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千尋5
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朝 目が覚める
右手が暖かい セイさんがずっと握ってくれていたと思うだけで 少し嬉しい
ピピピッ ピピピッ と携帯のアラームが鳴る
「う」とセイさん目を覚ます
パッと目があって
「おはよう」と笑ってくれる
なんだか とっても照れくさい
「えっどうしたん 千尋顔赤いで 熱上がってるんと違うん」
「違います 大丈夫です」と布団をかぶる
「ホンマに?」
「本当です」
「俺 仕事行かなあかんねん 今日1日頑張るエネルギーが欲しい」
とセイさんが伸びをして ベットに座る
「なぁ 千尋 俺にエネルギーくれへん?」
少しだけ布団から顔をだす
「何をしたらいいですか?」
ここと言って セイさんがほっぺを指差す
「………」
体を起こして
唇にチュッとする
布団に潜り込んで
「いってらっしゃい」といった
「………」
返事がないので チラッと布団から顔を出すと
布団の上から抱きしめられ
「頑張るわ 俺頑張るからな 今日もここ帰ってきていい?」と聞かれたから
「ダメです」と答えた
「やっぱりそこは うんって言うてや」と笑った
「少し熱あるな 看護師さんに言うとくよ」
「はい」
「じゃ 行ってくる」
「はい いってらっしゃい」
とセイさんを見送った
それから検査の日々が続いて
セイさんも忙しくて 会えなかった
でも たくさん連絡をくれる
『おはよう 今日の調子はどうや?』
『ごはん食べたか』
『今日は暑いわ』
『今から会議やから寝ないように頑張ります』
『仕事終わったら電話してもいい? 声が聴きたい』
俺も聴きたい でも恥ずかしくて言えない
「いいですよ」と返事するのが精一杯だ
「千尋君 検査の結果出たんだけど」とコウさんが病室にやってきた
「結果ね あまりよくないんだ」検査結果を見せてくれる
「退院できればいいんです 退院できますよね」
「できなくはないけど‥‥」
「じゃあ 退院します いつできますか」
「ちょっとまって 退院には条件があるよ
まず 退院してから一ヵ月は療養ね 仕事はダメだよ
出来れば だれかと同居してほしい ムリなら近くに住むとか
それが無理なら ちょっと今の状態では退院は無理かな」
「そんな」布団をギュッと握る
「悩むことないでしょ ウチに来ればいいんだから」
さきさんが仁王立ちしている
ツカツカとやってきて 両頬をむぎゅーとつねられる
「いたいれす」
「痛くしているからね」
「なんれれすか」
「変に気を使って このバカ息子」
やっと 頬を離してくれて 今度は包み込んでくれる
「今千尋が考えてることをしたら みんな不幸になるんだよ
千尋は病気で苦しむ セイは千尋がいなくなったことで苦しむ
で 私たちは千尋を助けてあげられない事で苦しむ
ねぇ千尋 ひとりで苦しまないで お願いだから ね」
涙が止まらない
「迷惑かける 体あまり言うこと聞いてくれない すぐにしんどくなる」
「ゆっくり治していこう 上手く付き合えるようになろうね」
と幸之助さんが頭を撫ででくれた
その日の晩 セイがやってきた
「さきさんから話は聞いた」と頬をつねられた
「せっかく 退院したら一緒に住むつもりやったのになぁ
まぁ 千尋の体が一番やからな ゆっくり治していこな」
「はい」
「会社には あと一ヵ月ですって言うとくな」
「いいのかな そんなに休んで」
「だから じっくり治して一ヵ月で復帰するの ええな
これは上司命令やで」
「わかった」
セイが抱きしめてくれる
「よかった 千尋が俺の腕の中にいてくれる ホンマに嬉しい」
「迷惑かけるけど お願いします」
セイと目が合う
目をつむった セイの唇が俺の唇と重なった
