元戦隊ヒーローが特殊部隊結成!~一万年後の世界で再び敵を討て~

カッキー

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プロローグ

三人目の仲間ヴァン発見!

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 地下拠点を出るため、部屋を出て通路を歩く、ジークとルル。そしてルルの横をテクテクと歩く獣神テックス。

 歩きながらルルはふと思い浮かんだ疑問を投げかける。

「そういえば、どうしてジークさんの仲間や獣神たちは各地へ散らばっているのですか? 封印のとき、同じ場所で眠りについたわけではないんですか?」

「ああ。ルルの言う通り、俺たち五人と五体の獣神は同じ場所で眠りについた。

 俺も目覚めてから知ったんだが…… 一万年という長い時間の中で何度も戦争や争いが起きた。アザールは皆を守るために、やむを得ず分散させて隠すしかなかったと話していた。リスク分散の意味合いもあったんだろう。

 信頼できる数人の仲間だけでそれぞれを隠し、かつ、お互い情報を隠した。すべての場所を知る者がいないようにしたんだね。

 そしてアザールが隠していたのが俺だったんだ。」

「そうだったんですね…… 一万年という永い時間…… 

 永過ぎて想像もできない時間の中で、きっと色々なことがあったんでしょうね。」






 道中、通路右側が一面ガラス張りになっている通路に差し掛かる二人。

 ガラスの向こう側では、大きな空間でレイがアンドロイドを相手に模擬戦をしていた。

 レイの髪と瞳が、金色に淡く光っている。

 その様子を見て思い出したようにルルはジークに疑問を投げかける。

「そういえば私を助けてくれた時。そう、魔獣と戦った時、ジークさんも髪が光っていたように見えたんですが…… あれはいったい何なんですか?」

「ああ。あれは“時の力”といってね。一万年間眠っていた俺たちに、“時間”そのものが与えてくれた力なんだ。」

「ど、どういうことですか……?」

「例えば、物体は高いところに持っていけばいくほど大きな位置エネルギーが生まれる。まあその源は重力によるものだけどね。

 それと同様に、物体の時間が進めば進むほど大きなエネルギーが生まれるんだ。それは普通の生き物の寿命程度であれば誤差のようなものだが、一万年も時間が経つと大きなエネルギーとなるんだ。」

 テックスがジークに続いて補足する。

「普通はその時間エネルギーが一つの物体に蓄えられることは、ほとんどないんだけどな。一万年前の封印のときにオレたち獣神がジークたちに時間エネルギーが蓄積されるよう仕掛けておいてあげたのさ。

 せっかく封印されるのに蓄積しないのはもったいないだろ? あ!ちなみにオレたち獣神の力の源も、この時の力なんだぜ!」

 理解しようと必死に頭を回転させるルル。

「その時の力を発揮すると、髪や瞳が光るんだ。

 ただ一万年の時間が高めた力はあまりにも巨大で、残念ながら俺たちには制御し切れなくてね…… その力をすべて解放しようとすると恐らく俺たちの身体は崩壊するだろう。

 そこで時の力を制御するための装置をここのエンジニアが開発してくれた。それがこの首のチョーカーだ。このチョーカーのダイヤルでどれくらい時の力を開放するかが制御できるんだ。」

「まあ最初はそんなもんさ。時の力に耐えうるよう身体を鍛え、力の使い方を覚えれば必ず使いこなせるようになる。だからレイは今もこうしてトレーニングしてるってわけだ。」

「俺もレイに負けないようにもっと頑張らないとな。」

 そう言いながらガラス越しに、トレーニングを続けるレイを見るジーク。

 レイは目にも止まらぬスピードで移動し模擬戦用アンドロイドを倒していく。

「ちなみに、レイのあの高速移動能力は彼女が時の力を応用し身に付けたものなんだ。一万年前の戦いのときもスピードを活かした戦い方を得意としていたレイならではの能力だね。」

