暗殺者は愛される

うー吉

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「ちょっとだけ話してもいいか」とソウテツという医者が言う
「今のお前さんの状態 矢で撃たれてのはわかるな その矢には毒が塗ってあった」
よくある話 あの国なら普通の事だ
「肩の傷が化膿して 熱がでた 傷の治りも悪かったがだいぶ良くなってる
後は 完全に傷がふさがったら 動かしてもいいが まだしばらくはダメだ
今は 指先や手首 肘がうまく動くようにしろ 毎日することはアランに言ってあるから
指示に従えよ」
「毒矢の影響もあるし まだ貧血もある しばらくはおとなしくしていろよ」
「食事は食べれるものをゆっくり食べたらいい 無理はするな いいな」
「それと 足の事なんだが」
ああ 気が付いていたのか
「どうだ?」
首を横に振る
「そうか うん そうか・・・」
「もう 足動かないの?」言いにくそうだったので さきに聞いてみた
「それはわからん 動くようになるのか 歩けるようになるのか 走れるようになるのか」
「動かない可能性が一番高いよね」
ソウテツが息をつく
「ああ その可能性もある」
ぎゅっとシーツをにぎる 

役立たずになったんだな 俺 


ベッドで過ごす日々
テオ
短刀を貸してくれた人 隊長と呼ばれてた人
大きな人 大きな手 赤茶色の癖のある髪
この国では偉い人 
朝と夜必ず来てくれる
体調はどうだ 無理してないか 
ミアもソウテツ先生もクリスもヒューも
みんなすごく心配してくれる
ミアに聞いてみた
「なんで 俺なんか気にするの」
「だって 体ツラいのにつらいって言わないでしょう
なんでも我慢ばっかりして もっと我儘言ってくれてもいいのよ」
この前も熱があるのに黙ってたでしょ と言われた
「わがままって 我慢できるから・・・」
「私たちは 我慢なんてしてほしくないの
私たちにもっとちょっと無理なお願いをしてほしいし しんどい時はしんどい
助けてほしいときは助けってって言ってほしいの
そうしてくれた方が うれしいのよ」
「それは だめだよ
ここにおいてもらって ベットで寝かしてもらって 食事も満足に食べれないのに
いつもたくさん用意してくれてるし 風呂も入れてくれるし 服もきれいなの着せてくれてる
これ以上なんか言ったら バチ当たるよ」
足のマッサージをしてくれてる テオの手がとまる 
「こんな体じゃ なんの役に立たないよ 俺 なんなら みんなの迷惑でしかない」
テオが そっと抱きしめてくれる
「迷惑だなんて思ったことはない ロクが毎日一生懸命生きてくれてるだけで
それだけで 俺たちはがんばれる すごく役に立ってるぞ」
「旦那様が真面目に事務仕事するようになったってルイ様が喜んでましたね」
「終わらないと帰してくれないんだ
早く帰って ロクと一緒に食事をとったり 風呂にはいったりしたいからな」
テオがそっと体を放してくれて 頭を撫ででくれる
とても 気持ちがいい
「みんなあなたの事が好きだから 大事にしたいし 我慢してほしくないし
我儘言って困らせてほしいのよ」
ミアが言う
ほんとに よくわからない


ベットの横には大きな窓がある
おれは起き上がって 外を見る 空には星が光り 月も見える
ああ あの国にいたころには 星も月も見た覚えがないな
街灯がちゃんと点いている
家々にも明かりが灯っている
俺のいたところとは大違いだな
あそこは暗くて寒い 
思い出しただけで ブルっと寒気がした
扉をノックする音ともにテオが部屋に入ってきた
「起きていて大丈夫なのか」テオが聞く
「うん」
「少し顔色が悪い 横になれ」
「だいじょうぶ」と言っても聞いてくれない
「だいじょうぶっていった」テオを睨むと
「お前はそう言って熱を出す 
お前の大丈夫とフェルの大丈夫は信用しない」
フェルはこの国の国王でテオの幼馴染らしい
「君がテオを助けてくれたと聞いた
この国は君の事を歓迎する 何も心配する事はない 
ずっとここにいればいい テオの事がイヤになったら
うちにくればいい」
ニッコリ笑ってそう言われた
「なに どうした」
テオは 机に向かい俺に聞く
「しごと?」
「ああ」書類から目を離さず返事する
難しい顔をして書類を読む
たまにペンを取り 何かを書く
たまに頭を抱えて考えてる
なんだかちょっと面白い
「どうした 俺の顔になんかついてるか」
「なんでもない おやすみ」
「ああ おやすみ」
テオが あかりを少し落とした

どれぐらいたったのか 書類をおく
スウスウと落ち着いたロクの寝息が聞こえる
今日はまだ大丈夫そうだなと 少しだけホッとする
ロクは覚えていないようだが よく魘されている 

王の使いとして 隣国を訪ねた時
路地裏から飛び出してきた ロク
服にはいっぱいの返り血を浴びてる
「すいません」と馬の前を横切ろうとした時
路地裏の奥から 複数の足音が聞こえる
「あっまずい」と逃げようとするから
「追われてるのか?」
「そうだけど おじさんには関係ないよ」と走ろうとする
「来るか?」と手を差し伸べた 追ってがそこまできている
「国を出れたらいい」と手を取った

隣国イザナギ国は あまり豊かではない
国は否定しているが 
暗殺やクーデターを国で請け負っている
あの国を俺が行ったのも 
ウチの国にちょっかいをかけるな 
あまり目につくような事をしたら
本気で国を滅ぼすと警告に行った
帰り道には しっかり命を狙われてる
なんて国だ
その中で ロクは何をしていた
あの身のこなし 躊躇なく人を殺す
戦場に立ったあの眼 ゾクリとした 
まだ若い
場数を踏めばあんなふうになるのか
あまり褒められたものではないな
とため息が出た

寝顔を見て 今日はよく眠れているなと
安心して 自分も寝床へ行く
「おやすみ」と声をかけて
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