてない だんだん 人が怖くなったんだ 外にも出たくなかったと思う でも休むとは言ってくれなくて 何度も休んでいいよって言ったんだけど 
すまない テオ 
俺がついていながら こんな事になって」
クリスが 自分の手を握りしめている
「すまん」と目をそらした

ロクの口が小さく動いていた
「どうした ロク 何が言いたい」
耳を口元へ持っていく
小さな小さな声で
「クリスは悪くないんだ 俺が悪いの」
と聞こえた
「そうだな 約束したもんな 調子が悪くなったら ちゃんと言うって 約束守れよ みんなに心配かけて ヒューまで付いてきたぞ」
ゆっくり ロクの目が開く 
「テオ ごめんね」
「目を離すとこれだ 今度からは 何があっても連れて行くからな わかったな」
と頭を撫でて
「もう少し眠った方がいい ずっといるからな」
と言うと
こくりと頷いて また目を閉じた
「ゆっくりおやすみ」と頬をなでた


「お前かぁ 俺の義弟に色目使ったの」
フェルが 会議の場に1人の男性を呼んでいた
「宰相の弟 たとえ義理であっても 我が国の宰相たるものが自分の欲の為に弟にするか 
もちろん 宰相があの子を弟にすると言った時より前に あの子は我が国の英雄の命の恩人なのは 皆がわかっているはず そんなあの子をこの国に縛っておく為にも 宰相の弟にするとしたのに 貴様はなぜ あの子を追い込むよくなマネをした」
「いえ 私は 噂話を確かめようとしただけで
本気で ロク様をどうにかしようなど考えてもおりません」
「国王陛下 その男には 厳しい処分をお願いに上がりました」
1人の老大臣が話し出す
「なぜだ?」フェルがその大臣に聞く
「ロク様は 我が妻を庇って下さいました
あのパーティの日 ロク様が額に傷を負った日
あのロク様の後ろにいたのは 我が妻で 
妻も ロク様がいなければ 自分がひたいに怪我をしていたと すぐにお礼とお詫びに元帥閣下のお宅へ伺ったのですが ロク様も元帥閣下も 何も気にすることはありません 国民を守る事が軍人にとっては最大の仕事であります たとえ補佐官であっても軍属であれば当たり前の事ですので 気になさらないでくださいと言われたのです そんなふうにおっしゃる二人が お前の言うような 体を使ってなどとできるわけがないだろう それに
ロク様が今までどれほど努力されているか 知りもせずに 噂だけを信じて どれほどロク様が心を痛めておられるか 考えただけでも涙が出てくるわ」
そうここにいる皆は ロクの事をきちんと見ていた
だからクリスの弟にすると言った時も 
補佐官で軍属にすると言った時も
何も言わず いい考えですな としか言わなかったのだ
「ありがとう」つい頭を下げてしまった
「勘違いされては困ります 陛下や宰相殿だけが ロク様をかわいいと思っておられるのか 
そこが大きな間違いであります ここにいる皆
ロク様の成長を楽しみにしておるのです
歩けるのを見た時は 涙が出ました」
「声が出なくなった時は ここでは困らぬよう
紙とペンを至るところにおいたりのう」
「しばらく見かけない時は また具合が悪いのかと心配になるしの 定期的にこちらにも顔を出すようにしてもらいたいと思っておりますが いかがでしょうか」
出るは出るはの 老大臣から若い秘書官まで 
ロクの事を見守ってくれていたのだ
「なので お前の事は許せん ここに残っていてもいいが あまりおすすめはせんがな」
と言うとその男はクソっと言って 会議の部屋を出て行ってしまった
「後は 陛下の心のままに」と皆も頭を下げて会議室を出て行った
「トクジロウ」と声をかけた
「どうしたお前が一言言えば 俺はあいつを消すぞ」
「そうしたいが それだとたぶんロクが怒るんだよなぁ」
「そうだろうな」と少し笑う
「どうしたものかなぁ」と言いながらも
「ロクの気が晴れればそれでいいんだか」
「それなら 今の話聞かせてやれば もうあの男の事なんて忘れられる あの女の事もな」
ロクにワイングラスを投げた女は 次のパーティの時に出席している女性から ある事ない事ヒソヒソ囁かれたらしい そんな不愉快です と大声を上げたら あら噂話が好きだと思うから 噂にして差し上げているのに 不愉快ですって ロク様は不愉快ですともおっしゃらず ただひたすら我慢されてました と言われ
また ヒソヒソされていたそうです
「お願いもしてないのに まとまって
そんな行動にでるんだな 女って」と後の言葉は口をつむんだ


「まだ 退院したらダメ?」
と聞くが ダメだとしか返事ができない
熱がやっと下がっただけなのに
胃の治療も足の治療も何もしてないのに
「ダメ?」と聞いてくる
当たり前すぎるが 「ダメ」と返事する
「ゆっくり治すんだろ」
「わかってるんだけどね 
でもね ダイジロウさん 早く家に帰りたい」
「そうだね じゃもうこんなに我慢するのやめてね 足の調子が悪いのも 胃の調子が悪いのも
早めに言ってくれてたら 今頃おうちで
ミアさんの作るおやつ 食べれてるよ」
と笑ってやる
「うー 今度はちゃんと言います」
とベットにポスンと寝転んだ
まだずっと起きておくのは 体が辛いのだろう 
何回経験してもきっとこの子は素直に言わないんだろうなと思うとため息が出る

噂話も何もかも全部終わったよ
とテオが教えてくれた
「何したの」て聞いても
何もしてないよ ロクの事見てくれてる人がたくさんいて見守ってくれてると 城の人とか偉い人とか みんなロクの味方だから安心しろ
て言われた 
「よくわかんないんだけど」テオに言っても
いいからいいからと笑ってるだけで教えてくれない
何がいいのか 本当によくわからない
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