静と千尋

うー吉

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千尋8

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「ねぇ 川越と何かあった?」
ジョッキに入ったウーロン茶を吹きそうになった
「何もないですよ」
「だって仲いいし 一緒に住んでるんでしょ?」
「一緒にって言うか‥‥」
「千尋君 女子の情報力なめてはダメよ」
「もしかして いろんな人から頼まれてます?川越さんの情報集めてほしいとか?」
「半分当たりで半分ハズレ」
すいません ビールと手を挙げた 宇津さん
「アレはザルだから 気にするな」と瀬野さんが教えてくれた
「君も人気あるんだよ 女子から」枝豆をつまみながら言われる
「俺がですか?」
「そう 気が弱そうなかわいい顔してるくせに 仕事はしっかりできるし
無理難題言ってくる奴には おかしくないですかってはっきり文句を言う
よく気がつくし 優しい そらモテるよね」
「俺そんなつもりないですけど」
「君につもりがなくても 周りはほっとかない
で 彼女とかいないの?」
クピっとウーロン茶を飲む
「いませんよ 彼女とか作る余裕ありませんでしたから
それに 俺なんかダメですよ みんなが思ってるほどいい奴じゃないですよ」
「そうか?」
今まで会話にあまり参加してこなかった瀬野さんが言う
「お前頑張ってるじゃん 体も全快ってわけじゃないんだろ?」
「えっ そうなの?」
「はい 上手く付き合っていかないとダメですね」
「それなのに 仕事も頑張って 彼女もいてとかだったら 
世の中の男子が可哀そうだぞ」
「そらそうだ」と宇津さんが笑ってる
「お前はいい奴だよ 他は知らんんが 俺たちの間では いい奴だよ」
「そうですか?」
「そうよ いい男よ 自信持ちなさい ねぇ」と瀬野さんを見る宇津さん
「ああ 川越にはもったいないと俺は思おう」
「だよねー 何でよりによってあいつなんだろ」
「ええええ」
「たぶん配属された時の席だと思う」
「やっぱり そうだよね 私の隣に来てくれてたらなぁ」
「何言ってんだ 俺の隣だろ」
「「すいません ビール」」
「ええっ なななななんの話ですか?」ちょっと前のめりになってる自分がいる
「千尋君かわいい 動揺してる」
「千尋はかわいいの そんなの決まってんだろ」
「待ってください ちょっと意味わかんないんですけど」
「聞いてないの?川越から 私たち同期なの で
川越ってさ ちょっと他人に冷たいって言うか 割り切ってるって言うか」
「ニコニコしてるけど バリア張ってんだよな 他人に対して」
「そうなんですか」
「だろ 千尋は感じてないんだよ それが俺たちの中では不思議でさ」
「興味出てくるじゃない 川越を人間にした子がどんな子か」
「俺は 川越より先に千尋の事目つけてた」
あんたの話はいいのよ とビールを飲み干して またビールを頼んだ
「で 一緒に住んでるんでしょ」
「一緒にって言うか 川越さんの実家にお世話になってって」
「そうなんだ」
「俺倒れて 病院入院させてくれて 退院しても生活心配ないように
川越さんの実家に住まわせてくれたり 
会社に話してくれて 俺正社員になってってびっくりして
それから それから」
「そっかそっか」
「それなのに俺 セイさん傷つけたんです すごく悪い事したんです
あやまりたいけど あやまれてなくて
家にも帰ってこなくて 会社にもいなくて どうしたらいいかわかんなくて
あやまんないといけないのに 俺がわるいのに みんな俺は悪くないって言ってくれる
悪いのは俺なのに セイさんは何も悪くないのに」
「じゃあなんであやまりにいかない
千尋が悪いんだろ あやまりたいんだろ だったら 謝りに行けよ」
「でも」
「でもなんだ」
「でも もういいって言われたら もう嫌いって言われたら 俺」
「それは ないなぁ」宇津さんが言う
「千尋君がさ 川越に傷つけられたからってすぐに嫌いになる?」
「ならないです」
「そうでしょ 川越も一緒よ」
「でも でも すごい傷つけて ひどい事した」
「何があったかは分からないけど
あいつも一緒なんじゃない 
千尋の事すごく傷つけてひどい事したって思ってるんじゃないかな
だから 家にも帰れない 
仕事はほんとに出ずっぱりだけど 千尋に会わす顔ないんじゃないかな」
ちがう?
何も言えなくて下を向く
「『もういいって言われたら もう嫌いって言われたら』って あいつも同じだと思うよ」
カバンを持って 立ち上がる
「すいません 俺 俺」
「早く行ってあげな ひとりで泣いてるかもよ」
財布を出そうとしてたら
「いいよ 川越を人間にしてくれたお礼」
「すいません」と言って頭を下げて 店を出た
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