暗殺者は愛される

うー吉

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ルイとヒューを残して アシエカから引きあげてきた
溜まっていた仕事もだいぶ減って やれやれと日常に戻りつつある そんなある日
執務室の俺の机の上に 封筒があった
宛名も差出人もない
「これ 誰が置いたかわかる?」と事務官に聞いたが わからないと言われた
テオに相談したいが 今日はフェルとクリスの護衛で帰りは遅くなると言っていた
封筒を手で開けた
「イタッ」指から血が流れ落ちた



「皆 今日はゆっくりと過ごしてほしい」とフェルの挨拶で始まった パーティに警備を兼ねてテオと出席している ちょっとした人だかりの中心になっているテオをチラリと見る
いつもはあまり手入れをしない髪を 今日はキチンと後ろに撫で付け タキシードを着ている
背も高い 鍛えている胸板 スラリと長い足 立っているだけで見惚れてしまうのは 俺だけじゃないと思う
「はぁ~」とため息が出る ミアが「テオさまに負けないぐらいのいい男にしましょう」と張り切ってくれたけど タキシードが似合うほどの体も年齢にもなってない
 「はぁ~」とまたため息をついてしまう
で また聞こえる
「ほらあの子 いざなぎの生き残りね」「こんな場所にまでやってきて 身分知らずね」
「元帥閣下もあんな滅んだ国の子を手元におくなんてね」
もう何回も聞いてる言葉 ヒソヒソしてるようで俺に聞こえるように言う 
睨めばその場では 治まるが
「今の見ました あんな目をして なんでもいざなぎはお金を払えば何でもするようよ
どこで何をしていたのやら 私達を睨むなんて 怖いわね」と余計に言われる
ため息が出る
なんとなく気分が悪い 夜風にでもあたろうとバルコニーへ行く 
知らない男が声をかけてきた
「なぁお前 いざなぎの出身なんだってな それでクリスティーナ様の義弟におさまるって 
どうやったらそんなに上手く行くんだ やっぱり身体の使い方か?」 
キッと睨むと 耳元まで顔を寄せて「俺にもさせてくれよ そんなにいいなら試してみたい お金払うからさ」
「お金払えば 何でもしてくれんだろ」とニヤニヤ笑ってる 取り巻きもいて一緒に笑ってる
身分だけは高いんだな 
紹介されてるはずなのに覚えてないってことはそれほど重要じゃないってことだな と思う
気持ちが悪い「失礼します」と一言だけ言ってその場を離れる
「いつでも連絡してくれ」と男が笑っていた

気持ちが悪い トイレに駆け込み いろんなものと一緒に吐く 胃がキリリと痛んだ

  
体裁を整えて 会場へ戻ったところで
「ちょっと あなた」と今度は女の人に呼び止められた
今日はツイてないと思った

「はい 何でしょうか」見覚えがかすかにある程度しか覚えていない
 大臣の嫁?娘?だったかな 思い出せない
「あなた 元帥閣下の補佐の子よね 元帥閣下はいつお暇かしら」
「閣下のスケジュールをむやみに教えることは出来かねます」
当たり前のことを当たり前に答えた
「じゃあ あなたが元帥へ取り次ぎなさい わたくしがお会いしたいと一言いえばいいわ」
「個人的に面会をされたいなら 司令部に申し込んで・・・「そんな事言ってるんじゃないわ
だいたいあなた何?わたくしを元帥閣下に会わせたくないのね」
「別にそのような事ではなく 私はきちんと順序を踏んでいただきたいだけです
私が勝手にできることではありません」
「たかが補佐官のくせに 偉そうに わたくしが誰かわかって話をしているのかしら」
「どなたであろうと 軍での決まりとなっておりますので守っていただきます」
では と礼をして離れようとした時 
「いい加減になさい」と女が持っていたワイングラスを投げつけられた
キャーッと少し離れてみていた女の人が声を上げる
今日は本当についてない
ポタポタと額から血が流れて タキシードを真っ赤に染めていく
額の傷とか頭の傷って思ってるより血が出るからなぁ なんて考えてると
「ロク」と飛龍がそばに来て 傷を押さえてながら 椅子へ座らせてくれた
「ロク わかるか?見えるか?」傷を押さえながら飛龍が質問してくる
コクリとうなずく
「ロク」とテオが人をかき分けてやってきた
「大丈夫か」と傷をみて そのまま抱き上げられた
「ソウテツを呼べ テオ 奥へ連れてこい」とクリスがテオに声をかけ
テオを促している
「テオ 俺大丈夫だから 戻って ほんとに大丈夫」
「・・・・・」
テオは返事してくれない
俺が怒らせたんだ こんな場所で騒ぎを起こしたから
「ごめんなさい」と小さく言った
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