静と千尋

うー吉

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千尋3

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体が熱い 熱が出てる
早く準備しなきゃ 殴られる
ハッと目が覚める
「ああ」俺の部屋じゃなかった
カラカラと扉が開く音がすがする
「誰?」と声をかけた
「ごめんね 起こした?」幸之助さんだ
「いえ 大丈夫です」
おでこに手を当ててくれる 
「熱出てるね 氷持ってくるね お水がいいかなお茶がいいかな」とベッドのよこにある 冷蔵庫を開けて聞いてくれる
「あっ お水で」と言うと
ストローをさして水を口元まで持ってきてくれた
「大丈夫です」と伸ばした手にはギブスがしてあり 反対の手はガラスの怪我で包帯で固定されている
「すいません」と水を飲ませてもらった

「今ね 千尋君の体は抱えきれる限界を超えているの いろんな事考えてしまうかも知れないけど 少しだけでもいいから 抱えてる物下さない? 
セイはその手伝いをしたいんだと思うんだ」
少し歩ける?と手を差し伸ばされた
ドアを少し開けて 廊下の長椅子に川越さんが寝ていた
「なんで?帰ったんじゃないんですか」
「帰りそびれたみたいだよ 千尋君が心配で」
「俺が心配…」
「セイがね
『千尋はしんどくてもしんどいって言わへんから 心配や』て言ってたよ」
「なんで 俺の事なんかほうっておいてくれたらいいのに なんで」
「放っておけるわけないやん」
話し声で目が覚めた 川越さんが起き上がって 頭をガシガシかきながら 俺の前に立って 
「立ってるだけで 精一杯のヤツ放っておけるわけないやん」手を伸ばしてくれて 体を包んでくれる 
「大切なヤツがこんなに弱ってるのに 放っておけるわけないやろ 
なんでわかってくれへんの 俺は千尋の事が大事やねん 
だから千尋も自分の事大事にして欲しいねん」
体の力が抜ける
「千尋!」
川越さんが受け止めくれて ベッドに運んでくれる
幸之助さんが少し焦ったように 俺の様子を見てる
「大丈夫です ちょっとホッとしただけです」
「気持ちわるいとかはない?」
うなずく
氷とってくるね と幸之助さんが病室から出て行った
「ホンマに大丈夫か?」頬を撫でてくれる
「はい」気持ちがいい
「あんなところで寝ていたら 休めないですよ 明日も仕事なのに」
「大丈夫や」
やさしく笑ってくれる 何度もこの笑顔に励まされたか 夜知らない男に抱かれてる時も この笑顔を思い出して 川越さんを想像する 何度も
その時はすごく幸せだった でもいつもすぐに現実に戻される 


 
昨日は よく覚えていない 熱があったのに 何人もいっぺんに相手させられて 
何度もやめてと言ったのにやめてくれなかった 
どれぐらい時間がたったかわからなくて 
そしたらあいつが来て 『まだトロトロしてるのか』何度も殴られた 
やめてと言っても聞いてくれない 何度も 殴られて 
ガラスの割れる音 川越さんが泣きそうな顔で俺を見てるのが見えた時
自分が 消えてなくなりたいと思った

「なぁ とりあえずねーへんか?」
俺の体を少しだけずらす
川越さんがその空いたスペースに体をすり込ませる
「狭いけどガマンな 体辛かったら言うてな」
軽く抱きしめてくれる
「今はなんも 考えんでええ とりあえず寝よう
ゆっくり寝て ゆっくり体治して それからゆっくり考えたらええねん
でも その時は一緒に考えさせてな」
頭を撫ぜてくれたり 髪で遊んだり 頬を撫ででくれる
「今まで頑張ってきたやん ちょっとぐらい休んでも大丈夫
神様がちょっと休みって言うてくれたんや
休んだらええねん」
この人の横はなんでこんなにリラックスできるんだろう 瞼が落ちてくる
「おやすみ」おでこにキスされたような気がするけど 瞼が開けれない
「おやすみなさい」とだけ 返事ができた
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