暗殺者は愛される

うー吉

文字の大きさ
上 下
35 / 70

31

しおりを挟む
ロクを探す
大勢人がいるのは苦手だからと 行くのもだいぶ渋っていたが
慣れてもらわないと困るしと少し無理をして連れてきた
「元帥閣下 どなたかお探しですか?」と声をかけてきた男
コイツ誰だ
「ウチの補佐官 見かけませんでしたか?」
「ああ バルコニーで見かけましたよ かわいい子ですよね」
ロクがかわいいとかお前には関係ないだろう 余計な言葉には反応しない
「どうもありがとう」と横を過ぎようとした時
「今度 貸してもらえませんか?私も試してみたい
貴方や宰相を虜にするんですよね お金なら払いますよ いくらですか?」
何だコイツ 何の話をしているんだ
「言っている意味がわからんが」
「いざなぎの子なんでしょ お金さえ出せば何でもしてくれるって噂になってますよ
彼に言ったら 真っ青な顔になってましたけど いまさらって感じですよね
いきなり補佐官になったり 宰相の義理の弟になるくらいですからね」
ニヤッといやらしく笑い一言
「俺たちにも楽しませてくださいよ 元帥閣下」
殴りかかろうとした時 グラスの割れる音と女の人の悲鳴が聞こえた
騒ぎの方へ向かって歩く ざわざわしている間から
「ほら あの子よ」「ああ お金払えば何でもしてくれるんだろ」
「閣下を誘惑して今のポストに就いたとか」「そんなにいいなら私も相手してもおうか」
聞こえてきた 雑音
こんな言葉を毎回聞いていたのか あいつは
人の輪をかき分けた先には ロクが額を押さえて椅子に座っている
そばには飛龍がいてくれた
「ロク」と声をかけるが 少し反応が悪い 傷を見て 抱き上げる
病院に連れて行くのが早いか 呼んでもらうのが早いか考えていると
クリスが 奥へと促してくれた そのまま付いていく
しきりに大丈夫と繰り返す ロク 
体が震えているの気が付いてないのか 
「ごめんなさい」と小さな声で謝っている
いつから あんな風に言われていたんだ 人のいる場所はちょっととか
俺が行けるような場所じゃないよとか ただ人の集まる場所が苦手なのかと思っていたが
違ったらしい 慣れるためとか言って無理させるんじゃなかった
「ここへ」と居間のソファーへ座らせて 傷を見る
まだ血が止まらない 
「すぐに ソウテツが来てくれるからね」クリスがロクに声をかける
「ほんとに大丈夫 たいしたことないよ お願いだから二人とも戻って お願い
俺が騒ぎを起こしたからだよね 二人が変なこと言われたら困るから ねえお願いだから」
あの悪意の中に一人でいたんだな 気が付いてやれなかった
俺やクリスの名前があれば みんな好意的に受け取ってもらえると思っていたのに
浅はかだった ごめんな 余計なことに巻き込んでしまったな
「少し落ち着け ロクの方が大丈夫じゃないだろ 気持ち悪くないか 頭痛くないか」
「あっ」体の力が少し抜けたのがわかった「うん 大丈夫」
と落ち着いて答えてくれたので クリスとホッと息をはいた

「かわいい顔してるんだから 顔に傷つけるなよ」とソウテツがロクに言う
「女の子じゃないんだから そんな事言われても嬉しくない」と少しムッとして答えてる
「思ったより傷が深いから 縫うからな 我慢しろ」と処置をしてくれる
「はい終わり よく我慢したな 偉いぞ」と頭をなぜられるが
麻酔が効いているのか ぼんやりしているロク
「ロク」と声をかけると 「家に帰りたい」と涙をひとすじ流した 
ソウテツを見るとうなずいていたので 抱き上げて「家に帰ろうな」と言う
そのまま目をつむった 眠ったようだ
城を後にした

いつの間にか眠っていたみたいで
気が付いたら 家のベットの上だった
部屋をでて 一階へ降りる
居間の明かりが少し漏れてる テオが椅子に座って難しい顔をして考え込んでいる
「誰かいるのか」と声をかけられた 優しい声だ
「ごめんなさい」ととっさに出た
「ロク なんであやまるんだ 目が覚めたのか 傷は痛くないか」
手を引いてくれて ソファーへ 二人並んで座る 

「ごめんな イヤな思いたくさんしてたんだろ 気が付いてなくてごめんな」
テオが優しく言ってくる
「俺はいいの でもそのせいで 二人が悪く言われるのが嫌なだけ」
「でもな」テオの頬を撫でる 元気がないテオ
「ほんと 俺は平気 よく知らない奴が勝手に言ってるだけ
だから平気 テオもみんないるし 俺は一人じゃないからね
だから大丈夫」テオがうなずいてくれた ホッとする
「何でも言う約束じゃなかったかな ロクはすぐに忘れるみたいだが」
じっと顔を見られる
「言うほどの事ではない と思ったから 言わなかったの」
「お前は ちゃんと話せ話してくれないとわからない
自分だけで解決しようとするな 我慢をするな」
我慢しているわけじゃない
「俺がよけたら 後ろの人に当たってた」
「えっ」
「女の人がいた 俺がよけたらその人に当たる
その人怪我しちゃう」
「そうか やはりロクはかっこいいな」
「俺かっこいい」
「ああ 知り合ったあの日から ずっと俺にとってはヒーローだからな」
と頭をやさしく撫でてくれる
「傷痛くないか」
「大丈夫」
テオが俺の肩に顔をうずめる ちょっと凹んでいるときのテオだ
「ん テオ 心配かけてごめんね」
本当にごめんね
「今度からは俺から離れるなよ」
「ん わかった 約束する」

今日は俺がテオを抱きしめて二人で寝た
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

処理中です...