好きな人とのキスがこんなに気持ちのいいものだと
俺は知らなかった
右手が暖かい セイさんがずっと握ってくれていたと思うだけで 少し嬉しい
ピピピッ ピピピッ と携帯のアラームが鳴る
「う」とセイさん目を覚ます
パッと目があって
「おはよう」と笑ってくれる
なんだか とっても照れくさい
「えっどうしたん 千尋顔赤いで 熱上がってるんと違うん」
「違います 大丈夫です」と布団をかぶる
「ホンマに?」
「本当です」
「俺 仕事行かなあかんねん 今日1日頑張るエネルギーが欲しい」
とセイさんが伸びをして ベットに座る
「なぁ 千尋 俺にエネルギーくれへん?」
少しだけ布団から顔をだす
「何をしたらいいですか?」
ここと言って セイさんがほっぺを指差す
「………」
体を起こして
唇にチュッとする
布団に潜り込んで
「いってらっしゃい」といった
「………」
返事がないので チラッと布団から顔を出すと
布団の上から抱きしめられ
「頑張るわ 俺頑張るからな 今日もここ帰ってきていい?」と聞かれたから
「ダメです」と答えた
「やっぱりそこは うんって言うてや」と笑った
「少し熱あるな 看護師さんに言うとくよ」
「はい」
「じゃ 行ってくる」
「はい いってらっしゃい」
とセイさんを見送った
それから検査の日々が続いて
セイさんも忙しくて 会えなかった
でも たくさん連絡をくれる
『おはよう 今日の調子はどうや?』
『ごはん食べたか』
『今日は暑いわ』
『今から会議やから寝ないように頑張ります』
『仕事終わったら電話してもいい? 声が聴きたい』
俺も聴きたい でも恥ずかしくて言えない
「いいですよ」と返事するのが精一杯だ
「千尋君 検査の結果出たんだけど」とコウさんが病室にやってきた
「結果ね あまりよくないんだ」検査結果を見せてくれる
「退院できればいいんです 退院できますよね」
「できなくはないけど‥‥」
「じゃあ 退院します いつできますか」
「ちょっとまって 退院には条件があるよ
まず 退院してから一ヵ月は療養ね 仕事はダメだよ
出来れば だれかと同居してほしい ムリなら近くに住むとか
それが無理なら ちょっと今の状態では退院は無理かな」
「そんな」布団をギュッと握る
「悩むことないでしょ ウチに来ればいいんだから」
さきさんが仁王立ちしている
ツカツカとやってきて 両頬をむぎゅーとつねられる
「いたいれす」
「痛くしているからね」
「なんれれすか」
「変に気を使って このバカ息子」
やっと 頬を離してくれて 今度は包み込んでくれる
「今千尋が考えてることをしたら みんな不幸になるんだよ
千尋は病気で苦しむ セイは千尋がいなくなったことで苦しむ
で 私たちは千尋を助けてあげられない事で苦しむ
ねぇ千尋 ひとりで苦しまないで お願いだから ね」
涙が止まらない
「迷惑かける 体あまり言うこと聞いてくれない すぐにしんどくなる」
「ゆっくり治していこう 上手く付き合えるようになろうね」
と幸之助さんが頭を撫ででくれた
その日の晩 セイがやってきた
「さきさんから話は聞いた」と頬をつねられた
「せっかく 退院したら一緒に住むつもりやったのになぁ
まぁ 千尋の体が一番やからな ゆっくり治していこな」
「はい」
「会社には あと一ヵ月ですって言うとくな」
「いいのかな そんなに休んで」
「だから じっくり治して一ヵ月で復帰するの ええな
これは上司命令やで」
「わかった」
セイが抱きしめてくれる
「よかった 千尋が俺の腕の中にいてくれる ホンマに嬉しい」
「迷惑かけるけど お願いします」
セイと目が合う
目をつむった セイの唇が俺の唇と重なった
好きな人とのキスがこんなに気持ちのいいものだと
俺は知らなかった
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