「ジークは時の力を身体の一部に一点集中させ強化したり、武器に力を宿したりすることができるようになったよな。ジークは昔から色々器用だったからな。」

 ジークが振り返ると、ルルは眉間にしわを寄せ一生懸命、頭をフル回転させていた。

 その様子を見て、ジークがフォローする。

「ま、まあ、あくまで参考程度に聞いておいてくれれば大丈夫だよルル。疑問に思ったらいつでも訊いてくれていいからさ。」

「す、すみません……! 私バカなんです……」

「まあ気にすんなよルル! どんなにバカでも女神の力は扱えるはずだからな! 大丈夫、大丈夫! はっはっは!」

 テックスに悪気はなかったようだが、その言葉を聞いた直後、ダムが決壊したように涙が溢れるルル。

「ば、ばかテックス! なんてこと言うんだ!」

「すみません…… すみません……! 私、もっと勉強します……!」 

 ルルを泣かせてしまい慌てるテックス。その後彼はルルを泣き止ませるため三十分ほど苦労するのであった。






 ルルとテックスを彼女の家に一旦送り届けたジークは地下基地に帰ってきた。

 するとすぐさま中央指令室に呼び出されるジーク。どうやら三人目の仲間と思しき人物が見つかったとのことだった。

 ジークが中央指令室に着くと、部屋の会議スペースにはアザールやモコス本部長、レイを含め十人ほど集められていた。

 合流したジークにアザールが問いかける。

「おお、来たかジーク。さっそくだが、この映像を見てくれ。この顔に見覚えがあるじゃろう?」

 そう言ってアザールはテーブル中央に映し出された立体映像を指さす。

 そこには古いボロボロのアパートに入っていく、青い髪の青年が映っていた。

「これは…… 間違いない! ヴァンだ!」

「うむ。お前もやはりそう思うか。どうやらこの青年で間違いなさそうじゃのう。」

「ヴァンは、いったいどこにいるんだ?」

 ジークの問いに、中央指令室作戦班 兼 調査班の女性シールが答える。

「ここから約二千キロほど北上したところに位置する街“テロウ”で発見しました。テロウは科学技術研究の最先端の都市ですね。水資源の豊富な素敵な街です。」

 同じく作戦班のおデブ、サスが続ける。

「ヴァンはペグンの女性と暮らしているようです。独り身で貧しい生活をしている女性のようです。」

 ペグンはペンギンのような姿の種族で、短い毛に覆われた温厚な種族だ。サスが説明を続ける。

「ヴァンは経済的に彼女を助けようと、この街の研究機関に自らを実験体として提供しているようですね。おそらく彼の時の力を解明する研究が行われているのでしょう。

 時の力は現代でも知る者は少ないですからね。」

 シールが続ける。

「記憶を失った自分を拾ってくれた彼女への、恩返しなんでしょうね。私、ウルっと来ちゃいました……」

 アザールがジークとレイに視線を移して話す。

「ジーク、レイ。まずはテロウに行きヴァンと接触するのじゃ。レイと同様に、ヴァンの記憶が戻る可能性は低いじゃろうが、なんとか彼を仲間に引き入れてきてくれ。」

「もちろんだ。俺たちにはヴァンが絶対に必要だからな。」

「うむ。そして併せて、獣神の情報も収集してきて欲しい。ワシがお主とテックスを隠したときもそうじゃったが、獣神は戦士の近くに隠されている可能性が高い。」

 シールが補足する。

「現在、調査班でもテロウを中心に調査を強化して探しています。追加情報が見つかり次第、すぐに連絡しますね。」



 モコス本部長が総括する。

「よし! ジーク、レイ! 北方の都市テロウに行き、ヴァンと接触、並行して獣神に関する情報を収集せよ!」

「了解!」

 気合を入れて返事をしたジークにレイが続ける。

「よーし! いよいよ本格的に始まりそうな感じだな! ワクワクしてきた!」


 三人目の仲間を巡る物語が、今始まろうとしていた。

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